「ーーーー以上で入学式を終わります。学生諸君は各教官の指示に従い、退場せよ」
その言葉を皮切りに教官の号令が飛び、学生の退場が始まる。
三時間にも及ぶ長い入所式がやっと終わった…。ジオンの士官学校の入学式ということで、デギン閣下からの長〜いお言葉があったが、寝なかった自分を褒め称えたい。漂う風格っぽい物は凄そうだったけどね。
デギン以外にもギレンや校長のドズル、それにキシリアまで列席していた。たかが入学式に御大層なことで。
この頃から独立戦争の動きってあったっけ?軍人育成に力入れるのはなんでだろね?くそー、もっと原作知識あれば良いのになー。ガンダムとアムロが強いとか、大地に立つとか、塩が大事とか、要は対した知識はないんだよね。
まあ、あのザビ家の兄弟を直接見られたからちょっと感動してるけどね。ちょっとだけよ!特にギレンだが、後々ジオン公国の総帥になるし、今後よっぽどの幸運がなければ直接この目で見ることは叶わないだろう。
『はかったなシャア!』のガルマは確か同期生としてその辺にいるはず。ガルマも直接会えるのが楽しみではある。地球方面軍の司令官になるはずだし、近づいておけば俺にとってもメリット多いかなー。
あーでもガルマ、死ぬんだよね。歴史を変えちゃいけないから実質見殺しになるんだけど、しょうがないよね。お父上が悪いんだもの。
それはそうと、昨日この世界に転生して普通に入学式にいる俺の事だが、改めて考えてみてもすげー事だよねこれ。
だってあのガンダムの世界にいるんだぜ。しかも一年戦争の時代って事は、UCの歴史全部見れんじゃねーかな。だいーぶ先になるけど、ニューガンダム見たいなぁ。好きなんだよねニューガンダム。というより、ファンネルが好き。
転生したのがどこぞの念が蔓延るの世界なら絶対そういう能力にしたのになー。
…じゃなくて、実際さ、一年戦争時のジオン軍所属って死亡フラグあり過ぎだよね。まず、戦争負けるし。あ、いや、正確には負けじゃなくて終戦協定結んでジオン共和国になるんだけど。
あと何より、アムロとガンダムに会わないこと。会ったら即逃げる事だな。うん。本当は会ったらサイン貰いたい位アムロ好きなんだけど、絶対サインの前にビーム貰っちゃうよね。
ビームじゃなくてバズーカかハンマーかもしれないけど。
「・・・てるのか!おい、貴様!」
なんかうるせーな。こっちは考える事いっぱいで忙しいんだよ。静かにして・・・れ・・。
ヤバイ。チョビひげ40代中頃と思われる教官ぽい人が怒鳴ってる。俺に。
ていうか、いつの間にか校庭ぽいとこで教官ぽい人を前に俺を含めて12人が3列に整列していた。無意識って怖い。
「お前、初日から良い度胸だな。名前は?」
チョビヒゲの教官ぽい人がこめかみに青筋を立てながら聞いてきた。
「ミ、ミナト・タイラです!」
「ミナト・タイラ、今さっき俺が何を話していたか聞いていたか?」
「・・・聞いておりませんでした」
一瞬嘘ついて聞いていたと答えようと思ったけど、絶対「じゃあなんと言っていたか言え!」って言われるもんね。嘘は良くないよ嘘は。
それから教官殿に一発ぶん殴られ、教官が元の位置に戻ると話し始めた。ちょー痛え。
「話を続ける。貴様らはこの士官学校にいる間は分けられた班ごとに授業を受ける事になる。毎月行われる定期試験で班員は入れ替わり成績順に1班から配置される。ここにいる貴様らは入学試験の成績で3、4、5班になった。現時点での貴様らは《可も不可もない》と評価されている。精々頑張って評価を上げる事だな。以上になるが、何か質問はあるか?」
ヤベェ、すげー質問したい。良いかな?いっちゃって良いかな?よし、いくぞ!
「教官殿!質問よろしいでしょうか?」
「ミナト・タイラか・・・何だね?」
質問しただけで眉間に皺寄せなくても・・・と思ったがこれは聞かなくてはなるまい。
「自分は何班でありますか?」
この後めちゃくちゃ走らされた。連帯責任だーって同じ班の人まで。距離にして24キロ。400メートルトラックを60週。同じ班の奴からはぶつくさ文句言われるし、散々だった。全て自分の責任なんだが。
でも、前の身体だったら24キロなんて走れなかった。というか、走ろうとすらしなかったけど。
転生の特典かな?特典ならニュータイプにして欲しかったな。何にせよ、走れる身体って良い!24キロ走ってもあんまり疲れなかったぜ。同じ班員の奴らはボロボロだったのに。
班といえば、俺3班だった。結構優秀なんだな。教官は可もなく不可もなくって言ってたけど、かなり上位にいるじゃんね。だって、4人で1つの班が組まれ、その班が何十ってあるんだから。
走り終わって自室のシャワーで汗を流した後、いよいよ明日から始まる授業の時間割見たら目眩がしてきた。毎日朝8時から夕方6時までビッチリある。しかも何かやたら体育が多い。一年生は体力作りがメインなのか?体力ならかなりあるから成績上位も狙えるな。
あとは座学だけど、これは気合でやるしかないだろう。下手したらこの世界の常識ですら知らない可能性もある。まぁ、そこら辺は情報収集しながら学んでいくしかないかな。
それよりも俺にはやらなきゃいけないことがある。この学校にモビルワーカーがあるかどうか、そしてそれを借りる事が出来るかどうか、だ。
確か5年後、戦争が起こる。それも今までの戦争とは全く違う戦争になる。ミノフスキー粒子の発見により、レーダー関連が戦場で使い物にならなくなり、巨砲大鑑主義による大砲やミサイル攻撃が出来なくなるからだ。
代わりに台頭するのがモビルスーツ。人型を模した汎用性の高い兵器の運用が重要になる。そして今現在モビルスーツはまだ開発されていないが、そのモビルスーツの前身と言えるのが作業用重機のモビルワーカーである。
あのシャア・アズナブルも確かモビルワーカーで事前に練習してたはずだから、この練習方法は間違っていない事はシャアの戦績を見れば明らかである。
明らか・・・あれ、シャアってあんまり勝ってるイメージないのはなんでだろう。そうか全てアムロのせいだ。やっぱりアムロさんに遭遇したら降伏か逃げるかした方良いね。
とにかく、モビルワーカーがあるかどうかというのはとても大事。という事で、今、教官室の前にたっている。ノックをして中に入ると小学校・中学校時代の記憶が薄っすら蘇り、少し緊張してしまった。
緊張しつつもなかを見回すと、たくさんの教官ぽい人が忙しそうにデスクワークをしたり、タバコを吹かしていた。その中にチョビヒゲ40代中頃教官を、発見。
「教官殿、少しよろしいでしょうか!」
「ん?・・・あー、ミナト・タイラか。何だ?」
突然の訪問で邪険にされるかもしれないと考えていたが、チョビヒゲ教官は意外と良い人なのかもしれない。
「はい。単刀直入に申し上げますが、ここにモビルワーカーはありますでしょうか?もしあるのならば、短時間でも良いので、定期的に使わせてもらう事は出来ますでしょうか?」
「はあ?んなもん何に使うんだよ」
教官殿、地が出ていませんか?初日からそんな姿見とうなかった。
「いや、ある事にはあるが、理由もなく一生徒に貸し出すなど通常許可はできん。何故そんな事を言い出す?」
はい、モビルスーツ操縦の練習がしたいからです。なんて言えるわけないので、考えてきた言い訳を言ってみる。
「はい。私の両親はサイド3にて技術士官を務めさせて頂いてますが、その両親からモビルワーカーくらい上手に扱え、と言われておりまして、せっかくなので士官学校にいる間に修得しようと思った次第です」
もちろんそんな事は言われていない。というより、この世界に来てまだ2日目だが、両親と会話を交わしてない。
「ほう、興味深い話だな。タイラ少佐が、そんな事を?その理由は聞いたか?」
「はい。軍において大事なのは人。その、人を人足らせるものは補給物資です。衣食満ちて礼節を知ると言葉もありますが、補給物資を積み込んだり降ろしたりするのはモビルワーカーによる作業が主流です。ならば、モビルワーカーの操縦は必要な技能だろう、と」
もちろんそんな事は言われていない。理由まで聞かれる事は予測済みだ。戦いとは相手の二手三手先を読んで行うものだ。
「ふむ。ドズル校長と懇意にあるタイラ少佐の言葉なら校長も無下にはしないだろう。校長には俺から許可を貰っておくが、大丈夫なのか?」
チョビヒゲ教官殿は話せばわかる人。良い人。今日殴られたり走らされた事は水に流そうではないか。
それにそんな心配までしてくれて。ていうか、ドズル・ザビと両親が懇意って初めて聞い・・・いやいや、戦いとは相手のry
「はは、だ、大丈夫ですよ。壊したりはしません」
「そうじゃない。モビルワーカーの練習に時間を割けるほどここの授業は甘くないってことだ。まぁ良い。話は終わりだな?明日からシゴいてやるから覚悟しておけよ。それと、慣用句間違ってるぞ。衣食足りて、な」
ニヤっと笑いながら教官殿が言い放った。あれ、もしかして嘘ってバレてる?いやいや許可を貰ってくれるらしいし、バレてないだろう。
ていうか、あー、忘れてた。士官学校は鬼の様に濃い密度の授業をするんだった。予習復習の時間とモビルワーカーの時間の両方を作らなきゃならないのか。何とかなるのかなこれ。どうせなら定期試験で良い点取って1班を狙いたいけど、モビルワーカーの操縦も慣れておきたいしなぁ。
まぁ、モビルワーカー使用の許可が下りてから考えよう。うーん。
・・・
・・
・
こうして3年間の士官学校生活が始まった。
授業初日は、それはひどいもんだった。
朝一の体育の時間。1班から10班までの合同訓練。陸軍歩兵のフル装備(武装、食料等1人30kg)をバックパックに入れて30キロ行軍。を、6時間以内という制限時間付き。
流石のこの身体でもキツかった。しかも班員全員が纏まって行動しなくてはならないので、更に時間が掛かる。出来れば1位でゴールしたいけど、途中にあるチェックポイントを3位通過。3班の他の3人はどっちかっていうと文化系寄りの人達っぽく、体力はあまりなさそうだった。いや、それでも一般人よりは充分あるんだけどね。
俺がこっそりバックパック持ってあげたり、励ましたりして何とか時間内にゴール。3位のままだった。一時間で5キロ、つまり12分で1キロ進まなくてはならないが、簡単そうに思えて30キロ背負ってっていうのはかなりキツかった。時間内にゴールしたのが5つの班だけっていう。
つか、これ毎週やんのか!
30キロ行軍リタイア組を回収してからの午後4時からは小隊戦術の授業。今日は座学。内容を要約すると、小隊長の命令は絶対だ。任務は絶対だ。歩兵は将棋の歩だが、歩がなけりゃ将棋は勝てない。情報が重要だから、偵察部隊も重要だ。他にもあるけど、大体こんな感じ。これが2時間。キツかった。
でも、今日はこれで終わりだ。飯食って風呂入ったら今日の復習くらいやっておこう。
と思ってたけど、風呂入ってベッドに座って教科書ちょっと読もうと思って本開いたら、気づいたら寝てた。
おのれ、睡魔め。今日こそはやってやる!やってやるぞ!
2日目は全身筋肉痛になりながらも、射撃訓練、政治学、戦略学、そして1番興味を引いたのがシミュレーターによる搭乗兵器の操縦訓練だ。航空兵器、陸上兵器、海上兵器、宇宙用兵器、多種多様な兵器のシミュレーターがある。
これ改造してモビルスーツのシミュレーター作れないかな?ちょっと色々調べてみよう。
大量に頭に知識を詰め込んだ2日目が終わって、朝の誓いもあり、復習と予習に燃え、部屋に戻ろうとすると、廊下でチョビヒゲ教官に、呼び止められた。
「ミナト・タイラ、ちょっとこっちこい」
もしかしてモビルワーカーの件かな?と思い、ついていくと、士官学校の物資用の搬入口だった。そこには一機のモビルワーカーが佇んでいる。おお、これがモビルワーカーか。
「ここは物資補給用の搬入口だ。貴様が以前言った通り、モビルワーカーで積み下ろしの作業をしている。お前、ここで作業しろ。毎朝5時集合な。」
「・・・は?」
どうやら士官学校にいる間、ゆっくり寝られる日はもうないらしい。俺は卒業まで生き残ることができるのか。
ミナト→士官学校へ入学。モビルワーカーの手配に成功した。後で親にめちゃくちゃ叱られた。
チョビヒゲ教官→ミナトへの評価が下がった!
本作品は特に酷評を求めております。皆様宜しくお願いします。