時間軸はネタバレになるので伏せます。意味ないですかね。
※“EXTRA FILEについて”に閲覧時の注意事項があります。
先にそちらをご覧ください
春。はじまりの季節。
新生活、新社会人。そして……新入生。
ここ帝丹中学校にも、真新しい制服に身を包み、始まる中学生活に期待を抱く新入生の姿があった。
彼らは先程入学式を終え、保護者と合流した後、昼食に向かったり、写真撮影を行ったりと賑やかに過ごしている。その中には、制服に身を包んだ初々しい少年探偵団の姿もあった。
「博士~。いい加減撮ってよ~」
「そうですよ!一体いつまで待てばいいんですか!!」
「今日は、うな重なんだからな!!早くしてくれよ!!」
「うむぅ……。イマイチ構図が決まらんと言うか……。もう少し、右にして桜を……いや、でも……」
彼らも周囲の例に漏れず写真撮影をしているようだが、撮影者である阿笠が中々撮影しない為に少々苛立ちが見える。
「博士、さっさと撮っちまえよ。こいつ等も予定があるんだしよ」
「むぅ……。仕方ないのぉ。ほれ、撮るぞ」
コナンの言葉に渋々頷くと、撮影する阿笠。撮影した写真を確認すると、意外といい出来だったのか満足気に頷いている。そんな阿笠を横目に、歩美、光彦、元太の三人は用事があると言ってそれぞれの両親のところへと向かう。
それを見送ると、コナンと哀は阿笠のもとへと向かう。
「博士、帰るわよ」
「ん?おお」
阿笠を正気に戻し、コナンと哀は帰宅していく。その間の話題は、先までの撮影会のことであった。
「構図にこだわりすぎなんだよ」
「すまんのぉ。桜が綺麗じゃったし、他の皆を制服で撮るのは初めてなんじゃし」
「ったく……。コイツとオレの写真は今朝に撮ってたし、入学式の様子も撮影してたから、そんなに撮ることはないかと思ってたんだが……」
「しょうがないんじゃない?皆揃って……となると別なのよ」
「そうじゃぞ?無論、君たちの写真も大事じゃが、探偵団の記録もしかと残さんとのぉ」
「ハァ……。新一の時も、母さん達の代わりに写真を撮ることもあったけどさぁ……。絶対、増えたよなぁ。小さくなってから」
「あら、いいじゃない。貴重な記録なんだから……」
「そうだけどさ……。まぁ、今更言ってもしょうがないか。で、博士は昼どうすんだ?本当に行かないのか?」
「そうよ。私たちは別に一緒でもいいのよ?」
「二人とも、そう気を遣うでない。それに、心配せずとも食事くらいなんとでもなるわい」
コナンと哀は、着替えてから二人で食事に出かける予定である。そのまま美術館に向かい、夕食後に帰宅する予定なのである。阿笠がその間一人になる為、二人は阿笠も一緒に行かないかと誘っていたのである。
「そこまで言うなら……。でも、彼女がいないことをいいことに、脂肪分の多い食事なんて食べるんじゃないわよ?」
「わかっておる。それに、今日中に撮影したデータを整理したいしのぉ。二人は気にせず、楽しんでくるがいい。あの子達は、そういう場所は好まんじゃろうしのぉ」
阿笠は気にせず楽しんでくるようにと二人に告げる。二人も、それ以上問いかけることはしない。何だかんだ言っても、二人きりで行動することが嬉しいのである。普段、探偵団と行動を共にしているので尚更である。
その後、阿笠邸の前で阿笠はコナンと哀と別れる。彼らは、工藤邸に帰宅した後制服から着替えて外出するのであろう。
蘭が大学生になったあたりから、阿笠邸と事務所とを行き来きする生活をしていたコナンは、中学入学を期に工藤邸へと移り住んでいた。
但し、対外的にはコナンは阿笠邸に居候していることになっている。これには色々理由があるのだが、それはまた別の話である。
また、哀が工藤邸に移った理由について、哀本人は阿笠の生活を邪魔しない為と言っている。それも嘘ではないだろうが、別に理由があるであろうことは周知の事実である。
帰宅した阿笠は、早速撮影したデータを確認し始める。最初に阿笠は、データを渡す相手別にまとめることにした。
まず、探偵団の面々に渡す写真を分ける。探偵団全員の集合写真に、各個人が写っている写真を選別し、まとめる。
最後に撮った集合写真では、コナンと哀を除いた三人は満面の笑みを浮かべているが、式の入場時に撮影した写真では、緊張に顔を強ばらせているのが微笑ましい。
次に毛利夫婦に送る写真。小五郎がこっそり依頼してきたのだ。普段はそんな態度を微塵も表に出さないが、彼も長年一緒に暮らしてきたコナンの様子は気になるようである。くれぐれもコナンには内密にと言ってくるあたり、恥ずかしいのかもしれない。
彼らには、コナン単体で写っている写真を中心に選ぶことにした。それと、集合写真を一枚。どの写真も、コナンはすました顔で写っているので、小五郎が文句を言いながら見ている姿が容易に想像できる。
此処までの写真は、渡す相手ごとにプリントアウトし、後日手渡すことになる。
あとは、動画データを含む全撮影データをアメリカにいる工藤夫妻へとファイル転送すればいい。同居人には、あとで見せればいいし、あえてプリントアウトする必要もないだろう。
ファイルを転送した阿笠は、再びデータをまとめだす。彼らのデータを、保存フォルダに振り分けるのである。阿笠は、今まで撮影した写真データなどを個人ごとにフォルダを作成して保存していた。その存在は、今のところ一人にしか知られていない。
各フォルダは、更に年代ごとに分けられている為、成長の記録としては申し分ない。組織のことがあるので、哀とコナンが写っているファイルだけはネット環境に繋がっていない専用パソコンにて保管する徹底ぶりである。
作業を終えると、阿笠は撮影したデータを改めてゆっくりと確認し始める。
コナンと哀の写真がやはり多く、自宅前で撮影した写真からはじまり、校門前での写真、式の最中の写真、式の後に撮った集合写真と続く。
自宅前と校門前では、コナンと阿笠、哀と阿笠、コナンと哀と相手をかえて撮影をしたり、コナン単体、哀単体で撮影したりしていることが、数の多さに繋がっている。
阿笠がみんな大きくなったと感慨深く写真を見ていると、電話が鳴る。
「はい、阿笠『博士?私!!写真早速見たわよ~』 おお、有希子君」
電話の相手は有希子であった。どうやら、転送したファイルを確認した後すぐかけてきたようだ。
「ん?そっちは今何時だったかのぉ?」
『そんなことはどうでもいいのよ。いや~コナンちゃんの学ランも久しぶりでいいけど、何といっても哀ちゃんよね!!もう、セーラー服可愛い!!』
「そうじゃろ?ワシやコナン君が似合っておると言っても、お世辞はいいからと言うが、本当に可愛いじゃろ?」
『ええ。本当に。特にコナンちゃんと二人で写っている写真がいいわね』
「そうじゃろう、そうじゃろう。未だに二人きりで撮られるのは慣れておらんようでのう。ハニカミ具合が最高じゃろう?」
阿笠の言葉通り、哀とコナンが二人きりで写る写真は、他の写真とは明らかに哀の表情が違う。その後も、表情がいいだの、皆制服を着ると大人っぽく見えるだのと会話は続く。やがて、動画モードで撮影したデータへと話題は移る。
『ところで、あの動画は何の場面なの?式の前?後?』
有希子が言う動画とは、コナンと哀、それと少年探偵団の面々が校舎前で会話しているものである。阿笠は、帰宅する為に外に出てきた面々が自分の元へ来る場面を動画で撮影していたのである。
「おお、それか?それは、式の後に子供たちが出てきたところじゃ。校門前で皆揃って写真を撮る約束じゃったからの」
『ふ~ん。皆一緒に出てきたってことは、同じクラスなのかしら?』
「いや、元太君とコナン君がB組で、他の皆はC組と言っておったぞ」
『あら~。哀ちゃんと離れちゃったか~。まぁ、家では一緒だしね。そっか~。だからなのかしら?』
「何がだからなんじゃ?」
有希子の言葉に疑問に思う阿笠。それに有希子は勿体ぶって答える。
『ふふっ、博士には分からないかな?ほら、いつもより、コナンちゃんと哀ちゃんの距離が近いでしょ?』
「そうかのぉ?歩いておるんじゃから、距離が近くなることもあると思うんじゃが……」
『まぁ、それもあるでしょうけど……思い出してみて?二人が隣り合うことはいつものことだけど……いつも距離を空けていたわ。最近はわかりやすいほどに』
「そうじゃったかのぉ?言われて見れば、そんな気がせんでもないが……」
阿笠は二人が歩く様子を思い浮かべるが、いつも隣同士で歩き、二人の距離が空いていたかなど思い出せない。
『そうね~。中々気づかないかも。でも、二人が気持ちを確かめあった後から、そういう傾向はあったわよ?距離が微妙に空いてるってこと』
「……ん?それなら、普通は距離が近くなるんじゃないかのぉ」
『普通ならね。でも、二人とも……と言うか哀ちゃんね。哀ちゃんは恥ずかしがり屋なところがあるじゃない?多分、人前でコナンちゃんの近くにいるのが恥ずかしいんでしょうね。それで、ちょっと距離を空けちゃうのよ。コナンちゃんも分かっているから、何も言わないでしょうし』
「そうかのぉ?十分に近いと思うんじゃが……」
阿笠が思い浮かべる二人の様子からは、とても近くにいるのが恥ずかしいとは思えない。
『そうね~。普段から近いとは思うけど、哀ちゃんたちにとってはそうでもないのよ。それか、博士たちには慣れているのかもね。ほら、私や学校の人たちとは一緒にいる時間が違うから』
「そういうもんかのぉ。で、結局何がだからなんじゃ?」
『ああ、それ?別に大したことじゃないわよ?初めてコナンちゃんと別のクラスになったじゃない?』
「そうじゃのぉ。小学校はずっと全員同じクラスじゃったしのぉ」
『でしょ?だから……
寂しかったのよ、哀ちゃん』
「へ?哀君が?」
『そ。だから、人前なのにいつもより近くにいるのよ。ああ、なんて可愛いのかしら。私も学生の頃は……』
有希子の思いもしなかった発言に、阿笠は固まる。次に阿笠が意識を戻したとき、有希子からの電話はとっくに終わっており、時間も夕方に差し掛かろうとしていた……
冬 鈴音様提供ネタ。冬 鈴音様ありがとうございます。
このような内容ですが、ご期待にそえましたでしょうか。
コナンが工藤邸に移り住む。これに関する設定はいつかということで。
ずっと悩んでいた阿笠博士のコナンと哀に対するスタンスもこれを書いている最中にきめました。阿笠博士は親バカにはしません。途中まで親バカでやっていたら、気づいた時には阿笠博士だけで全体の半分を超しました。
なので、親バカにはしません。毎回博士が半分とか遠慮したいですし。
活動報告にてリクエスト受付中。まだまだ募集中です。気軽にどうぞ。