モンスターハンター 剣聖の魂   作:コードネームTOSI

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第三章:灼熱を総べる鎧

3人が『ナグリ』へ戻ったのは次の日の早朝だった。

『回復薬』などで体力は回復しても、負った傷までは癒すことはできない。

そのため、安全かつ比較的安静に地底火山内を移動し、拠点であるベースキャンプを目指した為予想以上に時間がかかった。

クエスト自体は達成したものの、『グラビモス』から半ば逃げるようにして帰ってきた3人は帰りの道中無言だった。

中でもムードメーカであるサナが怪我を負ったのが原因だが、狩場においては起きてしまった以上仕方なく、誰の責任でもない。

だからこそ、特に唯一の肉親である姉のサヨリはやるせない気持ちでいっぱいなのだろう。

 

村につくと、異変に気が付いたのはヤマトだった。

普段と比べ、村に活気が感じられなかったのだ。

とりあえずサナを医者に診てもらおうと、診療所へ向かうようサヨリを促した。

 

「サヨリ姉、サナを頼むよ。」

 

「お前は一緒に来ないのか?」

 

「ちょっと村の様子が気になる。

団長や村長に話を聞いてくるよ。」

 

途中までは道のりは一緒だったが、分かれ道で別行動をとることにした。

サヨリにサナを任せると、ヤマトは1人キャラバンへ向かった。

出張所にユゥナが暇そうに本を読んでいるのが見えると、クエスト達成の報告と何があったのか聞こうとした。

 

「ユゥナ!!」

 

「ああ、ヤマト。

クエストは無事終わったみたいね。」

 

「無事、ではないがな……」

 

「何かあったの?」

 

「グラビモスが『地底火山』に現れたんだ。

それでサナが負傷してしまった。」

 

「サナちゃんが!?」

 

キャラバン内でもサナとユゥナは仲がよかった為、サナが負傷したと珍しく声を荒げた。

その声に、幌車にいたヴァンも出てきて改めて地底火山で起こったことを話した。

 

「グラビモス……

やっぱり話は本当だったようだね。」

 

「ヴァンさん。

話っていったい?」

 

「丁度君たちと入れ替わるように地底火山に鉱石を堀に行った土竜族の人が帰ってきたんだ。

かなり慌てた様子で、グラビモスを見たと報告してきたんだよ。」

 

「で、今その人と団長。

後ここの村長が話し合ってるのよ。」

 

ヴァンとユゥナが採掘に行っている間何があったのか教えてくれた。

それでいつも活気のあるナグリ村から活気が失われているのが分かった。

『土竜族』の人々は仕事に情熱を燃やしている。

だが地底火山にグラビモスが現れたとなれば、土竜族の人々は地底火山の立ち入りが禁止され仕事で必須となる鉱石や『燃石炭』が取れず仕事ができなくなってしまう。

土竜族の人々は普段は威勢がよく、活気のある人種なのだがその反面すぐに落ち込んだり負の感情に敏感なのだ。

だからこそグラビモスの件が村に広がると、いつもある活気が失われ寂しい村へと変わってしまった。

 

「分かった。とりあえず俺は村長宅へ向かってみる。」

 

そして2人と別れ村長宅へとヤマトは向かった。

その道中、力なく地べたに座り込む土竜族の人を何人かいたが、ナグリ村の人々にとってはどれほどの事態かを物語っていた。

他の家よりも多少大きい村長宅へとたどり着くと、ノックをし中へと入っていった。

中には団長と村長の他に1人の土竜族の男性がいた。

 

「おお、ヤマトか。

無事戻ってたようだな。」

 

「団長、グラビモスの件だが……」

 

ヤマトがグラビモスの名を口にすると、男性がビクッと震えた。

だが話しておかねばと、ヤマトは燃石炭の納品クエストであったことを話した。

 

「やはり、グラビモスか……

村長殿。」

 

「分かっている。

グラビモスがいたんじゃ、オレっち達も仕事ができねぇ。

オレっちが依頼主でさっそく討伐を依頼するぜ。」

 

村長と言う立場から、毅然と振る舞っているがその声からは昨日聞いたような力強さはなかった。

 

「なら、その依頼俺達が受けるぜ。」

 

「何本当か!?」

 

ヤマトが依頼を受けると聞いて、急に村長に元気が戻って言った。

隣にいる土竜族の男性も先ほどまで意気消沈気味だったのに、今では期待の眼差しでヤマトを見ている。

 

「あ、あぁ……

奴には借りがあるしな。

今度は万全の状態で迎え撃つ。」

 

ヤマトはそう意気込み、いったんその場は解散となった。

そしてヤマトはこの事をサヨリ達にも伝えようとする前に、一つ確認しておきたいことがあった。

その為に村長宅にいた土竜族の男性の後を追った。

 

「すまない、ちょっと待ってくれ!!」

 

「あんた、さっきの……」

 

「ひょっとして貴方が『武具研磨工房』の店主か?」

 

ここに着いた時、真っ先に寄りたいと思っていたがサヨリが鉱石を取りに行っていると聞いたため、ひょっとしたらこの人物がそうじゃないかと思っていた。

すると男性は、大きくうなずいた。

 

「実は貴方に見てもらいたいものがあるんだが……」

 

「武具の研磨か?」

 

「まあ、それに近い感じだな。

『凄く風化した太刀』の復元ができないものかと思ってね。」

 

「風化した太刀?

聞いた事ないな。一度見てやってみないとどうしようもないな。」

 

「なら、お願いできるか?」

 

「やってもいいが、予約が埋まっていて出来るとなると数か月も先だぞ。

おまけに今は鉱石を取れなくて仕事ができねぇ……」

 

「そう、だよな……」

 

流石に予約があるのでは仕方ないとヤマトは肩をすくめる。

仮に復元できる見込みがあっても、それは数か月先。

それまでキャラバンがここに滞在している可能性は限りなく低い。

 

「だけど、グラビモスの無事狩ってくれたら特別にやってやるわい。」

 

だが、店主の予想外の言葉にヤマトは呆気にとられた。

 

「い、いいのか?

そんなことして……」

 

「あの時、オマエさんの意気込みが気にいった。

それにオレっちもその太刀が気になるからな!!」

 

予想外の申し出にヤマトは感謝し、必ずグラビモスを討伐すると約束した。

そしてその足で今度はサナがいるであろう診療所へ向かった。

中に入ると、丁度サナの治療が終わったのか二の腕などに包帯をしているのが見えた。

 

「あっ、ヤマト。」

 

「サナ、怪我の具合はどうだ?」

 

「うん、ちょっと火傷した程度だったよ。

ごめんね油断しちゃって……」

 

「あ、あぁ……次気を付けてくれよ。

ところでサヨリ姉は?」

 

ここでふと姉のサヨリがいないに気が付いた。

妹を大事にするサヨリなら、ずっとサナの傍にいると思ったがその姿はここにはない。

 

「お姉ちゃんなら今お金の支払してるよ。

もうすぐ戻ってくるんじゃないかな?」

 

その言葉通り、治療費を支払い終わったサヨリが戻ってきた。

ヤマトは医師にお礼いい、一度キャラバンに戻るとグラビモスの件を伝えた。

サヨリもサナもやられた借りがあると、同意してくれた。

だが、サナの怪我もあるため数日様子を見ることにした。

その間に3人は狩りを万全にするために各々準備をすることにした。

 

ヤマトは今回手に入った鉱石を使って新たな防具『インゴットシリーズ』を新調した。

インゴットシリーズは各地の貴重な鉱石をふんだんに使用した防具で、その防具としての性能は『ジャギシリーズ』の2倍近くはある。

ヤマトはそこに装飾品とお守りの護石を使い雷属性攻撃強化を+2にまで引き上げた。

 

一方サヨリも消費した弾丸を購入したり、調合によって新たな弾を作ったりした。

最後は3人で雑貨屋に行き、狩りで必要なものと切り札になりうる物を購入した。

そしてグラビモスと遭遇してから3日が経過し時、サナの怪我も癒え、各々の準備も完了しグラビモスの狩猟のクエストを受け、再び地底火山へと赴いた。

 

「さて、さっそく決めてくか。」

 

拠点で3人が各々の武器を確認したり、ハンターズギルドから寄せられた支給品を分け終わった後、仮眠ベッドの上に地図を広げたヤマトが作戦を告げた。

3人は一緒に狩りに行くことが多く、各々の役割がはっきりとしている。

ヤマトはモンスターの生態や情報などを事前に調べている為、まず最初に拠点で大まかな作戦を決めることが多い。

そしてサヨリが遠距離から敵と仲間を観察し、細かい指示をと援護が主な役割となっている。

サナは2人の支援や囮役などを種としている。

 

「まず厄介なのはあの甲殻だ。

甲殻を部位破壊しない限り、俺とサナの武器は簡単に弾かれてしまう。

だからサヨリ姉、奴を見つけたらまず『ペイント弾』。

その次に睡眠弾を頼む。」

 

「まっかせなさい!!」

 

そう意気込むサヨリが背負っている武器は以前の『王砲ライゴウ』ではなく『ネルバスターガン改』だった。

ネルバスターガン改は鋏角種に属する鋏角目スキュラ科『ネルスキュラ』より作られたヘビィボウガンだ。

ネルスキュラはクモのようなモンスターで、糸を使った移動と攻撃の他に、毒と睡眠の2種の状態異常を起こす攻撃を仕掛けてくる。

ヘビィボウガンは、種類によって装填できる弾やしゃがみ撃ちが可能な弾が異なる。

ネルバスターガン改は、王砲ライゴウよりも威力は劣るものの、ネルスキュラを彷彿とさせる多彩な状態異常を引き起こせる弾が扱える。

 

「その後、腹部を中心に爆弾を仕掛け一気に甲殻を破壊するぞ。」

 

そう言い、ベースキャンプの横の荷車に積まれた大量のタルを目にやった。

そのタルの中には大量の火薬が敷き詰めらて、ちょっとした衝撃で爆発する『大タル爆弾』があった。

大タル爆弾の威力はすさまじく、たった一つで狩りの行く末を左右するほどだ。

前回はなかったが、今回は調合分もあり切り札を複数用意していた。

 

その後3人は拠点を後にした。

サナが先導し、その後ろにサヨリが辺りを警戒しながら歩いていた。

ヤマトはタルが誤爆しないよう慎重に荷車で大タル爆弾を運んでいた。

タルを運搬する際、降ろさないといけない手間を省く為、段差など避けるためエリアを1から4、6と迂回しながら前回グラビモスと遭遇したエリア8を目指した。

 

「いた……」

 

エリア8にたどり着くと、先頭にいたサナが小さい声で教えてくれた。

見ると、グラビモスが堂々とした態度でエリアの中央部にいた。

ヤマトはいったん荷車をエリアの隅に置くと、サナと一緒にグラビモスに気づかれないように接近した。

そしてサヨリがペイント弾を装填し、放つと同時に2人は一気に接近し足を狙った。

ここまでは前回と同じだが、今回はここから先は作戦がある。

 

サナが近距離でグラビモスの気を引き続け、ヤマトが中距離でサナの援護。

そしてサヨリが遠距離から睡眠弾を撃ち眠らせる。

それぞれが扱う武器の特性を考慮しての布陣だった。

サヨリのヘビィボウガンは言わずもだが、サナの双剣は他の武器にはない圧倒的な手数が魅力だが、一撃が弱くまたリーチも短い。

一方ヤマトの太刀は手数、威力がすべての武器の中でバランスが取れておりリーチも長いが、完璧に扱いきるには並々ならぬ鍛錬が必要とされる。

 

ヤマトは若くしながら太刀をまるで自らの手足のように扱い、グラビモスの注意を見事に分散させている。

その間にも、サヨリが撃ち出しているLV1睡眠弾はグラビモスの頭部へ吸い込まれるように命中している。

弾が頭部で弾けると、以前グラビモスが放った睡眠ガスと同じ色の煙が顔を覆った。

すると徐々にグラビモスの動きも鈍くなり、10発目が命中すると急に糸が切れたように地面に倒れこんだ。

 

「サナ、サヨリ姉!!」

 

10発目で睡眠弾の効果で眠りについたグラビモスを確認するとヤマトは2人の名を叫ぶと同時に各々すぐさま動き始めた。

ヤマトは荷車の元へ行くと合計6つの大タル爆弾を慎重かつ迅速に運び始めた。

サナも荷車の元へ行き、余っている『大タル』と『爆薬』を調合し新たな大タル爆弾を作り始めた。

そしてサヨリは消費した睡眠弾を調合し始めた。

ヤマトは爆弾を置く際、グラビモスの寝息が当たった。

眠らせたとは言っても、ちょっと刺激しただけで簡単に起きてしまい、またしばらくすれば自然に起きてしまうだろう。

ヤマトは焦る気持ちを落ち着かせながら、6つの大タル爆弾を腹部を中心に置いた。

爆弾の設置が終わると同時に、サナとサヨリの作業も終わった。

ヤマトはその場を離れると同時に合図をすると、サヨリはある弾を装填した。

そしてヤマトが無事に離れると同時に引き金を引いた。

放たれた弾丸は一つの大タル爆弾に当たると同時に3個の塊に弾けると共に小さな爆発が起こった。

そしてそれに連動するように合計6つの大タル爆弾が連鎖爆破し、すさまじい爆音が響くと、爆炎の中目覚めたグラビモスが悲鳴をあげた。

 

「やった!!」

 

「気を抜くな、来るぞ!!」

 

当初の作戦がうまく行きサナは声を上げて喜ぶが、ヤマトは注意を促した。

すると爆炎が晴れると、口から蒸気を出しているグラビモスが姿を現したと同時に、すさまじい咆哮を放った。

爆発の威力にさすがのグラビモスも脅威と感じた同時に、その痛手から怒ったのだ。

丁度咆哮による影響下にいたヤマトとサナは耳を閉じ動きを止めてしまった。

 

「うっさい、もう一発喰らいなさい!!」

 

だが影響を受けなかったサヨリは、急ぎ弾を装填すると先ほど同じ弾を発射した。

その弾丸は咆哮で動きを止めていたグラビモスの背中に当たると、3つに弾け爆発した。

先ほどからサヨリが撃っている弾は『LV1拡散弾』と呼ばれ、着弾時小さな爆弾を飛び散らせるボウガンの中でも圧倒的な威力を誇る弾だ。

だが、その分扱いも難しくまた所持できる弾数も極めて少ない。

サヨリはここだと判断し、貴重な拡散弾を撃ち出した。

それが功を奏し、グラビモスの背中の甲殻が一部弾け飛んだ。

だが当初の目的である腹部や両足の甲殻はいまだ健在だった。

 

「もう一回行くぞ!!」

 

ヤマトも一回では破壊出来ないと想定していたのか、慌てず同じ指示を出した。

だが、そう何度も同じことをさせてくれるグラビモスではなかった。

グラビモスはその場で幾度も灼熱ブレスを連射してきた。

その度に、過熱した体を冷やすため全身から高熱のガスが噴出されるため、ヤマトとサナは不要に近づくことも出来ず、またサヨリもブレスを躱す為動くことで落ち着いた射撃がうまくできず、胴体など比較的あたりやすい場所に何発か当てる程度だった。

 

「あー、もう!!

さっきからブレスばっかりじゃん!!」

 

「自棄になるな!!

奴だって必ず疲れる。そこを狙うぞ!!」

 

大タル爆弾以外これと言った痛手を与えれていない事と、中々近づけず思うように狩りが進めれない事に苛立ちを覚え始めたサナに、ヤマトは冷静に状況を分析した。

すると次第にグラビモスの口からは蒸気から涎に代わり、動きを止めた。

 

「今だ!!」

 

ヤマトの合図と共に、サナとサヨリも一斉に動き始めた。

サヨリは冷静にLV2貫通弾を頭部めがけ撃ち、サナはグラビモスの足元へたどり着くと同時に鬼人化し乱舞を繰り返した。

鬼人化中の乱舞は精神を攻撃のみに研ぎ澄ませる事により、武器の刃が通らなくても態勢を崩すことなく剣を振るうことができる。

今だ硬い甲殻に刃は弾かれ、『スノウツインズ』がぶつかる度に火花を散らすがサナの手は休むことなく乱舞を繰り返している。

その姿は鬼のような迫力を感じると同時に、優雅に舞っているようにも見える。

 

「流石だな。」

 

狩場でなければ見入ってしまうであろう、サナの乱舞を目にしたヤマトは素直に感想を述べると共に自分のすべきことをした。

ここはあえて攻撃には参加せず、少し離れた所に円形の金属を地面に設置した。

しばらくすると、金属を中心に電撃が這っている。

 

「よし、次だ!!」

 

『シビレ罠』が正常に動作したのを確認すると、先ほどサナが調合した大タル爆弾の元へと向かった。

荷車に乗せられている大タル爆弾は先ほどと同じ6つあった。

もういちいち運ぶのは面倒と判断したヤマトは荷車ごと、シビレ罠の近くまで持ってきた。

その頃には、サナの体力も切れいったんグラビモスから離れていた。

今回はサヨリを狙っているようで、何度も突進を繰り返しているが動きが鈍っている分簡単に避けられていた。

 

「サナ、サヨリ姉!!」

 

ヤマトが2人を呼ぶと、2人は意図を理解しすぐさま行動に移した。

グラビモスに狙われているサヨリは罠まで誘導しようとすぐさま囮となった。

サナはすぐに攻撃できるよう、切れ味の鈍ったスノウツインズを研ぎ切れ味を取り戻させた。

当初の予定よりと違う形になってしまったが、3人はすぐさま別の行動をとりながらも連携はしっかりしている。

長年一緒にいるため、その息はぴったりだった。

そしてサヨリの誘導により、グラビモスがシビレ罠の効果範囲内に入ると、動きが止まると低い声で呻き始めた。

 

「せい!!」

 

グラビモスがシビレ罠にかかると同時に、ヤマトは『ペイントボール』を投げつけた。

狙いはグラビモスではなく、すぐそばにある大タル爆弾だった。

そしてペイントボールが大タル爆弾に当たると同時に、先ほどと同じく爆弾が連鎖的に爆発しすさまじい爆発がグラビモスを襲った。

すぐに爆炎が晴れると同時に、3人は一斉に動き始めた。

そこには苦しみながらも今だ罠から抜け出せていないグラビモスがいた。

そして両足には無数の傷が入り、腹部の甲殻は壊れ隠れていた弱点である赤い肉が見えていた。

 

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

ヤマトとサナは気合を入れるため、叫びながらサナは足を、ヤマトは腹部目がけそれぞれの武器を振るった。

すると先ほどまでは簡単に弾かれていたが、部位破壊したことにより刃が通り始めた。

2人は武器が通じることに確かな手応えを感じると、罠が効いている今だと言わんばかりに武器を振るった。

だが、それも長くは続かなかった。

グラビモスは罠の拘束から抜け出すと、再び怒り咆哮した。

そして先ほど同じく、サヨリ以外は耳を押さえ硬直してしまった。

2人が体の自由を取り戻すと同時に、グラビモスはこの場から早く移動しなけらばとでも思ったのだろうか、何もない場所目がけ突進した。

グラビモスが行った先には何もないが、足元と腹部付近にいたヤマトとサナは吹き飛ばされてしまった。

グラビモスにとっては足元にある邪魔者を引こうとは考えてなかっただろうが、意図せずその巨体によって2人は吹き飛ばされてしまった。

ヤマトはすぐさま起き上がり『回復薬』を飲み体力を回復すると同時に、好機と判断し深入りしすぎたと反省すると同時に気持ちを切り替えた。

サナもヤマト同様すぐ起き上がり回復薬を飲んでいた。

 

「ふぅ……」

 

サナの無事を確認すると、ヤマトは一度深呼吸をしグラビモスを見た。

多くの傷があり、気が付けば頭部もサヨリの射撃によって甲殻の一部が砕けていた。

だがそれでも今だグラビモスからは今だ倒れる気配はない。

それどころか怒り状態のグラビモスは生への執念か、遭遇した時よりもその迫力は増している。

 

「……流石に、簡単には倒れてくれないか。」

 

「まっ、気長に行こうよ。ね?」

 

「分かってるさ。」

 

短いやり取りをすると、ヤマトは右側からサナは左側からグラビモスを挟撃しようとした。

だがグラビモスもそう易々と包囲はしてくれなかった。

グラビモスはヤマトめがけ突進をしたが、ヤマトは躱すとすぐさま足元へ行き『鬼斬刃』を振るった。

両足の甲殻も傷ついていたため、刃は弾かれず甲殻と甲殻の隙間を切り裂いた。

 

するとグラビモスは足元の邪魔者を排除しようと、その場で何度も回転し棍棒のような尾で振り払おうとした。

だがヤマトは太刀を振るいながら、うまく立ち回りをし踏みつぶされないよう、また尾に巻き込まれないようやり過ごした。

するとグラビモスはなかなか足元の邪魔者を排除できない事に予想外の動きをしだした。

 

「しまっ!?」

 

何と羽を広げその場で飛翔し、潰そうとそのまま一気に落下してきた。

あまりの重量感がある体から、まさか簡単に飛ぶとは思わなかったヤマトは意表を突かれ回避行動が一瞬遅れた。

 

「がはっ!!」

 

何とか押しつぶされる事は躱せたものの、グラビモスが着地した衝撃に吹き飛ばされてしまった。

 

「ぐ、っ……

そう言えば飛竜種に属してたな……」

 

油断していた事を反省しつつ、急ぎ立ち上がりその場から離れ回復薬を飲んだ。

一つでは痛みがなかなか引かなかった為、もう一つ続けざまに飲み、ようやく痛みが引いた。

その間、今度はサナがグラビモスの足元で双剣を振るい、サヨリも援護射撃を続けている。

だが、装填されている弾は『LV1通常弾』とすべての弾の中で最も所持できる弾数が多いが、威力がもっとも低い。

 

「サヨリ姉も弾が尽きかけてるのか。」

 

サヨリがここでLV1通常弾に切り替えた事は、ダメージよりもグラビモスの気を分散させるのを目的としているのだろう。

 

「2人に任せっぱなしって訳には行かないな。」

 

そう意気込み、ヤマトは再びグラビモスの元へ向かおうとしたが、グラビモスは再度羽を広げ飛翔した。

ヤバいと判断したヤマトは、すぐに足を止めたと同時にグラビモスは落下してきた。

 

「ぐほっげほっ!!」

 

着地した衝撃で巻き上げられた土煙で一瞬視界が遮られたが、すぐに視界は晴れた。

するとヤマトの目の前にグラビモスはいたが、サナの姿はなかった。

グラビモスの動きに注意しながら辺りを見渡すと、少し離れた所にうずくまったサナがいた。

先ほどのヤマトと同様に回避が遅れ踏みつぶされはしなかったものの、衝撃で吹き飛ばされてしまったのだろう。

だが、ヤマトの時とは違いなかなか起き上がれず、右足を押さえ苦しそうに蹲っていた。

 

「サヨリ姉!!」

 

ヤマトはサナの様子をいると、サヨリの名を口にすると同時にグラビモスの目先めがけ拳大ほどの球体を投げつけた。

すると次の瞬間、エリア8を覆い尽くすほどの眩い光が発生した。

ヤマトが投げたのは『閃光玉』と呼ばれ、投げた衝撃で眩い光を放つハンターにとって必須アイテムの一つだ。

その閃光をまともに浴びれば、一時的にモンスターの視界を封じることができる。

グラビモスは目が焼けるような痛みに、その場で足踏みをしたり、回転をし周囲にあるものを尾で薙ぎ払っている。

 

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 

ヤマトはあえて大声をあげながらグラビモスの足元へ行き、太刀を振るった。

ヤマトの声に反応してか、グラビモスは足元に敵がいると判断したのかその場から不用意に動かず尾を回転ばかりさせていた。

その間に、サヨリがサナの元へと向かった。

 

「サナ!!」

 

「お姉ちゃん、ごめん……

ちょっとしくじちゃった……」

 

サナは余計な心配をかけまいと笑顔を見せたが、その額には冷や汗がうっすらと出ていた。

近くにはカラとなった瓶が2本あったため、回復薬を飲んだのだろうが足をずっと押さえていた。

 

「足をやられたのか?」

 

「うん、ちょっと潰されたちゃった。」

 

その言葉にサヨリの顔からも嫌な汗が出た。

よく見ると右側の『ケチャグリーヴ』が異様に変化しているのが見えた。

このままここにいては危険と判断したサヨリは、サナに肩を貸しながらすぐ隣のエリア6へと移動を試みた。

ヤマトが投げた閃光玉の効果ももう切れ、グラビモスが視界を回復するのも時間の問題だった。

だが運悪く、移動をしようとした矢先グラビモスが視界を回復させ2人の方を見た。

 

「やらせるかぁぁぁぁぁ!!」

 

するとヤマトが声を上げると同時に、袈裟斬り、逆袈裟を2回繰り返し最後に上段から勢いよく鬼斬刃を振るった。

ケチャワチャとの戦いで最後に見せた気刃切りだった。

だが、今回はそれだけに止まらなかった。

 

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 

気合を込めると共に、ヤマトは身体を横回転させながら踏み込み、一瞬のうちに周囲を薙ぎ払い、最後に鬼斬刃を納刀した。

気刃切りから繋げられる気刃大回転斬りを繰り出したのだ。

気刃大回転斬りは太刀使いの究極の秘奥義とも呼ばれ、全武器の全攻撃中で最も範囲が広く、攻撃自体の速度もかなり速い。

そして決まるたびに練気が変化し太刀の威力も増して行くまさに奥義の中の奥義だ。

それまでに培われたダメージもあり、グラビモスはバランスを崩し転がるように倒れてしまった。

 

「今のうちに早く!!

ここは俺に任せろ!!」

 

ここは自分が時間を稼ぐ、と言う意味も込められサヨリは力強く頷くと急ぎエリアを移動しようと足を動かした。

その間、ヤマトは倒れているグラビモスの頭部へ行き数回切りつけると再び気刃斬り、そして気刃大回転切りへと繋げた。

すると先ほどまで白く輝いていた刃が黄色へと変化し、より一層刃の威力が増した。

そこでようやくグラビモスが起き上がると、遠ざかっていく2人よりも目の間で何度も斬りつけてくるヤマトを排除しようと狙いを付けた。

 

「来いよ、グラビモス……

ここからは1対1の勝負だ。」

 

ヤマトは言葉が通じないのは分かっているが、そう挑発めいた言葉を呟くとグラビモスは低い声を漏らし、その口からは蒸気が出ていた。

 

先に動いたのはグラビモスだった。

目の前にいるヤマトを尾で薙ぎ払おうとするが、その行動を予測していたヤマトは避けるとすぐにグラビモスの足元へと駆け込み武器を抜き出すと同時に斬りつけた。

だがそれでもグラビモスは尾で薙ぎ払おうと何度も回転をするが、足元にいるヤマトには当たらなかった。

続けざまに足を中心に太刀を振るうヤマトは武器が通るようになり、当初よりもその攻撃回数は圧倒的に増えていた。

すると急にグラビモスが片膝をつき、バランスが崩れた。

再びダメージが蓄積されダウンするのかと思ったが、それは判断ミスだった。

グラビモスは片膝をつくと、ヤマトを潰そうと転がってきたのだ。

倒れこむと思っていたヤマトは突然の動きに対処しきれず、防具がグラビモスの甲殻とぶつかり合う嫌な音がすると簡単に吹き飛ばされてしまった。

 

「がはっ!!」

 

吹き飛ばされたヤマトは、そのまま地面に叩きつけられ肺の中にある空気を全て吐き出してしまった。

 

「げほっ、がはっ!!」

 

何とか空気を吸い込み、新しい空気を取り入れたものの痛みで息は荒い。

すぐに態勢を立て直そうとするが、気が付けばグラビモスが勢いをつけ突進してくるのが見えた。

痛みに耐えながら、無理かり体を動かし頭からダイブするような形で横に跳びギリギリで避けた。

ヤマトはすぐに立ち上がり『回復薬グレート』を口にし、体力を回復させるとグラビモスの元へと向かった。

丁度体を反転させヤマトの方を向いたと同時に、ヤマトが鬼斬刃を抜くと同時に頭部めがけ振るったが、簡単に弾かれてしまった。

立て続けに斬り続けた結果、今になって武器の切れ味が落ちてしまったのだ。

 

「ちっ……」

 

ヤマトは軽く舌打ちをし、一度その場から距離をとろうとするがグラビモスが大きな歩幅で追ってきた。

人とモンスターの歩幅は違い、数歩で追いつかれると尾で薙ぎ払おうと大きく回転した。

下手に距離をとろうとしたのが災いし、ヤマトはその棍棒のような尾に直撃しまたも吹き飛ばされてしまった。

 

「く、っ……」

 

いかに強固な防具を身に纏っていようと、モンスターの攻撃力の方が圧倒的に強い。

攻撃を何度も受けたヤマトの肉体的ダメージはかなり蓄積され、また常に大型モンスターと対峙する精神力は限界を迎え集中力も分散してきた。

 

「まだ、だ……」

 

だが、ヤマトは負けじと立ち上がり急ぎ回復薬グレートを飲み切れ味の落ちた自らの武器に手を掛けた。

サヨリ達はとっくにこのエリアから離れているが、ヤマトは退こうとはしなかった。

 

「これ以上……やられてたまるかぁぁぁぁぁ!!」

 

自らを鼓舞し、駆け出し、段差を利用しグラビモスめがけ大きくジャンプすると同時に太刀を抜き放った。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

ヤマトが時間を稼いでくれたおかげで、サナとサヨリは何とかエリア移動をすることができた。

だが、多種多様なモンスターが徘徊する狩場では危険と判断し、2人は一度拠点のベースキャンプを目指した。

何とかベースキャンプまで無事にたどり着くことができたが、今だサナは苦しそうに冷や汗を額に浮かべ、呼吸も少し荒かった。

 

「サナ、脱がすよ。」

 

仮眠ベッドにサナを座らせたサヨリは一言言うと右足のケチャグリーヴを脱がした。

脱がす際、サナが痛みからか短く悲鳴を上げた。

 

「っ……」

 

ケチャグリーヴの下のサナの足は大きく腫れ上がり、紫色に変色していた。

それを見たサヨリは予想以上の状態に一瞬目を逸らしたが、すぐサナを見た。

 

「……痛い?」

 

「あ、ははは……

大丈夫だよお姉ちゃん。

これくらい大したことないから早くヤマトの援護をしに行ってあげてよ。」

 

痛くないはずはない。

下手をしたら骨が折れているかもしれないのに、それでも気丈に振る舞い笑顔を見せる妹にサヨリはどうするか迷った。

ヤマトは簡単に退く、という行為をしないため恐らく今でも1人グラビモスと対峙しているだろう。

サヨリにとってヤマトは血の繋がりはないが、実の弟のように大事な存在であり、家族でもある。

早く援護しに行ってあげたい気持ちもあるが、サナの足の状態を見る限り応急処置でもないと今後に支障が出る危険もあるように見えた。

 

「……サナ、痛いだろうけど我慢してよ?」

 

だがサヨリが迷ったのは一瞬だった。

サナに一言言うと、まずは冷やそうと近くにあった布を濡らし、サナの右足に当てた。

 

「っ……」

 

サナは予想以上に痛かったのか、顔を顰めたがすぐに平然を装った。

サヨリはサナは強いなと思いながらも治療を進めた。

動かさなくても激痛が走っているだろうに、一言も弱音を吐かずサナはサヨリの処置を受けた。

 

「……どう?

まだ痛む?」

 

「ううん、大分よくなったよ。」

 

しばらくすると応急処置を終えたサヨリが尋ねると、サナは笑顔で答えた。

よく見ると顔色は先ほどよりもよくななっているが、額の汗は今だ出ていた。

 

「ほら、私は大丈夫だから早くヤマトのところに行ってあげた。」

 

「……うん、分かってる。

少しの間待っててね。」

 

痛みを我慢し、自分よりもヤマトの心配をするサナの申し出を素直にすぐさまポーチの中の所持品と弾丸を確認した。

常に後方で射撃をしていたため、回復薬などはほとんど減ってはいなかったが、弾は予想以上に減っていた。

支給品ボックスの中を開け、余っていた『LV2通常弾』を補充したが心もとなかった。

 

「それじゃあ、サナ。

行ってくるね。」

 

今だ心配そうに妹を見ると、その視線に気が付いたサナは普段通り気丈に振る舞った。

 

「うん、行ってらっしゃい!!

キャンプの守りは任せておいて!!」

 

「守りは任せてって、ここにモンスターなんて来ないでしょ?

すぐにヤマトと一緒に戻ってくるね。」

 

心配かけまいとする妹の冗談に少しばかり心にゆとりができたサヨリは、笑みを浮かべながら返事をした。

そして妹を1人残し、拠点を後にした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

「っ、はあはあ……

思ったよりタフだったな。」

 

息を整えながら目の前にいるグラビモスを見た。

そこには体を丸くし、大きく寝息を立てているグラビモスがいた。

先ほどのエリア8を更に奥に行ったエリアでグラビモスは寝ていた。

エリア8での激闘から何とかグラビモスの後少しまで追い詰めていた。

 

だが、逆にヤマトも後はなく狩りに有効なアイテムはほとんど使いきり、回復薬も後2個しか残って居なかった。

しかしここで何もしなかったらせっかく与えた傷が癒えてしまうだろう。

 

「サヨリ姉は……

いや、ここで俺がやる。」

 

ヤマトは覚悟を決め、グラビモスのすぐ近くに小さな穴を掘り始めた。

そして掘った穴に小さい筒状の金属を置くと、しばらく経って金属が動作した。

軽く掘った地面が一気に柔らかくなり、巨大な落とし穴ができたと同時に、地表では巨大な網が穴となった地中を隠した。

シビレ罠同様、『トラップツール』と『ネット』を使用し作り上げられた罠『落とし穴』だ。

シビレ罠以上にモンスターの動きを拘束できるが、仕掛けるにはシビレ罠以上に時間がかかるため、設置すにはタイミングを見極める必要があった。

これで決めるつもりで、ヤマトは最後の狩りのアイテムを惜しみなく使った。

 

「ふぅ……

よし。」

 

ヤマトは手についた泥を払い、覚悟を決めた。

静かに深呼吸をし、鬼斬刃の柄に手を掛けグラビモスめがけ走り出した。

そしてグラビモスの頭部めがけ鬼斬刃を振るった。

突然の衝撃で目を覚ましたグラビモスは目を覚ましゆっくり体を起こした。

だがその間にもヤマトは何度も太刀を振るった。

ヤマトの姿を確認するとグラビモスは静かに咆哮をし最後の闘いが幕を開けた。

 

「っ……」

 

咆哮による恐怖から身体の自由を取り戻すと同時に、すぐさま武器を納刀し落とし穴のすぐそばまで移動した。

グラビモスはそれが罠だとも知らず、ヤマトめがけ突進し始めた。

目の前まで勢いよく迫るグラビモスに、この場から逃げ出したい気持ちに堪えヤマトはその場に止まった。

落とし穴は正常に動いてくれるか、軌道はこのままで大丈夫か、もし一つでもダメなら俺は確実にグラビモスに押しつぶされてしまう。

ヤマトは様々な事から来る恐怖に自然と足が震えるが逃げ出さず、まっすぐグラビモスを見た。

そしてグラビモスが落とし穴に片足を付けた瞬間、グラビモスの足場が崩れ胴体の半分が地面に埋まった。

柔らかくなった土と粘着性のあるネットにより落とし穴からなかなか抜け出せずもがいていた。

 

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 

ヤマトはグラビモスが落とし穴に嵌ると同時に首元めがけ太刀を振るった。

胴体の半分が地中に埋まり、なおかつ抜け出そうともがいているグラビモスに対し、ヤマトは有効な部位を攻撃ではなく、ただ我武者羅に武器を振るった。

練気ゲージが溜まると、気刃斬り、そして気刃大回転斬りへと繋げ、刃が黄色から赤色へと変わり武器の威力が最大となった。

それでもグラビモスは今だ健在で、どうにか落とし穴から抜け出そうとしている。

ヤマトはもう倒れてほしい思いで更に太刀を振るったが、その思いに反してグラビモスはとうとう落とし穴から抜け出してしまった。

 

「くっ、そ……」

 

最後の切り札である落とし穴を使ってもなお、今だ健在のグラビモスの生命力に敬意と恐怖を感じた。

 

「……けど、俺も負けられないんだよ。」

 

だがヤマトもこのまま退こうとは考えていなかった。

そして即座に足元へと向かい太刀を振るった。

だが、斬り続けた結果今になって切れ味が悪くなり刃が弾かれてしまった。

 

「っ、しま!!」

 

このタイミングで切れ味が悪くなるとは思ってもいなかったヤマトは簡単に態勢を崩し、グラビモスがチャンスとばかりに尾で薙ぎ払った。

態勢を整えられていないヤマトはまともに尾を喰らい吹き飛ばされてしまった。

 

「ぐがっ!!」

 

ここで痛手を喰らってしまったことを悔いながら何とか立ち上がろうとしたが、足に力が入らなかった。

それを見たグラビモスはゆっくりとした足取りでヤマトの元へ向かい始めた。

ヤバいやられる!!そう思った瞬間グラビモスに無数の細かい粒が連続して直撃した。

予想外の攻撃にグラビモスはたまらず地面に倒れこんでしまった。

 

「これは、散弾!!」

 

弾の軌道から発射位置を見ると、サヨリが『LV2散弾』をしゃがみ撃ちで連射していた。

散弾は発射と同時に無数の弾が飛び散る弾丸で、大型のモンスターになれば一発で複数の部位を同時に攻撃できるが、飛び散る範囲は広く下手をすれば仲間を誤射する危険もあった。

そのため、サヨリは始め散弾を使うことを控えていたが、今グラビモスの近くには誰もいない為、ここだと判断ししゃがみ撃ちで連射を選んだのだろう。

 

「ヤマト、今のうちに!!」

 

サヨリは大声で呼びかけ、ヤマトはそれに応えるように残ってい回復薬を2個続けざまに飲み、砥石を使い鬼斬刃の切れ味を取り戻した。

その作業が終わるころ、グラビモスも起き上がり、サヨリも弾を撃ち尽くしたのかしゃがみ撃ちを止め別の弾を装填していた。

グラビモスは一瞬どちらを狙おうか迷ったのか、ヤマトとサヨリを交互に見るため動かずにいた。

2人は今だと言わんばかりに同時に動き始めた。

サヨリの放ったLV2通常弾がグラビモスの頭部に立て続けに命中すると、一瞬怯み態勢を少し崩した。

そこにヤマトが鬼斬刃を抜き放つと同時に気刃斬りを行った。

 

「あぁぁぁぁぁ!!」

 

真っ赤な刃が切れな軌道を描くと、最後に降りおろし、止めと言わんばかりに叫びながら気刃大回転斬りへと繋げた。

その一撃がとうとう致命傷になると、ヤマトが鬼斬刃を納刀すると同時にグラビモスは力なく地面へと倒れこんだ。

倒れてもなお最後まで立ち上がろうと、力を振り絞り体を起こそうとしたが、そこえこと切れ、もう動くことはなかった。

ヤマトはグラビモスの最期を見届けると、力なく地面に座り込んだ。

 

「ヤマト、大丈夫か?」

 

心配したサヨリが駆け寄り手を差し伸べたが、ヤマトは断った。

 

「流石に、疲れた……」

 

そう言ったヤマトは危険と分かっていながらもその場で寝っ転がった。

その後2人がグラビモスを剥ぎ取り拠点にいるサナの元へ向かったのは、しばらく経ってからだった。

 

3人がナグリ村に到達したのは、翌日だった。

サナは再び診療所へ行き足の具合を診てもらい、ヤマトは疲れから帰ってきたその日はキャラバンの自分の幌車の中で一日寝ていた。

後の手続きはサヨリが全部一人で行った。

グラビモス討伐の証として鎧竜の甲殻をユゥナに見せ、クエスト成功として3人分の報酬を受け取り、続けざまにサナがいる診療所へ行った。

足の具合は思っていたよりよく、骨に異常はなかった。

的確な応急処置なども効いたおかげで、2週間も安静にしていれば完治するとのことだった。

 

翌日、ヤマトが目を覚ますと真っ先に凄く風化した太刀を手に武具研磨工房へと向かった。

約束通り店主は凄く風化した太刀を受け取り、出来る限りの事を試してくれた。

だが――

 

「すまねぇな。オレっちじゃこいつは無理だ。」

 

「そう、か……」

 

結果はいつもと同じだった。

ここなら多少はどうにかなるかもしれないという期待があったが、それは簡単に砕け散った。

だが期待があった分、いつもよりも落胆していると店主から思いがけない情報を得た。

 

「そういや、一回ジャンボ村に行ってみたらどうだ?」

 

「ジャンボ、村?」

 

「ああ、ここからかなり離れたとこにある村で、そこの加工屋の婆さんがとんでもねぇ人物だって聞いた事がある。」

 

「とんでもない人物?」

 

「あぁ、なんでも『竜人族』にしか扱えない技術をモノにしたとか天才的な職人らしい。

その婆さんならひょっとしたら何とかしてくれるかもしれねぇぞ?」

 

「ジャンボ村、か……

分かったありがとう。」

 

ヤマトは店主に礼を言い、キャラバンへと戻った。

地図を広げ、ジャンボ村とここナグリ村の位置を確認したが、果てしなく遠く、大陸を超えないと行けない事が分かった。

キャラバンに同行している身ゆえに、自分の我儘で行かせてもらえるはずもなく半ば諦めかけていた時、外からサナの声が聞こえた。

 

「どうしたんだ?」

 

ヤマトが幌車から顔を出すと、松葉づえで体を支えているサナがいた。

 

「あっ、ヤマト。

あのね団長が3日後には出発するから準備しておけ、だって。」

 

「3日後な、分かった。

で、次の目的地は?」

 

「『ドンドルマ』だって。」

 

ドンドルマ。

ヤマトはその言葉に記憶をたどり寄せ、ふと思い出したかのように地図を見た。

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