東方雑貨録   作:蒼影

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テンションの赴くままに書いていたら夜が明けていた

今日仕事なのに…


咲夜『よく来る客』

 

雑貨屋『万商』

 

店の中央で駄菓子を売っているため、人里の子供たちなどからは駄菓子屋と間違えられている

 

が、その名の通り雑貨を扱う店である

 

しかし、客足はさほど多くはない

 

それはなぜか

 

幻想郷にも当然八百屋や鍛冶屋などの店は存在する

 

『餅は餅屋』という言葉があるように野菜なら八百屋、刃物なら鍛冶屋といった感じで里の人

 

はそれぞれの専門に扱う店に行くからだ

 

雑貨屋らしく食器などの生活用品も扱ってはいるが、人里の人たちは生活の道具は各々修理などを行い、長い期間使い続けるためあまり需要がないのである

 

しかし、人妖混在する幻想郷

 

一見需要がなさそうな雑貨屋にもきちんと固定客と呼べる人物はいるのである

 

 

 

 

 

 

 

 

がたがたと相変わらず立てつけの悪そうな音を立て入口の戸が開かれる

 

カツカツとブーツの音が店内に響く

 

その音に気付いた店の主…俤秋乃が筆を走らせていた帳簿から目を離す

 

 

「こんにちは、秋乃さん」

 

 

秋乃に声をかけたのはメイドの少女だ

 

艶やかな銀色の髪を左右に小さなおさげにしていて、頭の上にはフリルをあしらったカチューシャが乗っている

 

濃い紺色のワンピースの上にカチューシャと同様フリルをあしらったエプロン

 

腰のあたりのポケットから髪と同じ銀色の鎖が光を反射して輝いている

 

少女の顔は身に着けているメイド服に負けないくらい整った顔つきだ

 

職業故か上品さを感じる佇まいは少女に大人っぽさを与えている

 

メイドの少女は恭しく秋乃に挨拶をする

 

 

「いらっしゃい、十六夜…んんっ…咲夜さん」

 

 

秋乃はメイドの少女…十六夜咲夜(いざよいさくや)に挨拶を返した

 

 

「あら、いつものように苗字で呼ばないのね?」

 

 

「最近ようやく名前で呼べるようになってきただけです…」

 

 

「まぁ、いいわ苗字で呼ばれるのって違和感あったのよね…頼んでいたのは届いてる?」

 

 

「あぁ…今持ってくるから待っていてくれ」

 

 

秋乃は座敷の脇にある草履を履き、店の隅から両手で抱えるほどの大きさの木箱を持ってきた

 

秋乃は一度店の外に出て、これまた店の脇に置いてある台車の上に木箱を静かに置いた

 

 

「悪いわね、わざわざ取り寄せていただいて…うちはよく食器が壊れるから」

 

 

咲夜はメイド服を着ているだけあり人里から北西の『霧の湖』の奥に立つ血のように紅い外壁の館『紅魔館(こうまかん)』でメイド長をしているのである

 

 

『紅魔館』…秋乃が幻想郷に来てから少ししてから起きた『紅霧異変』と呼ばれる異変を起こした張本人、吸血鬼レミリア・スカーレットとその住人達が住む館

 

異変前は人里などに対しては不干渉だったが、前述の異変後、とある新聞により知名度が一気に上がったのを機に、人里にやってくるようになった

 

しかし、悲しいことに紅魔館は日光が弱点である吸血鬼、喘息持ちで外出を嫌う魔女、仕事故に動けない門番と…かなり個性的な住人達ばかりなので人里に来るのは咲夜だけなのである

 

 

「かまわないよ、むしろありがたいよ…食器を買ってくれるのは紅魔館ぐらいだから」

 

 

秋乃は台車に木箱を紐で固定しながら咲夜にそう答える

 

 

「けど、気になるのよね」

 

 

咲夜はふむっと考えるような仕草の後、秋乃に質問を投げかける

 

 

「あなた、どこから品物を仕入れてくるのかしら」

 

 

「……」

 

 

「あのスキマ妖怪かしら?」

 

 

咲夜の問いに秋乃は答えない

 

 

「答えてくれないの?」

 

 

「すまない、企業秘密ということで勘弁してくれないか?」

 

 

秋乃は苦笑いで咲夜にそう言った

 

 

「私はそれでもいいのだけれど…お嬢様が…ちょっと」

 

 

咲夜が言うお嬢様とは、紅魔館の主レミリア・スカーレットのことである

 

 

「直接館に来て説明を、との事なのだけれども…」

 

 

「それは…強制?」

 

 

秋乃が咲夜に向き直り、咲夜に問う

 

 

「…」

 

 

先ほどとは逆に今度は咲夜が答えない

 

 

「わかった…どうせ、商品を届けに行かなきゃならないし…」

 

 

「店を閉めてきます、少し待っててください」

 

 

秋乃が溜息とともに店に戻った

 

 

「…ありがとうございます。秋乃さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法の森を迂回し、さらに霧の湖をぐるりと回ってたどり着いた先にある巨大な赤い館…『紅魔館』

 

館の正門にはこれまた巨大な鉄の門が固く閉ざされている

 

その門の隣には一人の女性が立っている

 

 

「ようこそいらっしゃいました、秋乃さん」

 

 

女性は咲夜と一緒にやって来た秋乃ににこやかな笑顔を向ける

 

咲夜は西洋のメイド服だったが、彼女は東洋風の意匠に服装だ

 

華人服とチャイナドレスの二つの服を合わせたような、一言でいうなら中華風な深い緑色の服を身に着け、腰まで伸びる燃えるような長く赤い長髪

 

そして、服と同じく深い緑のに『龍』の文字の入った星がついた帽子

 

 

「こんにちは、美鈴(めいりん)さん」

 

 

挨拶された秋乃も女性…紅美鈴(ほんめいりん)に頭を下げる

 

 

「いつもすいません。私も行ければ荷物を自分たちで持っていけるんですけど…」

 

 

申し訳なさそうに台車を見ながらいう美鈴

 

秋乃は気にしないでと美鈴に返す

 

 

「美鈴、門を開けて頂戴。秋乃さんを屋敷の中に案内するわ」

 

 

咲夜が一歩前に出て美鈴にそう言う

 

美鈴は少し驚いたような顔をした

 

今まで、秋乃は紅魔館の中までは入っていかないからだ

 

 

「珍しいですね、秋乃さんが中に入るなんて…もしかして、お嬢様ですか?」

 

 

「美鈴、余計な詮索は無しよ」

 

 

美鈴を一瞥しながら咲夜は言う

 

ははっと笑いながら美鈴は門を開け放つ

 

 

「それではどうぞ、秋乃さん」

 

 

美鈴に促され、秋乃は咲夜と共に紅魔館の門をくぐった




補足

紅魔館では様々な理由により(泥棒魔法使いとか妖精メイドとか妹様)食器などの日用品の消耗が激しいので、異変後かなりの頻度で店に訪れているのである

今ではすっかり常連さんな咲夜さん

次回は秋乃の能力説明会ですかね…
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