天才と信友と悲しい過去と   作:ゆん

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第19問 主席と次席の戦い

文人に抱えられて心地よく眠っている奈乃を見て和みながら、裕実が待っている中央へと向かった。

 

「8回戦を始めます。科目はどうしますか?」

 

「……明久が選んでいいです」

 

裕実は僕に科目を選ぶように進めてくる。

 

だけど、今僕が選んじゃうと最後の勝負はは自動的にAクラスが選ぶことにからなぁ……。

 

あっ、そうだ。裕実が選んでくれるように仕掛けてみようかな。

 

「それでいいの? それだと裕実の苦手な『あの教科』になっちゃうよ?」

 

「……(ピクリ)」

 

「あ、でもそれだと確実にこっちが勝てるのか。それでもいいかなぁ」

 

「……(ピクピクッ)」

 

あ、決意がちょっと揺れてる。あともう一息かな。

 

「しかもそれだと裕実が本当に学年次席なのか不思議に思われるよ。確かに苦手科目があるっていうのはわかるけど、あれはさすがに低すぎでしょ」

 

「……(ピクピクピクッ)」

 

「まあ裕実がそれでいいんなら、僕が選ぶけど―――」

 

「……高橋先生、総合科目でお願いします」

 

おっ、ついに決意が揺らいだ。仕掛けてみて正解だったよ。

 

だけどこれで手加減しないで本気で戦えるし……結果オーライだね!

 

「それでは、試合開始!」

 

「……心理戦では負けちゃったけど、戦いでは負けません…! 試獣召喚(サモン)!」

 

「悪いけど、僕も負けられないんだ! 試獣召喚(サモン)!」

 

僕達はそれぞれ一言ずつ言って召喚した。さて、点数はどうかな?

 

総合科目(A)

Aクラス 近藤裕実 29680点

 VS

Fクラス 吉井明久 30750点

 

『『『高ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』』』

 

『学年首席と次席って、あんなに高いの!?』

 

『いや、いくらなんでも高すぎだろう!』

 

あれ、皆すごい驚いてる。そんなに高いかなあ。

 

だけど驚かれるの、もう見飽きたよ。

 

裕実からも「もう見飽きました」オーラが出てるし。

 

「とりあえず、始めようか」

 

「……絶対負けません」

 

裕実はそう言うと、僕の召喚獣めがけて突撃してくる。

 

確かにスピードは尋常じゃないくらいに速い。だけど、その程度じゃ……

 

「まだまだ僕には勝てないよ!」

 

「……っ!」

 

裕実の攻撃をジャンプして避け、物理の法則で裕実の召喚獣の真上に落ちていく。

 

そしてそのまま木刀で攻撃した。

 

だけど裕実もただ受けるだけじゃなく、わざと攻撃を受けて、僕の召喚獣に攻撃した。

 

「っ! やっぱり、隙がないね…裕実は」

 

「……明久だって、なかなか攻撃させてくれません」

 

「そりゃあ、ね。それなら裕実や亮介君、文人達だってそうじゃない?」

 

「……そうですね。なんたって私達は……」

 

裕実は間を置くと、誰もが思っていなかったであろう真実を口にした。

 

 

「―――――私達は、『観察処分者』なんですから」

 

 

皆が再び驚くのを見ながら、僕は苦笑した。

 

 

 

~雄二SIDE~

 

嘘、だろ……? 明久達は、『観察処分者』なのか……?

 

俺は真実を確認すべく、井上達に聞いた。

 

「おい、本当なのか? お前達が観察処分者だってのは……」

 

「ああ、本当だ」

 

「でも、観察処分者ってのは……」

 

確か観察処分者っていうのは『バカの代名詞』という意味だったはずだ。

 

だが、明久達はバカじゃない。むしろ良すぎるくらいだ。なのになぜ……。

 

俺がそう考えていると、まるで心を読んだかのように、野々原が話を続けた。

 

「坂本達が知っている『バカの代名詞』というのはただの嘘。観察処分者の本当の意味は『規格外』という意味。例えば明久達みたいに頭がよすぎる人、とかね」

 

「そう、だったのか……」

 

確かにそう考えるとDクラス戦の時に相手を倒すスピードがあまりにも早すぎたことも『観察処分者だから』という理由なら頷ける。

 

しかし、高すぎる点数に観察処分者の操作技術のコラボって……。勝てる奴はいるのか?

 

そう思っていると、いきなり台風のような風が俺達を襲った。

 

「ぶっ、なんだ!?」

 

「これは……裕実の腕輪能力だ!」

 

「相変わらずすごい風だねぇ」

 

「んな呑気なこと言って―――うわっ!?」

 

言ってる場合かと言おうとしたら俺の真横に雷が落ちた。

 

つーか台風に落雷って、どんなコンビだよ! 凄すぎんだろ!

 

だがまあ、井上達の様子を見るとこの落雷も……

 

「あ、明久も使ったみたい。やっぱすごいや」

 

「明久のはどこに落ちるかわかんねえからな。用心しないとだぜ」

 

………やっぱりな。

 

つーか予測不可能なのかよ。ババァの奴、恐ろしい腕輪を作るんじゃねーよ!

 

そう思った時だった。

 

 ピカッ、ドガアン!

 

雷の音がなり響き、しばらくすると誰かが倒れたような音がした。

 

不思議に思って中央を見てみると、地面に膝をついている明久と今にも倒れそうな近藤がいた。

 

どうやらフィードバックがかなりきたらしい。

 

「大丈夫か、明久!」

 

「明久しっかりして!」

 

井上達の声に応えるように右手の親指を立てた。多分大丈夫だと伝えたいんだろう。

 

だが見るからに限界っていう顔をしている。

 

あまり無茶はしないでほしいんだが……ああもう、仕方ねぇ!

 

「勝ってこい、明久!」

 

俺はそう叫んだ。代表とはいえあまりガラじゃない、この俺が。

 

だけどそれに明久は手を振ってくれた。なんだかすごく嬉しくて、気分は最高だった。

 

 

……井上と野々原に殴り飛ばされるまでは。

 

 

 

~明久SIDE~

 

なんか向こうが騒がしいけど……とりあえず試合に集中しなきゃ!

 

僕はFクラスに向けていた目を試合に集中させた。

 

「もう終わりにしない? お互い疲れちゃってるし」

 

「……わかりました。次で終わらせます」

 

そう言うと裕実は周りに風を集め、鎌鼬にして攻撃してきた。

 

「……『鎌鼬乱舞(かまいたちらんぶ)』、威力最大!」

 

僕の召喚獣に当たりかけた瞬間、僕の召喚獣が消えた。

 

なぜって? それは……

 

「……腕輪発動。『雷電(らいでん)』!」

 

僕の召喚獣がものすごいスピードで裕実の召喚獣の後ろまで移動していたからだ。

 

 ザンッ!

 

Aクラス 近藤裕実 0点

 VS

Fクラス 吉井明久 4点

 

「勝者、Fクラス!」

 

高橋先生の声とともに、8回戦はFクラスの勝利となった。

 

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