入学編Ⅰ
魔法。それが伝説や御伽噺の産物ではなく、現実の技術となってから一世紀が経とうとしていた。
そして、春。今年も新入生の季節が訪れた。国立魔法大学付属第一高校―通称『魔法科高校』は、成績が優秀な『一科生』と、その一科生の補欠『二科生』で構成され、彼らはそれぞれ『花冠』(ブルーム)、『雑草』(ウィード)と呼ばれていた。そんな魔法学校に、十師族さえも恐れを抱くという宮脇家の者が入学する。
宮脇海斗(みやわきかいと)宮脇家の次期当主で入学試験の結果は2位。そして、宮脇家とは代々十師族を監視してきた古式魔法の名家である。
「あー今日から学校かぁー…面倒クセェ」
「こら!海斗!もっとビシッとしなさい!仮にも貴方は宮脇家の次期当主なのよ」
「うるさいな、由梨。」
海斗の傍らにいるのは神崎由梨(かんざきゆり)。神崎家も有名な古式魔法の家で、由梨と海斗は許婚である。
「ねぇ、海斗。何でわざわざ一高に入学するの?三高の方が近いのに」
由梨は試験に合格しているのにもかかわらず、疑問に思っていることを口にした。
「あぁ、それは宮脇家の命令なんだ」
「へぇ……何の命令なの?七草と十文字の監視?」
「いや、違うよ。実は今年四葉の次期当主候補がここに入学するんだ。その人の監視」
「そうなんだ。で、何て名前の人なの?」
「いや、それがわからないんだ」
「えっ?何で?じゃあ、どうやって監視するの?」
「だから、まずはその監視対象をさがさないとね」
「ふーん。なんか大変そうね」
「まぁね」
由梨の同情に海斗は苦笑いで答えた。
そうこう話しているうちに、海斗達は迷子になってしまっていた。
「しまったなぁ。どうしよう?」
「早くしないと入学式始まっちゃうわよ」
「元はと言えば、由梨がこっちの方だって言ったんじゃないか!」
「貴方もそれに反対しなかったでしょう!」
「何かお困りですか?」
海斗と由梨が口論していると、突然声がかかった。
「はい。実は入学式の会場がわからなくて」
由梨がその声をかけてきた人に説明した。
「そうですか……でしたら、私がご案内します。申し遅れました、本校の生徒会長を務めています七草真由美と申します。『七草』と書いて『さえぐさ』と読みます。」
そう言い、真由美は丁寧な自己紹介をした。
(まさか、もう七草と接触するとはな)
海斗は心の中でそう呟いた。
「貴方たちのお名前は?」
「俺は宮脇海斗です」
「私は神崎由梨です」
2人は無難な挨拶をした。
「え、えっと。宮脇君はあの《宮脇家》の人?」
真由美は少しどもりながら海斗に質問した。
宮脇家は十師族にあまり良い印象を持たれていない。むしろ、敵視されていると言っていい。
「はい、そうです」
海斗は即答で答えた。
「そ、そうですか…でも、海斗君と神崎さんは今日から私の後輩です。何か困ったことがあったらいつでもきいてね」
真由美はそう言ってウィンクをした。
「はい!よろしくお願いします!」
「……よろしくお願いします」
由梨、海斗の順で答えた。
「では、案内しますね」
そう言って真由美は海斗達を案内した。
無事入学式も終わり、新入生は自分のクラスに移動し始めた。
「ねぇ、海斗はクラスどこになった?」
「俺はA組。由梨は?」
「私もA組!一緒に行こう!」
「ああ」
そして2人はクラスに移動した。
クラスに監視対象がいることを知らず…………
ありがとうございました!