新訳 神殺しの者第一幕『神を喰らいし者』   作:コードネームTOSI

3 / 6
第三章:帝王の進撃と剣鬼の盾

外部居住区にアラガミが侵入してから翌日……

 

トシ「……これで終わりですね。」

 

タツミ「ああ、手伝ってもらってすまねえな。」

 

トシとタツミの2人は、先日の防衛任務の報告書を制作していた。

 

先日のアラガミの侵入に関しては、現地の的確な状況判断と迅速な行動により、神機使い居住区在住者共に死者は0と言う誇らしい結果となった。

 

だが戦闘により一部の建築物等が破損など、任務内容以外にも申請すべき事が多くあり、報告書の制作に思いのほか時間がかかった。

 

トシ「いえ、俺も任務を行った身ですしね……

……さて、それじゃあ教官に提出しに行きましょう。」

 

タツミ「ああ、そうだな。」

 

トシの申し出に、タツミも同意し2人して資料室を後にし、エレベーターに乗り込んだ。

 

だが乗り込んでからしばらくすると、トシは何かに気が付き懐から携帯端末を取り出し何か操作すると、少し眉間にしわが寄った。

 

タツミ「ん、どうした?」

 

あまり感情が顔に出ないトシにとっては少し嫌そうな顔に疑問を思ったタツミが問いかけると、トシは軽くため息をし携帯端末を元の場所に閉まった。

 

トシ「いえ、博士から召集がかかって……」

 

タツミ「また、何やろうとしてるんだかあの人は……」

 

トシ「その答えは誰にもわかりませんよ。

……すみませんが、報告書の方提出をお願いしてもいいですか?」

 

タツミ「ああ、任せとけ。」

 

トシ「すみません。

俺はこのまま博士のラボに行きますので……」

 

タツミ「分かってるって。

けど、無理はするなよ?

お前、ここしばらくろくな休みがないんだからな。」

 

トシ「ええ、分かってます。」

 

タツミ「そうか、ならいいんだが……

っと、俺はここだな。

それじゃあ、報告の方は任せとけ。」

 

トシ「お願いします。」

 

タツミ「ああ、また今度何かおごってやるから無茶だけはするなよ?」

 

トシ「ええ……

それでは……」

 

その会話を最後に、タツミはエレベーターを降り、トシもまた扉の閉じるボタンを押し自分が向かう場所への階を押した。

 

そして、エレベーターは再び高速で下へ降りて行き、しばらくすると止まり、扉が開いた。

 

トシ「……ふぅ~」

 

トシは軽くため息をしながらエレベーターを降り、廊下の正面にある目的の部屋へと向かった。

 

そして部屋の前につくと、扉の横についてある呼び出しのボタンを押した。

 

???『誰かな?』

 

すると、すぐに近くの穴から誰かの声が聞こえた。

 

トシ「竜崎トシです。」

 

???『ふむ、予想より1440秒早いね……

入ってくれて構わないよ。』

 

そしてトシが部屋に入ると、トシと同じ和服にも近いような衣装を着た細目の男性と、茶色のジャケットを着た男性。

そしてシドウがいた。

 

トシ「……シドウとリンドウさんまで呼んだんですか、博士?」

 

そう言うと、目の前にある大量の機械を弄っていた細目の男性、ペイラー・榊が手を止め顔を上げた。

 

博士「いや~、急にとあるアラガミのコアが必要になってね。

そこで君達に調達してもらおうと言う訳だよ。」

 

そう言うと、すぐ側にいた茶色のジャケットを着た男性リンドウが軽くため息をついた。

 

???「またですか?

まあ、いつもの事ですか慣れましたけどね……」

 

そう言いながら、彼は右手で頭を軽く掻いたが、その手は鋭い爪と皮膚から赤黒くなっており人の元は呼べるものではなかった。

 

彼、雨宮リンドウは優秀な神機使いだったが、少し前まで行方不明となり除名されていたが、シドウらの活躍により無事発見され、現役復帰となった。

 

だが行方不明となる際、神機と自らを一つにするための腕輪……

正式名所『P53アームドインプラント』が破損し、神機のオラクル細胞が自らの右腕を捕食してしまった。

 

だが現在はオラクル細胞による捕食も完全に収まったが、代わりに右腕はアラガミと同質のものとなってしまった。

 

シドウ「俺はリンドウさんと違ってなれませんけどね……」

 

リンドウ「なに言ってんだ。

俺がいない間、トシと一緒にこなしてたんだろ?」

 

シドウ「つーか、あの時って神機使いになってすぐのころだったじゃないですか~

普通、まだまだ新人の奴にそんなことさせませんよ。」

 

博士「それだけ、君には期待していたんだけどね。

結果、私の眼に狂いはなかったようだしね。」

 

そう言いながら、博士はどこか面白そうに笑ったが、当のシドウは嫌そうな顔をしていた。

 

トシ「……で、本題ですけど必要となったアラガミのコアとは?」

 

博士「おっと、そうだったね。それじゃあ世間話もこれくらいにして本題に入ろうか。

と、言う事でまずはこれを見てくれ。」

 

そう言うと、博士はどこからかモニターを出し、そのモニターには竜のようなアラガミや虎のようなアラガミと様々なアラガミが映し出されていた。

 

リンドウ「おいおい……」

 

トシ「ヴァジュラ種にハンニバル……

その他にも、一筋縄ではいかないアラガミ達ですね……」

 

シドウ「……まさか、これ?」

 

博士「うん、そのまさかだよ。」

 

シドウが軽く引き攣った顔で尋ねると、博士は笑顔で即答した。

 

シドウ「ふざけんな!!」

 

トシ「……今回は、シドウに同意したいですね。」

 

リンドウ「流石に、これは時間がかかるぞ……」

 

博士「君たち、何か勘違いしているようだね?」

 

3人『え?』

 

博士「出来れば、明日までに全て集めて欲しんだよ。」

 

3人『……はぁ!?』

 

シドウ「ちょっ、てめえ正気か!?」

 

トシ「いくらなんでも、無理ですね。

時間的にも、肉体的にも……

そして精神的にも……」

 

リンドウ「半分くらいは何とか出来ても、後は無理だぜ……」

 

博士「ふむ、人の話は最後まで聞くものだよ?」

 

シドウ「んだよ……

これ以上、俺達を絶望させる気か?」

 

博士「確かに、出来れば明日までに用意してくれると助かるんだが、何も君達だけで集める事はないんだよ?」

 

トシ「と、言いますと?」

 

博士「ちょうど、今は近隣にアラガミの出現情報は出てないよ。

そして防衛班だけでなく、討伐部隊の皆も今は暇を持て余している頃合いだと思うけどね?」

 

トシ「……それなら、最初から俺達以外にも声をかければよかったじゃないですか?」

 

博士「それもそうだけど、君達から伝えてもらった方が手っ取り早いからね。」

 

シドウ「あの~……

ちなみに拒否権は?」

 

博士「ああ、そうだい。

此間、初恋ジュースの新作。

失恋ジュースの新しい試作品が出来たんだけど――」

 

そう言った瞬間、先ほどまで嫌そうな顔をしていたシドウの顔が危機迫るものとになり、一瞬で姿勢が反転した。

 

シドウ「善処いたします。」

 

博士「そうかい、助かるよ。」

 

トシ「……拒否権はなし、ですか。」

 

リンドウ「まあ、いつものことだけどな。」

 

トシ「まあ、そうですね……

ところで、博士。

近隣にアラガミの反応はないと言いましたが、対象もいないと言う事では?」

 

博士「ああ、その事なら問題ないよ。

確かに、近隣にはこれと言ったアラガミはいないよ。

そう……

ここの近隣には、ね。」

 

トシ「……了解しました。

出現地点とヘリの用意をお願いしますね。」

 

博士「勿論だよ。」

 

リンドウ「(……なんか生き生きしてんな、この人。)」

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

シドウ「……と、言う訳だ。

つーことで協力してくれ。」

 

博士の無茶苦茶な申し出を受け入れてしまった3人はエントランスに行き、現在暇そうな人物を片っ端から声をかけていた。

 

アリサ「いいですよ。」

 

シドウ「サンキュー、アリサ。

んじゃあ俺はアリサとコウタで指定されたコアの回収に向かうとしますよ。」

 

コウタ「ちょっ、俺いいよって言ってないけど!?」

 

シドウ「お前に拒否権など無い。」

 

コウタ「ちょっ!?」

 

既にシドウ達(1名を除き)は話がまとまり、どのアラガミのコアを回収するか話し合っていた。

 

リンドウ「シドウ達はまとまったようだな。」

 

トシ「まとまってないのが1名いますが……まあ、大丈夫でしょう。」

 

リンドウ「そうだな。

あの3人なら大丈夫だろう。

って事で、他に誰か手伝ってくれないか?」

 

リンドウがそう言うと、ピンク色の髪をした少女と左目に眼帯を付けた女性。

そして近くにいたブレンダンとフェデリコ、そしてアネットが頷いた。

 

リンドウ「とりあえず、カノンとジーナ。

ブレンダンにフェデリコとアネットは手伝ってくれるのか?」

 

そう言うと、ピンク色の髪をした少女カノンと、眼帯をしたジーナが口を開いた。

 

カノン「足手まといになるかも知れませんが……

一生懸命頑張ります。」

 

ジーナ「どうせ今は暇だしね……

それに刺激的な戦いになりそうだしね。」

 

トシ「助かります。」

 

リンドウ「シュンとカレルはどうだ?」

 

皆の意見が一致している中、リンドウが離れた位置でだらしなく椅子に座っている帽子をかぶった少年、シュンと金髪の青年のカレルに声をかけたが2人はやる気のなさそうな返事が返ってきた。

 

シュン「俺はパス。

面倒だしな~」

 

カレル「俺もだな。

報酬が特別いいってわけでもないしな……」

 

リンドウ「そうか。

まっ、流石にほぼ全員が離れるわけにもいかないからな。」

 

トシ「そうですね。

いざとい時の為に、数人は残っていた方がいいですからね。

……それじゃあ、参加するメンバーや討伐対象振り分けなどでもしましょうか。」

 

リンドウ「そうだな。

それじゃあ、今からミーティングルームに行くぞ。」

 

全員『はい。』

 

それからしばらくし、シドウ達に協力してくれるメンバーは全員ミーティングルームへと向かい、リンドウを主体に班の振り分けや討伐対象、回収するアラガミのコア等々の話し合いが行われた。

 

リンドウ「……以上が、今回の博士からのお遣いとブリーフィングだ。

何か意見はあるか?」

 

リンドウがそう言うと、誰からも意見はなかった。

 

リンドウ「よし、異論がないなら早速出撃するぞ。

班は先程言った通りだ。

それといつも言ってるが、全員死ぬなよ!!」

 

全員『了解!!』

 

そしてその言葉を皮切りに全員はそれぞれミーティングルームを後にし、出撃用のエレベーターへと向かった。

 

数時間後……

 

トシとブレンダン。

そしてカノンの3人はとある場所に来ていた。

 

辺りには大きな建物が多くあるが人気は全くなく、その建物自体何年も放置され廃墟と化した『贖罪の街』に3人は博士からの頼まれたモノを調達しに来ていた。

 

カノン「無事終わりましたね。」

 

ブレンダン「ああ、特質すべき問題点もなかった。

流石はトシと言ったところだろう。」

 

トシ「おだてても何も出ませんよ……

(もはや、カノンの誤射は問題点から外される程のもの、か……)」

 

いつアラガミが現れるか分からない外壁の外の世界。

その中を3人は、それぞれの自らの神機を手に一仕事を終え、緊張感のない会話をしていた。

 

現に3人の衣服には多少の汚れがあるが目立った傷もない。

だが、トシの手には神機以外に小さなトランクを持っていた。

 

トシ「まあ、3人で来れたからこそこうして無事に目的のコアを摘出する事が出来ましたからね。」

 

ブレンダン「トシ1人でも十分だっただろ?」

 

トシ「いえ……

俺だけでは流石に時間もかかりますし、必ずしも無事とは言えませんからね……」

 

そう言いながら、トシは手元の小さなトランクを見ていた。

 

今回、3人が討伐したのは『ディアウス・ピター』。

虎に似たアラガミ『ヴァジュラ』種に数えられ、俊敏な動きと強烈な電撃を操るアラガミだ。

 

その中でも『ディアウス・ピター』は漆黒の身体と、邪悪な顔を持ち、雷撃による猛攻と鉄壁の守りを誇り、正に帝王の名を冠するに相応しいアラガミと言える。

まず並の神機使いでは歯が経たず、自分の力量を把握してない者は簡単に敗れ、捕食されてしまうだろう。

 

そんなアラガミの中でも最上位の『ディアウス・ピター』を3人は苦戦することなく無事に倒し、そのコアの摘出に成功していた。

 

トシ「……さて、まだ迎えのヘリが到着するまで時間がありますね。」

 

ブレンダン「そうだな……

思った以上に早く任務を遂行出来たからな。」

 

カノン「それじゃあ、クッキーを持ってきたので食べませんか?」

 

ブレンダン「何で、持ってきてるんだ?」

 

トシ「……細かい事を突っ込んでいたら身が持ちませんよ。

……まあ、せっかくだからいただきましょう。」

 

カノン「はい、どうぞ。」

 

するとカノンがポケットから小さな小包を取り出し、封を開けると綺麗な小麦色をしたクッキーがあった。

 

トシそっと、その小包に手を伸ばそうとした瞬間……

 

トシ「!!??」

 

強烈な殺気を感じ先程の穏やかな雰囲気から一転し、一気に戦いに身を投じる戦士の張りつめた雰囲気に変わった。

 

カノン「ト、トシさん!?」

 

ブレンダン「どうかしたのか!?」

 

未だ何も感じ取っていない2人をよそに、トシが気の所為であってくれと祈りながら気配を感じた方を見ると、前方の巨大な廃墟の屋上からついさっき自分達が倒した『ディアウス・ピター』ど同種のアラガミがそっと姿を見せた。

 

トシ「上だ!!」

 

姿を確認すると同時に、トシの張りつめた声が『贖罪の街』に木霊すると同時に、『ディアウス・ピター』の野太い咆哮が返ってきた。

 

その声にブレンダンとカノンの2人も状況に気がつくと、トシと同じく先程までと打って変わって戦いの眼に変わった。

それと同時に、『ディアウス・ピター』もまたビルの屋上から飛び降りトシ達3人の前へ着地した。

 

その瞬間、トシとブレンダンは瞬時に神機を構え、カノンも遅れを取りながら構えをとった。

 

ブレンダン「トシ、どうする!?」

 

トシ「おそらく確認されたのとは別個体でしょう。ですが、このまま放置したら被害が出る可能性があります!!

ここで、仕留める!!」

 

トシは、現状の戦力と残った消費アイテムの状況から、瞬時に連戦ながら下手をしない限り倒せると、判断した。

 

が……

 

『グガァァァァ!!』

 

トシ「!!??」

 

今、自分等の目の前に居る『ディアウス・ピター』以外の帝王の声が辺りに鳴り響くと同時に、別の建物からさらに別個体の『ディアウス・ピター』が合計3体現れた。

 

ブレンダン「トシ、今の―っ!!」

 

予想外の出来事に、一瞬気を取られたブレンダンに大きな電気の球体が直撃した。

 

ブレンダン「がっ!!」

 

カノン「ブレンダンさん!!」

 

トシ「っ!!」

 

トシは多少焦りながら、懐から丸い球体を宙に放ると、その球体から強烈な光が放たれ、一瞬のうちに4体の『ディアウス・ピター』の視界を奪った。

 

トシ「カノン!!

このコアを持って、ブレンダンと戦線を離脱しろ!!」

 

カノン「でも、トシさんは!?」

 

トシ「ここで殿(しんがり)を務める!!

スタングレネードが効いている内に急げ!!」

 

そう言いながら、トシはもう一度スタングレネードを放り、視界が回復したばかりの『ディアウス・ピター』の眼を再び潰した。

 

カノン「でも……」

 

トシ「っ、ブレンダン!!」

 

ブレンダン「っ、すまない。

すぐに応援を呼ぶ。

行くぞカノン!!」

 

トシの申し出にブレンダンは承諾し、トシはブレンダンにトランクを放った。

 

ブレンダンはトランクをキャッチすると、傷ついた体で未だ戸惑っているカノンを半ば無理やり引っ張り、急ぎ戦線から離脱した。

 

トシ「(よしっ……)」

 

トシは4体の『ディアウス・ピター』の猛攻を、守りに専念しながらやりくりし、無事2人がこの場から離れたのを確認した。

 

トシ「せいっ!!」

 

そして、確認し終えると同時に3個目となるスタングレネードを投げた。

 

トシ「はぁぁぁぁ!!」

 

そして三度、眼が潰された『ディアウス・ピター』の内1体に一気に接近し、胴体に連続で斬撃を入れ、視界が回復する事合いを見計らって、一度退き4体が見渡せる位置を陣取った。

 

トシ「…………

(さて、殿を務めるとは言ったがそれまで粘れるか?

回避に専念すれば、何とかなるが……

応援が来るまで体力が持つかどうか……)

……ふっ、hardなmissionになりそうだな。」

 

数分後……

 

トシ「はぁぁぁ!!」

 

トシは叫びながら『ディアウス・ピター』1頭の攻撃をさけながら切り刻んだが、他の『ディアウス・ピター』が攻撃してきたのを見て素早くそれを避けスタングレネードを投げ、その場からをすぐに退きビルに隠れた。

 

トシ「……流石に、簡単には逃がしてくれないか。

(さて、残りのitemは……

回復錠等が3分の2……

戦闘補助系が半分といったところか……

……スタングレネードが残り3個というのが痛いな……

さて、どうしたものか……)」

 

トシは外を意識しながら、所持しているアイテムを手探りで確認し、自分がどう行動するか考え始めた。

だが、考え始めたと同時に1体の『ディアウス・ピター』がトシが隠れたビルに入り込み、姿を見るや否やけたたましい雄たけびを上げた。

 

トシ「ちっ、もう見つかったか……

(流石にスタングレネードの効果が短い……

これからは慎重に使わないとな……)」

 

するとトシは、何かを決意したのか神機をグッと握った。

トシは一瞬、外に意識を向けると他の『ディアウス・ピター』はおらず、眼の前にいる1体だけだった。

 

トシ「(他個体は別の場所に移動したか……

おそらく俺を探しているのだろうが、下手に時間がかかればこの場から離れて行ってしまう可能性があるな……)」

 

そして、意識を眼の前の『ディアウス・ピター』に向けた瞬間、相手の周りに小さな電球が高速で回転していた。

トシはその予備動作から、繰り出される攻撃を察知しその場から動きだした。

 

それと同時に、回転していた球体は正面で扇状に展開され、一気に放たれたが、そこに何もなくただビルの壁に衝突した。

 

トシ「さて……

見たところ1頭だけだしな……

他が来る前にまずはお前から……殺やせてもらうぞ……」

 

攻撃を避け、改めて『ディアウス・ピター』を眼の前にし、トシはそう低い声で呟いた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

トシ「はぁはぁ……

っ、よし!!」

 

トシは、今ある体力の限り走った先には道が途切れ、人ではまず通る事が出来ない。

 

そして、右手には外壁が壊されたビルが不安定な状態で建っていた。

 

トシが一度新しい新鮮な空気を吸うと、背後の狭い路地から『ディアウス・ピター』が現れた。

 

トシ「(ここならそうそうは見つからない……)

さて、ここでお前も仕留める!!」

 

そう呟くと、目の前のアラガミに向かって行った。

 

先ほど、最初に対峙した『ディアウス・ピター』を倒してすぐ、トシは今対峙してる別個体と遭遇した。

 

休みのない連戦に、トシは少しでも1対1に持ち込めるよう考えながら移動し戦う事に決め、この狭い路地で戦う事にした。

 

だが、この狭い路地で真正面から向かってきたトシに対して『ディアウス・ピター』は少し身がまえると、一直線に電撃を連射した。

 

トシ「ちっ……」

 

この路地では回避は難しいと判断したトシは、瞬時にシールドを展開し、攻撃を全て防いだ。

 

だが、シールドを解除した瞬間『ディアウス・ピター』が勢いよく突進してきた為、トシは再びシールドを広げた。

 

トシ「ぐっ!!

(不味い、息が……)」

 

猛攻を何とか防いだトシは、いったん後ろに飛び、少なからず距離をとるとスタングレネードを投げつけた。

 

そして強烈な閃光により、少し怯んだ瞬間に1回大きく息を吸うと、神機を剣形態から銃形態に変え『ディアウス・ピター』の顔面に零距離で弾丸のバレットを連射した。

 

そして最後の一発が大きく爆発すると、『ディアウス・ピター』は大きく体を動かし地面に倒れると、動かなくなった。

 

トシは、一度深呼吸をすると神機を剣形態に変え、倒した『ディアウス・ピター』に向け剣を構えると、剣が引っ込み巨大な黒い口が現れた。

 

捕喰形態、剣形態から発動される特殊な形態でアラガミの一部を喰らい、一時的に力を取り込む事が出来る。

またアラガミの死骸を捕食する事で、素材やコアの摘出も出来る。

そして、トシは勢いよく『ディアウス・ピター』の死骸を喰らった。

 

トシ「はあはあ、コアの摘出完了……

ぐっ、後2体か……

流石に、辛いな……」

 

トシは半ば、今すぐ倒れこみたい気持ちを抑え重たくなった足を動かしこの場から移動し始めた。

 

そして数時間後……

 

トシは2体目を倒してすぐに3体目を見つけたが近くにもう1体いた。

 

今2体を同時に相手にするのは難しいと判断したトシは、近くの壊れた教会内に隠れたが完全に包囲された状態だった。

 

トシはしばらく外の『ディアウス・ピター』の様子を見ていながら体力を回復させていた。

だがそんなとき、ズシンと教会の中に大きな何かが落ちる音がした。

 

トシ「!!??」

 

予想外の事に、トシはゆっくりその場から動き、教会内の様子を見ると、もう1体の『ディアウス・ピター』が何かを捕食していた最中だった。

 

トシ「っ!!

(しまった。

まさか挟まれるとは……

幸い、どちらも俺には気がついていないが……

今、外に行っても中に身を潜めても見つかるのは時間の問題か……)」

 

トシはそんなことを考えていたら、何かを捕食していた『ディアウス・ピター』は捕食をやめ、ゆっくりと教会内を移動し始めた。

 

トシ「……本当、時間の問題だったな。」

 

2体の『ディアウス・ピター』の位置と動きを把握したトシは、その場に座り込み小声で呟いた。

 

トシ「(……さて、どうするか。

最悪、どちらかの『ディアウス・ピター』と戦うとすると、この位置では戦闘音ですぐにもう1体に気づかれるだろうな……)」

 

トシは、いろいろと考えながら残ったアイテムを見てみると、ほとんど残っていたなかった。

 

トシ「……流石に無事ではすまなさそうだな。」

 

まさに言葉の通りどうにも逃れようのない、差し迫った状態であるにも関わらず、トシの顔は焦りや恐怖などはなく、清々しくも何かを決意した顔をしていた。

 

トシ「さて……

人類の意地でも、見せてやるか。」

 

そう言い神機を肩にかけ、教会内に居る方の『ディアウス・ピター』に向かってゆっくりと歩き始めた。

 

だが、突如『ガァァァ………』と言う、低い獣の声が教会内に響いた。

 

トシ「なっ!?」

 

突然の事に、トシも歩みを止めた。

 

なぜなら、今のは威嚇や獲物を眼の前にした時の咆哮でもない。

今まで何度も聞いてきた、アラガミの断末魔だったからだ。

それと同時に、何か大きなモノが落ちる音がした。

予想だにしない事が起き、トシがゆっくりと、慎重に教会内を覗き込んだ。

 

トシ「なっ……」

 

教会内を見たトシは、先程まで死をも覚悟した場所で呆然と立ち尽くしてしまった。

何故なら、そこには上半身がない『ディアウス・ピター』であったであろうモノが転がっていた。

 

トシ「こ、これは……」

 

仮にも帝王の名を冠するアラガミが一瞬の内に、しかも無残な姿でその場に倒れ霧散している中、トシは頭をフル回転させ、様々な仮説を考えていた。

 

だが、そんな時に外で先程と同じように『ディアウス・ピター』の断末魔が聞こえ、トシは少し考えた後、声がした外へと出た。

 

トシ「…………」

 

教会から外に出ると、すぐに『ディアウス・ピター』の顔だけが転がっていた。

すぐ近くには下半身と顔がない肉塊も転がっていた。

 

トシ「……残っていた2体もか。

(アラガミの中でも屈指の強さをほこる『ディアウス・ピター』がほんの一瞬で……

まず、人がなせる技ではない。

考えられるのは別個体のアラガミとの争いだが……

『ディアウス・ピター』を圧倒する程の力を持ったアラガミがこの近くにいるのか?

それなら……)」

 

トシが2体目の『ディアウス・ピター』の死骸を見た後、その場から動かず現状の把握と考えられる全ての事を考えていた。

 

その間に、『ディアウス・ピター』の亡骸は、全て霧散しこの場から消えていた。

 

トシ「(と言う事は……

これは早急に連絡をし、調査を……)

……あっ、捕喰してなかったか……

……ん?」

 

気がついた時には時すでに遅しだが、考えていた時間は遅くても30秒ほど。

それなのに、半身とは言え強力なアラガミがここまで早く霧散する事に新たな疑問が増えた。

そして、トシはさらなる疑問について新たに考察しようとし始めた時、車のエンジン音がかすかだが聞こえてきた。

 

トシ「……微妙なtimingで来たな。」

 

そしてエンジン音が聞こえた方向を見ると、見覚えのある3人の人影が見えた。

 

シドウ「おーい、トシー!!」

 

3人の人影えある、シドウとアリサ。

さらにコウタは、トシの姿を確認すると急ぎトシの元へ向かい、トシもまた張りつめたていた緊張が解けたのか、その顔には少しながら安堵の表情が見えた。

 

シドウ「わりい、わりい。

地味に遅くなったな。」

 

トシ「全くだ……

危うく死ぬところだったぞ?」

 

シドウ「無茶言うな。

俺達も、お使い終えた戻りに急いで向かったんだからな。」

 

コウタ「まあまあ、何はともあれ無事でよかったじゃん。」

 

アリサ「そうですね……

にしても、よく『ディアウス・ピター』を相手に出来ましたね。

それも全部討伐って……」

 

アリサはそう言いながら、まだかすかにその細胞の塊が残っている『ディアウス・ピター』をチラッと見た。

 

コウタ「すげーな。

まさに鬼神の如き強さって奴だな。」

 

アリサとコウタがトシに対して健闘を讃えたが、当のトシは浮かない顔をしていた。

 

シドウ「……どうした?

何かあったのか?」

 

だが、シドウだけがトシの表情を見て、疑問を投げかけた。

 

トシ「……現れた『ディアウス・ピター』は合計4体

そのうち俺が倒したの2体だけだ。」

 

コウタ「えっ!?

って事はまだ2体どっかにいるのか!?」

 

アリサ「けど、近くのアラガミ反応は消えたって博士から連絡が……」

 

シドウ「……何があった?」

 

トシ「分からない。

ただ、残り2体は何かに一瞬で殺された。

それも一撃で胴体を両断してな……」

 

トシのその言葉に3人は言葉を失い、その場の空気が静まり返った。

 

彼らは『ディアウス・ピター』がとても強力なアラガミだと言う事も理解している。

 

だが、トシが嘘をつくような人間でない事も理解している。

 

その2つから、今まで苦労しながら倒した相手を一撃で倒せるような、今まで見た事も聞いた事もないような得体の知れない何かがこの近くに居る事を意味していていたからだ。

 

コウタ「そ、そんなわけないだろ!?

何かの勘違いだって!!」

 

静まり返った空気に耐えきれず、コウタが雰囲気を変えようと明るい声で言ったが、その声はかすかに震えていた。

 

そして3人もコウタの気持ちも分かっているが、この緊迫した空気を変える事は出来なかった。

 

トシ「……そうでありたいが、事実だ。

とりあえず、今は支部に戻って報告と詳しい調査を……」

 

そして、この場にとどまっても意味は無いと判断したトシが支部に戻るよう促そうとした時、突如トシの体がふらつきその場に倒れてしまった。

 

シドウ「トシ!!」

 

アリサ「トシさん!!」

 

コウタ「ちょっ、大丈夫かよ!?」

 

突然倒れた事に驚き、シドウがトシの様子を暫く見た。

 

シドウ「……気を失っているだけのようだな。

大きな傷もないが、全く怪我がないわけじゃない。

とりあえず、トシが言ったように支部に戻るぞ。」

 

コウタ「わ、分かった。

俺、車の用意を……」

 

シドウ「待てコウタ。

トシを運んでくれ。

アリサは支部に連絡して、医療班の用意とトシが言った事を伝えてくれ。」

 

アリサ「分かりました。」

 

少しばかり慌てたが、シドウが冷静に対処し2人に指示を与えた。

 

指示を受けた2人はすぐさま行動に移し、コウタはトシを担ぎ、アリサも腕輪についている通信機能から支部に連絡をした。

 

コウタ「……あれ、シドウは?」

 

トシを担ぎ、軍用車が止めてある場所まで移動しようとしたコウタが、シドウは何をするのか疑問に思い問いかけたが、シドウは妙に険しい眼をしていた。

 

シドウ「周囲の警戒ってとこだな。

アラガミの反応は確認されてなくても、あくまで過去の情報だ。

つーことで、俺は辺りを警戒しながらいざって時にすぐ動けるようにしておく。」

 

コウタ「そ、そうか。

分かった。

それじゃ、早く支部に戻ろうぜ。」

 

そう言い、コウタはゆっくりとだがその場から駆け足で移動し、アリサもまたコウタの後を追った。

その場に残ったシドウは、完全に霧散し、周囲に黒い霧が残っただけの『ディアウス・ピター』があった場所を険しい眼で少し見ると、コウタ達の後を追った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。