新訳 神殺しの者第一幕『神を喰らいし者』   作:コードネームTOSI

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第五章:新たな若葉と忘我の群

新種と思わしきアラガミとの戦闘から翌日・病室……

 

シドウ「……なあ、トシ?」

 

トシ「どうした?」

 

白が基調となった部屋に、今はシドウがベットに寝かされ、トシはベットを椅子代わりにしながら本を読んでいた。

 

シドウ「何で俺両手が包帯でぐるぐる巻きにされてんの?

コサック踊れってか?」

 

トシ「左腕は地味に深く切れていたんだろ?」

 

シドウ「あ~、肉が軽く見えてたな。」

 

トシ「右腕に至っては骨が折れてたそうだな。」

 

シドウ「やっぱ片手であの突進の衝撃は受けきれなかったか……」

 

トシ「……無茶しすぎだ、バカ。」

 

シドウ「お前ほどじゃねーよ。」

 

トシ「……まあ今回の報告書はアリサが提出してくれたそうだし、お前はゆっくり休め。」

 

シドウ「くはっ、そうさせてもらうかな。」

 

トシ「……にしても、新種とは言えここまで怪我したのは久しいな。

と、言うより俺が知る限りでは初めてか?」

 

シドウ「あ~、かもな。」

 

トシ「休みの日まで何をしているかは知らないが、休める時は休め。」

 

そう言い、トシは立ち上がり部屋を出ようとした。

その際、シドウがかすかに険しい顔になったのを見逃さず。

 

シドウ「な~に、言ってんの。

俺ってば、休みはいっつも寝てるぜ。

もし疲れてるんじゃねーかって言いたいなら、ただの寝疲れだろーよ。」

 

トシ「そうか……

なら、適度な睡眠をすることだな。」

 

シドウ「つーか、どっか行くのか?」

 

トシ「支部長室だ。

ちょっと呼び出しをされていてな。

もう、時間だからな。」

 

シドウ「な~んかやったのか?」

 

トシ「…………」

 

シドウ「トシ?」

 

トシ「最近、本部が新型神機の製造に力をつけたようだ。

なんでも新たな刀身や銃形態の開発にも着手しているそうだ。」

 

シドウ「なるほど。

つまり、その関係と言う訳か。」

 

トシ「恐らく、だろうがな。」

 

シドウ「何か引っかかるのか?」

 

トシ「ああ……

だが、考えていても仕方がない。

とりあえず行ってくる。」

 

そう言い、トシは病室を後にした。

 

残ったシドウは一人病室の天井を見ていた。

 

シドウ「……新型に力を入れてる、か。」

 

そう静かに呟くと、何かを決めたように起き上がり、何とか自由がきく左手を使って携帯端末を手にした。

 

時は経ち、数十分後にはいつもの服装に着替えたトシが支部長室にいた。

そこには、トシと支部長代理であるペイラー・榊の他にもう一人。

 

高いヒールを履き、白い服に身を包んだ女性。

現在第一から第三部隊の指揮・統括と、新人神器使いの教官を兼任する雨宮ツバキがいた。

 

ツバキ「来たか。」

 

トシ「で、何かご用でしょうか?

ツバキ教官もいると言う事は、個人的なお願いでもなさそうですが?」

 

博士「そうだね。

単刀直入に言うと、明日新人が3人ここに配属される事になったよ。

そこで、彼らは君の部隊。

第七部隊に配属する事にしようと思っている。」

 

トシ「つまりその新人の隊長及び指導役をしろと言う訳ですか?」

 

博士「そうだよ。

と、言っても最初の基本的な訓練などはいつも通りツバキ君にお願いするからね。」

 

ツバキ「分かりました。」

 

トシ「こちらも了解しました。

ですが、一つ疑問があります。」

 

博士「何だい?」

 

トシ「第七部隊は他の部隊とは違って支部長の独立部隊のようなもの。

何故、他の部隊ではなく第七部隊に?」

 

博士「なるほど、君の意見ももっともだ。

けど、それには2つの理由があるよ。」

 

トシ「……なんですか?」

 

博士「一つとして、現状第七部隊は君一人だ。

確かに、ここでは部隊員は他の部隊の応援に行ってリして隊として常に機能しているわけではない。

けど、一応は正式な隊でもあるから、いつまでも君一人と言う訳にもいかないんだよ。」

 

トシ「……もう1つの理由は?」

 

博士「実は3人とも新型神機でね。

これを期に第七部隊は新型神機の部隊として、遊撃隊になってもらおうと思っているんだよ。」

 

新型の神機使いが3人も新たに配属と聞き、少し眉を顰めるとツバキが補足として最近のフェンリルの事情を説明し始めた。

 

ツバキ「ここ最近、本部が新型神機に力を入れているのは知っているな。」

 

トシ「えぇ……」

 

ツバキ「今では全支部に3、4人は新型が配属となっている。」

 

トシ「……激戦区のここ極東では更に戦力の強化と言ったところですか。」

 

ツバキ「そうだ。

更には、旧型神機でも新たに新型神機が適合できれば神機を更新する事も始めた。

今後、更に新型神機使いが多くなるだろう。

その時は、初期の新型神機使いとして見本となってくれ。」

 

トシ「……了解しました。

微力ながら、全力を尽くします。」

 

翌日、トシはアナグラのエントランスにいた。

 

そしてトシの他にツバキと、ま新しい軍服を着た3人の男女がいた。

 

ツバキ「本日付で、ここ極東支部に配属となった新人3人だ。

先日言った通り、お前の部隊に配属となっている。

よろしく頼むぞ。」

 

トシ「了解です。」

 

ツバキがそう言うと、トシの前に1人の青年が出てきた。

 

リョウ「俺の名はリョウ。

原田リョウ。まあ、とりあえずよろしく頼むぜ隊長さん。」

 

身長が少し高いため、トシを見下ろすように言うと隣にいた少女が慌てて口を挟んだ。

 

???「ちょっとリョウ!!

そんな言い方失礼でしょ!!」

 

リョウ「あぁ、別にいいだろ?

たかが自己紹介なんだしよ。

文句あんのかよ?」

 

???「礼儀ってもんがあるでしょ!!」

 

トシ「俺は別に構わないぞ。」

 

リョウ「ほら、隊長さんもああ言ってる事だしよ。」

 

???「ですが……」

 

トシ「あまり、気をはりすぎても碌な結果にはならないぞ。

ところで君は?」

 

エミリ「あっ、申し遅れました。

私は七瀬エミリと申します。

先程はお見苦しい所を見せてしまい申し訳ありません。」

 

リョウ「だ~、お前はいっつも初対面の相手に対して固たすぎんだよ。

もっと気楽にいこうぜ?」

 

エミリと名乗った少女に対して、リョウはああだこうだ言い始めた。

 

エミリ「あんたは気楽すぎなのよ。」

 

トシ「……ずいぶん親しげだな。」

 

2人のやり取りを一通り見て、トシは妙に親しげなのに疑問を思った。

 

エミリ「あっ、私達3人とも元は同じ孤児院出身なんです。」

 

トシ「なるほど、それでか……

と、言う事は君も?」

 

疑問の解答を聞くと、話を次に進めようと最後の黒髪の少女に声をかけた。

 

アキ「……はい。

……竜崎アキです。

よろしく、お願いします。」

 

トシ「(竜崎?俺と同じ名字だと?)

ああ、よろしく頼む。にしても、3人とも顔見知りと言う事なら妙に気を張ることなく気軽にやってくれ。」

 

リョウ「あ~、つっても久々に再会したんだけどな。」

 

するとリョウから予想外の答えが返ってきた。

 

トシ「そうなのか?」

 

リョウ「ああ。

俺とエミリは結構前に養子って事で院から出てったからな。」

 

トシ「養子に?」

 

エミリ「えぇ……

とても親切な方達で、感謝してもしきれません。

だから少しでも恩を返そうと、神機使いに。」

 

トシ「ご家族は反対されなかったのか?」

 

リョウ「そらしたけどよ、最後はお前の好きなようにしなさいってね。」

 

トシ「そうか……

守るべきモノがあるのはいいことだ。

時としてその守る思いが大きな力を発揮する。」

 

トシはそう言ったが、少し恥ずかしかったのか目線は常に少し下に向いていた。

 

アキ「…………」

 

だが、この時アキが無表情ながらトシに睨みを利かせていたのに気が付きながら。

 

ツバキ「あいさつは済んだようだな。

これより3人は訓練室にて、模擬演習を行ってもらう。

3人はついてこい。」

 

リョウ「へいへい~」

エミリ「はい。」

アキ「…………」

 

3人は各々返事をや行動で示し、ツバキの後を追った。

 

エントランスに残されたトシは近くの椅子に座り、天井を見上げた。

 

トシ「リョウにエミリ。そしてアキ、か……」

 

そしてどこか懐かしそうに、3人の名を口にした。

 

そして新人3人が極東支部に配属になって3日が経ったある日。

 

トシは一人神機保管庫に来ていた。

そして、約2年間共に闘ってきた自らの神機を見つめていた。

 

リッカ「こんなところでどうしたの?」

 

トシ「リッカ……」

 

すると、手に何かの缶ジュースを持ったリッカが側までやってきていた。

 

トシ「……いや、明日久々に使うからな。

ちょっと顔を見にな。」

 

リッカ「そっか、明日から任務に復帰か……

確か新人さんとの実地演習だっけ?」

 

トシ「ああ、まずは俺も簡単な任務からこなしていきたいしな。」

 

リッカ「そっか……

まあ、それが君達の仕事だから仕方ないけどさ……

けど、無理だけはしないでね?」

 

トシ「ははっ、俺よりシドウに言ったらどうだ?

此間ので、神機にも相当なダメージがあったんだろ?」

 

リッカ「あ~、まあ丁度変えの部品があったからすぐ直せたよ。

けど、本人はまだ時間がかかる見たいだね。」

 

トシ「オラクル細胞で回復も早いが……それでも後1週間は無理だろうな。」

 

リッカ「本当、自分をもっと大事にしなと駄目だよ?

君達は神機と違って、替えがあるわけじゃないんだし。」

 

トシ「……そうだな。

仕事柄絶対とは言えないが、無茶はしないよう気を付けるさ。」

 

リッカ「うん、ならよろしい。」

 

トシ「……さて、とりあえず俺はそろそろ戻る。

神機の調整頼むぞ?」

 

リッカ「任せなさい。」

 

そう言いトシはエレベーターの方へ、リッカは神機の整備のため奥にある端末をいじり始めた。

 

トシ「…………」

 

トシはエレベーターに乗り壁を背にし、何か考え事をしているのか眼をつむっていた。

 

トシ「(無理だけはしないでね、か……

ずいぶんと、久々に言われた気がするな。

また言われるようじゃ、俺もまだまだかな?)」

 

そして眼が開けた時はどこか悲しそうな眼をしながら、左腕にあるブレスレットを触った。

 

翌日、贖罪の街にトシと新人の3人が来ていた。

 

トシ「では、これより実地演習を行う。

今回の演習相手は、あれだ……」

 

そう言い、トシが高台から指をさした方向にアラガミの死骸を喰らっているオウガテイルが数匹見られた。

 

エミリ「えっと……

これって実戦、ですか?」

 

オウガテイルの姿を確認すると、エミリが少し怯えた声で聞いてきた。

 

トシ「何のための実地演習だ。」

 

エミリ「けど、こんないきなり……」

 

トシ「訓練の成果を見る限り大丈夫さ。

そう気を張らず落ち着いてやればいい。」

 

エミリ「で、ですが……」

 

リョウ「だー、腹くらいくくれや。

そもそも神機使いになる時に覚悟は決めただろーが!!」

 

いつまでも不安そうにしているエミリにしびれを切らしたのか、リョウが大声で言い放った。

 

トシ「リョウの言うとおりだな。

それに言ったろ?

お前たちなら大丈夫だ。」

 

エミリ「わ、分かりました。」

 

トシ「……アキも大丈夫だな?」

 

先程から一言も喋っていない事を気にかけトシが話しかけるが、アキは至極落ち着いていた。

 

アキ「……分かっています。」

 

トシ「そうか、ならいいが……

では、これより今回の任務内容を告げる。

現在ここフィールド名、贖罪の街にて複数の小型アラガミの反応が見受けられた。

今回はその小型アラガミの掃討だ。」

 

リョウ「ん、数わかんねーの?」

 

トシ「詳しくはまだ分からないが5、6頭と言ったところだろう。

訓練の成果を見る限り……

リョウ、お前が前衛だ。」

 

リョウ「おっ、俺が斬り込むのか?

分かったぜ。」

 

トシ「アキ、お前は後衛に回りバックアップをしてくれ。」

 

アキ「了解しました。」

 

エミリ「あの~、私は?」

 

トシ「エミリは遊撃だ。

状況を判断しつつ、遠近を切り替えて行け。」

 

エミリ「は、はい!!」

 

トシ「俺は全員のサポートと言ったところだ。

とりあえず、現状の個々の能力から部隊での役割はこんなところだろう。

それでは、最後にある意味極東支部で守らなければならない命令を言っておく。」

 

リョウ「あ?

そんなのあんのかよ?」

 

エミリ「というより、ある意味って?」

 

トシ「元はリンドウさんの命令なんだが、これは皆に言ってることだからな。

まず、死ぬな。

死にそうになったら逃げろ。

そんで隠れろ。

運が良かったら不意をついてぶっ殺せ、だ。」

 

リョウ「は、んだよそれ?」

 

トシ「絶対に死ぬな、と言う事だ。

いいか、英雄気取りで玉砕したって誰も誉めてはくれない。

自分の身も守れない奴が気取るな。……いつか、お前たちにも分かる時がくるさ。」

 

リョウ「んだよそれ……」

 

トシが言った意味が分からず、リョウは少し機嫌が悪くなったが、エミリは妙にくらいついてきた。

 

エミリ「あの~

逃げる事も隠れる事も出来なかったどうするんですか?」

 

トシ「ああ、その時はな……

生きる事から逃げるな、だ。

まあ、詳しく知りたかったらリンドウさんなりシドウなりでも聞くといい。良い勉強になるだろう。

さて、そろそろ時間だ。

行くぞ。」

 

そう言い、まずトシが比較的発見されずらい高台から飛び降り、アラガミが徘徊する地に足を踏み入れた。

 

リョウ「ちっ、とりあえずやってやんよ!!」

 

エミリ「落ち着いて、落ち着いて私……

よし!!」

 

アキ「…………」

 

そして3人は気合を入れなおし、自分達の指揮官に続き高台から降り立った。

 

トシ「……いたな。」

 

数分後、トシ達は建物の物陰に隠れながら数十メートル先にいるオウガテイルを見つめていた。

 

トシ「3体か……

全員大丈夫か?」

 

リョウ「ったりめーだ。

いつでも行けるぜ!!」

 

エミリ「声がでかいよバカ!!

私もいつでも行けます。」

 

リョウは改めて気合を入れなおし、エミリも覚悟を決めた。

そしてアキは大きく頷き、オウガテイルを逃さぬようしっかりと視界に入れていた。

 

トシ「よし、行くぞ!!」

 

そしてトシの掛け声と共に全員が一斉に物陰から飛び出し、オウガテイルに向かって行った。

オウガテイルもまたトシらの姿を確認し、まず威嚇をしようと口を大きくあけうめき声を上げたが、その隙にリョウが一気に距離を詰め、その勢いのままバスターブレードを振った。

振るった重い刃は頭を捉え、一撃で怯みオウガテイルは軽く後退した。

 

リョウ「ハッ!!

ザマー見ろ、このバケモンが!!」

 

だが、怯んだ事に手ごたえを感じたのか攻撃の手を止めてしまい挑発めいた言葉を吐いてしまった。

その隙にもう一体のオウガテイルがリョウに標的を定め、大きな口を広げ襲いかかってきていた。

 

エミリ「やっ!!」

 

だがアキの後方からのレーザー狙撃とエミリが斬りかかり、オウガテイルはリョウを喰らう寸前で一旦退いた。

 

リョウ「す、すまねえ……」

 

エミリ「油断しないでよね!!」

 

互いに無事を確認するように声をかけたが、まだ場馴れしていない2人にとっては気の緩みとなってしまった。

その隙に2人の背後に、最初リョウによって怯まされたオウガテイルと先ほどとは別個体が襲いかかろうとしていた。

 

リョウ「あっ!!」

エミリ「しまっ――」

 

気がついた時には、既におぞましい口が眼の前まで来ており2人は恐怖からか反射的に眼を閉じてしまった。

 

リョウ「……あれ?」

 

だが、それから1秒程経ったが何も感じない事に疑問を感じたリョウが眼を開けると、目の前にはオウガテイルだけでなくトシが立っていた。

 

そして数メートル先には、斬り伏せられた体から黒い霧を出しているオウガテイルが2体横たわっていた。

 

リョウ「あ、竜……」

 

エミリ「隊長……」

 

トシ「……いいか。

気を抜くのは任務を無事終え、アナグラに帰った時にするんだ。」

 

そう言い神機を剣形態から銃形態に変え最後の1体に向かってバレット放った。

 

そのトシの姿を見て、2人も続くように銃形態に可変しバレットを放った。

 

トシとエミリの弾丸にアキのレーザー。

そしてリョウの爆発系のバレットを一斉に浴び、最後の一体も大きく体を揺らした後地面に倒れた。

 

トシ「……こんなところか。」

 

最初のオウガテイルとの戦闘から数時間が経っていた。

 

これまでで討伐したアラガミの数は計12頭に及んだ。

 

発見されたのはオウガテイル以外に、『コクーンメイデン』。

更にはここ最近新たに発見された新種の砲台型アラガミ『ナイトホロウ』と昆虫の様な外見をしたアラガミ『ドレッドパイク』だった。

 

新人に対しては初めての任務内容とは言え掃討数が多く体力面などの問題もあったが、新人とは言え個々の高い能力とトシの正確な指示及び援護により無事に掃討した。

 

トシ「……思ったよりも数がいたな。

皆、大丈夫か?」

 

リョウ「まあ、一応はな。」

 

エミリ「もうクタクタですよ……」

 

アキ「…………」

 

リョウとエミリは地べたに座り込み、アキも立ってはいたが無表情ながら疲れているのが分かった。

 

トシ「(初めての実戦でこなす数は無かったな……

3人同時ともなると、と思ったが……

流石に数が多かったか……)」

 

トシ「とりあえず皆、帰るぞ。

明日はゆっくり休みといい。」

 

そう言い、トシはヘリの合流地点へ向かい歩きだそうとすると、急に端末から連絡があった。

 

ここ最近、神機使いにより正確に情報を発信しようと、支部との通信に力が入れられ、アラガミに位置や想定外のアラガミの侵入などの連絡が以前よりも正確に且迅速に行えるようになりつつあった。

 

トシ「どうかしたか?」

 

すると端末からヒバリの慌てた声が聞こえてきた。

 

ヒバリ『トシさん、大変です。

近隣にて特殊な偏食場パルスの発生を確認しました。

そちらに多数のアラガミが接近しています!!』

 

トシ「何!?種別は確認できたか?」

 

ヒバリ『現在確認出来ているのはオウガテイル種とザイゴート種のみです。

数は……およそ50以上はいます。』

 

トシ「……分かった。

新人3人を帰還させる。

早急にヘリの用意をしてくれ。」

 

ヒバリ『え!?トシさんはどうするんですか?』

 

トシ「この先に難民キャンプがある。

そこを襲撃されたら、被害は想像を絶する。

小型だけなら、その数でも何とかいける。

……今支部内で出れそうな人員は?」

 

ヒバリ『駄目です、全部隊が出払ってます。』

 

トシ「……bad timingだな。

分かった、俺が時間を稼ぐ。」

 

ヒバリ『分かりました。

手が空いた部隊をすぐにそちらに向かわせます。』

 

トシ「頼んだ。

……アラガミが集結するまでの推定時間は?」

 

ヒバリ『約……20分後だと思われます。』

 

トシ「了解した。」

 

そう言いトシは通信を切った。

通信の内容は3人も聞こえており、皆が不安そうな眼でトシを見ていた。

 

トシ「……俺は追加任務が出来た。

3人は合流地点まで行き、アナグラに戻れ。」

 

リョウ「けどよ!!」

 

突然の事でリョウがくらいついてきたが、トシはここ一番で大声でそれを拒否した。

 

トシ「これは命令だ。

今日実戦に出たばかりで、既に力を使いきった奴らを再び戦わせるわけにはいかない。」

 

エミリ「けど、それだと隊長一人でさっきの何倍もの数を相手のするの?」

 

トシ「最悪、そうなるな。」

 

エミリ「それにこの先にはキャンプがあるんだろ!?

だったら――」

 

エミリも状況を分かりつつも、1人で数多くのアラガミを相手にしようとしているトシを心配し、リョウもまたこの先にある難民キャンプの存在が気がかりであった。

だが――

 

トシ「もう一度だけ言う。

アナグラに戻れ、これは命令だ。

それに任務前にも言ったはずだ?

英雄気取りで玉砕しても誰も褒めてはくれない。

……各自、今は生き残る事だけを考えろ。」

 

トシは全てを拒否した。

 

そう言いながら、トシは3人の顔をしっかりと見た。

 

トシ「今ここで新たな戦力であるお前達を失う訳にもいかない。

だから、今は退いてくれ。」

 

リョウ「……ちっ、わーったよ。」

 

トシの真剣なまなざしに、リョウは何かを感じ取り命令通り素直に支部へ戻ろうとした。

 

トシ「……それとエミリ。

俺はこの数のもっと倍を相手にした事もある。

しかも大型種も含めてな。

だからこれくらいは慣れているさ。」

 

エミリ「えっ、隊長もしかして――」

 

トシ「そこから先は後で詳しく聞こう。

そろそろ時間だ。

お前達は戻れ。

俺も最近病室ばかりだったからな。

久々に思いっきり体を動かすとしよう。」

 

リョウ「そうかよ。

じゃあ、戻るぜ。」

 

エミリ「あの……

気を付けてくださいね。」

 

リョウとアキはそう言い、合流地点へと向かって行った。

だが、アキだけは未だ無言でトシの前で立っていた。

 

アキ「…………」

 

トシ「どうかしたか?」

 

アキ「……ご武運をお祈りしています。」

 

トシ「……thank you.」

 

何かを言いたそうにしていたが、アキはそれだけ言いリョウ達の後を追った。

 

トシ「……さて、俺も行くか。」

 

3人を見送ったトシは静かに空を見上げ、大きく深呼吸をした。

 

約20分後……

 

トシが先程火ぶたを切る時にいた、建物の物陰に身を潜めていた。

 

トシ「……そろそろか。」

 

トシは見ていた懐中時計を懐にしまい、辺りを見渡した。

 

しばらくすると、建物の角から先程戦闘を行ったオウガテイルと、背中に黒い卵殻をもち宙に浮いているアラガミ、ザイゴートが数体見えた。

 

時間が経つにつれ、数が徐々に集まりだした。

 

トシ「(……30…いや40ぐらいか。

……そろそろ行くか。)」

 

するとトシは大きく深呼吸をし、神機を改めて強く握った。

 

トシ「……さあ、partyと洒落込もうか。」

 

そう冗談交じりに言うと、物陰から飛び出した。

トシは飛び出すと同時に、凄まじい勢いでまず一番近くにいたオウガテイルに向かい神機を振るった。

上段の構えで振られた神機の刃は、オウガテイルの背後に深々と入り一撃で胴体を両断した。

 

トシ「次!!」

 

一撃でオウガテイルが絶命した事を今まで培われたの勘で理解し、すぐさま標的を別の個体へと移した。

一方アラガミは突然の襲撃に一体何が起こったのか分からずにいた。

その間にも、トシはまずオウガテイル種だけに狙いを絞り近くにいるアラガミを斬りまくっていた。

 

一体は両足が斬られ地面で蠢いていた。

また一体は頭と胴体が切り離され無残な姿で地に伏せていた。

一瞬でそんな肉塊が7、8個は出来始めたころ、ようやくアラガミも事態を把握し始めた。

 

そして威嚇しトシに一斉に襲いかかってきた。

だがトシは数多くのアラガミの攻撃を難なく避け、比較的アラガミ全体を見れるように立ちまわりながら、近くにいるアラガミに対して斬撃を繰り返した。

 

トシ「(個体としては、全体的に弱いようだな……

大概のモノならば、ほとんど一撃で仕留められる……

そして多対一において、囲まれるのは不利だ。

出来るだけ敵全体を視界に入るように立ちまわる事を心掛ければ、これくらい……)」

 

トシ「砲撃!!」

 

トシは一瞬の隙を付き神機を正面に構え、柄付近から見れる銃口からバレットの塊が噴射された。

ロングブレードの刀身独特の剣形態から行える砲撃『インパルスエッジ』により、トシの目の前にいたオウガテイル3体が焼かれ黒焦げになった。

 

トシの怒涛の進撃により、次々と『オウガテイル』を主とするアラガミの群は次々と肉塊へと姿を変えていき黒い霧となって霧散していった。

 

だが、戦闘音を聞きつけ別の場所にいた小型のアラガミ達も次々と集まりつつあったが、トシの猛攻の前では何の意味もなさなかった。

そして――

 

トシ「last!!」

 

そう叫ぶと同時にその場からジャンプし、宙に浮いているザイゴート目掛け2撃斬撃を入れ、最後に宙で回転し遠心力のかかった重い一撃を叩きこんだ。

その一撃でザイゴートもまた地に伏せ、霧散し始めた。

 

トシ「……一応は終わったか。」

 

そう呟いたトシの周りには、未だ霧散しきっていない無数の死骸が転がっていた。

 

トシ「ふう……

何とかなったか……」

 

数が多かったが、個体が比較的弱かったためトシ自身大きな怪我もなく無事にアラガミの討伐が出来た。

だが、返り血で服も神機も真っ赤に染まってしまっていた。

 

トシ「(……流石に戻ったら風呂に入らないとな。)」

 

そう思いながら討ち漏らしがないか確認する為に索敵を始めた。

 

トシ「……こちら竜崎トシ。

極東支部、応答を願う。」

 

トシは索敵しながら端末を取り出し、支部でも他アラガミの反応を捉えてないか確認を取ろうとヒバリに連絡した。

 

ヒバリ『こちら極東支部。

トシさん、ご無事でしたか。』

 

トシ「個々の個体が非常に弱かった。

これと言って苦戦はしなかった。

で、他にアラガミの反応は?」

 

ヒバリ『そうですね……

現在そちらにアラガミの反応は見受けられません。

ですが……』

 

トシ「……偏食場パルスか?」

 

ヒバリ『はい。

未だ反応は消えてはいません。』

 

トシ「了解した。

異変が無いか、少し調べてみる。」

 

そう言い、通信を切ろうとする直前でヒバリの慌てた声が響いた。

 

ヒバリ『ま、待ってください!!

大型アラガミの反応を確認。

凄まじい速度でトシさんの元へ向かっています!!』

 

トシ「何!?」

 

ヒバリ『出現まで後10秒……6,5,4,3…

来ます!!』

 

ヒバリの最後の声と共にトシは辺りを見渡した。

 

だが、大型の反応と言われながらそれらしき姿は見当たらなかった。

 

トシ「(どこだ……

上か!!)」

 

辺りには見当たらなかったが、強烈な殺気が放たれた方を見ると、廃ビルの屋上に1体のアラガミがトシを見下ろしていた。

 

トシ「(っ、逆光で姿が見えずらい……)」

 

逆光でうまく姿が見えにく中、トシは辛うじて細身のしなやかそうな体と大きな尾のようなモノが3本見えた。

 

トシ「(殺気は感じるが、降りてくる気配はない……

奴は一体……)

!!!!」

 

見たことも無いアラガミと降りてくる感じがしない事に疑問を抱いた瞬間、突如トシは胸部と失ったはずの右目辺りから強烈な痛みに襲われた。

 

トシ「がっ…ぐっ、っ……」

 

あまりの痛みに吐血し、その場でうずくまりながらも目線は謎のアラガミに向けていた。

だが、アラガミもトシが謎の痛みが伴ったのをみると、静かにその場から離れ出しどこかへ行ってしまった。

 

トシは暫く謎の痛みからその場で片膝を付き体力の回復を待っていた。

すると再び端末からヒバリの声が聞こえた。

 

ヒバリ『トシさん、ご無事ですか?』

 

トシ「……あまり無事とは言えないかもな。」

 

ヒバリ『どうかしたんですか!?』

 

トシ「いや、大した事は無い。それよりどうかしたのか?」

 

ヒバリ『あっ、はい。

大型アラガミの反応が突如消失。

それと同時に偏食場パルスの反応も消えました。」

 

トシ「そうか、分かった。

……すまないが、帰投準備に入る。

後の事は調査隊に任せる。」

 

ヒバリ『了解しました。では、新たな回収地点の座標を送信しますね。』

 

トシ「ああ、頼む。」

 

そう言い、通信を切ると端末に地図が送信された。

トシは立ちあがり、その地図に記された場所に向かい歩き始めた。

だが数歩歩いたところで一度、謎のアラガミがいた廃ビルを鋭い眼で睨みつけた。

そしてトシの様子を廃墟の屋上から見つめる一つの人影があった。

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