スーパーロボット大戦OG~駆け抜けるD~   作:ash.w

16 / 31
ちょっと現実逃避気味になったら、筆が進む進む。
ということで、別名回答編です。


託されたもの、託されるもの

 伊豆基地に戻ってきたら、シャイン王女がさらわれていた。

 まだ残っている敵を叩かないと、追うのも難しい。

 私は、右側に少しだけもやのかかる視界を見ながら、騎士に秘密の紙を渡せたことを確認した後、出撃した。

 もう私が戦場に出られる回数はそんなに――ない。

 

 

 

 

 

 

 

 コンテナに紛れ込んで、一枚の紙を見つけた。

 多分姫のものだろう、筆跡が多少乱れているのが気になるが。

 書かれていた通りの場所につく。

 姫はまだ来ない。

 

「すみません、騎士。待ちましたか?」

 

 ややゆっくりとした――まるで地面があることを確かめるように。しかし、それを悟らせない――速度で姫がやってきた。

 

「いいえ、私も今着いたところです」

 

 当たり障りのない会話、むしろそれで終わることはない。

 それはごくごく自然に差し出された――一枚の紙。

 診断書と紙の一番上に書かれていた。

 たったそれだけが目に入っただけなのに、なぜかそれを見ることを拒絶している。

 覚悟を決めて、それを読んだ。

 

「まずは、あなたにそんなつもりがなかったことを私は知っています。ですから、私は怒りません――そして恨みません。あなたに託したいものがあるから、あなたと二人きりで、会いたかった」

 

 紙の内容は、非常にフィクションめいたものだ。

 神経細胞死滅による麻痺、眼球白濁による視界不良、味覚障害、内臓器官の一部に壊疽。

 これで生きていられる人間がいるのだろうか。いても寝たきりだ。

 ステージ4でも患っているのだろうか。

 しかし、恨んでない怒っていない、託したいものがある。これらの言葉とこの一枚の紙が導く答えに私は愕然とした。

 計画が、一気に崩れた。自分で用意した道がその実、鍾乳洞の上で、他人に歩かせたら即座に崩れた。

 自分の足元が揺らぐ、そんな感覚に陥った。まるで大地が一瞬のうちに消えたようだった。

 安全だと言っていたその場所が、殺人鬼の隠れ家だったような。そんな、何とも言えない後悔が私を襲う。

 その衝撃の大きさに倒れるものかと思った自分の意志とは裏腹に、幼い私の心は完全に停止した。

 心が、体を動かした。

 声が声にならない、嗚咽が出てこない。

 ただ、彼女に抱きついて涙を流しながら、謝ることしかできなかった。

 

「あなた以外の人間が乗ると、あのシステムがパイロットを蝕むように設計されていたんだって、あしながお兄さんからのメールで知ったの」

 

「だから試した……そしてわかった。だってクスハさんの特製ドリンクが、すんなり飲めたんだもん。数日前に、飲んで倒れたのに。だから今も進行している。ためらう気はないよ、だって――」

 

「あなたが、くれた命だから、私は、最後まで、私を通したいの」

 

 泣いて謝ることしかしない人形が、その目を見開いて彼女を見る。

 

「だから、お願い。トリエからレギオへ託すの、名前を、あの機体を。きっとみんなを守れるように……ね」

 

「姫「違うよ、レギオ。私はトリエ、あなたと同じ、ディー・トリエル」っ!!」

 

試作(トライアル)軍団(レギオン)に返すの。ディー・トリエルを、センチュリオを」

 

「知って……いたのですか?」

 

「なんとなく、というわけじゃなくて。あしながお兄さんのメールに書いてあった」

 

 ああ、私は馬鹿だ。

 軽い気持ちだったのかもしれない。

 その結果がこれでは、私は誰ひとり笑えない。

 人造人間をタイムリミット付きで作った――バカを。

 彼らと同じ馬鹿ではないか。

 だけど言い訳は、してはいけない。

 彼女が、覚悟しているから。

 みっともない真似は、やめよう。

 だから、一言言うんだ。

 

「……わかり……ました」

 

「よろしい。それから最後に忠告。あなたの血の繋がらないおじいちゃんのこと、血の繋がったお母さんのこと、どうしようって考えすぎちゃダメ。笑って見送って」

 

 そう言って彼女は、ディー・トリエルと呼ばれている少女は去っていった。

 私は、天を仰ぎ見て、そのままフリーダムに戻った。

 紙は、私の手を離れて宙に舞い、そして砂になって風に消えた。




この言うタイミングの違いは、明確にトリエの心の違いに現れます。
受け入れる時間があるかないかは、その後に大きく関わります。
具体的には、新型機登場のタイミングでトリエの気力80か150になるかの小さな違いですが。気持ちが大きく変わります。
だからこそ、シラカワ博士感謝なのです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。