その日は唐突に現れた。眠りから目を覚ますと、ベッドの上だった。いや、もちろんそれ自体は何もおかしくはないのだが、普段の自分の寝床はベッドではなく、布団なのである。冬のボーナスが出た時に奮発して買った某西なんちゃらの布団はどこに行ったのだろうか。
いやいや、そんなことよりももっと大事なことがあるだろう、と身体を起こし部屋を見渡す。
無機質ながらも清潔感のある白い壁。天井も白い。こざっぱりしたスチールかアルミのデスクがあり、その上には飛行機の模型が飾られている。本棚にはびっしりと本が並んでいて、パッと見で飛行機、船、車等の整備本やロボット工学の文献などがある。
ここはどこだ?
要するに、知らない場所だ。別な人なら知らない天井だとでも言うのかもしれない。何で俺はここに寝かされていたのか。そもそも、最後の記憶は自宅の布団で寝ていたところで終わっている。つまり、寝て起きたらこうなっていたということだ。
誘拐?
拘束もなしにベッドにいたことから、その線はないだろう。人質なら縄で縛られて窓もない部屋に転がされてるのが相場だ。窓といえば、窓から見える景色は見たこともない建物が並んでいる。
どこか知らない場所に来てしまったようだ。服は寝間着の様なものを着ているが自由に動けるなら部屋から脱出できないかとドアをみると、鍵らしきものがあるが、どうやら鍵はかかっていない。部屋の外はどうなっているんだろうか。疑問だらけだが、まずは動いてみよう。
部屋を出てみると、廊下だった。その廊下には扉がいくつかあったので、一つ一つ開けて探索を進める。一つはトイレ。一つはバスルーム。一つは寝室〔と推測)後はキッチンのあるリビングダイニング。そして玄関。間取りは2LDKか、などと余計な事を考えながらも玄関から外に出た。靴はヘンテコなデザインのクロックスの様なものがあったので、それを勝手に履いた。外に出ると、違和感というか、変な感じがした。考えるまでもなくそれは驚きに変わる。空を見上げたら宇宙があった。何を言っているのかわからないと思うがありのままを話す。ある日目が覚めたら空が宇宙になっていた。催眠術だとかそんなチャチなもんじゃない。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。
冗談はさておき、どれだけ頬っぺたをつねってみても痛いだけだったので、現実として受け止めてみよう。となると、まずは情報収集だ。
家の中、通行人、テレビ。これらから知りたい情報は労せずして手に入った。どうやらここは機動戦士ガンダムの世界で、俺はサイド3にいる。空の宇宙(ダジャレじゃないよ)はコロニーにいたからなんだね!
それはさておき、他に分かったことを整理していこう。まず、自分の名前はミナト・タイラ。宇宙世紀0059年生まれ。今年で15歳。つまり今は0074年ということになる。どうやら両親はジオンの軍に所属していて、技術士官をやっているようだ。両親共に技術少佐。結構偉い人みたい。
そして俺は、なんと明日からジオンの士官学校へ通わなくてはならない。「下士官学校」ではなく「士官学校」だ。調べたところ下士官学校は小学校卒業位の年齢層が入学し、3年間のカリキュラムをこなすことになる。卒業後は16歳位で伍長任官となり、どこぞへ配属される。
士官学校は中学校卒業位の年齢層が入学し、同じく3年間のカリキュラムをこなすのだが、その量、密度がヤバイらしい。卒業後に少尉任官後、配属になる。
少尉は士官としてなら一番下の階級だが、軍には山ほどの下士官がいて、それに適切な指示、命令を出さなくてはならない。その為に士官学校では各兵器の操作や操縦、戦術はもちろんのこと、軍略や戦略的な座学までやるそうだ。
1stガンダムの知識はなんとなくはわかるが、細かい事や裏設定、ましてやジオン側の事なんてほとんど知らない状況の中、生き延びる為には、いかに死亡フラグをへし折っていくかが重要である。生き延びてどうするのか、ふと考えてみた。そんなもん死にたくないから生き延びる、と自分の中で即答したが、ふとよぎった事がある。
ファンネル使ってみたい
そういえばガンダムの世界にはファンネルがあるんだ。正確にはまだないが、一年戦争の時代ですら、ブラウ・ブロやジオングの有線式メガ粒子砲や、ララァ専用モビルアーマーのビットといったサイコミュ兵器がある。
だけど、これらはその時代の最新兵器だからパイロットとしてトップクラス、つまりエースの実力がなければ搭乗できないだろう。
それに大前提として必要になるのがニュータイプの素質だ。自分にニュータイプの素質があるかどうかはわからない。あのアムロやカミーユですら戦場に出るまではニュータイプの片鱗はなかったはず。
ニュータイプは原作でも一握りの人間しかいなかったと思う。となれば、自分にはニュータイプの素質はないとして考えなければならないが、そうなるとサイコミュ兵器を使うにはキャラ・スーンやギュネイ・ガスの様に強化人間にならなければならない。
うへー、強化人間は嫌だな。
あーでも、ギュネイって全然普通だったよな?
逆襲のシャアの時代までいけば強化人間の技術も格段に進歩するのかもしれない。
つまり、俺がファンネルを使うまで
1.逆襲のシャアの時代まで生き残る
2.強化人間に見初められるくらいパイロット技術を上げる
3.逆襲のシャアの時代にネオジオンに所属する
どう見ても無理です。
2は俺の頑張り次第だからなんとかなる気がする。3も案外簡単な気がする。1はどうしたら良いんだろうね?2の為には軍属が必須だろうし、軍属だと1が難しい。うーん。
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色々考えたけど、今やれる事をやるしかない。
まとめると、まずは明日から士官学校へ通い、軍人として成長するのが当面の目標だ。卒業後わりとすぐ一年戦争が始まるし、その後も何かと戦争が絶えない。一般人としての生活も本気で考えたが、やはり軍人としてやっていかなくては仮にファンネル搭載のモビルスーツに乗れたとしてもすぐに撃墜されてしまうだろう。
だから、まずは力を付けて、経験値を上げなくてはならない。この長い戦争を生き抜く強さが欲しい。
もう一つの目標としては、なるべく歴史を変えない事を、意識したい。知識通りに事が動けば後手に回らなくて済むし、対策が立てやすい。生き延びるには重要なポイントだ。
今日の目覚めを「転生」と呼ぶことにする。ガンダム世界への転生は望んでこうなった訳ではないが、やれるだけの事をやって、とりあえず一年戦争を生き延びる!
短いですが、プロローグでした。
プロットは出来ているので細々と完走します。
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