舞う英雄   作:生物産業

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第13話 コンビ

「はい、与一」

「おう」

 

 釣った魚を捌いて、与一に渡す。

 盛り付けとか細かい作業が割と好きな与一は刺身が美味しそうに見えるように頑張っていた。

 たぶん、一発目で弁慶あたりが崩すからその努力は一瞬で泡となるんだけど、楽しそうだから指摘はしない。

 

「夕食は皆でバーベキューなんだよね? その場合準備するのって……」

「まあ、お前になるだろうな」

 

 大人数で来てこの体たらく。料理ができる人間が限りなく少ないこの場では、出来る人間が頑張るしかない。

 もう少し人選を考えるべきだと思う。熊ちゃんとか熊ちゃんとか熊ちゃんとかが欲しい。

 食事の用意を終えると簡易テーブルの上に並べていく。

 既に座ってたべっている女子たちは俺たちが持って来た料理でぱっと笑顔になった。

 

「清楚先輩の手料理が食べたい。義経でも可」

「金太郎、私は?」

「弁慶はカップ麺とかを平気で手料理とか言いそうだから良い。あと当然のように川神水がセットメニューで出そう」

 

 ぐうの音もでない。

 図星をつかれた弁慶は金時の料理を不満そうにパクつく。

 

「この料理を出された後に作るのはちょっと勇気がいるかな?」

「義経も同意だ」

 

 金時の料理のレベルの高さに清楚も義経もあまり乗り気はしなかった。

 幼少の頃から仕込まれた料理技術が仇になる格好となってしまった。

 

 しばらくすると皿に盛られた料理はなくなった。

 後片付けくらいはと清楚達が申し出て、金時と与一は岩場に座ってゆっくりとくつろいでいる。

 

「この後は川で遊ぶんだっけ? すでにやってしまった感が……」

「なんかイベントを考えているみたいぜ。紋白の奴がさっきから楽しそうにしてたからな」

「紋々はいつもあんなもんだと思うけど」

 

 ない胸を張って偉そうに笑う少女を金時は見てタメ息をついた。

 

「まあまあ、私の水着姿がまた見れるんだよ? それで十分じゃないか」

「お前は普通に片づけをサボるな。義経が不憫だ」

 

 弁慶は当然のように金時の横に座っていた。

 

「私も申し出たんだ。だけど義経がいらんと断って来た。悲しいなう」

「川神水を飲んでフラフラの弁慶はいると邪魔だからな。的確な状況判断、さすがは英雄」

「なにおー」

 

 弁慶が金時を掴もうとするが、それは簡単に払われ逆にぽすんっと弁慶が金時の方に吸い寄せられてしまう。

 

「この後動くんだから、ちょっと横になってろ。乙女として終わるぞ」

「姉御相手によくそんな事が出来るな。マジで尊敬だぜ」

 

 膝枕。金時と弁慶の間ではよく行われる。

 本来は弁慶が金時に対してするのが普通のだが、たいていはその逆である事が多い。

 ありえんものを見た、そう言わんばかりの与一は顔をしかめながら二人を見ていた。

 

「この体勢が一番弁慶が女の子らしい時なんだよ」

「私はいつも女の子だー」

 

 うーと唸りながら暴れる弁慶を金時は髪を撫でることで大人しくさせた。

 

「弁慶の髪は弁慶って感じがするよね」

「なに言ってんの?」

「義経や清楚先輩みたいなロングだったら弁慶って感じがしないなって」

「昔からこうだから、そういうイメージができてしまったんだね」

「与一にバカにされてた頃はストパーをかけようか悩んでいたのにね」

 

 不穏な空気を感じた与一は戦略的撤退を開始する。

 弁慶の睨みがそうさせたとも言う。

 

「今はこれで良かったと思ってるよ」

「俺もそう思う。ストレートな弁慶ってなんか気持ち悪い」

「うるさいよ」

 

 ぽんっと金時の胸を叩いた。

 ごめん、ごめんと金時は弁慶の髪を優しく撫でる。

 それが良かったのか弁慶はんーと猫なで声をあげる。

 

「ねえ、金太郎?」

「何?」

「吐きそう」

「やめろ。ったくもう少し甘々な展開はないの?」

「私と金太郎はこんなもんさ」

「そうかもね」

 

 それからしばらく二人は無言のままだった。

 

 ■

 

「よーし、皆で遊んじゃうぞーっ!!」

 

 翔一がそう叫ぶとノリの良い連中が一切に「おー!」と呼応した。

 全員が水着になって今川の中に駆け込んでいく。

 若干名の男子陣は目の前に広がるパラダイスに前かがみになっていた。

 

「ぐはっ!」

 

 海坊主が撃沈する。

 天使がいたと、一人の少女を見てそう叫び、そして倒れて行った。

 

「じゅーん!!」

 

 小雪は血を拭いて倒れた準に跳び蹴りを入れる。

 

「ぐはっ!」

 

 小雪の蹴りで息を吹き返した準は、今度は小雪の蹴りに死にそうになっていた。

 ロリコンの死は近い。

 

「冬馬、準の人工呼吸が必要じゃないか?」

「そうですね」

 

 冬馬がそう言うと準がむくりと起き上がる。

 そしてささっと動いて金時の首をとった。

 

「おい、金の字よ、若に変な事を吹き込むんじゃなねぇよ」

「いや、準が紋々のしょぼい水着姿を見て死にそうだったから、助けてあげた方が良いかなって」

「お、おまっ! 紋様のあれを見て、何も感じないってのかっ!? どうかしてるぜ」

「どうかしているのは準の頭だよー。この不毛地帯」

「禿げ頭」

「この二人暴言に躊躇が一切ない」

 

 小雪と金時の言葉の暴力が準に襲いかかる。

 

「おい、何をそんなところで小さくなっとるのだ? 皆で遊ぼうではないかっ! フハハハハ」

「はい、遊びましょう! すぐにでも遊びましょうっ!!」

 

 天啓を得た準は紋白に付き従って川の中に飛び込んでいった。

 

「マシュマロ食べる?」

「食べません」

 

 金時と小雪はそんなやり取りをした後、川の中に飛び込んでいった。

 

「やれやれ、私もねっとりじっくり観察しましょう」

 

 冬馬はニッコリ笑うと、川で遊ぶ男女に目を向けた。両方ともいける冬馬にとってここは癒しの楽園なのである。

 

 

 

「さて、身体も温まったことだし、船バトルだ!」

 

 翔一がそう言うと、紋々が引き継ぐように大きめの荷物を準に持ってこさせていた。

 

「フハハハ! 九鬼特製の水上ゴムボート。一人乗りから4人乗りまで。みんなで楽しめるぞ」

「ルールは簡単。この川を滝のところからボートで漕いで、そこで次の奴にタッチして折り返す。ここを折り返し地点にするからな。最後の奴は滝にゴーだぜっ! 勝利チームの奴にはこの後の食事の準備の免除、さらには俺特製のなんか変な置物プレゼントだ!」

 

 「いらなーい!」と周りから非難されるが、ボート対決は行われる。

 これはチーム戦であり、風間ファミリーVSその他となった。

 戦闘技術が勝敗に直結するわけではないこの勝負だが、人数的なこともあり燕はS組チームに配属となる。

 

「なんか俺らだけF組なんだけど……」

「きっと負けた時には川に沈められちゃうよ」

「それは大丈夫。勝ち負けに関係なく俺が沈めるから」

「金ちゃんのエッチ。私の身体に触りたいんだね」

「岩で」

「それ死んじゃうよっ!!」

 

 京都のバカコンビが漫才をしている間に、エリートチームは作戦を立てていた。

 本来燕も金時も頭が悪い訳ではないのだが……。

 

「よしまずは我が先陣を切る。井上!」

「はいどこまでもお供いたします」

 

 紋白が騒ぎ、準が必死に漕ぐ姿が簡単に想像できてしまう。

 

「三人乗りは、私と与一君と金時君がよろしいかと」

「死んでも嫌だ」

 

 与一と金時の声は完璧に重なった。

 冬馬と同じボート、それも大きさもそこまでない事から密着率が高い。

 勝負がどうこうという問題ではなく己の男としての人生が終了しかねないために二人は強い意志で拒んだ。

 

「3人乗りは与一君と金君、あと弁慶ちゃんだね。ここで勝負を付けるってのが私達の作戦」

「燕は問答無用で一人としても、冬馬が羨ましい」

「ねえ、私ひとりなの……? 燕は寂しいと死んじゃうんだよ?」

「はい、一人乗りは決定。冬馬と俺をトレード。それですべてが解決」

「金時、我がままを言うな。義経も清楚と紋白が考えた作戦は問題ないと思う」

「義経にそう言われると……」

 

 金時は素直に首を垂れる。

 燕は全くのスルー。

 

「順番は紋白が最初、二番手に金時たち、三番手が義経たちで最後が松永先輩だ」

「燕と義経の心の距離感がこのメンバー発表でもしっかり伝わる」

「なんか私嫌われてる?」

「はい、俺きらーい!」

「ボクもー」

「はい、ユキは意味も分からず賛同しない」

「怒られちった」

 

 だが思いのほかダメージは大きく燕は地面にどよーんという効果音突きでのの字を書いていた。

 清楚が優しく肩を叩くが、それでも燕の元気はMAXからは程遠い。

 戦う前からすでに戦意が無くなってしまえば勝負にならないため、金時がタメ息をつきながらも燕に近づいた。

 

「元気出せって。燕はもともとボッチだったでしょ? 思い出すんだ。いつも缶蹴りの鬼になってみんなにそのまま放置されてしまった悲しい過去を」

「そんな過去はないよっ!!」

「それに比べれば、今の状況なんて辛くもなんともないだろう」

「話を聞いてっ!!」

「よし、元気が出たな。勝負事だ、やるからに勝つぞ」

「うー金ちゃんが酷い」

「燕ちゃん、どんまい」

「清楚も酷い。私を慰めてくれる優しい子はいないの」

「川神水がおいしい~」

「せめていじってっ!!」

 

 辛さが彼女を強くする。

 燕は悲しみを糧に強くなって舞い戻った。

 

「義経は松永先輩が偶に不憫に見える」

「不憫じゃないよっ。もーう、私頑張っちゃうから。皆に褒めてもらっちゃうんだから」

「燕、すごーい。パチパチ」

 

 金時の拍手に皆が続いた。

 そしてそれは乾いた拍手であった。

 

「井上、行くぞっ!」

「はい、紋様っ!」

 

 二人は燕に関わることなく準備を始めた。

 

「もう泣きたい」

 

 水上決戦が今始まる。

 

 ■

 

「両者とも準備はいいか?」

 

 審判を務める翔一。当然、彼も参加者であるため最初の合図だけの審判だ。

 

「紋様のために!」

 

 準は気合が入っている。一人でオールを二つ持ち、気合十分。

 紋々が目の前で水着姿で立っている。それだけで準の力は通常の3倍以上は確実だろう。

 

「大和のために!」

 

 対する相手の人選は大和と椎名の夫婦コンビ。

 大和が水着姿で目の前に存在している。それだけで椎名の力は通常の3倍は出るのだろう。

 

「どっちが想い人を力に変えられるかの勝負。名勝負かもしれない」

「真の変態決定戦の間違いだろ」

「与一、あれは純愛だよ。ただ愛が常人より重くて陰湿なだけ」

「それを純愛というのか?」

「知らん」

「知らねえなら言うなっ!」

 

 バカな会話をしていると翔一が腕を上げて勢いよく下げた。

 

「スタートだ!」

「うおぉぉぉぉぉーーっ!!! 紋様ぁぁあああああ!!」

「大和、大和、大和、大和、大和、大和、大和っ!!」

 

 すごく怖い。

 二人乗りなのに、どちらのボートも一人しか漕いでない。それなのにかなり早い

 

「おい、こっちに来るぞ。早く準備しろ」

「了解。ほら弁慶、出番だ」

「むふふふ~」

「戦力外が一名」

「姉御のそれは想定済みだ」

「金太郎~」

 

 ぽよんという音を俺の背中が奏でた。

 なんて素晴らしい楽器。正直、やる気がみなぎって来た。

 

「与一、俺たちの名コンビをみせてやろう。弁慶はおまけみたいなもんだ」

「おうよ。闇の――」

「紋様ぁぁぁあああーー!!!!」

 

 準の叫び声によって与一がの声が掻き消えた。

 紋々が俺の背中に張り付いた弁慶にタッチをして俺たちはスタートした。

 

 上流に向かって行く分、準たちよりもこぐ力は必要だ。

 俺と与一が左右に分かれてタイミングを合わせる。

 

「よーしつね、よーしつね、よーしつね」

 

 義経コールで息を合わせる。

 冗談で提案したつもりだったけど、なんか与一がノリノリだしタイミングもバッチリ。

 すいすい進んでいく。

 

「弁慶、頼む!」

 

 俺にもたれかかっていた弁慶。酔っているように見せて実はただ漕ぐのが面倒という理由でサボっていた。

 弁慶が酔った時は、背中をあずけて倒れてくる。後ろから抱き着いてくる場合、それはわざとやっている。

 それがわかっているからこそ、俺は弁慶に指示を出した。

 ここから先には突き出した岩がある。

 準や椎名は迂回しながら進んだ。ハイテンションの割に意外と冷静でリスクの少ない方法をとっていた。

 本来俺たちも岩を避けないといけないが、俺と与一は漕ぐだけで精一杯。器用にコースを変えるなんて事はできないから、暇している弁慶に頼むしかない。

 

「飛ぶよ」

 

 弁慶がそう言うと、一瞬の浮遊感。

 ボート後方を踏みしめて先端を浮き上がらせる。

 岩に激突するが、ちょうどいい角度で飛び出したことで、1Mほどジャンプすることになった。

 ざばーんと水しぶきが跳び、ボートが大きく揺れる。

 バランスを崩した弁慶は俺のほうに向かって倒れてくる。

 それを片手で受け止めて、弁慶が水中に落ちるのを回避。

 そのまま胸に押し付けるように弁慶を懐に抱き寄せると、与一と視線を合わせる。

 

「よーしつね、よーしつね、よーしつね」

 

 再度義経コールで俺たちは完璧な連携を見せた。

 迂回せずにまっすぐ進んだ俺たちがこの2番手の対決を制する。

 その手があったかと、川神百代が向こうのボートで騒いでいたが、騒いだ拍子に力が入ったのか、ボートは転覆。

 俺たちは圧倒的差を付けて、風間ファミリーを下した。

 

 ■

 

「焼きが甘いぞー」

「うるせぇぞ外野! 俺様のダンディ焼きにケチつけんなっ!」

 

 勝者の余韻に浸る。

 所詮は水遊びであったが、勝ちは勝ち。約束通り夕食の用意は免除され、ガクトを煽って遊んでいる。

 

「よし、風間翔一特製焼きそば完成だっ!!」

 

 一人鉄板を支配し、麺の王様になったかのように翔一は麺を焼いていた。時折、どこぞの料理漫画よろしく、麺を竜巻状に持ち上げたりと無駄にハイレベルな技術を見せている。

 唯一の3年生である川神百代は、料理が得意ではないのか一人黙々とキャンプファイヤー用の薪を組み立てていた。

 人間テトリスを行う彼女だ、薪の組み立ては得意分野だろう。

 

「金時、お前もこっちで話さないか?」

 

 義経にそう言われてガクトに別れを告げて、そちらに向かった。

 準に紋々、義経に弁慶と主従ペアが揃っている。

 まあ、準と紋々は似非主従だけど……。

 

「何の話をしてるんだ?」

「紋様がいかに素晴――」

「はいはい、で?」

「この後の肝試しの話だ。義経は怖いのが正直苦手だ。だから止めようと皆に提案していたんだ」

「それは無理だろ。弁慶が義経の困ることを止めるわけがない」

「その通り」

「弁慶!?」

 

 腹心の裏切り。割とよくある光景だけど、義経は悲しかったのかどよーんと落ち込んでいる。

 そして弁慶は撫でる。うん、よく見る二人の光景だ。

 

「紋々は幽霊相手にもスカウトとかしそうだよね」

「フハハハ、九鬼アミューズメントパークの幽霊屋敷に招待してやるわっ!」

 

 口では強がっているけど、足は若干震えている。年相応なところもやっぱりある。

 よしよしと頭を撫でてやると、むーと唸るが手を払うようなことはしなかった。

 意外と懐かれているなと思っていると、準が俺の手を握りつぶさんばかりに掴んでくる。

 

「おい、金時、俺……キレちまったよ」

「ロリは愛でるもの。お前のポリシーだろ? なんの不満がある?」

「紋様にきやすく触れていることだぁっっ!!」

 

 そう言って準が本気で殴りかかってくる。

 この状況で躱すと紋々に被害が出かねないので、繰り出して来た拳を上方に弾いて懐に入る。

 前足を払って態勢を崩し、弾いた手と逆の手を引っ張って準を完全に浮かせる。

 

「よいしょっ」

 

 さすがに叩きつけるのは可哀想なので、近くの川の方に投げ込んでおいた。

 ばっしゃんっと思いのほか大きな水しぶきを立て、かつ水面から浮き上がってこなかったけど、ごつごつした地面に叩きつけるよりは良いだろう……たぶん。

 

「相変わらず見事なことよ。柔よく剛を制す、まさにそれだな」

「違うよ、紋白。金太郎は舞とか戦い方とかで勘違いされがちだけど、純粋に力もあるよ。私も川神水の力を借りないと金太郎との力勝負には勝てそうにないからね」

 

 反応に困る。川神水で力が上がる……気がしない訳でもないけど、弁慶は基本的にぐでんぐでんのイメージしかない。

 適量だった場合の話かな?

 

「金時はその見た目に反してやはり有能だな。どうだ、その力九鬼で使ってみる気はないか?」

「ない。それに高校を出たら実家に戻る気だしね。俺の終着点はあそこだから」

「不満はないのか?」

 

 真剣な表情の紋々。珍しい。

 

「ないよ。舞は好きだし、家を継ぐことに対して何かを思ったことはない。今は好きにさせてもらっているしね。だから、俺はそれで良いと思っている」

「そうか」

「まあ、九鬼紋々って大企業とのコネもできたし、坂田家の将来は安泰ですな。かっかっかっか」

「たわけめ。能力を示してこその九鬼ぞ。コネ程度で慢心するなど愚の骨頂と知るがいい」

 

 偉そうに、もう本当に偉そうにそう言った。

 でも笑顔だ。

 だから、なんとなく頭を撫でた。

 

「金太郎が紋白に懸想の予感」

「そんな事になったら、犯罪者の予感」

「さっき川に放り込まれた河童は?」

「妖精だ。だから河童の川流れをしているんだよ」

「意味不明」

「川神水を飲め」

「合点」

 

 弁慶にあらぬ疑いをかけられそうになったけど、なんとか回避したようだ。

 とりあえず川神水的なことを言っておけば、弁慶は簡単に誘導できる。

 

「お前達は相変わらずよな。付き合ったりはせんのか?」

「紋々の直球すぎる質問に脱帽」

「うーん。どうなんだろうね? 金太郎、私のこと好き?」

「好き、好き、だーい好き。弁慶は?」

「すきー」

「字面と実際がまるでかみ合っておらん。お前たちは本当に好いているのか?」

「真面目に答えると困るよね、その手の質問は」

「黙秘権を行使する」

 

 子供故か、それとも何か思惑があるのか、紋々の質問は俺たちを困らせた。

 ちょっと横目で弁慶を見る……普通に酔ってる。うん、何も分からない。

 

「義経は、金時と弁慶はお似合いだと思うぞ。だが、これはあくまでも義経の意見だ。二人の思う通りにしてくれ」

「してくれと言われても。弁慶さん、俺と付き合う気がありますか?」

「あるあるー」

「このダメっぷりですよ? すでに前後不覚の状態です。真面目な返答は無理ですね」

 

 もう勢いよく川神水を飲む弁慶を誰も止めることはできなかった。

 正直、良かったと思う。

 皆がいる前で、告白タイムとかかなり恥ずかしい。

 

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