ふぅ……。ついみんなの前であの事を言っちゃったよ。
声は小さめにして言ったから、聞こえてはないと思うけど……。
さて、とりあえず行かなきゃね。
「あれ、明久どこに行くの?」
「ちょっと用事のある人がいてね、今会いに行ってくるよ」
「了解、気をつけろよ」
そう言って文人達は僕を見送ってくれた。
さっきのことがあったから一筋縄ではいかないと思ってたけど……案外すんなり行かしてくれたね。
えーっと、確かこっちに向かったはず……。
そう思いながら、周りをキョロキョロ見渡してある人を探す。
「……あ、いた」
僕の視線の先には、さっき営業妨害をしてきた2人がいた。
「どうも、さっきぶりですね」
「あ、お前はさっきの!」
「おい、さっき言ったことは本当なのかよ!?」
やっぱり聞いてくるよね……。
だけどここではあまり話しちゃいけないことだろうから、場所を変えないと。
「とりあえず移動しませんか? ここで話すのはちょっと……」
「あ、そうだな。悪い」
「いえ、気にしないでください。仕方ないと思うので」
僕だってさっき言った言葉を言われたらこうなってるだろうしね。
そう思いながら僕達は、人目の少ない場所へと移動した。
僕の服の襟元に、余計な物をつけながら。それにこっちの会話が、よく聞こえるように。
しばらくして僕達は、人がいない場所へ到着した。
「そんで、あれは本当なのか?」
「ええ、本当ですよ。じゃなきゃ2人にあんなことを言いませんよ」
未だ怪しんでる2人に僕は微笑む。
というか今日、いっぱい微笑んでるなぁ……。顔が引きつってもおかしくないよ。
すると2人はようやく信じてくれたようだ。
「そんじゃあ聞くけどよ、あいつらはいいのか?」
「あいつら、とは?」
「俺が胸ぐらを掴もうとした時に、お前の身を心配して駆けつけてた奴らのことだよ。今回の件は、生死を左右してもおかしくないんだぞ?」
ああ、そのことか。確かに生死を左右してるけど……。
「大丈夫です。僕は今回の件で死んでも構いません」
「あいつらは気にしねぇ、ってか?」
「いや…多分すっごく悔むでしょうね、僕を助けられなかったことを」
「は? だったらなんでだ?」
2人は僕の言葉に首を傾げる。そりゃそうだよね。
だけど僕はそれでも気にしない。
「だって僕は――――本来ならもう、死んでいるはずなんですから」
僕の言葉に、2人は目を見開いた。
~文人SIDE~
『だって僕は――――本来ならもう、死んでいるはずなんですから』
「え……どういう、事……?」
「明久、何を言ってるの……?」
俺達はこの言葉を聞いて、ただ驚くことしかできなかった。
気づいてる人は少なからずいると思うが、土屋が明久の服の襟に盗聴器をつけ、明久とあの2人が話しているのを聞いていた。
しかしその内容は、俺達にとって理解しがたいものだった。
さっきから聞こえてきて唯一わかったことは、『明久がかかわっているのは生死を左右する事』と『明久は本来なら死んでいる』という事だった。
それを聞いた俺達は何も発せられず、やっと出たのが疑問の声だった。
とりあえず、明久達の話に耳をかたむけておこう。
『お前、何言ってんだ? さっきの言葉、どういう事だよ?』
『いえ、こちらの話ですので。それより、もう帰ってもいいですか? 話すべきことは話しましたし、先輩達もあまり暇ではないんじゃないんですか?』
『あっ、そろそろ試合が始まるな! じゃあ行ってくる!』
『いってらっしゃい。ああ、一応で言っておきますけど、もし僕達に被害が及ぶようなことをしたら……ユルシマセンカラネ???』
『『了解しましたっ!!』』
その後、バタバタと走っていく音が聞こえた。おそらくあいつらが去って行ったんだろう。
俺は一息ついて、皆の方に向き直った。
「さて、どうする?」
「どうするって言われても……」
「明久は明久で何かあるんだろうし、かといって何もしないのもな……」
「だよなぁ……」
『そんなに悩まなくていいんだよ?』
俺達がため息をついていると、盗聴器から明久の声が聞こえてきた。
しかしそれは、他の誰かと話しているものではなかった。
いや、確かに明久は話しかけている。
だがそれは、盗聴器の向こうで話しているんじゃない。
何で……そう思っていると、明久の笑い声が聞こえてきた。
『フフッ、皆『何で……』って思ってるよね? 理由は簡単、盗聴器が襟にある事を知ってたからだよ……って、そっちからは話しかけられない構図になってるね、これ』
「「「!?」」」
明久のこの言葉を聞いて、俺達は驚くことしかできなかった。
だってこの言い方は、盗聴器を調べながら話しかけているということなんだから。
そんな俺達をお構いなしに明久はどんどん話を進めて言った。
『ま、いいや。とりあえず用件を話しちゃうから』
明久が俺達に用件……? 一体何なんだ?
『今の話、できればみんなにはあまりかかわってほしくないんだ。さっきの話の通り、僕がやっていることは命がけなんだ。できれば手伝ってほしいとは思っているけど……でも、今回の事に皆を巻き込むことはできない。だから……ごめん。それだけだよ』
明久がそう言い終えると同時に、ガシャッという音が聞こえた。
土屋に聞いてみたら、盗聴器が壊されたとか。
明久……お前は一体、何をやってるんだ? そして、俺達の前に笑顔で現れてくれるのか?
俺はただ、それだけを考えていた。