~20年前~
「ほぉ、なにやら秘匿を無視した滅茶苦茶な魔力行使を感じてきてみれば・・・」
「あ?誰だじいさん?」
「ワシは草壁大輝と言う。魔法使いなら名前くらい聞いたことあるじゃろ?」
「うん、知らん。それで?なんか用か?」
「ふむ、世間知らず、礼儀知らずの生意気なガキじゃの。今時の者にしてはありえないくらいの才能を持っているようじゃが。」
「ふん。そんなの当たり前だろ!俺は天才なんだからな!」
「うむ。しかしいくら天才だからと言っても魔法の秘匿ぐらいはしてもらわないと困るの。」
「だからなんだよ!バレたって記憶を消せばいいんだからな!」
「お主のレベルでは記憶操作はうまくできないと思うのじゃがの。」
「そんなの知るかよ!俺が失敗なんかするわけないだろ!」
「・・・自意識過剰もここまでいくと清々しいの。少し現実を知る必要があるようじゃな。」
「はっ。死にかけのじいさんが!やってみろ!『劫火』!『暴風』!」
「ほう、無詠唱呪文を使えるとはの!じゃが・・・構成が甘いの~『消えろ』。」
「なっ。何をしたジジィ!」
「そんなことも分からないとはの。所詮おぬしは位の中の蛙じゃよ。『墜ちろ』」
「ぐ・・・な・・・にが・・・」
「やりすぎたかの?まあ、若い者を導くのも年寄りの役目。この調子ではまだまだ隠居はできんの~」
~現在/IS学園~
IS学園。ISの特性上女子しかいないはずの学校の教室に紛れ込んでいる男がいた。これだけなら不審者として警察に突き出されるだけであろうが、残念なことに彼はちゃんとしたこの学校の生徒である。
(キツイ・・・なんでこんな目に・・・)
彼こそが女性しか動かせないISを男性で唯一動かしたイレギュラー。織斑一夏その人である。
「皆さん入学・・・! 私は・・・山・・・とい・・・す」
(そういえば、大輝の奴がなんか女難の相がなんたらとか言ってたな・・・まさかこれのことか!?)
「本校は・・・で・・・なのであり・・・」
(視線がキツイ・・・弾の奴は羨ましいぞコノヤロウ!俺と代われ!とかなんとか言ってたけど・・・代われるなら代わってほしいぞ・・・)
今の彼はさながら動物園のパンダの如し。立派な珍獣扱いである。視線に攻撃判定があるなら間違いなく即死だろうという量の視線が彼に浴びせられている。しかし実際には攻撃判定なんてないので精神的に色々と削られる―約一名この大量の視線を物理攻撃に変えることのできるとある魔法使いもいるが―だけである。
「では・・・出席番号順・・・お願い・・・」
(・・・帰りたい。《おいおい帰るのはまずいだろう》って)
「えっ?大輝!?」
「あっ、あの、織斑一夏くん・・・どうかしましたか・・・?」
「あっ、えっと・・・なんでもないです。」
「はあ、それでは次の・・・」
(今のって・・・念《話だよ。馬鹿だな。黙ってればいいのに。》・・・心を読むな!)
《一夏・・・前から思ってたが・・・すっかり珍獣だな!あと念話ができないお前のためにお前の心を読んでやるから心配すんな!》
(心配しかねぇよ!まあ、正直ありがたいけどな・・・)
「・・・くん・・・斑くん!・・・織斑一夏くん!」
「はっ!ハイ!」
「あっ、あの、お、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってる? 怒ってるかな? ゴメンね、ゴメンね! でもね、あのね、自己紹介、『あ』から始まって今『お』の織斑くんなんだよね。だからね、ご、ゴメンね? 自己紹介してくれるかな? だ、ダメかな?」
とまあどちらか教師か学生か分からないような光景を乗り越えて立ち上がった彼を貫く視線。4割増しである。―一つ違う種類の視線があるが―どこぞの動物園の珍獣でもここまでではあるまいと感じさせるような類の視線である。
「えっと・・・織斑一夏です・・・」
貫く好奇心という名の視線。3割増しである。
(いかん!これでは3年間暗い奴というイメージがついてしまう!何かないか何か!)
《しょうがない力を貸してやろう。俺のあとに続いて言え》
(大輝!ありがとう!やっぱりお前は親友だ!)
《全くお前は・・・まあいい。特技は家事全般。趣味は男子とイチャイチャすること!異性への興味は全くないのでよろしくお願いします!》
「特技は家事全般。趣味は男子とイチャイチャすること!異性への興味は全くないのでよろしくおってなんだこれ!」
《ん?違ったのか?》
「違うよ!ちゃんと女の子にも興味あるよ!っていうかお前どんな目で俺を見ているんだよ!」
「えっとお・・・織斑くん?あのー?」
無視される山田先生。涙目である。というか客観的的に見ると―客観的に見なくても―虚空と喧嘩するただの危ない人である。
「お前とは一度しっかりと話し合わなければならないようだな!あと俺は唐変木じゃねえ!」
《えっ。いや?まあ、そう。いいんじゃない?どうでもいいけど織斑ー!うしろ!うしろー!》
「なんだよその反応!っていうか後ろ・・・?」
「貴様は何漫才をしている!」
ズガン!
「ぐおぉ一体何が・・・?ってげえ!ち、千冬姉!なんでここに!」
「なんだその反応は!あとここでは織斑先生だ。」
ズゴガン!
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~現在/IS学園近く~
(・・・相変わらず人間離れしているな千冬ちゃん・・・)
千里眼と読心術と念話を使って今まで教室での一部始終を覗いていたこの男完全にストーカーである。
暇のあまり色々とちょっかいをかけたりしてやったのだが・・・完全に魔法の無駄遣いである。まあ、この男らしいといえばらしいのだが・・・
(しっかしあの自己紹介はまずかったかね?箒ちゃんの顔色がすごいことになってたし・・・いや、千冬ちゃんもか。一瞬で顔色直したのはさすがだけどねー)
もう一度千里眼を使う。今は休み時間なのか・・・千冬が一夏を連れ出しているのが見えた。どうやらあの嘘の趣味について取り調べするらしい。一夏哀れである。
(・・・後でなんかフォローしておくか。スマン一夏。これからはもう少し自重できるように善処するよ。)
そう思う時点で善処する気などない。人間心理の一つである。
「さてはて、この調子で一夏の奴は大丈夫かね~?」
待って!千冬姉!それはマズ・・・ぎゃァァァァ!
(遠くで一夏の悲鳴が聞こえた気がする・・・気のせいか・・・アイツ念話使えないし。ここまで声は届くわけないし。・・・寝るか)
あっ箒!久しぶり!久しぶりで悪いんだけど助けってその木刀は何って待て待て、それはシャレにならないってぎゃァァァァ!
(・・・今日はいい日だ・・・)
大輝ィ!覚えてろォ!
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