ザイードに憑依して暗殺王を目指す!?   作:たくヲ

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決着とは呆気ないモノっす?

『セイバーのマスターが来た』

 

 その報告を聞いた俺は冬木市民会館のホールにまでやってきたっす。

 

 そこでは言峰綺礼が目を閉じ、十字架を握りしめ、何かを呟きながら待機しているっす。

 

 言峰綺礼が呟いているのは聖書の一説っすかね?そのあたり詳しくないっすからわからないんすけど。そもそも、霊体化しているから霊視しかできないっすから、何言っているのかなんて聞こえないっす。

 

 俺としても一か八かの賭けに出たくはなかったんすけどね。ここは言峰綺礼が期待通り動いてくれることを祈るばかりっす。

 

 

 ……おっと。だれか来たようっすね。

 

 言峰綺礼が目を開け、開きっぱなしになっている扉を見据えたっす。

 

 その扉から現れたのは、くたびれたコートを着た男。セイバーのマスター、衛宮切嗣っす。

 

 姉御アサシンさんと老人アサシンさんに任せた作戦がうまくいっていれば、最後のマスター二人が対峙したことになるっすね。

 

 言峰綺礼は僧衣の裾に手を伸ばしたっす。

 

 同時に衛宮切嗣もコートの内側に右手を伸ばしたっす。

 

 言峰綺礼が抜き取ったのは、代行者の武器である黒鍵の柄っすね。指の間に挟むように取出した柄は右手に3本、左手に一本。

 

 衛宮切嗣が取り出したのは一丁の銃器、トンプソン・コンテンダーっす。もうすでに弾丸は装填済みのようっすね。

 

 言峰綺礼は両手の黒鍵の柄から魔力で刃を形成しつつ衛宮切嗣へ向けて駆け出し、衛宮切嗣は迎え撃つようにトンプソン・コンテンダーの銃口を衛宮切嗣に向けるっす。

 

 発砲。

 

 トンプソン・コンテンダーから飛び出した弾丸まっすぐと言峰綺礼に向かったっす。

 

 言峰綺礼は右手に持った黒鍵三本にさらに魔力をこめ、その刀を強化。

 

 向かってくる弾丸に対し言峰綺礼は強化された三本の黒鍵を薙いだっす。

 

 弾丸と刀身の衝突。結果、言峰綺礼の黒鍵は砕かれるも、横から黒鍵を受けた弾丸は言峰綺礼のすぐ横をすり抜けるっす。

 

 

 その瞬間、言峰綺礼は吐血したっす。倒れそうになる身体を支えようとし、意識を失い倒れ伏してしまったっすね。

 

 無論、先程の弾丸は弾かれ、言峰綺礼に命中しているわけではないっす。

 

 しかし、その弾丸の……魔弾『起源弾』の効力は言峰綺礼の全身を蝕んだっていうことっすね。

 

 原作の言峰綺礼は父親である言峰璃正から受け継いだ預託令呪を用いて、黒鍵の刀身を強化していたっすからね。魔力の出所である令呪は使用した時点で焼失してしまうから、『起源弾』の効果を受けなかったらしいっす。

 

 でも、今は違うっす。言峰綺礼は預託令呪を引き継いでおらず、通常の令呪しか持っていなかったっす。

 

 結果、言峰綺礼は自前の魔力を使って刀身を強化したせいで、『起源弾』の効果を受け魔術回路はおそらくぼろぼろ。刀身には言峰綺礼の行える最大限の強化を行ったはずっすから、下手すると魔術回路全滅っすね。

 

 まあわずかに、魔力が流れてきているっすから全滅ってわけではなさそうっすけど。

 

 

 衛宮切嗣が倒れている言峰綺麗に近づいていく。

 

 左手にはキャリコM950。その短機関銃をセミオートにして、心臓に向ける。

 

 

 今回は両者の勝率五分五分だったっす。

 

 もし、衛宮切嗣の初弾を言峰綺礼が避けているか、魔術で対処しなければ結果は逆になっていたはずっす。

 

 衛宮切嗣が言峰綺礼の初撃を避けられないとは思わないっすけど……原作とは違って衛宮切嗣の体内に『全て遠き理想郷(アヴァロン)』がないっすから、三撃以内で衛宮切嗣を殺せる可能性が高かったっすからね。

 

 

 さて、口には出せないっすけど言峰綺礼に言いたいことがあるっす。

 

 ありがとうっす。あんたは俺の期待通りの(・・・・・)働きをしてくれたっすよ。

 

 

 衛宮切嗣がキャリコM950の引き金を引き、言峰綺礼の心臓を撃ち抜く。それと同時に、俺は衛宮切嗣の真後ろで実体化してその背に短剣(ダーク)を突き付けるっす。

 

「!?令呪を以て」

「おっと、余計なことはしない方がいいっすよ?あんたがセイバーを令呪で呼ぶのと、俺があんたを刺し殺すこと、どっちが早いかなんて論ずるまでもないはずっす」

「……」

「とりあえず武器を捨てるっす」

 

 衛宮切嗣は僅かに躊躇したような動きを見せ、持っていても無駄だと判断したのか左手のキャリコM950と右手のトンプソン・コンテンダーを地面に落としたっす。

 

「……何が目的だ」

「目的、っすか。聖杯戦争でサーヴァントが敵のマスターを捕らえることが珍しいことだとでも言いたいんすか?」

「お前のマスターは死んだ、そんな状況でお前に僕をさらっている余裕なんてないはずだ!」

 

 そうっすね、言峰綺礼が死んだせいで、アサシンズへの魔力供給は途絶え消滅を待つばかりっす。

 

「衛宮切嗣、あんたに頼みたいことがあるっす」

 

 

 

 

 

 

 

 冬木市民会館のコンサートホール。

 

 その中央にあるのは聖杯っす。

 

 そこでは残っている77人の内75人のアサシンが聖杯の警護をしているはずっす。

 

 そこに俺と衛宮切嗣は入っていくっす。無論、衛宮切嗣の背に短剣(ダーク)を突き付けたままっすよ。

 

「ザイード!マスターは……?」

「御察しの通り、死んだっすよ」

「そうか……それで、そいつがセイバーのマスターだな」

「そうっす」

 

 話しかけてきたのは冷静アサシンさん。それなりにショックな様子っすね。

 

 そして、衛宮切嗣もそれなりに驚いているみたいっす。まあこれだけの数のアサシンが集結する光景なんてそうそうないっすからねえ。

 

「さて、時間もないっすから始めるっすよ。衛宮切嗣、あんたにはもう少し歩いてもらうっす」

「……頼みというのはなんだ?」

「それも含めて、アレが説明してくれるはずっすよ。いや、正確にはアレの言うことに対してあんたが思うことこそ、俺たちの頼みと同じ物であるはずっす」

 

 俺が言うと、無言で歩を進める衛宮切嗣。

 

 そのまま俺と衛宮切嗣はまっすぐと聖杯へと向かい……衛宮切嗣の靴が聖杯の泥に踏み込んだっす。

 

 魔力の泥に倒れ伏す衛宮切嗣。それを見ながら俺は一歩後ろへと下がるっす。

 

「これで、いいっす。そうそう、魔術で彼女を呼んでおいてもらえるっすか?」

「了解だ」

 

 魔術師アサシンさんが念話で姉御アサシンさんを呼んでいるっす。まあすぐ到着するはずっす。

 

「さて、あとは衛宮切嗣が起きるのを待つっすかね」

「ザイード。本当にこの計画はうまくいくんだな?」

 

 ふむ……巨漢アサシンさんの問いにはうまく答えられないっすね。

 

「そうっすね。成功率はけっして高くないっす。でも、これに賭けるしかないんすよ」

「そうか……」

 

 おっと、姉御アサシンさんが到着っすか。

 

「セイバーはどうだったんすか?」

「バーサーカーによって足に負傷をさせられたようだ。今はその傷を癒すために休んでいる」

 

 以外っすね。原作みたいに普通に歩いてくると思ったんすけど。

 

「バーサーカーのマスターの暗殺、およびバーサーカーの消失は確認しました。残るは私たちとセイバーのみ」

「そうっすか。ご苦労様っす。ほんの少しの間っすけど体を休めるっす」

「いえ、私は大丈夫ですよ、ザイード」

 

 さてと、まああとは衛宮切嗣の目覚めを待つばかりっすね。……早く起きてくれればいいんすけど。

 

 

 

 

 

 

 

 俺の心配は杞憂に終わったようっすね。衛宮切嗣はそれから三分後くらいに目覚めたっす。

 

 そして、起き上がり、少し呆然とした表情で俺を見てきたっすね。

 

「これが聖杯の正体か?」

「そうっす。たった今、本体から説明してもらったはずっすけど」

 

 衛宮切嗣が見たものは、聖杯が自分の願いをどうやって叶えるのか、ということのはずっす。

 

 多数と少数の二つのグループがあり、そのどちらかのグループを選び殺さなければならなかったとき、必ず少数を切り捨てて多数を救ってきた男。衛宮切嗣。

 

 その男が願った『恒久的世界平和』。

 

 『この世すべての悪(アンリマユ)』によって汚染され、殺すという方法でしか願いを叶えられなくなった聖杯が、『恒久的世界平和』をどのように達成するのか。

 

 すべての人類、もしくはほんの一部を除いた人類の殺害。そういうかたちでしか願いを叶えられないということを衛宮切嗣は理解したはずっす。

 

「俺らからの頼みがなんなのかわかるっすね?」

「ああ……わかったよ。だが、お前たちはどうしてそんなことを?」

「決まっているじゃないっすか。……人類の歴史は俺たち英霊の歴史と同義っす。俺たちが作ってきたものを無に還すなんてごめんなんすよ」

 

 そんなことを言いつつ、その場にいた全てのアサシンを集めるっす。

 

「あとは貴様に任せる。しくじるなよ、ザイード」

「わかってるっす。あんたたちもしっかり眠るといいっす」

 

 その場にいたすべてのアサシンが魔力の塊となって俺に集うっす。

 

「さて、衛宮切嗣始めるっすよ」

 

 

 

 

 

 

「衛宮切嗣の名の下に令呪を以て命ず。聖杯の前まで移動せよ」

 

 一つ目の令呪が輝きを放ち、聖杯から少し離れた場所、コンサートホールの入り口付近にセイバーが現れるっす。

 

 セイバーは戸惑ったような表情を浮かべ、周囲を見回しているっすね。

 

 俺と衛宮切嗣の姿を見つけ、俺に向け殺気をぶつけてきたっす。

 

「切嗣!アサシンから離れてください!!」

 

 その言葉を衛宮切嗣は無視し、続けるっす。

 

「第二の令呪を以て命ず」

 

 その言葉が届いたのか、セイバーは何を命令されてもすぐに対応し、俺を攻撃できるように構えるっす。

 

「宝具を解放し、聖杯を破壊せよ!!」

「な!?」

 

 セイバーの構えは彼女にとって予想外の命令によって無為にされたっす。

 

 まあ、そりゃあそうっすよね。自分を助けろって感じの命令をされると思うのは当然っす。

 

「切嗣!何故、あなたが!?」

 

 セイバーが悲痛な叫び声をあげつつも、令呪の命令に耐えているっすね。

 

 まあ、原作でも耐えていたっすから予想通りっすけど。

 

「第三の令呪を以て、重ねて命ず」

「や、やめ」

「聖杯を破壊せよ!」

 

 セイバーの静止も意志も無視し、セイバーの全ての魔力を使った『約束された勝利の剣(エクスカリバ-)』が放たれ、

 

 光の束が聖杯を吹き飛ばしたっす。

 

「ご苦労様っす」

 

 セイバーが消えていくのを確認したのと同時、俺は衛宮切嗣に跳びかかり短剣(ダーク)を心臓に突き立てるっす。

 

 衛宮切嗣の背に深々と突き刺さった短剣(ダーク)を無視し。俺はまっすぐ駆けるっす。

 

 先程まで聖杯があったコンサートホールの中心。

 

 そこに立ち空を見ると、空に開いた孔が目に入ったっす。

 

 そして、

 

「第四次聖杯戦争はこれで幕引きっすね……まったく、呆気ないモノっす」

 

 俺に大量の泥が降り注いだっす。




 たくヲです。

 なんかここにきてグダグダになってきている気がします……もっと精進しなければいけませんね。

 とにかく、今回は簡潔に、

 『ザイードに憑依して暗殺王を目指す!?』をよろしくお願いします。

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