モンスターハンター 剣聖の魂   作:コードネームTOSI

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本編
第一章:旅の始まりは人それぞれ


「そっちに行ったよ!!」

 

まだ幼さが残る声が響き渡る森の中、一体の巨大なオレンジ色の獣が巧みな動きで動いていた。

手の鋭い鉤爪を使い、屋根のように張り巡らされたツタを器用に使いながら不規則な動きで見るモノを翻弄していた。

牙獣種尖爪目飛膜獣亜目ケチャワチャ科に属するモンスター、『ケチャワチャ』を相手に2人の若い男女のハンターが遺跡平原と呼ばれるフィールドで対峙してた。

 

目の前から来るケチャワチャの奇妙な動きに翻弄されることなく、『ジャギシリーズ』を身にまとった若い男性のハンターはケチャワチャの攻撃を躱した。

ジャギヘルムは顔全体を覆う防具ではなく、その顔立ちはよく見える。

細い鋭い目がケチャワチャを捉え、実年齢よりも大人びて見れるがおそらく10代後半だろう。

背負っている武器は『斬破刀』。

鉄の鉱石から鍛え上げられ、電気袋と呼ばれる特殊なモンスターからのみ取れる素材を使用して作られたメジャーな太刀の一振りだ。

東方より伝わった伝統的な形をしており、その斬撃からは電気袋によって斬るたびに電属性の斬撃を与える。

攻撃が避けられ続け苛立ちを覚えたケチャワチャはツタから手を離し、4足歩行での攻撃に切り替えた。

 

「サナ!!」

 

それを見たハンターは先ほど注意を促してくれた幼馴染の女性のハンター、サナを呼び掛けると大きく手を振っていた。

彼女が見にまとっているのはアロイシリーズであり、大量の鉱石を使用して作られた防具だ。

採掘で手に入る鉱石だけで作れる利便性から、駆け出しのハンター達にも愛用されている。

背負っている武器は『スノツインズ』と呼ばれる、ケチャワチャと同じ牙獣種である『ウルクスス』から剥ぎ取られる素材を使用して作られた双剣だ。

その斬撃からは特殊な加工により氷属性の攻撃を可能にしていた。

 

「準備オッケーだよ、ヤマト!!」

 

それを見たジャギシリーズのハンター、ヤマトはケチャワチャの攻撃を避けながらサナの元へと近づいた。

2人の目の前の地面には円盤状の装置が置かれていた。

そして辺りに黄色い電撃が迸っていた。

ハンターはいかに信頼できる武器を用いても、巨大なモンスターに打ち勝つの容易ではない。

だからこそ人々は戦況を優位にするために様々な道具の使用を認められている。

そして今サナが使用したのは『シビレ罠』と呼ばれるトラップツールとゲノポスの麻痺牙か電光虫を調合して作られた罠だ。

人には無害だが、モンスターが不用意に踏むとその強力な電撃か麻痺牙によってたちまちその動きを封じることができる。

 

ケチャワチャはその事など知る訳がなく、何の躊躇もなく2人向かって突進してきた。

猛スピードで突撃してくる大きな存在に、サナは一瞬体が強張りその場から離れようとしたが隣にいたヤマトがすぐ動けるように身構え微動だにしないのを見て、その場にとどまった。

そのことからサナがヤマトの行動を見本にし、信頼しているのがうかがえる。

 

その間にもケチャワチャは接近し、シビレ罠まで後一歩のところまで来たと同時にヤマトもまた一歩前に動いた。

そして次の瞬間、ケチャワチャがシビレ罠を踏み体が拘束されると同時に、ヤマトは背負っていた斬破刀を勢いよく引き抜き、大きな耳が付いている頭部に斬撃を与えた。

それと同時に電撃袋のよる電撃も追加でダメージを与えた。

ヤマトは手ごたえを感じたのか、突き、振り上げ、降りおろし、再び突きと無駄のない太刀さばきで斬撃を与え続けた。

 

サナも負けじと、ヤマトとは逆に背後に回り双剣からなる無数の斬撃を与えようとした。

武器を引き抜くと同時に、両手の剣を天に掲げ気合を入れると同時にサナの体が迸ったかのように赤い闘気が目に見えた。

双剣の極意ともされる鬼人化で、双剣からなる無数と氷属性の冷気が斬撃がケチャワチャを襲った。

 

2人の猛攻から逃れようと、ケチャワチャももがきやっとの思いでシビレ罠の装置が小さな音をたて破裂し体の自由を取り戻したが、時すでに遅しだった。

それを見るや否や、ヤマトは太刀でケチャワチャを袈裟斬りをし、続けざまに逆袈裟。

そして更に再び素早く袈裟斬り逆袈裟をし最後に力いっぱい斬破刀を上から振り下ろした。

合計5回にもよる斬撃は全てケチャワチャの頭部を捉え、最後の一撃で体を大きくのけ反らせ、そのまま地面に倒れると動かなくなった。

斬るごとに練気ゲージを貯め、一気に開放する太刀使いの奥義の一つ気刃斬りが最後の一撃を飾った。

 

「ふぅ……」

 

ヤマトは対象を討伐したことを確認し、一度深呼吸した。

自分達にとって大きく、また脅威である存在と常に対峙し続けるのは肉体的にも、精神的にも負担は大きい。

そのため、標的を討伐した際その緊張感から解放され気は緩みがちになる。

何が起こるか分からない狩場では一瞬の気の緩みが命取りになりかねないが、こればかりは新米ハンターもベテランハンターも同じだ。

後の行動は、各々による。

サナのように両手を合わせながら嬉しそうに飛び回り喜び回る者もいれば、ヤマトのように再び気を引き締め辺りを警戒しながらモンスターの剥ぎ取り作業に取り掛かる者もいる。

 

「サナ、そろそろお前も剥ぎ取っておけ。

辺りは俺が警戒しておく。」

 

自分の剥ぎ取りを終えたヤマトがサナを呼び掛けた。

サナは元気よく返事をし、ヤマトと同じように剥ぎ取りを行ってた。

しばらくすると、剥ぎ取りを終えたサナは剥ぎ取った素材を見て嬉しそうに笑顔を見せていた。

2人が剥ぎ取りを終えてもなお、ケチャワチャの死骸には剥ぎ取り可能な部位もあったが、ハンターズギルドの条約により1体のモンスターから剥ぎ取れる回数は決まっていた。

それは討伐したモンスターは必要以上に剥ぎ取らないことにより、残った肉は肉食モンスターの餌となり、また腐った肉体は大地や草木の養分とすることで草食モンスターの餌などにもなる。

必要以上にやらず、残りは自然に返すことにより狩場はうまく循環し、生態系に異常を与えるのを防いでいる。

 

「うししっ、これで新しい防具が作れるよ~」

 

帰りの馬車の中、サナはようやく作れる防具への妄想を爆発させていた。

一方ヤマトは武器の手入れをしているのか、斬破刀を鞘から抜き狩場使用される砥石とは別の砥石を使い刃こぼれなどをチェックしていた。

 

「ね~ね~、ヤマト。」

 

しばらくすると、暇を持て余したのかサナが寝っ転がりながら話しかけてきた。

アロイヘルムを脱いでいるため、その素顔はよく見えた。

まだ幼さを残し、ヤマトとは逆に実年齢よりも幼く見えるが、ヤマトと同じ17歳の少女がしきりに長い黒い髪を弄りながら蒼天の空を眺めていた。

 

「どうした?」

 

「いや、お姉ちゃん大丈夫かなって……」

 

その言葉にヤマトは一度作業を辞め、斬破刀を鞘に納めた。

サヨリとはサナの実姉にして、ヤマトにとっても姉のような存在だ。

今回のケチャワチャ討伐の依頼も本来ならば3人で行くはずだったが、急遽サヨリの元に一通の手紙が届くと顔色を変え、急用ができたと行って今回の狩りから外れ、一人別の依頼を受けてしまったのだ。

ヤマトもまた長年一緒にいるが、あの時のサヨリの様子が気がかりで仕方なった。

 

「……あの手紙に何が書かれてたなんて、俺には分からない。

けど、サヨリ姉は俺達よりも腕はたつ。心配なさい。」

 

姉を心配するサナを少しでも安心させようと、ぎこちないが笑顔を見せるヤマトにサナはおかしくて笑い出した。

 

「ぷっ、あはは!!

ヤマト笑顔ひきつってるよ~

怖い~」

 

「なっ、おいお前な!!

人が少しでも安心させようとしてるのに!!」

 

「あはは!!

でも、ありがとヤマト。

そうだよね、お姉ちゃんは私達を置いて行ったりしないもんね。」

 

「……ああ、約束は守る。

それが俺達が皆で誓ったからな。」

 

3人は幼くして両親を亡くしている。

ヤマトの両親は学者だったが、調査中に想定外のモンスターに襲われ。

サナ達の両親はハンターだったが、狩りを終えた時謎の大型モンスターに襲われ命を落とした。

お互い隣の家同士で何かと協力しあって生きてきた。

そして時は経ち、サヨリは両親の跡を継ぐようにハンターとなった。

ヤマトは父親が唯一残したある物を証明すべく、ハンターになるのが一番の近道にして自ら道を切り開くために。

サナは2人の後を追うように、また支えれるようにハンターへの道を進んだ。

その時、3人は何があっても約束をし、その約束は絶対に守る、そう誓い合った。

そして3人がハンターとなって最初に約束したのは、何があっても絶対に生きて帰ってくることだった。

 

しばらくすると、馬車は多くの人々が賑わっている巨大な市場にたどり着いた。

ヤマト達は馬車と別れると、一直線にある場所を目指した。

途中で商人がお勧めの商品を進めて来たり、武具屋が声をかけて来たりしたがやんわりと断っていた。

そしてそれらの店だけでなく、この市場にあるすべての店が何故か布を張り巡らされただけのテントようにし店が並べられているだけで、レンガ造りの建物はおろか、木製の建物は1つもなかった。

ヤマト達がたどり着いた場所は『バルバレ』と呼ばれる場所で、たくさんの『キャラバン』で形成された巨大な市場である。

世界を旅するキャラバンが集うため、さまざまな情報が自然と集う場所であると言われており、集会所が移動すれば周囲のキャラバンも移動するので、地図には載らないユニークな場所でもある。

そしてそれぞれのキャラバンはそれぞれの目的で世界中を旅し、いざ旅にでるときは店舗をコンパクトに畳み、ポポなどのモンスターに引かせて移動させることができる。

 

やがてヤマトとサナは一つのキャラバンにたどり着いた。

そこには商人などのように店は開いてはいなかったが、大きなボードにカウンターが設けられていた。

そしてカウンターの近くには緑色の制服を来た女性と、眼鏡をかけた立派な髭を生やした老人がチェスをしていた。

 

女性が優勢なのか余裕の表情をしており、老人が難しい顔をしていたが、ヤマト達の姿を見るや否や勝負から逃げるように老人が立ち上がりこちらに手を振ってきた。

サナは元気よく両手で答え2人に近づいて行き、ヤマトもまた片手で答えサナの後を追った。

 

「団長、ユゥナちゃん、たっだいま~」

 

サナが2人の元にたどり着くと、元気よくいった。

団長と呼ばれた老人は、まるで孫のようにサナを迎え頭を撫でていた。

サナもまた嬉しいのか、可愛らしい笑顔をしていた。

ここはヤマトとサナ、そしてサヨリが身を寄せているキャラバンだ。

 

「毎回見てもまるで孫とお爺ちゃんね。貴方はどう思う?」

 

一方ヤマトは緑の制服を来た女性、ユゥナは座ったまま2人を見たまま問いかけた。

 

「2人もまんざらじゃないみたいだし、いいんじゃないか。」

 

そう言いながらヤマトはユゥナに袋に入った奇猿孤の尻尾を見せた。

 

「ケチャワチャ討伐の証だ。」

 

「はい、確認完了っと。

それじゃあ、これが報酬金ね。」

 

そう言いユゥナはゼニーが入った袋を渡した。

ユゥナはこのキャラバンに配属されているハンターズギルドの受付嬢だ。

主だってキャラバンに同行し、ギルド施設が整っていない村々を訪問しては、ハンター達にクエスト依頼を紹介するために、このように出張所を設けている。

だが、全てのキャラバンにこのように受付嬢が配属されているわけではなく、キャラバンに派遣される受付嬢はそう多くはいない。

団長は、ハンターズギルドでも顔が効く人物のようで、このようにユゥナを派遣してもらっている。

もっとも、このバルバレならば巨大船の集会所が中心にあるのだが、2人は主にキャラバンでクエストを受注していた。

 

「ってあら、どこ行くのよ?」

 

報酬金を受け取ったヤマトは、サナの分も預かると一人ギルドカウンター出張所の後方に繋がれている幌車へ向かった。

このキャラバンはポポに引かせ移動できるようになっており、合計5つの幌車で構成されていた。

先頭は団長が使用し、2列目はユゥナが出張所として、3列目はこの場にはいないもう一人の団員が使用している。

そして4列目はサナとサヨリが付かい、最後尾はヤマトが使っている幌車がある。

 

「ちょっと試したい事があってな。」

 

そう言い残し、一人とっとと自分の幌車へ乗り込んだ。

中にはベッドの他に、アイテムを収納しておくアイテムboxや本棚などが置かれていた。

ヤマトはジャギヘルムを脱ぐと、大事そうに保管されたボロボロの鉄の塊を手に取った。

その鉄の塊は、太刀ほどの長さがあり、風化しているのか多くの部分が錆びついており原型を留めてはいなかった。

そしてヤマトはその鉄の塊『凄く風化した太刀』をかがけると、狩場の時のような鋭い目つきではなく、まるで新しい玩具でももらった子供のような気期待と興味に満ちた年相応の子供らしい輝かしい目をしていた。

 

「待ってろ。

絶対にお前の姿を取り戻してやるからな。」

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