文人に抱えられて心地よく眠っている奈乃を見て和みながら、裕実が待っている中央へと向かった。
「8回戦を始めます。科目はどうしますか?」
「……明久が選んでいいです」
裕実は僕に科目を選ぶように進めてくる。
だけど、今僕が選んじゃうと最後の勝負はは自動的にAクラスが選ぶことにからなぁ……。
あっ、そうだ。裕実が選んでくれるように仕掛けてみようかな。
「それでいいの? それだと裕実の苦手な『あの教科』になっちゃうよ?」
「……(ピクリ)」
「あ、でもそれだと確実にこっちが勝てるのか。それでもいいかなぁ」
「……(ピクピクッ)」
あ、決意がちょっと揺れてる。あともう一息かな。
「しかもそれだと裕実が本当に学年次席なのか不思議に思われるよ。確かに苦手科目があるっていうのはわかるけど、あれはさすがに低すぎでしょ」
「……(ピクピクピクッ)」
「まあ裕実がそれでいいんなら、僕が選ぶけど―――」
「……高橋先生、総合科目でお願いします」
おっ、ついに決意が揺らいだ。仕掛けてみて正解だったよ。
だけどこれで手加減しないで本気で戦えるし……結果オーライだね!
「それでは、試合開始!」
「……心理戦では負けちゃったけど、戦いでは負けません…!
「悪いけど、僕も負けられないんだ!
僕達はそれぞれ一言ずつ言って召喚した。さて、点数はどうかな?
総合科目(A)
Aクラス 近藤裕実 29680点
VS
Fクラス 吉井明久 30750点
『『『高ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』』』
『学年首席と次席って、あんなに高いの!?』
『いや、いくらなんでも高すぎだろう!』
あれ、皆すごい驚いてる。そんなに高いかなあ。
だけど驚かれるの、もう見飽きたよ。
裕実からも「もう見飽きました」オーラが出てるし。
「とりあえず、始めようか」
「……絶対負けません」
裕実はそう言うと、僕の召喚獣めがけて突撃してくる。
確かにスピードは尋常じゃないくらいに速い。だけど、その程度じゃ……
「まだまだ僕には勝てないよ!」
「……っ!」
裕実の攻撃をジャンプして避け、物理の法則で裕実の召喚獣の真上に落ちていく。
そしてそのまま木刀で攻撃した。
だけど裕実もただ受けるだけじゃなく、わざと攻撃を受けて、僕の召喚獣に攻撃した。
「っ! やっぱり、隙がないね…裕実は」
「……明久だって、なかなか攻撃させてくれません」
「そりゃあ、ね。それなら裕実や亮介君、文人達だってそうじゃない?」
「……そうですね。なんたって私達は……」
裕実は間を置くと、誰もが思っていなかったであろう真実を口にした。
「―――――私達は、『観察処分者』なんですから」
皆が再び驚くのを見ながら、僕は苦笑した。
~雄二SIDE~
嘘、だろ……? 明久達は、『観察処分者』なのか……?
俺は真実を確認すべく、井上達に聞いた。
「おい、本当なのか? お前達が観察処分者だってのは……」
「ああ、本当だ」
「でも、観察処分者ってのは……」
確か観察処分者っていうのは『バカの代名詞』という意味だったはずだ。
だが、明久達はバカじゃない。むしろ良すぎるくらいだ。なのになぜ……。
俺がそう考えていると、まるで心を読んだかのように、野々原が話を続けた。
「坂本達が知っている『バカの代名詞』というのはただの嘘。観察処分者の本当の意味は『規格外』という意味。例えば明久達みたいに頭がよすぎる人、とかね」
「そう、だったのか……」
確かにそう考えるとDクラス戦の時に相手を倒すスピードがあまりにも早すぎたことも『観察処分者だから』という理由なら頷ける。
しかし、高すぎる点数に観察処分者の操作技術のコラボって……。勝てる奴はいるのか?
そう思っていると、いきなり台風のような風が俺達を襲った。
「ぶっ、なんだ!?」
「これは……裕実の腕輪能力だ!」
「相変わらずすごい風だねぇ」
「んな呑気なこと言って―――うわっ!?」
言ってる場合かと言おうとしたら俺の真横に雷が落ちた。
つーか台風に落雷って、どんなコンビだよ! 凄すぎんだろ!
だがまあ、井上達の様子を見るとこの落雷も……
「あ、明久も使ったみたい。やっぱすごいや」
「明久のはどこに落ちるかわかんねえからな。用心しないとだぜ」
………やっぱりな。
つーか予測不可能なのかよ。ババァの奴、恐ろしい腕輪を作るんじゃねーよ!
そう思った時だった。
ピカッ、ドガアン!
雷の音がなり響き、しばらくすると誰かが倒れたような音がした。
不思議に思って中央を見てみると、地面に膝をついている明久と今にも倒れそうな近藤がいた。
どうやらフィードバックがかなりきたらしい。
「大丈夫か、明久!」
「明久しっかりして!」
井上達の声に応えるように右手の親指を立てた。多分大丈夫だと伝えたいんだろう。
だが見るからに限界っていう顔をしている。
あまり無茶はしないでほしいんだが……ああもう、仕方ねぇ!
「勝ってこい、明久!」
俺はそう叫んだ。代表とはいえあまりガラじゃない、この俺が。
だけどそれに明久は手を振ってくれた。なんだかすごく嬉しくて、気分は最高だった。
……井上と野々原に殴り飛ばされるまでは。
~明久SIDE~
なんか向こうが騒がしいけど……とりあえず試合に集中しなきゃ!
僕はFクラスに向けていた目を試合に集中させた。
「もう終わりにしない? お互い疲れちゃってるし」
「……わかりました。次で終わらせます」
そう言うと裕実は周りに風を集め、鎌鼬にして攻撃してきた。
「……『
僕の召喚獣に当たりかけた瞬間、僕の召喚獣が消えた。
なぜって? それは……
「……腕輪発動。『
僕の召喚獣がものすごいスピードで裕実の召喚獣の後ろまで移動していたからだ。
ザンッ!
Aクラス 近藤裕実 0点
VS
Fクラス 吉井明久 4点
「勝者、Fクラス!」
高橋先生の声とともに、8回戦はFクラスの勝利となった。