~奈乃SIDE~
「7回戦を始めます。両者前に出てください」
高橋先生の声と共に、あたしと亮介はAクラスの中央に立った。
今思えば、誰かのために亮介と戦うっていうのは初めてかもしれない。
あたしと亮介は学力や身体能力など、いろんなものがほぼ同じだった。
そのたびに「勝負!」なんて言って競い合って、明久達に迷惑をかけていたけれど……。
「……最近競わなくなったよな、俺達」
「昔はあんなに頻繁にしてたのにね……」
亮介も同じことを考えていたのか、あたしに話しかけてきた。
「じゃあさ、今、やる?」
「それは自分達のためにか? それとも……」
そう聞かれても、よくわからない。
今だって、自分がどうしてこんな提案をしたのかすら解らないというのに。
だけどもし、その問いに答えるなら、きっと……
「どっちも、じゃないかな?」
「……まさか疑問形で返されるとは思わなかった」
と、亮介は苦笑しながら言った。
しょうがないじゃん。まだあたしの中では疑問なんだから。
「それじゃあ、そろそろ始めるか」
亮介はそう言うと、目を閉じて再び開いた。その目には、真剣さしか伝わってこない。
「わかってると思うけど、最初から本気でいくよ」
「ああ。俺もそのつもりだ」
「それでは、試合開始!」
「「
あたし達がそう叫ぶと、魔方陣から召喚獣が出てきた。
見てみると、点数はまだ表示されていない。おそらく反応が遅れているんだろう。
それをわかっていながらも、あたしと亮介は召喚獣をそれぞれ突撃させる。
あたしの剣と亮介の剣が火花を散らして交わった時、お互いの点数が表示された。
それを見て、あたしは口元をつり上げた。
~明久SIDE~
皆が驚きの声を上げる中、僕はあまりの嬉しさに顔が緩んでしまっていた。
だって2人の成績が、前よりすごく高くなっていたから。
総合科目(F)
Aクラス 沢村亮介 18466点
VS
Fクラス 宮代奈乃 18904点
「明久達ほどじゃないけど、やっぱすげーな」
「なんか、どんどん差をつけられてるような気がするよ」
「2人とも、勉強頑張ってたからね」
戦ってるのを見ると、どうしても昔を思い出す。
人の迷惑になってもずっと競い合っていた、あのころを……。
「懐かしいな……」
僕が思い出に浸っている間に、戦いは終盤へと差し掛かっていた――――。
~奈乃SIDE~
「っ…案外、しぶといん、だね……」
「当たり、前だ……。そうやすやすと、負けるか……っ!」
あたし達が戦い始めてからすでに30分も時間が経過していた。
普通ならこんなに疲れることはないんだろうけど、あたしや亮介、明久達には『あれ』がついている。
だからすぐに息切れしてしまう。
だからといって腕輪の能力も使う気はない。あたし達はきちんと実力で勝負したいのだ。
「それじゃあ、これを最後にしようか」
「そうだね。点数も点数だし……」
そう言ってあたしは再び点数を見た。
Aクラス 沢村亮介 351点
VS
Fクラス 宮代奈乃 318点
まさかもう300点代になっちゃうとはね……。やっぱり亮介は凄いや。
でも、だからこそ……あたしは亮介に勝ちたい!
「いくよ、亮介!」
「こっちからも行くぞ!」
そう言ってあたし達はそれぞれの召喚獣に向かって突撃する。
ザッ、ザシュッ!
「………っ、ハッ……」
「くっ……」
あたしは倒れそうになるのをなんとかこらえ、踏みとどまった。
一方の亮介はさすがに限界が来たのか、膝を折り地面についていた。
閉じそうになる目をがんばって開けて、点数を見た。
そこに書かれていたのは……
Aクラス 沢村亮介 0点
VS
Fクラス 宮代奈乃 6点
よ、かった……。あたし、勝てたんだ……。
あたしはほっとして、駆け寄ってくる明久達を見ながら目を閉じた。
その時、こんな言葉が聞こえた。優しくて暖かい、大好きな人の声で。
『辛い中、お疲れ様』って――――。