ザイードに憑依して暗殺王を目指す!?   作:たくヲ

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話し合いは大切っす?

 英雄王ギルガメッシュが聖杯戦争より敗退。これは世界にとって小さな一歩でも、俺にとって大きな一歩っす。

 

 今回行った中でメリットもデメリットもある行動が一つあったっす。それが拳銃による工作っす。

 

 遠坂時臣を暗殺した後、窓から投げ入れた拳銃の弾を撃ちこんだのは、頭の刺し傷をわからなくさせるため。そして、第四次聖杯戦争において銃器を扱う魔術師である衛宮切嗣に罪を押し付けるのが目的。

 

 ゴム手袋は指紋が凶器の拳銃に残らないようにするためっす。……サーヴァントの指紋が残るのか甚だ疑問ではあるんすけど。

 

 しかし、今回行った作戦には弱点があるっす。

 

 それは言峰綺礼いがいのマスターにアサシンズが生存していると知られてしまうこと。

 

 拳銃を入れた袋を投げ入れるとき、俺は実体化せざるをえなかったっす。だから使い魔を放って遠坂邸を見張っていたマスター、つまりマスターの一人、雨生龍之介を除いたマスターには、遠坂邸の下に俺がいて何かを部屋に投げたことがばれているはずっす。

 

 雨生龍之介は魔術の心得はないっすし、キャスターも使い魔を放つどころか敵マスターの拠点……始まりの御三家の拠点さえ知らないはずっすからね。

 

 ちなみに言峰綺礼に知られない理由は……あの人って使い魔を放ってないっすからねえ。霊体化してチェックしてたから間違いないっす。

 

 だからって、言峰綺礼にこのことを教える気はさらさらないっす。

 

 だって、俺が殺したってばれたら『なに時臣氏殺してるんだ』みたいな顔浮かべて令呪で自害ENDってこともあり得るっすからねえ。

 

 閑話休題

 

 遠坂邸の敷地内でも霊体化+気配遮断ならサーヴァントにも見つからないから便利っすよね。

 

 実際、ランサーは少し俺を探していたっすけど見つけきれずにケイネス・エルメロイ・アーチボルトのところに行ったっすからね。

 

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは遠坂の屋敷に踏み込んでいるっす。

 

 バーサーカーはアーチャーを倒した後に霊体化して消えたっすから、おそらくは魔力消費が多すぎて間桐雁夜は撤退したとみて間違いないっすね。

 

 さて、さっさと逃げ帰るとするっす。

 

……アレ?今更気づいたんすけど、ギルガメッシュの魂は英霊三騎分だから、聖杯が英霊三騎分満たされるって聞いたことがあるっす。……今回の聖杯であるアイリスフィール・フォン・アインツベルンは大丈夫なんすかね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、冬木教会まで来たっす。俺は霊体化したまま教会内に入るっす。

 

 もう、言峰綺礼は保護されたみたいっすね。

 

 教会内には俺らのマスターである言峰綺礼と、その父である言峰璃正。それにこの周囲のアサシンアサシンした気配は俺らアサシンのモノっすね。

 

「……念のため教会周辺の警戒を怠るな。常にそれと、現場の監視をしていたものは?」

「はい、俺っす」

 

 実体化しながら、言峰綺礼にたいして言うっす。

 

「あの現場を見ていた使い魔は4体。少なくとも4名のマスターが遠坂邸を監視していたものと思わるっす」

「ふむ、一人足りないか。できれば5人全員にあの場を見届けてもらいたかったが」

 

 まあ、全てのマスターに見てもらわないとアーチャーの強さを見せられないっすからねえ。……もうアーチャーいないっすけど。

 

「そもそも、聖杯戦争が始まって間もないこの状況では、御三家の監視をするのは当然の策でありましょう」

 

 長髪をポニーテールにしたどことなく姉御肌な女アサシンが実体化して言うっす。

 

「その程度の用心も怠るような者に、我らアサシンを警戒する神経など最初から持ち合わせておりますまい」

 

 笑い声を漏らしつつ小男アサシンが実体化し発言するっす。

 

「放置しても問題はないかと」

 

 巨漢のアサシンが実体化して提案したっす。

 

 その直後に大量のアサシンがワラワラと実体化していくっす。……演出はアニメ版に近いんすね。

 

 これが、『百の貌のハサン』の宝具『妄想幻像(ザバーニーヤ)』の力っす。

 

「……ところであの人格は死なせて惜しかったか?」

「あの男は、俺たちアサシンズの中でもそそっかしい人格だったっす。あの男が一人失ったところで総体に何の影響もないっす」

「しかし」

 

 先程の女アサシンが話し始めるっす。

 

「大した損失でないとはいえ損失は損失。無益な犠牲であったとは思いたくありませぬ」

 

 確かに、そうっす。本来はザイードが死ぬはずの展開を変えるために代わりに行ってもらったんすから。

 

「無益ではない。これによって、お前たちは他のマスターを欺けたのだ。暗殺者(アサシン)であるお前たちがこれでどれだけ優位に立てたと思う?」

「ハッ。仰せのとおりでございます」

 

 言峰綺麗の言うことは一理あるんすけど、この場合は適用されないっすよね?アサシンが生存していることはばれてるっすから。主に俺のせいっすけど。

 

 ばれてなかったとしても、その場合は諜報活動をするだけして使い潰されるそうっす。

 

 原作ではその展開のせいで暗殺者(アサシン)なのにだれ一人殺していないという奇妙な状況に陥ってたっすからね。殺したのは久宇舞弥の使い魔ぐらいっす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちアサシンズが教会の一室に集結しているっす。

 

 言峰綺礼(マスター)は教会地下に閉じこもり、言峰璃正(監督役)はどこかに仕事に行ったっす。

 

「第一回アサシン会議を始めるっす」

「……ザイード。お前そんなキャラだったか?」

 

 巨漢アサシンさんが俺に聞いてくるっす。なんと答えたものっすかね?

 

「……いめちぇん。というやつっす」

「……そうか」

 

 さて、『なんか腑に落ちねえ』という顔をしている巨漢アサシンさんはスルーっす。

 

「今回、マスターに命じられた任務は『冬木教会の警備』と『他のマスターの動きのチェック』っす。でも、この冬木教会に他のマスターが攻めてくるとも限らないっすから。ここには最低二人は配置しておくべきと思うっす」

「教会に対して、マスターは不可侵が命じられているのでは?」

 

 甘いっすね。姉御アサシンさん。

 

「でも、こうして教会内部に入り込んでいるマスターがいるっすけど」

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 一部のアサシンを除くアサシンの声が重なったっす。

 

「それに、聖杯戦争は戦争っすよ?敵マスターがルールなんて二の次で行動するかもしれないっす」

「誰が残るんだ」

 

 確かにまっとうな疑問っすけどね、小男アサシンさん。

 

「逆に聞くっすけど、ここに残りたいやつはいるっすか?」

 

 ……いないっすね。まあ、せっかく現界して留守番したいなんて奴はそういないと思うっすけど。

 

「では私が残りましょう」

 

 と思ったらいたっす。流石は姉御アサシンさん。他人格の嫌がる仕事に平気でついてくれるっす。

 

「では、私も残ろう」

 

痩せ形アサシンさんも残ってくれるんすか。ありがたいっすね。

 

「では、残りのみんなは偵察を頑張ってっす」

 

 アサシンたちが一斉に霊体化するし、気配が散らばるっす。

 

「では、私は教会の周囲を警備してきます」

「私は教会内部に留まろう。ザイード、貴様はどうする?」

「俺はすぐにでも偵察に行くっすよ。でも、その前に……少し話があるっす」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教会地下室。

 

 言峰綺礼の収集した酒が置いてあるその部屋は、ある意味で彼の部屋と言えるっすね。

 

 ソファに腰かけてぼんやりとしている、言峰綺礼。その前に実体化したのは、髑髏の仮面の中肉中背の男。アサシンの人格の一つザイード。すなわち俺っす。

 

「……どうした?」

「いえ、少しマスターに話があって来たっす」

 

 綺礼の質問に俺はそう返す。

 

「その前に報告を。アサシンの人格の内二人がここに残ることになったっす。いざというときはマスターだけでも逃がせるっす」

 

 さて。と俺は間を置くっす。

 

「本題に入らせてもらうっす」

「そんなことをしている暇はない」

「そう言わないでほしいっす。……言峰綺礼。あんたは聖杯に何を願うんすか?」

 

 聖杯。あらゆる願いをかなえる万能の願望器。

 

「……私に願いなどない。今回の聖杯戦争においての私の役割は時臣氏の補佐。あえて言うなら遠坂の家に聖杯をもたらすことが願いだ」

「嘘っすね」

 

 言峰綺礼の回答を一言で切り捨てるっす。思わず言峰綺礼は俺の顔を見返してきたっす。髑髏の仮面で覆われている俺の表情はわからないはずなんすけどね。

 

「あんたの中には紛れもなく、自分のための願いがあるはずっすよ」

「……なぜお前がそんなことを断言できる?」

「聖杯は願いを遂げようとするものを優先して令呪を授けるらしいっすね?もし、聖杯がその通りのモノなら、それに選ばれたあんたには願いがあるはずなんす。……ところで、俺が遠坂時臣の護衛をしたときにあんたの経歴を聞いたんすよ」

 

 そこで俺は言葉を区切るっす。

 

「1981年にマンレーサにある聖イグナチオ神学校を2年飛び級、主席で卒業。その後、聖堂教会に入り、十代で代行者に任命。その後、魔術協会へ転属して、遠坂時臣の弟子入り。積極的に魔術の鍛錬を行った、とそう聞いてるっす。治癒魔術に関しては遠坂時臣以上だとも」

「……それがどうした」

「あんたはひとつのモノに対して努力をしてから周囲に評価されるようになるまでの時間が短いっすけど、それをやめて次の何かに対して努力しなおすまでの期間が異常に短いっす。まるで始めから(・・・・・・・)目指すものがない(・・・・・・・・)みたいに」

「!?」

 

 綺礼は驚愕の表情を浮かべるっす。

 

 長い間自分を見ていた父である言峰璃正にも、師である遠坂時臣にも、2年連れ添った妻にも、気づかれることのなかった懊悩を、召喚して数日の異教徒である暗殺者(アサシン)に見破られたんすから。

 

「それを踏まえて改めて問うっす。言峰綺礼、あんたは聖杯に願うんすか?」

「……確かにお前の言うとおり、私には目指すものがない。だが、私には成就すべき理想も遂げるべき悲願もない」

 

なるほど。これは厄介っすね。そもそも、説教なんてガラじゃないっすから、こういうことはしたくないんすけどね。でも、やらないと死ぬんすよねえ。

 

まあ、いいっす。そろそろ時間もないっすから

 

「今日はここまでにするっす。お時間をとらせてすまなかったっすね」

「……」

「最後にこれだけは覚えていてほしいんすけど。どうせ俺たちアサシンとはこの聖杯戦争中だけの、期間限定の付き合いなんすから、悩みの一つや二つ打ち明けてほしいっす。……そうすれば、あんたは『何か』を得られるかもしれないっすよ?」




作者のたくヲです。

タイトル通りの回。

作者にとっての最大の敵は言峰綺礼です。

まあ、なんにしてもがんばって書いていきたいと思います。

『ザイードに憑依して暗殺王を目指す!?』をよろしくお願いします。

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