新訳 神殺しの者第一幕『神を喰らいし者』   作:コードネームTOSI

6 / 6
第六章:異変の前兆

オウガテイルの群との戦闘から数日が経ったある日、トシはエントランスにて飲み物を片手に手元の資料を見ていた。

 

トシ「(……偏食場パルスの突然の発生と俺が見たアラガミについては未だ不明、か。)」

 

見ていた資料は先の任務の調査書であり、偏食場パルスの発生や、謎のアラガミついては未だ調査に進展は無かった。

 

次にトシはもう1つの資料に目を通し始め、暫く見るとそっとテーブルに置いた。

 

トシ「(……オラクル細胞に異常はなく、健康状態か。

……となると『あれ』が原因か?)」

 

もう1つの資料は、トシのメディカルチェックの結果だった。

1週間位前に受けてはいたが、先の体調の訴えから再び精密検査を受けたが不審な点は見られなかった。

 

だが、トシは1つ思い当たる節がありその事に関して考えていると、いつの間にか榊が自分の前に立っているに気がついた。

 

トシ「……珍しいですね、博士がエントランスにいるなんて。」

 

博士「君も珍しいね。

私が眼の前にいるのに気がつかなかったとはね。」

 

トシ「少し考え事をしていたもので。」

 

そう言い返し、トシは手元の資料をまとめ出した。

 

博士「先の任務に関する事かい?」

 

トシ「ええ、ちょっと気になる事があったので。」

 

博士「そうかい。

実は私もちょっと気になる事があってね。」

 

そう言いながら、どこか楽しそうな顔で視線が常にトシに向けられていた。

 

トシ「……何でしょう?」

 

博士「君の例の細胞についてだよ。」

 

そう言われた瞬間、トシの手が止まりちらっと榊博士を睨んだ。

 

博士「おっと、そんな怖い顔をしないでくれるかい?」

 

トシ「……2つほど聞きます。

どの程度把握してますか?」

 

博士「そうだね。

単独で動き、他と共鳴する未知数なモノ。

そして偏食因子をもってしても意味をなさない、と言ったところかな?」

 

そう言われた瞬間、トシは軽くため息をつき半ば諦めた顔をし、逆に榊博士はどこかうきうきとしている感じだった。

 

トシ「2つ目です。

その事に関して、俺になにか?」

 

博士「そうだね。

実は例の偏食場パルスに共鳴するかのように、例の細胞も反応してね。

報告書以外に何かあったのかい?」

 

トシ「いえ、報告書に書いた通りでしたが?」

 

博士「そうかい、ならいいのだけれどね。

何か体が優れないときはすぐに言ってね。」

 

トシ「……ええ、分かってますよ。」

 

博士「こちらも、何か分かったらすぐに伝えるよ。」

 

トシ「……分かりました。」

 

だが、次に先程までどこかにやけた表情だった榊博士の顔が真剣なモノとなり、トシもまたその意味を理解した。

 

その後、榊博士がエントランスから去り約1時間後。

 

エントランスには、トシを始めエミリとアネット。

そしてフェデリコの3人がミーティングを行っていた。

 

トシ「ではこれよりフィールド名『鉄塔の森』に出現したアラガミ討伐のブリーフィングを行う。」

 

ブリーフィングが行われたと同時にアネット、フェデリコと次々と質問が飛んできた。

 

フェデリコ「先輩、対象のアラガミは何ですか?」

 

トシ「オウガテイル種とドレッドパイクの小型種が数体。

それとグボロ・グボロ種の中型種が1体確認されている。」

 

アネット「どのような作戦で行くんですか?」

 

トシ「個々の能力を考えて……

アネット、お前が前衛と言ったところだ。」

 

アネット「私ですか。

分かりました!!」

 

トシ「フェデリコとエミリは遊撃だ。

状況を見極め、臨機応変に対応してくれ。」

 

フェデリコ「了解しました。」

 

エミリ「が、頑張ります!!」

 

トシ「俺がサポートと言ったところだろう。

さほど苦戦する事もないだろうが、気を抜くなよ。」

 

その後一時解散となり、全員の準備が出来しだい出撃となった。

トシは既に準備を済ませており、一人神機を取りに神機保管庫に向かった。

だが、そこにはエミリの姿もあった。

 

トシ「早いな。」

 

エミリ「あっ、隊長。」

 

トシ「もう、用意はいいのか?」

 

エミリ「え、えぇ……」

 

トシ「……どうかしたのか?」

 

エミリ「いや、その……

リョウやアキちゃん以外の人と任務に行くのが初めてなもんでちょっと不安で……」

 

トシ「緊張気味だったのはそういう事か。

普段通りいけば問題ないさ。

それに今頃リョウもアキもシドウやリンドウさん達に扱かれてるだろうしな。」

 

そう言いながらトシは手元のパネルを操作し、自分の神機を受け取った。

 

トシ「……そう気を張らなくてもいい。

気軽に行こう。」

 

エミリ「そ、そうですね。」

 

未だ戸惑った感じのエミリだが、エレベーターからアネットとフェデリコが降り、こちらに気が付き駆け足で向かってきた。

 

トシ「ああ。

……さて、2人とも来たようだし行くぞ。」

 

トシ達4人は鉄塔の森と呼ばれる場所に来ていた。

 

その名の通り、中央部には崩れかけの大きな鉄塔がそびえ立ち、何かの工場だったのがうかがえる。

 

トシ「さて、作戦は先に言った通りだ。

まずアネットとフェデリコ、俺とエミリで索敵をしtarget発見しだい連絡をくれ。

……時間だ、行くぞ。」

 

トシが3人にそう言うと皆頷き、トシを先頭に高台から飛び降りていった。

 

トシ「……いないな。」

 

だが、かれこれ十数分は索敵したがアラガミは見当たらなかった。

 

エミリ「隊長、見つかりませんね。」

 

トシ「姿が見えないからと言って、気を抜くなよ。」

 

エミリ「は、はい!!」

 

トシ「……とは言っても、おかしいな。

アネット達からも連絡が無いからな。

既にここら一帯は索敵したはずだが……」

 

辺りへの警戒を続けながら、アラガミがいない事を疑問に思ってた時、端末に連絡があった。

 

アネット『トシさん大変です!!』

 

トシ「アネットか。

どうした!?」

 

アネット『え、えっと……

とりあえずJ地点に来てください!!』

 

トシ「(慌ててはいるが、戦闘中ではないようだな……)

分かった、すぐに向かう。

辺りを警戒しつつその場で待機していろ。」

 

アネット『了解しました。』

 

そう言い通信を切ると、エミリが心配そうな顔でこちらを見ていた。

 

エミリ「あ、あの……

アネットちゃんとフェデリコ君に何かあったんですか?」

 

トシ「分からない。

が、別に戦闘を行っていた様子は無かった。

とりあえずJ地点で合流するぞ。」

 

エミリ「はい。」

 

そう伝えると2人は急ぎ、合流地点である鉄塔の森の中心地、J地点へと急いだ。

 

距離も近かったため数分で到着するとアネットとフェデリコが戸惑った表情で辺りを見渡していた。

 

トシ「どうかしたか?」

 

フェデリコ「あっ、先輩!!」

 

アネット「あ、あのですね!!」

 

トシ「とりあえず落ち着け。」

 

アネット「は、はい!!え、え~と実はですね、その!!」

 

トシ「……フェデリコ、現状報告を頼む。」

 

アネットは興奮していたのか、何を言っているのか分からなかったため、トシはフェデリコに何があったかを聞いた。

 

フェデリコ「は、はい。

自分達がこの辺りを索敵した時に発見新ですが……」

 

そう言いながらフェデリコはとある方向を指さした。

指された方は青茂った草むらが生えていた。

 

トシ「…………」

 

言われ初めて気がついたが、草むらの中に隠れるように見覚えのある紫色の鱗と大きなヒレが見えた。

 

トシ「…………」

 

トシは警戒しながら、今任務の対象である動かないグボロ・グボロに近づいた。

 

トシ「(……こいつは、どういう事だ?)」

 

グボロ・グボロの状態を確認すると、3人がどこか不安そうな顔でトシを見た。

 

トシ「これは、予想外にも程があるな。

とりあえず支部の方に連絡を入れる。

辺りへの警戒を解くなよ?」

 

そう言い各自周辺を警戒し、トシは携帯端末を取り出し支部へ連絡をした。

 

トシ「こちら竜崎トシ、フェンリル極東支部応答願う。」

 

今の状況を確認する為にもトシは支部へ連絡を入れると、すぐにヒバリの声が返ってきた。

 

ヒバリ『こちら極東支部。

トシさん、どうかしましたか?』

 

トシ「対象アラガミの死骸を発見した。

そちらでアラガミの反応は見受けられるか?」

 

ヒバリ『え!?

こちらではアラガミ反応は見受けられますが?』

 

トシ「……少々気になる事がある。

榊博士につないでもらえるか?」

 

ヒバリ『はい。』

 

暫く無音が続くと、繋がったのか榊博士の声が聞こえてきた。

 

博士『やあ、一体どうしたのかな?』

 

トシ「こちらでは対象のアラガミの生態反応は見受けられないにも関わらず、そちらではアラガミの反応が残ってます。」

 

博士『レーダーの故障かい?』

 

トシ「いえ、その可能性は低いでしょう。

理由は色々とありますが、こちらでも不審点があります。」

 

博士『不審点かい?』

 

トシ「……死骸が、霧散していないんですよ。

コアがないのに。」

 

そう言うと先程まで冷静でいた榊博士が急に荒げた。

 

博士『バカな!?

そんな事があるのかい!?』

 

トシ「気持ちは分かりますが落ちついてください。

とりあえず、調査隊の派遣の方を――」

 

そしてトシがこの後の行動について話をしようとした時、突如3人の悲鳴が聞こえた。

 

トシ「!!」

 

トシは急ぎ悲鳴が聞こえた方を見ると、先程までコアが無くただの肉塊になっていたはずのグボロ・グボロが突如動き始め3人に襲いかかっていた。

 

博士『どうかしたのかい!?』

 

トシ「後で連絡します!!」

 

予想外の出来事にトシは急ぎ通信を切り、3人の元へと向かった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

突然の事に3人は動く事が出来なかった。

 

いくら戦闘経験を積んでいたとしても、予想だにしない事が起きれば一瞬とは体は硬直してしまう。

だが圧倒的に経験が少ない3人にとって、体の硬直は一瞬とい時間では終わらなかった。

ただ頭で状況が理解できたときには、体ではなく先に口が動いていた。

 

3人の叫び声にも似た悲鳴は、鉄塔の森に木霊すると時には、グボロ・グボロは大きな口を広げ襲いかかろうとしていた。

頭では理解しつつも、体はとっさには動かなかった。

その為、回避する事もシールドで防御する事も出来ず3人は突進をもろに喰らい後方へ吹っ飛ばされた。

 

エミリ「きゃぁ!!」

アネット「くっ!!」

フェデリコ「うわぁ!!」

 

だが標的が拡散していたためか、3人とも大きな怪我はなかったが強烈な打撃により3人ともなかなか起き上がれずにいた。

3人がなかなか起き上がらいのを見ると、グボロ・グボロはゆっくりと一番近くにいたエミリに近づいていった。

 

エミリ「あ、あぁ……」

 

だが、当のエミリは標的が自分に向けられたのを知ると、痛みと恐怖から足がすくみ余計に体が強張り余計に動けなくなってしまっていた。

そんな時、一瞬辺りを覆うように眩い光が何処からか放たれ、グボロ・グボロの視界を一時的に潰した。

 

トシ「皆大丈夫か!?」

 

トシが投げたスタングレネードにより、一時的ではあるがグボロ・グボロの動きを止め追撃を阻止した。

 

エミリ「た、隊長……」

 

トシ「2人とも立てるか!?」

 

アネット「は、はい。

なんとか……」

 

フェデリコ「問題ありません。」

 

トシが来た事に気持ちに余裕が出来たのか、2人から緊張は解け体力を回復する為に回復錠を飲んだが、エミリだけはダメージが大きいのか未だ動けずにいた。

 

トシ「2人はエミリを連れてこの場から離れろ!!」

 

アネット「え、それって……」

 

トシ「こいつは普通のアラガミじゃない!!

お前達は一旦退いて支部へ応援要請を頼む!!」

 

そう言い、トシは単身でグボロ・グボロに向かって行った。

 

フェデリコ「ど、どうしよう……」

 

アネット「どうしようも何も、トシさんが言ったように一旦退くしかないでしょ。」

 

フェデリコ「そ、そうだよね。

えっと、エミリさんも大丈夫?」

 

フェデリコとアネットは戸惑いながらもトシが言った指示に従い、急ぎこの場から退こうとするが、エミリだけは未だ起き上がらず戦っているトシの姿を見ていた。

 

アネット「……エミリちゃん?」

 

エミリ「……こうやって、また自分を犠牲にして私を助けるんですか……」

 

フェデリコ「エ、エミリさん?」

 

エミリ「……なんでもないです。

すいません、もう大丈夫です。」

 

エミリどこか悲しそうな声でそう言いながら立ちあがり、トシの指示に従いこの場から離れ始めた。

フェデリコとアネットもエミリが言った事に疑問を持ったが、エミリに続きこの場を離れた。

退いている途中、一度エミリは振り返り戦っているトシの姿をちらっと見、誰にも気づかれないように歯を食いしばりながら走った。

 

そして残ったトシとグボロ・グボロとの戦闘は既に一時間近く続いていた。

 

トシ「(……流石に、おかしいな。)」

 

トシは斬撃によりヒレを斬り裂くと同時に一度退き、距離を置くとグボロ・グボロ全体の様子を更に細かく観察した。

 

何故ならグボロ・グボロの体既にボロボロだったからだ。

牙はほぼ折れ、尾びれと背びれ、更には砲身まで砕かれ、体を守っている鱗ですらほとんどが無く体中から常に血が垂れ流れていた。

 

トシ「(耐久力が凄いとかそんなlevelじゃない……

こいつから、死ぬ気配がない。)」

 

トシは砕けた砲身から発射された水砲を避けながらどうするか考えた。

 

トシ「(死なないアラガミ……

ハンニバルのようにコアが再生するようなものじゃない。

ちっ、ここで仕留めないとデータが取れんか。

今はもう少し、情報が欲しいところだな。)」

 

グボロ・グボロから繰り出される攻撃を全て避けながらどう対処するかを決め、攻撃に転じようとした瞬間――

 

トシ「!!!!」

 

急に殺気を感じ振り向くと同時に神機を振るうと、丁度トシに飛びかかろうとしていたオウガテイルに直撃し両断した。

 

トシ「(なっ、オウガテイルだと!?)」

 

突然オウガテイルが現れた事に驚いたが、すぐに冷静さを取り戻しグボロ・グボロの動きに注意しながら辺りを見渡した。

 

トシ「(……4、5…10か。)」

 

すると気がつけばトシの周りに小型のアラガミが10体程集まっていた。

 

トシ「……地味に集まっていたか。

だがこれくらいなら――」

 

これくらいのアラガミなら何とかなる。

そう思った瞬間、辺りが振動するほどの大きな咆哮とが鳴り響いた。

 

トシ「!!??」

 

トシは咄嗟に音がした方を見ると、白い体に橙色の小さな篭手が腕に付いた竜のようなアラガミ『ハンニバル』がいた。

 

トシ「なっ、ハンニバルだと!?」

 

トシが予想外のアラガミの乱入により驚くと、ハンニバルはトシの方に向かって走りだした。

 

トシ「ちっ……

(これは嫌なtouchで乱戦になったな……)」

 

トシは軽く舌打ちをし、改めて神機を握りなおした。

するとオウガテイルだけでなく、特に集団戦法をしかけて来ないドレッドパイクまでもが一斉にトシに襲いかかってきた。

 

トシ「!!!!」

 

トシは集団戦法に驚きはしたものの、その場から離れ攻撃を避けた。

 

トシ「(多少は驚かされたが、このくらい大した事は――)

!!」

 

だが、攻撃を避けるために退避した場所に目掛け、グボロ・グボロが水砲を発射された。

 

トシ「っ!!」

 

今度は避けるには難しいと判断したのか、咄嗟にシールドを展開し少し反動で後ろに下がりながらも何とか防いだ。

 

トシ「(ふぅ、危なかった……

っ、ハンニバルは!?)」

 

一瞬ほっとしかけたが、嫌な気配を感じハンニバルの姿を探した。

 

トシ「しまっ!!」

 

ハンニバルの姿を確認できた時には、空に軽く飛翔しながら片手で大きな炎の槍を構えていた。

そして空中から一気に加速しながらトシ目掛け槍を突き刺そうと下降した。

 

トシ「っ!!」

 

トシは急ぎその場から離れようとし、直撃こそまのがれたが、地面に突き刺さった際にあふれ出た炎の余波に飲まれてしまった。

 

トシ「くっ……」

 

ダメージを受けたが、何とか態勢を立て直し一時距離を置いた。

 

トシ「ちっ、まさか集団戦法を取ってくるとはな……」

 

今まで集団戦法を仕掛けてくるアラガミも存在はしたが、同種のアラガミ同士だけだった。

だか、今いるアラガミはどれも同種でもなければ共通点もない。

そんな中、突然集団戦法を取られたトシの顔には驚きが見られた。

 

トシ「ちっ、やってくれるな……」

 

何とかアラガミの息の取れた連撃を避けつつ、どうにか反撃に出ようとするが小型種の小回りのきく攻撃に、グボロ・グボロの正確な遠距離攻撃。

更にはハンニバルの高火力の広範囲攻撃に中々攻撃に転じれずにいた。

 

トシ「(っ、このままいったらマズイな……

何とかしたいが……)

!!!!」

 

トシは何とか距離を取りつつ状況をまとめ、正確に現状を対処しようとしたが、アラガミの攻撃がそれすら許そうとはしなかった。

 

トシ「……ゆっくり考える時間すら無いか。

仕方ない!!」

 

このまま行っても、戦況は変わらないと判断したトシは考える事を放棄し、ただ目の前にいるアラガミを1体1体確実に倒していく方へ戦い方を変えた。

 

トシは手始めに一番近くにいたナイトホロウに狙いを定め、一気に距離を詰めようとした。

だがその瞬間、細長いレザーがトシの真横を通りハンニバルの顔面を貫いた。

予想外の事にハンニバルは仰け反り、トシもまた一瞬足を止めた。

 

???「目閉じろ!!」

 

そして次に聞こえてきた声にトシは瞬時に次の行動へと移り、標的をハンニバルへと変えた。

それと同時にトシの後方から強烈な閃光が放たれ、辺りのアラガミの視界が潰され、一瞬の隙が生まれた。

 

トシ「うおぉぉぉぉ!!」

 

その一瞬を逃さまいと、トシは一気にハンニバルに接近し、首元を斬り上げた。

トシの全身全霊を込めた斬り上げはハンニバルの首を両断し、凄まじい血と共に頭が地に落ちた。

 

だが、トシは斬り上げと同時に神機を銃形態へと可変し、装甲の薄い背中の逆鱗にバレットを連射し、最後の一発が当たった瞬間大きな爆発が起きた。

 

トシはバレットを放った反動で後方へ飛び、ハンニバルは大きく体を揺らした後倒れた。

何とか受け身を取りながら地面に着地したトシは、後ろを振り返らずにお礼を言った。

 

トシ「応援感謝します、タツミさん。」

 

そう言うと、先程スタングレネードを投げたタツミと、ハンニバルを狙撃したジーナ、そしてカノンが駆け寄ってきた。

 

タツミ「な~に、気にすんなって。

で、こっちの状況は?」

 

トシ「グボロ・グボロがどういう訳か死にませんね。

それに、何故か小型のアラガミまで集まって集団戦法を取ってきます。」

 

ジーナ「死なないアラガミね……

ハンニバルのようにコアが再生するのかしら?」

 

トシ「どうでしょう……

初めから不可解な問題がありましたけど、今はそれをゆっくり説明する余裕はなさそうですね。」

 

トシのその言葉で、全員はその場から離れた。

それと同時に、グボロ・グボロが先程まで皆がいた場所目掛け突進してきた。

 

カノン「そら、喰らいな!!」

 

タツミ「せぃ!!」

 

そして突進を避け、カノンとタツミはすぐさま反撃へと転じた。

カノンが爆発系のバレットで周囲を巻き込みながら砲撃し、タツミはその爆発にも気をつけながら周囲の小型アラガミに連撃を決めていた。

 

トシ「…………」

 

そんな中トシは銃形態で周囲のアラガミに砲撃しながら、一人離れた位置で陣をとりグボロ・グボロを狙撃していたジーナに近づいた。

 

トシ「ジーナさん、ちょっといいですか?」

 

ジーナ「あら、貴方から話しかけるなんて珍しいわね。」

 

戦闘中に話すようなことではないが、二人は標的から眼をそむけず狙撃しながら会話を続けた。

 

トシ「エミリ達は無事でしたか?」

 

ジーナ「そうね……

今は無事じゃない?」

 

トシ「と、言いますと?」

 

ジーナ「この周辺に小型のアラガミが集結し始めたのよ。

だから、彼女達にも討伐を手伝ってもらってるわ。」

 

トシ「けど、どれじゃあ……」

 

ジーナ「大丈夫よ。

3人の所には内のバカ2人とブレンダンが向かったから。」

 

トシ「バカ2人って……」

 

ジーナ「それより、その事って連絡が来たはずでしょ?」

 

トシ「戦闘中に無線機を落としてしまって……

腕輪の通信機器で連絡を取る余裕もなかったので……」

 

ジーナ「あら、そう。

とりあえず、この場所にアラガミが集まってきた理由は不明よ。

偏食場パルスもなかったようだしね。」

 

トシ「アラガミの集結具合は?」

 

ジーナ「ほとんどが小型種よ。

時折中型種が来たくらいだけど、ハンニバルは予想外だったわね。」

 

トシ「なるほど……」

 

ジーナ「と言っても、集結しきったのか他にアラガミ反応はないようね。」

 

トシ「……ありがとうございます。」

 

トシは知りたかった情報を知ると、礼を言いながら神機を剣形態へと可変した。

タツミ達の応援により戦況は一気に有利となり、既に小型アラガミは殲滅し終えていた。

 

タツミ「っ、本当に死なないなこのグボロ!!」

 

ジーナ「いい加減、沈んでほしいわね。」

 

カノン「流石に疲れてきました。」

 

だが未だトシが最初から戦っていたアラガミ、グボロ・グボロだけがどうしても討伐に至ってはいなかった。

 

トシ「(流石にこれ以上は……)

タツミさん」

 

タツミ「どうした?」

 

トシ「エミリ達の状態はどうですか?」

 

タツミ「既に戦闘は終えて、帰投準備にかかってる。

俺達もそろそろ潮時だぞ!!」

 

これ以上の戦闘はリスクが大きくなると判断したトシは、ある事を確認する為に一番近くにいたタツミに話しかけた。

一方タツミもトシと同じ事を考えていたのか、2人とも最小限の言葉で済んだ。

 

トシ「……後は調査隊に任せるしかありませんね。」

 

タツミ「そうだな。

カノン、ジーナ!!

これ以上の戦闘はこちらも危険だ!!

一旦退くぞ!!」

 

タツミにそう言われ、ジーナもカノンも返事をし、全員はグボロ・グボロの動きに注意しながら退却を始めた。

決して動きの素早いアラガミで無ければ、本来なら既に絶命している程の手負いでは4人の後を追う事も無く、グボロ・グボロはただ背を向け去っていく姿を眺めるだけだった。

 

4人がヘリの回収地点に到着すると、そこには既にエミリ達新人達と応援に来たブレンダン達がいた。

 

ブレンダン「トシ、無事だったか。」

 

トシ「ええ、何とか……

そちらも無事で何よりです。」

 

そう言いながら、トシはちらっと近くにいるフェデリコにアネット、そしてエミリを見た。

3人は疲れているのか、地面に座り込み迎えが来るのを待っていた。

 

シュン「よお、派手にやられたみたいだな。」

 

気がつくと、今回タツミ達と共に応援に駆けつけてくれたシュンとカレルが近く来ていた。

 

トシ「……油断していた、訳ではないが流石に意表をつかれたな。」

 

そう言いながら、トシは火傷を負った腕をちらっと見せた。

 

カレル「おーおー、結構酷いな。

こりゃ、また入院か?」

 

トシ「そうですね。

もし入院したら、俺の代りに特務なんてどうですか?」

 

少し皮肉のついたカレルの問いに、トシもまた冗談めいた声で答えた。

 

カレル「いや、割にあわねーよ。」

 

シュン「何だよ、弱気だな。じゃあ俺が代りに受けてやるよ。」

 

カレル「はっ、お前じゃやられるのは眼に見えてるってーの。

俺はただ報酬と任務内容が割に合わないと言っただけで、報酬が良ければやるさ。」

 

シュン「んだとカレル。

俺がやられるって言うのかよ?」

 

カレル「ああ、そう言ったんだが?」

 

カレルとシュンが些細な事で口喧嘩を始めた為、トシは2人から少し離れその様子を見ていた。

アネットとフェデリコは心配そうに2人を見ていたが、タツミとジーナに「いつもの事だから放っておけ」など言われそのまま2人と何やら話し始めた。

ブレンダンとカノンもまた2人で何やら話し始めていた。

 

トシは比較的安全とは言っても、まだ油断できない為周囲に警戒を怠らないように先程自分達がいた作戦エリアが見渡せる場所まで移動した。

 

トシ「(……あのグボロ・グボロ。

まさか……」

 

だがやはり先程のグボロ・グボロの存在が気がかりで仕方なかった所に、エミリが側までやってきた。

 

エミリ「隊長。」

 

トシ「エミリ。無事のようだな。」

 

エミリ「はい。ご心配かけました。

……それで、隊長。

隊長に聞きたい事があるのですが……」

 

トシ「何だ?」

 

エミリ「隊長は以前、沢山のアラガミを同時に相手にした事があるって言ってましたよね?

それってひょっとして、極東中部エリア第三次掃討作戦ですか?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。