「うわぁ~……」
「見に来る人はいるだろうとは思ってたが、まさかこんなにいるとはな……」
僕達が試合会場の観客席に行くとすでに席はびっしりと埋まっており、席の空きがもうほとんどない状態だった。
アドバイスしてくれとは言われたけど、こんなに人がいたら、できるものもできないよ!
僕達が困っていると、試合の審判をしている亮介君に呼ばれた。
「どうしたの?」
「席がなくて困っているなら、あそこに座るといい」
そう言って亮介君がさした場所には、確かに席が4つあった。
でも、あそこって観客席じゃないはず……ああ、なるほど、そういう事か。
「わかった、それじゃあやらせてもらうよ」
「「「???」」」
文人達は状況の整理が追いつけなくて困りつつも、きちんと席に座った。
うん、偉いよ3人とも。何も聞かずに座ってくれるなんて。
最後に僕が座ると、隣に座っていた放送部の人が実況を始めた。
「さぁ、ついに召喚大会、第1回戦が始まりました! 実況はこの私、新野すみれがお送りします! 解説には高橋先生、そして臨時として、文月学園を代表とする生徒、吉井明久さんです!」
「「「はぁぁぁぁぁっ!!??」」」
うわっ! びっくりした! いきなり隣で叫ばないでよ!
あー、なんか耳がおかしくなった感じがする……。
僕は新野さんと高橋先生に大丈夫と伝え、文人達と目で会話した。
(明久、どういう事だよ!?)
(実はここの席、解説者が座るための席なんだよ。だからさっき亮介君の言葉で理解したんだよ。ここに座っ
ていい代わりに解説をやってくれって)
別に言ってないし、目で会話もしていないけどね。
(じゃあ、なんで私達の名前は呼ばれなかったの?)
(オマケだからだって)
(((まさかのオマケ対象!?)))
そりゃ驚くよね。オマケでここに座ってるんだもん。
……っと、そろそろ始まるみたいだね。えっと、雄二はっと……あ、土屋君と組んだんだ。
相手は……え!? 最初からBクラス!?
僕は慌てて高橋先生に聞いた。
「どういう事ですか!? Fクラスの最初の相手はEクラスとかからじゃなかったんですか!?」
「どうやら、システムに異常が発生したようです。しかしこうなった以上、試合はこのまま続行させるしか……」
「そんな……」
相手はBクラス、雄二は今回本気を出すと言っていたから大丈夫だろうけど、土屋君はどうだ……?
僕が心配していると、麻菜が小声で話しかけてきた。
「明久、心配はいらないよ。Fクラスの成績データを見せてもらったけど、Bクラス相手なら問題ない」
「え、そうなの?」
麻菜が言うんだから大丈夫なんだろうけど……。この試合が終わったら、僕も雄二に成績データを見せてもらおう。
「科目は物理です! それでは、試合開始!」
新野さんの声と共に、両チームが召喚した。さて、点数は……?
物理
Fクラス 坂本雄二 472点
土屋康太 302点
VS
Bクラス 岩下律子 198点
菊入真由美 187点
「おおーっと! なんとFクラスの生徒がAクラス並みの点数!」
「これは、Fクラスの認識を改めなければなりませんね」
横でいろいろ言っているが、僕はそれを無視して試合に集中していた。
しばらくすると、雄二が菊入さんの召喚獣を、土屋君が岩下さんの召喚獣を戦死させた。
「そこまで! 勝者、Fクラス坂本雄二、土屋康太ペア!」
『『『おおおおおおおおっ!!』』』
亮介君が言うと、両チームに観客から声援が送られた。
僕はそれを微笑ましく思いながらさっきの試合のことについて考えつつも、別のことを考えていた。
「(今回のシステム故障の疑い、やったのは多分あいつら。となると……)うかうかしてられないなぁ……」
「? どうしたんだ? 明久」
「いや、なんでもないよ。気にしないで」
僕はどうしたのかと聞いてきた文人に大丈夫と伝え、その後のことについて考えていた。
――――どうやら、最終的には『あれ』を使わなくちゃいけないかもな……。
大丈夫。たとえ傷ついたとしても、死ぬことはないだろうから。