IS〜インフィニット・ストラトス 世界の狭間で 作:yuichi526
そんな馬鹿な事が起きるはずがない。しかし、実際に起きてしまっているのだ。宇宙空間に居たはずのキラは宇宙に出来た穴に吸い込まれて気付くと地球のはるか上空にいたのだ。乗っていた筈のストライクフリーダムは何処かに消えてしまっている。キラ達は海上に真っ逆さまだ。
「ぐっ、ラクス!?」
必死にキラは愛する人を探した。やはり、彼女も落ちている。ピンク色の髪が強風になびいていた。彼は必死に彼女の元に行こうとするが、ここは空中。なかなか前に進まない。すると、いつの間にか自分の右腕に見に覚えのない青いブレスレットが付いていることに気付いた。
「これは?」
何故かは分からないがキラはそれが姿形を変えたストライクフリーダムだということに、恐らく本能的に理解する。ヘルメットを取って、左手でそれを掴み、念じるように祈った。
(頼む、フリーダム。来てくれ!!)
その、思いに呼応してかブレスレットが突如として青く光りキラの全身を包み込む。すると、それがストライクフリーダムに形を変えた。
「これは!?」
なんと、キラがストライクフリーダムを着込んでいるのだ。モビルスーツの様に乗り込んでいるのではなく、パワードスーツの様に着込んでいるということだ。まさに自分がストライクフリーダムになった気分に陥る。
「・・・・・!?」
フリーダムのカメラアイから膨大な量の情報が流れ込んでくる。機体操作、武装情報、外気温、etc。キラはそれらを瞬時に理解するとすぐさまブースターを吹かしてラクスのところへと飛んで行った。
「ラクスッッッッ!!!」
彼女の落下速度とフリーダムの速度を合わせなるべく受け止めた時の衝撃を和らげようとする。そして、海面から5mの距離で彼女を受け止めた。
「うっ・・・」
「ラクス?」
彼女は気絶している様だ。キラはホッとしていると、上からもヴァイス達が自分の機体を展開し降りてくる。そこでキラはあることに気付いた。あの時、居たのはキラとヴァイスとラクスとあのレイヴンだけだ。しかし、降りてくるのは他にもう二機見慣れない機体がいる。キラが唖然としているとアルギュロスから光弾が放たれた。
「いきなり!?」
フリーダムを装着しているキラならまだしも、ラクスは生身だ。彼女を庇うように敵に背中を向ける。しかし、その光弾はヴァイスのレグザが展開したビームシールドで弾かれた。
「てめぇ・・・いきなりかよ」
「状況がはっきりしないが、お前らは敵だからな」
すると、今度は白い機体から実弾が放たれ、アルギュロスに当たりそうになった。その左腕には金髪の女性を抱いている。黒い同じ形の機体も降りてきて白い機体に銃口を向けた。
「おいおい、こんなところでパーティか?」
ゴーストがそう愚痴る。しかし、状況が掴めないなか戦ってもしょうがない。そう考えていると先にアルギュロスが銃口を下げる。
「分かった、分かった。全く未知な状況だ。ここは停戦協定と行こうぜ」
確かに、今は戦っている場合ではない。未知の機体達も銃口を下げた。
「あんたらも同じだろ?穴に吸い込まれたんだろ?」
「・・・・・」
「そうだ」
どうやら、同じ境遇らしい。しかし、さっきから気になっているのはその機体だ。キラもヴァイスも見たことの無いタイプの機体。すると、ゴーストが興味津々に口を開く。
「しっかし、あんたらのその機体。見たことのないタイプのMSだな」
黒い機体のパイロットが本気の感じでキラたちが予想していない答えを弾き出した。
「MS?何のことだ?この機体はネクストACだ」
「AC?MSじゃなくて?」
「おやぁ?これはまさか〜?」
新たなる疑問に全員が首を傾げていると、レーダーが何かが接近してくるのを伝えた。
「なんだ!?」
「キラ!俺の後ろに!?」
全員がすぐに戦闘態勢に入る。女性を抱えているフリーダムと白い機体が後ろ。残りが前に出る。
「おい、キラ・ヤマト!俺をこの場で雇えよ!」
いきなり、ゴーストが変なことを言うのでヴァイスが変な声を挙げた。
「こんな時に何をっ!?」
「俺は傭兵だ。今、この場で俺を雇えば後も俺に命令できるぜ?実力は知ってるだろ?」
確かに彼を今雇えば何かと便利だ。しかし、キラの中でそれに対して警鐘が鳴る。そんな事をしているうちに何かが視界に入った。その何かはパワードスーツのようだった。しかし、更に気になるのはパイロットが全員女性だという事。
『そこのIS共、ここはIS学園の近くだ。ここで何をしている?』
隊長らしき女性の凛々しい声が通信越しに聞こえてきた。この時キラは次にどうするか決め兼ねていた。
遡ること少し前の時間。ここはIS学園の教員室。黒髪のスーツ姿の女性が色々と資料を整理している。彼女の名前は織斑千冬。このIS学園の教員で恐らくこの世界最強の人物だ。
「織斑先生、コーヒー如何ですか?」
そう言って彼女にコーヒーを渡してきたのは山田真耶、千冬の色々と補佐をしている教員だ。
「ああ、山田先生。ありがとう」
そう言って彼女はコーヒーを受け取り一口飲んだ。苦い味と独特のコク、香ばしい匂いが口いっぱいに広がった。
「そう言えば、もう直ぐですね。弟さんが入学されるの」
「・・・・」
この世界特有の力。IS《インフィニット・ストラトス》は本来女性にしか使えない筈のマルチプラットフォームだ。しかし、彼女の弟である織斑一夏が受験試験会場でISを動かしてしまうという大事件が起きた。それで本来は女子高である筈のIS学園に特例として入学することになったのだ。
「全く、どこの天才の仕業だ?」
「えっ?」
直後、学園中にサイレンが響き渡る。立て続けにアナウンスが流れた。
「なんだ?」
「これはっ?」
『近海で異常な重力場を確認。教員は事態の収拾及び・・・」
千冬と真耶は素早く教員室を出て自分達の持ち場に向かった。
「しかし、織斑先生。異常な重力場とは一体?」
「私にも分からん」
ちょっとしてから、真耶はフランスの量産型第二世代《ラファール・リヴァイヴ》に乗って他の教員達と共に現地へ、千冬はナビゲーターブースでオペレーターをしていた。
「山田先生、あれを!?」
「なに?あれは?」
他の教員の一人が指差した方向を見るとそこには重力場は無く、代わりに見たことのないISが五機浮遊していた。
「なんだ?あの機体は?」
全員が確認すると動揺が広がる。IS機は今のところ世界で467機しかないがその五機はどれも該当しない機体だった。見た目は全身装甲《フルスキン》タイプだ。
「新型機?」
教員達が未確認機に近寄ると一気に警戒態勢に入る。千冬がオープンチャンネルで呼び掛ける。
『そこのIS共、ここはIS学園の近くだ!ここで何をしている?』
すると、青い翼の未確認機から返事が返って来た。
「僕はZ.A.F.T所属のキラ・ヤマトです。貴女達は一体?」
「男の子?」
一気に教員達がざわめく。この未確認のISに乗っているのは男なのだ。本来は使えない筈の。
「Z.A.F.T?一体何を言っている?山田先生、そいつらを拘束しろ。詳しい事情を聞く」
「なんだなんだ?やる気かよ?」
今度は白く追加ブースターを装備した機体が身構える。その冷たい闘気に真耶は身震いした。
「まって!ここは穏便に済ませるために彼女達に任せよう。こっちは怪我人もいるし。」
青い翼の未確認機が言うと未確認機達は武装を解き始める。
「では、ついてきて下さい」
キラ達は真耶に警戒を含まれた声でそう言われて、ラファール・リヴァイヴ部隊について行った。
「いいのか?隊長さんよ?」
「うん、今はそうした方が良さそうだしね」
周りを見回すと、ちょっと先に見慣れない建物がある。それに斜め後ろを追従して来ているネクストACや前のパワードスーツの事を考えると嫌な予感がキラの頭を過ったのだった。
感想やこうしたらいいとかありましたらよろしくお願いします。