魔理沙の作戦はこうだ。
三途の川にいるのなら、まだ天国にも地獄にも行ってないはずだから、それを判別する四季の所に文のつてで新聞を届けてもらい、妖人が自分らの仲間であることを知らせて、何とかして戻してもらおう、という作戦だ。
「あんたねぇ……。何とかって、そんな簡単に出来るものじゃないでしょうに……。」
私は意気揚々と説明を終えてどやっ!という顔をして仁王立ちする魔理沙に頭に手を当てて深くため息をついた。
「でも、四季は閻魔様だぜ?それくらい出来るだろ?」
「あの子の能力は白黒はっきりつける程度の能力で、死んだ人を生き返らせることは出来ないでしょうが……。」
「妖人はお前を庇って死んだんだろう?普通は出来るはずのない死に方で。なら、何とか出来るんじゃないか?」
「まぁ……もしかしたら、出来るかも知れないけれど、でも……。」
てな感じで、私と魔理沙の口論は終わらない。やいのやいの言い合う。
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ~ん!文ですよぉ~!」
もう止まらないんじゃないか、そう思いかけたときに、文は狙い澄ましたかのように現れた。実際、狙い澄ましたのだろうけれど。
「丁度良かった文!お前確か三途の川に新聞を届ける同僚がいるって言ってたよな!」
「?ええ、言いましたよ?」
「頼みたいことがあるんだ!新聞を作って届けてほしいんだ!」
「まぁ、それは構わないですが……ネタがなければ。」
「ネタならあるぜ。……な、霊夢。」
「……えぇ、そうね。」
「本当ですか!?それはどのような?」
そうして、私は文に今までの経緯を余すとこなく説明をした。妖人が死んだところから、私たちの作戦会議まで……。
「……なるほど、私達の力を集めればすぐに新聞を作成し、届けることは出来ます。それは承知のことですよね。しかし、それでどう生き返らせてほしいと訴えるのですか?新聞に書くのですか?個人的な内容で新聞を埋めることなど私達のポリシーに反します。」
「ぐっ……。」
魔理沙がたじろぐ。そこまでは考えてなかったらしい。全く……。
「……ただ。」
「?」
「文章を構成するのは私達です。つまり、文章で文を作ることも出来ます。」
「?何が言いたいんだぜ、文。」
魔理沙は文の言いたいことを理解できないようだった。しかし、私は分かった。持ち前の勘ってやつなのかもしれない。
「……文章の並び方を変えて文を作る、ってことね?文。」
「イグザクトリー、その通りですよ霊夢さん。」
「おお、なるほど!」
ポン、と魔理沙が合点した時にする手を打ち合わせる仕草をする。
「……頼めるかしら、文。」
「……霊夢さんや魔理沙さんの頼みとあらば、断る謂れはありませんね。」
そう言って、フッ、と優しく文は微笑み、言った。
「……貸しですからね?」
「「……えぇ(あぁ)!」」
――――――
「『桜花妖人は私達の友人です。どうにか、生き返らせてください』、ですか……。なるほど、新聞がいつもより早めに到着した理由はこれでしたか。しかしまぁ、随分としゃれた手を……。」
その霊夢達の作戦の新聞を、何とか読み解いた四季さんが読み上げたが、僕は、途方にくれていた。事実、僕の耳には内容は入ってこなかった。
僕は、……霊夢を庇って死んだんだ。だから、天国か地獄か、今から判別されるんだ……。そのために、僕はここへ来たんだ。……まだ、霊夢に直接気持ちを打ち明けられていないのに。やりたいこと、いっぱいあったのに……。
出来ることなら生き返りたい。
というか、僕の変える能力で死んだという事実を『変えて』みせたい。……だけど、僕の能力は摂理は変えることが出来ない。例えば、時間が流れているという事実とか、死んだという事実とか。少なくとも、僕には出来ない。
僕は、拳を握りして、歯を噛み締めた。涙を、流すものかと。泣くのは、嬉しいときだけでいいと、自分に言い聞かせながら。
「……さん、人さん?……妖人さん!」
「え?あ、はい!」
そうしてたら、いつの間にか近くに四季さんがいた。少し怒ってる口調を見るに、何度も呼ばれていたらしい。
「あなたは、生き返りたいですか?」
「え?……え?」
今、なんて……?生き返りたいですか、だって……?
「……そんなの、当たり前じゃないですか。僕には、まだまだやり残したことがたくさんあるんですから。」
「……なら、生き返らせましょう。本来なら、あなたは冥界に行くはずだった。ただの幻想郷の死人がここに来るはずはないのですから。しかし、何故かここに来てしまった。ここから冥界へは直接は行けません。なので、現世から行くことが当然です。」
「は、はぁ。」
少しややこしいが、何となく理解できた。
「そして、寿命を全うせねばなりません。現世に戻って死ぬ、なんてのは理に叶ってませんから。……だから、あなたはこれから、第二の人生を生きてもらいます。」
「わ、分かりました。」
もはや脳が解析不能寸前になりながらも、何とか頷く。
「しかし、何の条件もなしに生き返らせることは私には出来ません。」
「……その条件とは?」
「……生前の記憶を、忘れる。」
「はぁ!?」
いやいやいや、ちょっと待ってよ。戻ったばっかりなのにまた失うなんて勘弁してほしい。
「仕方ないことです。それとも、生き返るのをやめますか?」
「うっ……。」
痛いところをついてくるな……この人。あれ、閻魔様って人なのかな?まぁいいか。
つか、つか、と歩いて長い窓から差し込む光が背後に来るような位置に四季さんが歩いて、続きをいった。
「安心しなさい。あなたが人にどういう思いを抱いていたかは忘れません。友達なら友情、思い人には恋情を抱いたままです。その人との記憶は忘れますけれど。」
「なるほど……。」
良かった……せっかく思い出したこの大切な気持ちを二度も忘れるなんてごめんだからね。
それに、伝えたい気持ちと、伝えたい言葉があるんだから。
「とにかく、生前の記憶を忘れるというのが一つの条件です。」
「一つの?ってことは、もう一つあるんですか?」
「はい、あります。それは、どこに飛ぶか現れるか見当がつかない、ということです。」
「厄介ですね……、まぁ、それくらいなら何とか大丈夫です。」
「分かりました。では、覚悟は決めているようなので、もう始めますね。」
そう言って四季さんは手に何か金の棒を出現させると、それを僕の肩にトン、と当てた。
「――――、――――。」
僕が理解できない言葉を二、三語呟いて、――――ふと笑った。滅多に見せないであろうその笑顔に、僕はしばし見惚れてしまった。そして……。
「さようなら、桜花妖人さん。今度はこちらに来ないことを祈りますよ。」
四季さんが、別れの言葉を告げた。そして、僕も告げた
「ありがとうございました、四季さん。今度はきっと――――。」
きちんと生きて見せますから――――。
その言葉を最後まで続けることは出来なかった。僕は、
――――現世へと、飛んだ。大好きな人のいる、幻想郷へ――――。
――――――――――END to the episode――――――――――――
はい、どうも!短い話ですみませんでした、遠山tsunです!
今回でこの東方冒険禄3――どこに行っても主人公――は終わりとなります。
最初は謎の現象により幻想郷へと飛ばされてしまった三人。雨立 真人(あまだて まなと)、小夜鳴 夕美(さよなき ゆうみ)……そして桜花 妖人(さくらか ようと)。
それぞれの場所に飛ばされ、数日を過ごし、後にひょんなきっかけで博麗神社に集結する。
その時、異変が起きた。
時がまるで止まったように動かなくなり、戸惑う妖人達は迫り来るカーテン状の異変を目にする。霊夢と妖人は異変解決へと乗り出す。
そして、死闘の末、異変を起こした張本人、妖人の妹の桜花 由夢(さくらか ゆめ)とも和解し、和気藹々とする。が、その直後異変が起きる。霊夢と妖人は未来の人間界へと飛ばされる。
霊夢は小さくなり、様々な謎を持ちながら、行動を開始する霊夢達。そして、近くの町で出会ったのは里見蓮太郎と藍原延珠だった。二人を追いかけて入った天童民間警備会社で現実を聞かされる。
その後、新しい部屋を借りて、日常を過ごし始めたある日の夜、現れたのは蛭子影胤だった。そして、妖人は同じくして現れた境界に引きずり込まれ、その先には八雲紫がいた。
いつの間にか付いてきていた霊夢と共に今から何が起こるかを説明され、現れた災厄、禍霊夢との戦闘に挑む。その最中、霊夢は隙を見せた妖人を禍霊夢からの攻撃を受けて死んでしまう。その後、怒りの妖人の攻撃により禍霊夢の無力化。悲しみにくれる妖人だったが、紫の提案により霊夢の代わりに死亡することを覚悟する。
禍霊夢の力により、死亡した妖人は、三途の川を渡り、四季映姫・ヤマザナドゥの元へとたどり着く。
そこで、妖人は霊夢達の作戦の新聞を目にし、三途の川についたときに失っていた生前の記憶を取り戻す。
しかし、生き返るのためには生前の記憶を失うのと、どこに現れるか分からないという条件があった。それを承知し、妖人は霊夢達の待つ幻想郷へと転移する――といったお話です。
どうでしたか?少しでも楽しんでいただけたのなら、光栄です。
次回作はまだ思考中です。東方冒険禄を書くか、別のものを書くのか……、それを悩んでいるのです。
何か要望があれば、コメントまで。それでは、じゃあの!!