東方雑貨録   作:蒼影

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久々の更新です

仕事ってつらいわぁ…

充実感はありますが…

やっぱり辛いわぁ


八雲紫『小さな酒宴』

幻想郷では店が閉まるのが早い

 

理由は幻想郷の文化が江戸後期~明治辺りで止まっているからに加え、さらに電気が一般に普及していないのが大きい要因である

 

故に人里の人々は日が落ちたら皆仕事を終え、寝静まってしまう

 

この『万商』も例外ではなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

店主、俤秋乃は硝子戸を開けて外に出ると、立ててある看板を店の中に入れた

 

そんな時…

 

 

「こんばんわ」

 

 

秋乃の背後から女性の声が掛かる

 

声を聞いて秋乃は振り返る

 

そこには一人の女性が立っていた

 

妖艶な雰囲気を漂わせる中華風の意匠の服装の女性は左手に白い日傘を持って優雅に立っていた

 

 

「ご無沙汰しています。紫(ゆかり)さん」

 

 

秋のは女性に向き直り、頭を下げてそう言った

 

 

「相変わらず堅いわねぇ、それよりも今から良いかしら?」

 

 

女性…八雲紫(やくも ゆかり)は右手で杯の形を作り、飲む仕草を秋乃に見せる

 

 

「構いませんよ…店仕舞い終わらせてしまいますので、上がって待っててください」

 

 

「そうさせてもらうわ」

 

 

紫は硝子戸を開け、中に入っていく

 

紫は勝手知ったるように店の中を進む

 

段差を上がり、その奥にある『関係者以外立ち入り禁止』と小さく書かれた札の付いている木の引き戸を開ける

 

そこには二十畳ほどの部屋があった

 

畳が敷かれ、天井からは裸電球が吊られていた

 

中央には小さな卓袱台が置かれていた

 

紫がちらりと右を見るとそこは台所があった

 

ただ、台所の様子が今までの部屋と変わっていた

 

幻想郷の住人が見れば必ず『他と明らかに違う』と口を揃えて言うだろう

 

台所は床が居間より五十㎝ほど低くなっており、床はタイルのような石を敷き詰めた床だった

 

調理をするスペースには二つのガスコンロが在り、その隣に木のまな板と包丁が置かれていた

 

そして、その台所の外れに中型の冷蔵庫が鎮座していた

 

冷蔵庫の下からコードが延び、きちんとプラグが壁のコンセントに刺さっていた

 

なぜか流し台がないが、そこには水瓶が置いてあった

 

紫は台所をちらりと見た後、畳の上に腰を下ろした

 

 

「相変わらず、幻想郷には不釣り合いな台所ね」

 

 

「河童たちは喜んでいましたよ…外の世界の技術に触れられると」

 

 

紫がぽつりと呟いた言葉に答えながら店仕舞いを済ませた秋乃が赤いワインのボトルを手に持って入ってきた

 

 

「あら、ワインなの?」

 

 

「紅魔館に需要があるかと思って仕入れたテーブルワインなんですけど、ヴィンテージ物じゃないからと断られてしまいまして…」

 

 

「お子様ねぇ…若いワインは若いワインで美味しいというのにねぇ…」

 

 

紫はワインのボトルを眺めながらこの場にいないとある館の吸血鬼のことを口にする

 

 

「まぁまぁ…食べ物、飲み物の好みなんて人妖それぞれじゃないですか」

 

 

秋乃は冷蔵庫を開けつまみを取り出し、台所の入り口近くの棚からグラスを取り出し卓袱台の上に並べていく

 

 

「そうね、私の友人も頑なにワインみたいな外国のお酒を飲まないのもいるしね…あら、チーズ?あなた、ワインとチーズってそんなに合わないって言っていなかったかしら?」

 

 

紫は卓袱台に並べられたチーズを見て秋乃にそう言う

 

 

「このワインは若いですけど赤ですから、チーズみたいなしっかりしたものがいいかと思いまして」

 

 

ワインのコルクをスクリューで開けながら秋乃はそう答えた

 

そして、ゆっくりとワインがグラスに注がれていく

 

暗めの赤い液体がグラスの中をゆっくり満たしていくのを紫は見惚れるような笑みで見つめている

 

紫と秋乃はグラスを持ち互いのグラスが触れるか触れないかの位置まで近づけ…

 

 

「「乾杯」」

 

 

互いに笑みを浮かべワインを煽った

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、秋乃」

 

 

ワインを飲み干し、秋乃が新たに開けた日本酒を半分ほど開けたほど、他愛の話をしていた紫が唐突に話を切り、秋乃に話しかけた

 

 

「どう?幻想郷(ここ)には慣れた?」

 

 

「ええ…少し前にあった赤い霧の異変の時は体調崩しましたけど…」

 

 

その時秋乃は体調が戻った後、霊夢に頼み加護関係の札を定期注文することを決めた

 

 

「そう、良かったわ。やっぱり無理強いで来てもらった以上、早く慣れてもらうのは助かるわ」

 

 

「『ありとあらゆるものを手に入れる程度の能力』でしたっけ…紫さんの説明だけでしか名前が出てこないので忘れかけていましたよ」

 

 

「二十歳になると同時に能力が開花すると分かったときは焦ったわよ」

 

 

「なんというか…すいません」

 

 

「別に責めてるわけじゃないわ。貴方自身私が説明しなければ全くの無自覚だったのだから」

 

 

そこまで話して紫は酒の入った盃をクイと傾ける

 

 

「で、能力のことと幻想郷を自分に簡単に説明した後意思確認の間もなく此処に連れてきたんでしたね…その後、この店を起点にして封印を施して今の自分の能力があるんでしたっけ?」

 

 

紫の言葉に続くように秋乃が話す

 

 

「そうよ、『あらゆる商品を入荷する程度の能力』…秋乃さん、恨んでる?」

 

 

紫は若干目を伏せ秋乃に問う

 

 

秋乃は酒を煽るように飲み

 

 

「いいえ、両親とは十八の時事故で死別…両親の家業の始末なんかで慌しい一年…その後、無気力な生活を過ごしてた自分にとってはいい人生の転機だったのでしょう」

 

 

秋乃は続ける

 

 

「能力の制限やこの店の支援をしてくれた紫さんにはとても感謝しています、恨むだなんてとんでもないです」

 

 

ぎこちない笑顔で紫に答えた

 

 

「ふふ…貴方のそのぎこちない笑顔が見れるなら恨まれるくらいさして苦でもないのに…」

 

 

「…からかわないでください、笑うの得意じゃないんです」

 

 

秋乃は顔を背け、誤魔化すように酒を飲む

 

 

「ふふ…」

 

 

暗い幻想郷の人里の外れで一軒だけ淡い光が漏れる家屋で行われた二人だけの小さな酒宴

 

その後、紫の式が迎えに来るまで小さな酒宴は続いた




補足

秋乃の店には河童たちの技術が実験と称してふんだんに施されています
紫が監修しているため汚染などの心配は余程のことがない限りありません。

ただ…何かの拍子に爆発はするかもしれませんね…
爆発は芸術(キリッ
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