清涼祭前日の放課後、僕達は明日のことについて話し合うために教室に残っていた。
「だけど坂本があんなにやる気になるとは思わなかったよ」
「僕もだよ」
「いや、明久のが効いたからだと思うぞ?」
亮介君が言ってるのって、あれ? そんなに効果があったのかな?
照れなくていいと思うのに……。
そう思っていると、島田さんがこっちを凝視してきた。どうしたんだろ?
「……吉井、あんた坂本に何したの?」
「え? なにって脅は――ちょっとしたお願いだよ」
「今脅迫って言おうとしたわよね!?」
何の事かな? そんなことするはずないじゃないか。仮にモ代表ナンダカラ。気ニシ過ギダヨ、島田サン。
「……今、心の中で誤魔化されたような気がするわ……」
島田さん、大当たり。
だけどまぁ、僕には僕で腕輪を回収するっていう目的があるからね。
ここは頑張って雄二に勝ってもらわなきゃ。
ん? 姫路さんがブツブツ言ってる。何だろ?
えーっと、何々……。わぉ、姫路さんの家庭内でそんなにすごいことになってたんだ。
「? 瑞希、どうしたの?」
「あ、いえっ! 何でm「これで転校せずに済むかもしれません、かな?」っ!?」
あ、なんで知ってるのって顔だ。
皆がいるけど……さっき言っちゃったから別にいいよね。
「さっきから姫路さん、ブツブツ言ってたでしょ? 『もし私が頑張れば……』って」
「……はい、言ってました」
「そこから考えられたのは2つ。1つはクラス全体のため、もう1つは、自分の身のため。そしてその後の言葉が決め手だ」
僕は1度深呼吸をしてその言葉を言った。
「『お父さんを説得できるかも』」
「っ!!」
この言葉を言ったら、姫路さんの顔が強張った。
僕はそれを気にせずに話を進めた。
「この言葉から考えられるのは1つだけ。それが転校の話さ」
「なるほどな……」
未だに僕の言葉を理解していない島田さんに言うように、さっきまで黙っていた竜牙が口を開いた。
竜牙はこういう事に関しては1番早く理解できるからね。
「多分だが、姫路の父親はクラスの連中の学習意識のなさ、教室環境の劣悪さ、優等生様には最悪と言っても良いほどの環境で勉強なんかさせたくないんだろ」
そう、だから姫路さんの転校の話が出た。
確かに彼女の体を考えるとそれがいいんだろうけど、本人はここにいたいらしいしね。
「そうだったの……」
「まぁ、清涼祭が始まる前からおかしいなとは思ってたけど」
「どういう事? 明久」
あれ、皆は気づいてなかったのかな?
「清涼祭の話が出る3日前くらいかな、授業で姫路さんが咳をしたんだ。その時『これじゃあ……』って言ってたんだよ。その前日は咳をしても何も言ってなかったから、その時に転校の話をさせられたんじゃないかな。そしてその後に清涼祭という好機が現れた。違う?」
「お、大当たりです……」
僕の話を聞いていた姫路さんと島田さんが目を丸くして呆然としていた。
ちなみにこの時、文人達は「またか……」という顔をしていた。
「とりあえず、明日頑張ろうね。思い切り楽しまなきゃ」
「あ、はい……」
「そうだ、帰る前にちょっと用事があるから、行ってくるね」
「了解」
そう言って僕は教室を出た。
『……吉井、もしかしてわかってたの?』
『いや、あれは勘だ』
『それにしては当たりすぎているような……』
『明久は勘でも百発百中だからね……。むしろ外れたところを見てみたいよ』
『『『同感』』』
「ハックシュンッ!」
な、何!? 何かいきなり寒気が襲ってきたんだけど!?
~NO SIDE~
「さてと……」
明久は誰もいない空き教室で、パソコンを弄っていた。
そのパソコンの画面には、とある部屋が映し出されていた。
明久はその部屋の机に置いてある紙を凝視していた。
「………なるほど、そう言う風に来るか……」
画面から目を離すと、止めていた手を動かし、再びパソコンを弄った。
この時、清涼祭にトラブルが起きることを、3人だけは知っていた。