新訳 神殺しの者第一幕『神を喰らいし者』   作:コードネームTOSI

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第四章:新たなる脅威の片鱗

数日後、トシはアナグラの基本白で統一された部屋で目を覚ました。

 

トシ「……ここは?」

 

目を覚ましたトシは、今自分がどこにいるかを、なぜここに居るかいを理解しようと、寝た状態で首をかるく動かしたら、急に声をかけられた。

 

???「やっと目が覚めたのね。」

 

その言葉にトシは声がした方を見ると、そこには少し大きめの白衣を着た茶髪の女の子がすぐ真横に設けられた椅子に座っていた。

 

トシ「リン……

と言う事は、ここは医務室か……」

 

リン「そうよ。

ったく、3日も寝てるなんてどんな神経してんのよ?」

 

トシ「3日?

……!!

そうか、俺はっ!!」

 

リン「ちょっと、急に動かないの!!

外見では大した外傷はないけど、中そうはいかないんだから!!」

 

トシ「だ、だが……」

 

リン「いいから、しばらく安静ね。それにあんたがやろうとしている事は分かってるか……

ちょっと待って。」

 

そう言うと、リンは席を離れ沢山の紙の束がある机のところから受話器を手に取り、どこかに電話をした。

 

トシはどこに連絡したかを聞いたが、リンは教えないの一点張りだった。

 

その事にトシも諦め、リンの言った通りしばらく待っていると、医務室の扉が開きシドウとコウタ。

そしてリンドウが入ってきた。

 

コウタ「目が覚めたって!?

大丈夫かよ?」

 

トシ「一応、な……

詳しくはリンが何も教えてくれないから何とも言えないがな……」

 

そう言うとトシはチラッとリンを見たが、当のリンは大量の紙を真剣に見ていた。

 

リンドウ「まあ、元気そうで何よりじゃないか。」

 

トシ「元気ならここにはいませんがね……」

 

シドウ「んな事言えるなら大丈夫だろ?

これ、一応見舞いって事での差し入れだな。」

 

そう言い、シドウは手に持っていた袋をトシに渡したが、その袋の中身を見たトシは軽く眼つきが変わった。

 

トシ「……おい、シドウ?

見舞いの品がジャイアントトウモロコシと初恋ジュースって何だ?

怪我人への見舞いの品がこれってちょっとした嫌がらせか?」

 

シドウ「な~に言ってんだ、トシ?

ちょっとした嫌がらせ?

馬鹿野郎が、本気の嫌がらせだ。」

 

リンドウ「お前、ここに向かう時ちょっと時間くれって言ったのそれ準備してたのかよ。」

 

トシ「OKだ、シドウ。

すいませんリンドウさん。

ちょっとの間、シドウとコウタを拘束しておいてください。」

 

そう言うと、トシは静かにベッドから降りようとした。

 

リンドウ「おいおい、どこ行こうとしてんだ?」

 

トシ「ちょっと部屋にある刀を取ってきます。」

 

シドウ「殺す気か!!」

 

トシ「いや、ただ四肢の神経を切断させるだけだ。」

 

コウタ「つーか何で俺も含まれてんだ!!」

 

トシ「なんとなくだ。

イラッと来てやる。

後悔も反省もするつもりはない。」

 

コウタ「ちょっ、まじでやめ――」

 

必死にトシを止めようとするコウタに突如、分厚い本が飛んでき、コウタの頭部の直撃しコウタはその勢いで軽く飛ばされ倒れた。

 

リン「うっさい。

ここで騒ぐんじゃないわよ!!」

 

コウタ「何で、俺だけ?」

 

リンドウ「お~い、冗談もそろそろ終いにするぞ?」

 

シドウ「俺は真面目にやってますけどね。」

 

リンドウ「お前はその真面目をもっと別のモノに回せ。」

 

これ以上放置していたら、本題に一向に入れないと感じたリンドウが話に割ってわ言ったが、事の発端となったシドウはまだ続けようとしたため、無理やり話を切った。

 

リンドウ「さて、お前が黒猫と交戦してすでに3日は経ったな。」

 

トシ「の、ようですね……」

 

コウタ「ねえねえ、黒猫って?」

 

シドウ「『ディアウス・ピター』の事だろ?

つーか、お前よく無事だな?」

 

コウタ「後頭部がすっげー痛いけどな!!」

 

後頭部を抑えながら軽く涙目になって訴えるコウタに、リンはまた分厚い本を手に取った。

 

リン「騒ぐなって言ったわよね?

もう一発行っとく?」

 

コウタ「すいませんっした!!」

 

リンドウ「……なかなか話が進めねーな。」

 

トシ「もう、disregard(無視)でいいですかね?」

 

リンドウ「さて、とりあえず博士が依頼した品は俺達で何とか集めた。」

 

トシ「その、すいません……

俺だけ休んでいて……」

 

リンドウ「なーに、気にすんなって。

まあ、品は集めたはいいんだがな……」

 

トシ「……何か問題でも?」

 

リンドウ「お前が言った『ディアウス・ピター』を一瞬で葬ったって話なんだが……」

 

トシ「!!??」

 

リンドウ「あ~、まあなんだ。

一応、調査隊が結成されて調査してるんだが収穫は今のところなし。

……お前が言ってる事を疑うわけじゃないが、今回は流石に話がぶっ飛んでいるようにも思えて仕方ねーんだ。」

 

トシ「……リンドウさんの意見ももっともです。

確かにいくら『アラガミ』が捕食した物体の性質を取り込み、常に進化して行くと言っても……」

 

シドウ「『ディアウス・ピター』何て奴を一撃で仕留めるような強力な力を持つほどまで進化するには、あまりにも早すぎる。

これは、普通の『アラガミ』じゃねえ。

特別なコアを持ったのと同じってことかね?」

 

トシ「シドウ……」

 

シドウ「……くはっ、何てな。

んな、特別な『アラガミ』がそうゴロゴロいてたまるかって。

まあ、気長に調査結果を待とうや。」

 

そう言い残し、シドウは足早に医務室を出て行った。

 

コウタ「ちょっ、シドウ!?

う~ん……

何かちょっとアイツが最後に言った事気になるから、俺アイツを追うよ。

それに他の皆にも、お前が起きた事伝えないといけないしな。

じゃあな。」

 

そして、コウタもまたシドウの後を追って急ぎ足で医務室を出て行った。

 

リンドウ「シドウ……

アイツ、まさか……」

 

トシ「リンドウさん。」

 

リンドウがシドウの言った言葉から、何かを言おうとしたがトシがその先の言葉をさえぎるように言い、目線をチラッとリンの方に向けた。

するとリンドウも軽くしまったと表情をすると、急ぎ話を変えようとした。

 

リンドウ「っと、まあシドウが言った通り調査結果を待とうや。」

 

トシ「そうですね。」

 

リンドウ「さて、俺もそろそろ行くわ。

っと、姉う…じゃなくて、教官からの伝言な。

しばらくは安静にして、体の回復に勤しめ。

担当医の許可が出るまでは、任務は愚か、訓練や外部居住区への外出も禁じる、だとよ。」

 

トシ「それは……

妥当と言えば妥当ですが……」

 

リンドウ「まあ、仕方ねえさ。

つーことで、後は頼むぜリン。」

 

リン「分かってるわよ。」

 

トシ「担当医ってお前か……」

 

リン「何よ、文句ある?」

 

トシ「いや、心配したよ……」

 

リン「そ、そう……

まあ、私に任せてゆっくり休みなさいよ!!」

 

リンドウ「ははっ、じゃあ後は頼むぜ。」

 

リン「オッケーよ。

しっかり監視しとくわ。」

 

トシ「監視って……」

 

リンドウ「そら安心だな。

じゃあ、また後でな。」

 

そう言い残し、リンドウも病室を後にした。

その後しばらくリンは手元の資料をじっくり見た後、口を開いた。

 

リン「……早く前線に戻りたいんでしょ?」

 

トシ「まあ、皆が死力を尽くしていると言うのに俺だけがいつまでも寝ている訳にはいかないからな。」

 

リン「そう……

まあ、体を動かす位ならすぐにでも大丈夫よ。

怪我して3日も寝てたのに、あれだけ騒げるんだもん……

まあ、経過と検査結果を見てから詳しく判断するけど2,3日で体を動かす位は出来るでしょうね。」

 

トシ「2、3日か……

それまでは絶対安静か?」

 

リン「あったりまえでしょ!!

まあ、それでも他の人達に比べれば早い方よ。

本当、あんたの体はどうなってんのよ?」

 

トシ「……ただちょっと昔から怪我とか痛みには慣れてるだけだ。」

 

リン「まあ、あんたのその昔に何があったは聞かないけど……

その……無茶だけはしちゃだめよ?」

 

トシ「まあ、全力はするさ……

それと心配してくれてありがとうな。」

 

リン「そっ、そんなのじゃないわよ!!

毎度毎度、怪我して入院されちゃ私の仕事が増えるから面倒なのよ!!」

 

トシ「そ、そうか?」

 

リン「たくっ……」

 

それだけ言うと、リンは再び手元の資料に眼を通し始めた。

だが、とあるページで手の動きが止まった。

 

リン「ねえ、トシ?」

 

トシ「どうした?」

 

リン「あんた、ここ最近体調に異変とかなかった?」

 

トシ「異変?」

 

リン「何か頭痛がしたとか、急に目眩がしたとか……最悪、いつもより寝つきが悪かったとかどんな些細なことでもいいわ。」

 

トシ「…………

いや、思い当たる節はないな。」

 

リンが言った、いつもと何か違った体調の変化があったか必死に探したが思い当たることはなかった。

 

トシ「何かあったのか?」

 

リン「いや、ちょっと気になる事がね……

……明日、榊支部長代理のメディカルチェックをしてもらう事にするわ。」

 

翌日、トシは榊博士のラボにいた。

 

既にメディカルチェックを終え、博士が手元のモニターを操作しながら検査結果を見ていた。

 

博士「ふむ……

これと言って問題はないね。

君の『P53偏食因子』の方も以上は見られないね。」

 

偏食因子、オラクル細胞内に含まれる偏食を司る物質で、オラクル細胞の嗜好を決定づけている。

基本的にオラクル細胞が嫌うように偏食因子が使用されており、これが捕喰に対する耐性であるが、その逆であるオラクル細胞が好む偏食因子も存在する。

 

神機とのシンクロの為にオラクル細胞を体内に宿す、ゴッドイーターは定期的に偏食因子を投与することにより、自らの神機に捕喰される事を防いでいる。

いわば、ゴッドイーターが『人でいられる』為の生命線と言っても過言ではない。

 

トシ「そうですか……

ならよかったのですが……」

 

博士「まあ、現状との検査結果と君自身の自覚を見た結果だけどね。」

 

トシ「……何が言いたいんですか?」

 

博士「何、人は簡単に嘘が言えるからね。」

 

トシ「……検査が終わったのでしたら戻ります。

失礼します。」

 

榊博士が意味深な発言をすると、トシは少しばかし眉間にしわを寄せまるで逃げるかのようにそそくさとラボを出て言ってしまった。

 

博士「やれやれ、これは図星だったかな?」

 

1人残った博士はそう呟くと、再び手元のモニターを見始めた。

 

ラボを後にしたトシは、すぐに病室に戻った。

病室に戻ると、他にベッドに寝ている病人や怪我人は数人いたが医師は席を外しているのか誰もいなかった。

 

トシは自分のベッドに戻り、静かに眼を閉じた。

 

トシ(……暇だ。

廊下では誰とも合わなかったし、何の物音もしなかった……

皆、任務に行っているのだろうか……)」

 

眼を閉じてもすぐに眠りに入る事が出来ず、暫く考え事をした。

 

トシ「(……にしても、人は簡単に嘘を言う、か……)」

 

そんな中、先程榊博士が最後に言った事を思い出していた。

 

トシ「……確かに、そうだな。」

 

そして、少し眼を開き自分の右手を見つめ、そう声に蚊の鳴くような声で呟くと、再び眼を閉じ眠りについた。

 

それと同時刻、4人の男女がとある場所に来ていた。

 

辺りには錆びれたビルが数個あったが、それ以外に人工物は無く、辺りは断崖絶壁でまるでその場所だけ特別な空間のように人が行ける範囲は円形のようになっていた。

だが、その中央部には何らかの影響により常に巨大な竜巻が発生していた。

 

通称『嘆きの平原 』。

その名の通り、アラガミによって荒らされ賑わっていいたである街が平原と化し、中央の竜巻がその事を嘆いているかのように、常にけたたましい音を発している。

 

その場所で、4人はとあるバケモノを目の前にしていた。

 

彼ら全員は軍服を身に付け腕には赤い『腕輪』と『神機』が握られており、『ゴッドイーター』である事は分かった。

 

「くそっ、何なんだよこいつは!!」

 

「口じゃなくて手を動かしなさい!!」

 

「うっせ!!

分かってるよ!!」

 

2人の男女は軽く口論しながらも、銃形態の神機から大量の弾丸である『バレット』を放ち標的であろうモノに数々命中させていた。

 

「もう少し耐えるんだ!!

そうすれば応援が来てくれる!!」

 

「それまで、持つかしらね!!」

 

更に残りの2人も剣形態の神機で『バレット』に当たらないように標的に接近し、その刀身で斬りつけた。

 

そして4人の攻撃が止んだ時、標的が力なく地面に崩れ降ちた。

 

「はぁはぁ……

んだよ、やったのか?」

 

「……見たいね。

何とかなったわね。」

 

「ふ~、一時はどうなる事かと思ったがよかった……」

 

「応援要請、無駄になりましたね。」

 

「だな。」

 

4人は生死をかけた戦いに勝利したことに安堵し、歓喜に沸いていた。

 

「いやー、本当今回は死ぬかと――」

 

「え!?」

 

だが、次の瞬間その安堵と歓喜は悲鳴と恐怖へと変わった。

 

銃形態の神機を扱っていた男性が喋っていた途中、突如その男性の上半身が消えたのだから。

 

「きゃぁぁぁぁ!!」

 

「なっ、こいつ!!

まだ!!」

 

だが、正確には消えたのではなく『喰われた』のだ。

先程、自分たちが倒したであろう標的から伸びた巨大な口によって捕喰されてしまった。

 

「くっそ!!

このバケモンがぁぁぁ!!」

 

「待って!!」

 

予想外の出来事と、仲間を喰われた怒りから剣形態の神機使いの男性が仲間の呼びかけにも耳を傾けず真正面から突撃してしまい、次の瞬間には先程の男性と同じように、上半身が消えてしまった。

 

「そ、そんな……」

 

「あ、あぁ……」

 

あまりにも衝撃的な出来事に、残された2人はただ力なく地面に座れ込んだり、肩を落とすしかなかった。

 

だがその標的は、絶望に満ちた2人の元にゆっくり近づいて行った。

 

「こ、来ない……

お願い、来な――」

 

そして、標的が軽く尾のようなものを動かすと剣形態の神機使いの首から上だけが飛び、残った体から赤い液体が流れ力なく地面に倒れた。

 

そして動かなくなったのが分かると、その標的はゆっくりと先程2人を捕喰した口でその場に残った体を丸呑みし、口の中からグチャグチャという肉を喰らう音と共にゴリゴリと骨を潰す音がした。

 

そして数秒で、喰い終えたのかゆっくりと最後に残った一人の方を向いた。

 

「あ、あぁ……

いや……

いやぁぁぁぁぁ!!」

 

そして残された銃形態の神機使いの悲鳴と共に、この世のモノとは思えない雄たけびと同時に、『グシャッ!!』と生々しい音がした。

 

翌日、シドウを含め第一部隊の面々が嘆きの平原に訪れていた。

 

シドウ「さてと、どうすっかね……」

 

アラガミに発見されづらい高台にシドウを含め、アリサとコウタ。

そしてソーマが各々の神機を持ち、周囲を見ていた。

 

アリサ「まずは発見地点に行ってみましょう。」

 

シドウ「まっ、それしかないか。

一応周囲の警戒は怠るなよ?」

 

ソーマ「そんなこと分かってる。」

 

シドウ「ならオッケーだ。

とりあえずコウタが先行な。」

 

アリサやシドウが指示を出すなか、突如遠距離の神機を扱うコウタが先導と言う事になりかけ、当の本人はすぐさま喰らい付いた。

 

コウタ「何で俺なんだよ!?」

 

シドウ「緊急時の囮。」

 

コウタ「おまっ!!」

 

アリサ「全く、こんな時までふざけないでください。」

 

ソーマ「……時間の無駄だ。

俺は行くぜ?」

 

シドウ「わーてるって。

流石に、おふざけもここまでだ。」

 

そして、シドウがそう言うと眼が先程までと打って変わって真剣な鋭い眼になった。

 

シドウ「任務を行う前に、再度任務内容の確認を行うぞ。」

 

今朝方、シドウとアリサ。

そしてコウタとソーマの4人は第一から第三部隊までの統括及び指揮を行っている雨宮ツバキにブリーフィングルームに召集されていた。

 

アリサ「こんな朝早くから召集って、どうかしたんすか?」

 

まだ朝早くと言う事でソーマを除く3人が眠たそうにしている中、ツバキだけは真剣で険しい顔をしていた。

 

ツバキ「先日、嘆きの平原にて任務を行っていた第六部隊所属の神機使い4名の消息が途絶えた。」

 

その言葉に3人の眠気は一気に消え、その顔は真剣なものとなった。

 

シドウ「……任務の内容は?」

 

ツバキ「こちらで識別不明ののアラガミ反応があったため、そのアラガミの偵察任務だ。

だが、標的に発見され戦闘を行ったようだ。

その際こちらに応援要請が数回来ていたが、応援が駆けつけた時には嘆きの平原にそれらしきアラガミと彼らの姿は無かったそうだ。」

 

ソーマ「で、それから捜査隊が結成されたんだろ?」

 

ツバキ「捜査隊からの報告では、その場に夥しい量の血痕と4名の神機が発見された。」

 

アリサ「そ、それって……」

 

ツバキ「腕輪のビーコンによる生体反応もない。」

 

コウタ「くっそ……」

 

また仲間を失ったと言う気持ちが全員に押し寄せ、コウタは行き場の無い怒りを露わにしていた。

 

シドウ「……それで、俺達を招集した事とは?」

 

その中、ソーマ同様冷静に現状を受け止めているシドウが愚問と思いつつも召集の理由を聞いた。

 

ツバキ「つい先ほど、嘆きの平原に昨日と同じアラガミ反応があった。」

 

ソーマ「そう言う事か……」

 

ツバキ「これより第一部隊に任務を言い渡す。

嘆きの平原に出現した、未確認アラガミの討伐及びコアの摘出。

以上が今回の任務内容だ。」

 

シドウ「はぁ~、そうだろうと思ったよ。」

 

アリサ「了解しました。」

 

コウタ「おしっ、やってやるぜ!!」

 

コウタは仲間の敵を討つため、気合を入れるために自分の頬を両手で軽く叩いた。

 

シドウ「たくっ、俺まだ寝たいのにな……」

 

ソーマ「ならとっとと終わらせるんだな。」

 

そんな中また眠たそうな眼になったシドウだったが、ソーマの一声で、真剣なものとなった。

 

シドウ「まあ、そうだな。

さて、んじゃあ弔い合戦と行くか……」

 

ツバキ「異論がなければ、各自準備が出来次第任務に当たれ。

それと最後に言っておく。

先程も言ったが、今回は未確認のアラガミ。

新種の可能性が高い。

一瞬の油断が命取りになる。

全員生きて帰れ!!」

 

全員『了解!!』

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

シドウ「……妙な気配はするが。」

 

ソーマ「姿が見えねえな……」

 

現在、シドウとソーマが先行しながら嘆きの平原を歩いているが、未だ標的と思わしきアラガミと遭遇はしていない。

 

アリサ「この場所は、足場の都合上そこまで広くは無いんですが……」

 

コウタ「辺りを一周すりゃ、大概アラガミと遭遇できるんだけどな。」

 

かれこれ数十分は周囲を常に警戒しながら索敵をしていたため、次第に全員の集中力も切れかけ徐々に口数も増えてきた。

 

アリサ「まさかとは思いますけど、未確認のアラガミは既にこの場を離れたと言う事はないですよね?」

 

コウタ「あ~、ありうるかもね。」

 

特にアリサとコウタは集中は既に切れかけていた中、シドウとソーマは凄まじい集中力で任務開始時と変わらず、辺りの警戒を行いながら軽いやり取りをしていた。

だが2人は一言二言話をするだけで、既に肉体的及び精神的疲労も貯まってきていた。

 

シドウ「(ちっ、そろそろ疲れてきたな。

出来れば休みたいが、んな事現状できねーし……

さて、どうしたものか……)」

 

シドウが辺りを見ながら頭の中で多少他ごとを考えていた時、今まで感じた事のない異様な気配を察知し一瞬でその他ごとは頭の中から消えた。

 

シドウ「!!!!

上だ!!」

 

気配を感じた先を見ると、上空に今まで見た事のない異様な姿のアラガミがはるか上空にこちらを見下ろすように浮遊していた。

 

アリサ「なっ!!」

 

ソーマ「っ!!」

 

コウタ「うおっ!!」

 

そしてシドウの声で全員が上を見上げると同時に、そのアラガミもまたこちらに向け一気に下降してきた。

 

シドウ「散開!!」

 

突然の事に3人は一瞬体が固まってしまったが、シドウが次に発した言葉に瞬時に体が反応し全員が一斉にその場から離れると、直後下降してきたアラガミが先程まで4人がいた場所に着地した。

 

コウタ「な、なんだこいつ!?」

 

そして降りてきたアラガミの姿を見て、コウタは驚きのあまり声を上げた。

 

シドウ「落ち着け!!

こいつが討伐対象なのは間違いない!!

まずは様子を見ながら安全に攻めてくぞ!!」

 

だが、シドウの言葉と同時にソーマが真っ先にアラガミに突っ込んでいた。

 

シドウ「ソーマ!?」

 

ソーマ「まずは小手試しだ。」

 

そう言い、背後からその巨大な刀身を持った神機を振るったが、同時にアラガミは飛翔しその攻撃は空を斬った。

 

ソーマ「ちっ!!」

 

シドウ「(見えないはずの背後からの攻撃を避けた?

偶然か、それとも……)

こら一筋縄ではいかなさそうだな……」

 

同時刻、アナグラの訓練室にトシの姿があった。

 

今日から外出許可が下り、リンの許しも得て鈍った体を鍛えなおしていた。

ただし、付き添いとしてブレンダンも一緒にトレーニングをしていた。

 

トシ「ふぅ……」

 

一通り訓練を終えると、トシは近くの椅子に座り汗を拭いていた。

 

ブレンダン「お疲れ様。」

 

するとブレンダンも訓練を終えたのか、両手に飲み物を持ってトシの隣に座った。

 

ブレンダン「飲むか?」

 

そして片手の飲み物を差し出すと、トシはお礼を言ってグビグビと飲み始めた。

 

ブレンダン「調子の方はどうだ?」

 

トシ「暫く寝たきりでしたからね……

体の方は少し筋肉が固まってしまいましたが、然して問題はありません。」

 

ブレンダン「そうか。

なら、前線復帰もすぐか?」

 

トシ「このままでしたら後2、3日で行けます。」

 

ブレンダン「そうか。

だが、無理だけはするなよ?」

 

トシ「分かってますよ。

……それより、今日は人が少ないですね?」

 

そう言いながら、トシは辺りを見渡した。

 

普段ならトレーニングをする神機使いや訓練生の姿が何人も見受けられるが、今日はトシとブレンダンを除くと2、3人しかいなかった。

 

ブレンダン「ああ、最近慌ただしいからな……

皆、任務に行っているんだろう。」

 

トシ「……皆、戦っているのに俺だけのうのうと休んでいるなんてな……」

 

ブレンダン「気に病む事はない。

それにどちらかと言えば、お前は今まで働きすぎていたんだ。

たまには休むんだ。

その間、お前の穴は俺達が埋める。」

 

トシ「……すいません。」

 

ブレンダン「何、気にする事はない。」

 

トシ「(空気王?)」

 

ブレンダン「ん、どうかしたか?」

 

トシ「いえ、なんでも。」

 

ブレンダン「まあ、休むとい事に関してはシドウにも言えるんだがな。」

 

トシ「……そう、ですね。」

 

ブレンダン「なんでも、今日は未確認のアラガミの討伐任務に向かったと聞く。」

 

トシ「未確認のアラガミ、ですか……」

 

同時刻・嘆きの平原……

 

シドウ「コウタ、右だ!!」

 

シドウの声にコウタが反応し、左に回避行動をとると、先程までコウタがいた場所に大きな水の塊が降り注いだ。

 

コウタ「わ、わりぃ……」

 

シドウ「油断するな、次が来るぞ。」

 

コウタ「あぁ。」

 

無事を確認しながら軽く言葉を交わしながら、シドウは標的を見た。

 

シドウ「……にしても、やりずらいぜ。」

 

シドウが眼にしていたアラガミは宙に浮き、シドウ等を見下ろしていた。

 

ソーマ「愚痴る暇があったら、策を考えやがれ。」

 

気がつくと、ソーマがアラガミの動きに注意しながらシドウの近くに来ていた。

 

シドウ「つっても、俺はトシやブレンダンのように作戦考えるの苦手だからな……」

 

ソーマ「知るか……」

 

シドウ「まあ、今は俺達が銃形態で狙撃しながら、隙見りゃお前が攻め込むって感じだな。

暫くは様子見だ。」

 

ソーマ「了解だ。」

 

シドウはソーマが再びアラガミの近くに移動するのを見、神機を銃形態に変えた。

 

シドウ「にしても、本当にやりずらいな!!」

 

そう言いながら、引き金を引きバレットを放った。

 

そのバレットは一直線にアラガミに向かい、その体に付いた鱗の一部を電撃によって焼いた。

 

その攻撃からか、アラガミはシドウに標的を定め上空から大きな口を広げながら向かってきた。

 

真正面から来た為、シドウは難なくその攻撃を避け再びバレットを放ったが、アラガミは再び浮上しバレットは空を進んでいった。

 

シドウ「あ~、本当やりずらいな!!」

 

シドウも今まで『ザイゴート』種や『サリエル』種など空中に浮いているアラガミを幾度となく相手にした。

だが、今対峙しているアラガミは初めて相手するアラガミだが、見た目は今まで相手にしたアラガミととても似ていた。

 

パッと見大きすぎるヒレと頭を持ち、砲台のような突起物と紫色の鱗に覆われたアラガミ『グボロ・グボロ』。

本来ならば、水陸行動のアラガミであり宙に飛ぶはずもなく、今までその様な報告も噂も聞いた事がない。

 

だが『グボロ・グボロ』の背びれの後ろに、巨大な黒い球体が存在していた。

それは今まで『ザイゴート』種だけも見受けられた卵殻だった。

『ザイゴート』種はオラクル細胞で進化した空気より軽いガスを体内に充満させている事で浮いてが、『グボロ・グボロ』程の大きさを宙に浮かすためにより巨大なものになっていた。

 

そして本来棘があるだけの尾には鬼のような顔をした巨大な尾になっていた。

その尾は二足歩行の小型アラガミ『オウガテイル』種のみ見受けられた。

 

だが今シドウ達が対峙しているアラガミは、ベースは『グボロ・グボロ』でありながら、そこに『ザイゴート』種や『オウガテイル』種などを組み合わせたまるでキメラのようなアラガミだった。

 

複数のアラガミがそのままの姿で集合したような進化を遂げたアラガミの複雑な動きに、シドウを含め皆が不要に攻め込めず、決定打を与える事も出来ず長期戦となりつつあった。

 

シドウ「ちっ、たく嫌になるぜ。」

 

アリサ「だから愚痴らないでください。」

 

予想外の長期戦に徐々にしびれを切らし始めたシドウに、アリサが制止をかけたがシドウ本人もその事は分かっていた。

 

シドウ「わーてるって。

たくっ、こりゃ報酬はずんで貰わないと割にあわねーな!!」

 

いやいや言いながらもしっかりと手を動かしていたシドウは砲撃を一旦やめ、さっとポッケから持ってきたスタングレネードを投げ、一時的とは言えアラガミの視界を封じた。

 

シドウ「そーらよ!!」

 

視界を一旦封じてもなお、宙にとどまり続けるアラガミ目掛け、シドウが一気に接近しながら神機を銃形態から剣形態に変えた。

 

コウタ「ちょ、シドウ!?」

 

いきなり前に出たシドウにコウタは驚き、アリサもまた銃撃の手を一旦休めた。

 

シドウ「手休めんな!!

援護しろ!!」

 

だがシドウがそう叫ぶと再びコウタとアリサはバレッドを発射し、背後から飛んでくる2人のバレットと共にアラガミの元へ全速力で走った。

 

そしてアラガミが視界を回復すると同時にシドウが勢いよくジャンプし、『グボロ・グボロ』の砲台目掛け神機を突き刺した。

同時に、砲台に大きくひびが入りアラガミは苦しみ地面へと落ちた。

 

シドウ「うおっ、と!!」

 

突き刺した事がアラガミにとってここまでの痛手となるとは思わなかったシドウはアラガミと一緒に落ちてしまった。

 

ソーマ「ナイスだ……」

 

だが、アラガミが地面に落ちてくるのを予期していたかのように、ソーマが神機に力を溜めており、地に落ちたと同時に溜めた力をアラガミ目掛け解放した。

 

ソーマの斬撃は巨大な卵殻に直撃し、「ピシッ」と音と共に一気に砕けた。

 

シドウ「おっ、流石――離れろ!!」

 

一瞬、決定打を与え歓喜仕掛けたが、次の瞬間砕けた卵殻から大量の紫色の煙が発生した。

 

 

シドウの声に反応しソーマが後ろに飛び煙から離れ、シドウもまた態勢を立て直しその場から退いた。

 

ソーマ「……無事か?」

 

バランスを崩しながら地面に落ちたシドウを心配してか、一番近くにいたソーマが無事を確認する為に、煙と煙に隠れたアラガミに注意しながら駆け寄って来た。

 

シドウ「まーな。

一応、受け身も取ったし無傷だ。

それより、殻割ナイスだ。」

 

ソーマ「割ったはいいが……

どうする?」

 

シドウ「そうだな。

あら、恐らく『ザイゴート』種の毒だろうな。

有害だから下手に近づけねえぞ。」

 

ソーマ「の、ようだな。」

 

シドウ「つーことで、姿も見えにくいし一旦狙撃して牽制するか。

……あれ?

俺の神機は?」

 

ソーマ「……あれじゃねーか?」

 

ふと、気がつけばシドウの手に神機は無く、ソーマが指さした方には煙の中かすかに見えていたアラガミの砲台に突き刺さった神機の柄が見えた。

 

シドウ「……アリサ、コウタ。

ちょっとあれ、撃ってくんね?」

 

アリサ「全く、何やってるんですか……」

 

コウタ「まっ、お前らしいけどな。」

 

2人は少し呆れたように言ったが、神機を構え煙の中うごめいているアラガミにバレットを連射した。

暫くすると二人とも弾となるオラクル細胞が切れてしまったが、アラガミもまた動く反応がなくなった。

 

ソーマ「……やったか?」

 

シドウ「ソーマ、それフラグや。

こう言うのはコウタが言わねーと。」

 

コウタ「えっ、何で俺?」

 

シドウ「全てのフラグをぶっ壊すフラグブレイカーだから。」

 

コウタ「いや知らねーよ!!」

 

シドウ「何言ってんだ。

いっつも死亡フラグとかへし折ってるだろ?」

 

コウタ「だから知らねーよ!!」

 

アリサ「全く……

こんな時までふざけないで下さいよ。」

 

ソーマ「同感だな……」

 

こんな時まで、ふざけだす2人にアリサとソーマは呆れていたが、シドウの眼はアラガミに向けられていた。

 

シドウ「へいへい、分かってるって。

まあ、未だ毒であろう煙も消えねーしな……

さーて、どうすっかね?」

 

アリサ「リーダーは貴方なんですから、ちゃんとしてください。」

 

シドウ「つっても、うかつに近づくわけにも行かないから、現状様子見しか出来ね―な。」

 

ソーマ「動く気配はないが、まだ毒煙が出てるからな……」

 

シドウ「だな。とっととコアの摘出と神機を回収したいんだがな……」

 

そう言い、軽くため息をし無意識に軽く空を見ながら考え事をした瞬間、突如アラガミが息を吹き返したように動いた。

それも、口を大きくあけながらシドウ目掛けトップスピードで向かってきた。

 

ソーマ「なっ!?」

 

あまりの突然な事と、煙により直前までの動作が見えず、既に相手は十分な速度が出ている状態での突進。

更にこの場にいる全員が既に仕留めたモノと思い込んでいた。

 

だからこそ、全員はその突然な事に一瞬体が強張り、唯一ソーマだけが誰よりも一瞬早く反応出来たが、それでも声を発する事しか出来なかった。

標的となったシドウを除いては。

 

シドウ「っ!!」

 

皆が一瞬固まっている中シドウだけが体が反応し、まるでこうなる事を予期していたであろうかのように、既に回避行動をとろうとしていた。

だが、それでも完全に避けるが出来ずアラガミの大きな牙が左腕をかすめ、大きな体でシドウを吹き飛ばした。

 

シドウ「がっ!!」

 

だが致命傷は避けたとは言え、受け身も取れず勢いよく地面にたたきつけられ、すぐには動けなかった。

 

アリサ「シドウさん!!」

 

ソーマ「ちっ!!」

 

コウタ「クソ!!」

 

三人はシドウが吹き飛ばされて、ようやく現状を理解したと同時に各々即座に次の行動をとった。

コウタとソーマは、シドウが追撃されないようにアラガミを攻撃し注意を引き、アリサはアラガミの動きを見ながらシドウの元へ行った。

 

アリサ「シドウさん、大丈夫ですか!?」

 

シドウ「っ……

あまり大丈夫じゃねーな。」

 

かなり激しく吹き飛ばされたシドウだったが、それを感じさせないようにすぐに立ち上がったが、牙がかすめた左腕からはかなりの量の血が出ていた。

 

シドウ「うまい事、衝撃軽減させて受け身取ったけど……

流石にこっちは避けきれなかったか……」

 

アリサ「分かりましたから早く止血を!!」

 

シドウ「……はぁ。」

 

だが、心配するアリサを横目にシドウは静かにため息をつくと、服の一部を裂いた。

 

アリサ「……シドウさん?」

 

怪我を追ってもなお、今まで以上に冷静なシドウにアリサは軽く驚くのと同時に恐怖すら感じていた。

何故なら、その眼は普段見せるような気だるそうな感じでもなく、アラガミと向かう時の戦いの眼でもなかった。

その眼は、ただ目の前のモノを壊す殺気が滲み出ている恐怖を感じる眼だった。

 

シドウ「っと、応急処置はこんなもんでいいかな?」

 

そんな中、シドウは裂いた服を包帯変わりとし左腕に巻き終わると、静かに息を整えていた。

 

アリサ「シ、シドウさん?」

 

シドウ「アリサ……」

 

アリサ「は、はい?」

 

シドウ「俺が合図したらスタングレネードを投げろ。

いいな?」

 

アリサ「えっ、どうし――」

 

するとシドウはそれだけ言い、アリサの返事を待たずコウタとソーマが交戦しているアラガミの元へと駆けだした。

 

アリサ「あっ、シドウさん!!」

 

だが、シドウを止める事は出来ずアリサもまたシドウの後を追った。

 

その間にもコウタが銃撃、ソーマが斬撃で応戦していた。

 

卵殻が割れ再び宙に浮く気配はないが、それでも予備動作が少なく複雑な動きにコウタとソーマは苦戦をしていた。

 

そしてコウタは予想外の水砲の砲撃からぎりぎりのところで避け態勢を立て直した。

 

コウタ「っ、あぶね!!」

 

ソーマ「無事か?」

 

コウタ「なんとかね。

けど、ちょっと厳しくなってきたかな。」

 

ソーマ「そうか……

ちょっとならまだ行けるな。」

 

コウタ「おまっ……

っとまあ、そうだけどさ。」

 

ソーマ「弱音はいてる暇があるなら手動かせ。

来るぞ。」

 

コウタ「分かってるって。」

 

軽く会話をしながら、2人は正面から突っ込んできたアラガミを避けようと二手に分かれようと移動しようとした。

 

だがそれと同時に辺りにまばゆい光に一瞬包まれた。

 

コウタ「のわっ!?」

 

ソーマ「っ!?」

 

2人はその光がスタングレネードのものだと瞬時に理解したが、なんの予告のないため一瞬ではあるが眼を庇ってしまった。

 

ソーマ「ちっ、先に言――なっ!?」

 

真っ先に視界が回復したソーマは、軽く眼を覆っているコウタ。

そして完全に視界が潰されたアラガミ。

そしてそのアラガミに向かい左腕を真っ赤にしながら走っているシドウの姿を見た。

 

ソーマ「なっ、あのバカ!!」

 

まさか、神機を持たず大怪我を負ったにも関わらず向かっていくシドウを見て驚いたが、後を追うような形でソーマもまたアラガミに向かって行った。

 

ソーマ「ここは俺達に任せててめぇは退け!!」

 

ソーマはシドウの一歩後ろまで追いつき、退くよう言ったがシドウは無言のまま走っていた。

 

ソーマ「おい!!」

 

シドウ「アリサ!!」

 

無視され、アラガミの視界も回復し、距離も眼と鼻の先程まで接近していた。

そんな中、またソーマが呼びかけたがその呼びかけには答えず、変わりにアリサの名を叫んだ。

すると、後方から再びスタングレネードの光が辺りを覆い視界を回復したばかりのアラガミの眼を再び潰した。

 

シドウ「ソーマ、背後に回って遊撃!!

2人は援護!!」

 

スタングレネード発動と同時にシドウが急に指示を出し、全員は一瞬戸惑ったがすぐさま行動に移した。

そしてシドウだけはそのまま接近し、アラガミが視界を回復したと同時に再び勢いよくジャンプし、砲塔に突き刺さったままの神機を掴んだ。

 

シドウ「さ~て……

そろそろ返してくれよ、俺の相棒をよ。」

 

シドウは神機を引きぬこうとし、アラガミもまた痛みと邪魔者を排除しようと激しく動き出した。

 

シドウ「うおっ!!

いい加減に返せや!!」

 

そして叫び声と共に、更に引くと同時にアラガミの振りほどこうと頭を大きく振った。

 

シドウ「なっ!!

うおっ!?」

 

そして、シドウはその勢いに負け再び飛ばされてしまった。だが――

 

シドウ「ぐっ……

ててっ、やってくれるな。

だが、返してもらったぜ。」

 

軽く足がふらつきながらも立ち上がったシドウの手には、先程までアラガミに突き刺さっていた神機があった。

 

シドウ「さ~て……

借りはしっかり返してもらうぜ……」

 

そう言いシドウは懐から体力を回復する為に回復錠を2、3個口に含むとアラガミに向かって行った。

アラガミもまた標的をシドウだけに絞り、コウタとアリサの狙撃。

そして一番近くにいるソーマを無視し、シドウに向かって突っ込んでいった。

 

そして両者が衝突する寸前で、シドウが体をひねりアラガミの突進を紙一重で避けた。

 

シドウ「うぉぉぉぉ!!」

 

だが、シドウは避けると同時に神機をアラガミの口から一直線に斬りかかっていた。

神機の刃が、アラガミを斬り裂くと同時に「ガリガリ」と鈍い音と共に「ピシッ!!」と何かに亀裂が入る音がした。

 

シドウ「ぐっ……

ぬぉぉぉぉぉ!!」

 

シドウはアラガミの突進の勢いを利用しながら斬り裂こうとするが、その負担が全て右腕に集中していた。

普通なら、アラガミの強力な突進な力を人間の細い腕が受け止めきれるわけがない。

 

シドウ「ぜやぁぁぁ!!」

 

だが、シドウは耐えきりアラガミがシドウを通り過ぎた。

 

シドウ「はぁはぁ……

ぐっ……」

 

だが、シドウは全体力を使いきったのかその場で倒れた。

 

アリサ「シドウさん!!」

 

慌ててアリサが駆け寄ろうとするが、先にアラガミがゆっくりとシドウの方に振り向いた。

 

コウタ「なっ!?」

 

ソーマ「ちっ!!」

 

まだアラガミが生きてる事が分かったコウタとソーマも急ぎ駆け寄り神機を構えた。

そしてアラガミは駆け寄ってくる3人を見、威嚇しようと大きく体を動かそうとしたした瞬間、急に左側から大きな切れ込みが入った。

そのままバランスを崩し、アラガミはアジの開きのように体が大きく開けてしまった。

 

アリサ「えっ……」

 

ソーマ「なっ!?」

 

コウタ「うげぇ……」

 

皆があまりにもグロテスクな光景に驚いている中、開けたアラガミの体の中央部辺りにある綺麗な結晶のようなコアが急に弾け飛び、徐々にアラガミの体が霧散し始めた。

そんな中、シドウは静かに時計を取り出し時刻を見ていた。

 

シドウ「……たくっ、もうこんな時間かよ。

もっとのんびり寝たかったぜ……」

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