その日はまさに漫画に出てくるようなくしゃみで目が覚めた。そのおかげと言うべきか起床したばかりだというのに脳はしっかりと覚醒し、周囲の状況をぐるりと確認して、そういえばバスの中で寝たのだったなと昨晩の自分の行動を思い返す。
車内は空調設備が効いているのか過ごしやすい温度に保たれていたはずなのだが、一旦意識してしまうと全身に強烈な寒気が襲い掛かってきた。やはり昨晩濡れたままの服で寝てしまったのがまずかったようだ。今更後悔したところで後の祭りなのだけれど、せめて上着だけでも脱いでいれば多少話は変わっていたのだろうなとは思う。
この分だと僕の経験上、髪に関してもボサボサで目も当てられない状態になっているはずだ。普段から癖毛の強い僕の髪は湿気の多い雨の日は特に悲惨なことになる。無理やりワックスでも使って整えない限り、各々が好き勝手の方向に撥ねてしまう。この煩わしさは同じ悩みを持つ同胞にしか理解できまい。帽子先輩には年中お世話になりっぱなしだ。
日差しの入り具合と腹の減り具合から察するに、恐らくはまだ早朝と呼べる時間帯であると思われるが、一応時刻を確かめるために携帯電話を取り出して画面を見てみることにする。――が、その液晶画面はただ夜のように黒く、眠気眼でぼんやりとした僕の顔が馬鹿丸出しで反射し映っているだけであった。
電池切れだろうか? 充電は昨日ちゃんとしてから家を出た覚えがあるんだけどな……。
とりあえず体を起してう~んと背伸びをする。座ったままの体勢で寝なければならなかったために体のあちこちが強張って痛い。近頃の運動不足もあってか、昨晩酷使した脚部は筋肉痛になっているかもしれない。ていうかこの痛みは確実になっていると思う。
「ま、とりあえず濡れた服を着替えますかね……」
まだ若干じめじめとしている服を脱ぎ捨て、バッグから取り出した新しいシャツを羽織る。脱いだ服はとりあえずビニール袋にでも突っ込んでおけばいいだろう。それだけでも一先ずはじわじわくる寒さからは解放され、大分楽になったように感じられた。
それからカーテンを開けて窓から外の様子を眺めてみると、そこには特筆すべきこともない街並みが広がっている。都民の方にはそれでもお前の地元よりはだいぶ栄えているだろうと突っ込みを入れられそうだけど、それに関しては回答を拒否させてもらおう。だが一つだけ言わせてもらうと、ウチの地元だってしま○らやSE○YUくらいはあるんだぜ?
どうやら駅前のロータリーの一画に駐車しているようだが、まだ朝の早い時間帯のためかほとんど人は見られない。せいぜい通勤中であろうスーツを着たサラリーマンらがポツポツといるくらいだ。つまりは眺めていたところで目の保養などにもなるはずもなく、全く以ってつまらない光景といえる。猫でも歩いていたらテンションあがったかもしれない。あ、犬でも可。
事前に調べたバスの運行予定によれば、朝一で目的地まで着き、そこが終着地点であることからもう到着したのだろうと思われるけど……これはもう各々が勝手に外へと出ていってよいのだろうか。一先ずは座席を仕切っていたカーテンを開けて、自身の座席の周りを見渡してみる――――とそこで初めて車内に僕以外の乗車客がいない事に気付いた。
昨晩の事はあまり覚えていないが、こんな大きなバスに乗客が僕一人なんてことは流石にないだろう。となると他の客は既に移動していると考えた方が自然だ。バスのエンジン音も聞こえないし振動もしていないということは、僕だけ寝過して取り残された可能性も拭いきれない。
何だろう、この寂寥感は……。小学校三年生の頃、かくれんぼの途中で僕を含めた鬼達が皆飽きてそのまま帰ってしまい、隠れたまま放置された竹山君の気持ちが今更ながら理解できた気がする。すまん竹山。今度アイツにジュースでも奢ってやろう。
さてこれからどうすればよいのだろうか……。よくよく考えたらまだ乗車券すら渡していないのだけれど、誰もいないしとりあえず運転席の傍に置いておけばいいのかな。
トコトコと乗車券を携えて運転席の方まで行くがやはりそこにも誰もいなかった。運転手もいなければ昨日の女の子も見当たらなかったので、運転席の横の小物置きスペースに乗車券を置いておくことにする。
さてこれからどうすればよいのだろうか……(二回目)。
一応社員さんにもう出て行っていいのか確認を取るまで残るべきなのかな。
バス会社の社員さんが戻って来るまで待機しているのが一番賢い選択なのだろうけど、いつまでもバスの中に留まっているのは息が詰まるし、少々居心地が悪い気もする。誰も居ない広いスペースというのはそれだけで不安を煽るものなのだ……と以前テレビ番組でどこぞのお偉いさんが言っていたし。
そうして数分の間扉の前に突っ立ってうんうんと悩んだが、最終的にあまりバスから離れなければ大丈夫だろうと判断して、手荷物をまとめてバスの外に出ることにした。
外は昨日の雨が嘘のように晴れ渡っており(まぁ距離的に相当移動したのだから不思議ではないか)、朝特有の清んだ空気が胸の中に入ってきて実に清々しい。気持ちのよい朝だと軽く背伸びでもしようかと若干目線を上げる。
その時になってようやく駅名が大きく表記された案内標識が目に入った。
『童実野駅北口』
――――あれ?
いや、落ち着くんだ僕。もう一度落ち着いて見てみよう。
そうすればきっとそこには正しい駅名が表示されているはずだ。
『童実野駅北口』
変わらない現実がそこにあった。
これはどういうことだろう……、このバスの到着先は○○駅のはずだ。事前に幾度も確認したのだからこれに関しては間違いない。
まだ経路の途中なのではないだろかという考えに対して、僕の乗ったバスは○○駅までの直行便だったはずということを思い出し、その可能性はすぐに頭の中で否定される。何かトラブルがあって途中停車でもしているのか……?
ビークール。こんな時こそ冷静に対処するんだ。
駅前にあった大きな案内地図まで走り、現在地の把握に努めることにする。しかし、地図を見てもそこには見慣れぬ地名ばかりで問題の解決には役立ちそうになかった。
その中でも得られた僅かな情報で分かったことといえば、現在地が童実野町であるということと、この地にはとある大企業の本社があるということだ。
嫌な予感がドンドンと心の戸を叩いている。
童実野町なんて町が僕の目的地である地域にあるなんて今まで聞いたことない。いや、童実野町自体は確かに聞いたことはあるのだが、それは漫画の中のことであって現実のことじゃない。ましてや案内図に表記されていたKC本社っていうのも海馬コーポレーションの略称なわけがないじゃないか……と自分の考えに呆れながら天を仰いだ時に見てしまった。
絢爛なイルミネーションや装飾イラストまで用いて、でかでかと街中に宣伝されている海馬ランドなるテーマパークの広告板を。
マジですか……。
フリーズ。
再起動までしばらくお待ちください。
やぁただいま、みんな。
混乱の渦中から戻ってきたよ。いや、正確に言うとまだ混乱しているのだが、いかんせん行動しなければ現状は打開できない。このまま呆けていてもそれはただの時間をドブに捨てているのと同じだ。とてもじゃないがクレバーな選択じゃない。
とりあえずバスだ、バスに戻ろう! あのバスに乗ってここまで来たのだから、当然帰ることもできるはずだ。それに何某かの事情を得ることもできるかもしれない。
そんな考えに至ってバスが停車している方向に振り返り、僕はまた固まってしまった。
先 程 ま で あ っ た バ ス が な い。
これはいったいどういうことなんだ――。
僕の現在地とバスの停車位置はそれほど離れていなっかったはず。それは目測でもせいぜい20メートル程度だったはずなのに……。
もし誰かがバスに近づいたならば気配でわかると思うし、なによりバス自体が動いたのならば、移動する際のエンジン音で嫌でも気づけたはずだ。しかし今現在、僕がどんなに目を見開こうともそこにバスはない。それどころかどれだけ目を皿のように広げて周囲を見渡しても、その影すら見当たらないのだ。
もう無理です。僕にはなんの解決策も思い浮かびません。完全に詰みました。
為す術がなくなりその場で呆然と立ち尽くしてしまう……。
そしてそんな僕の様子を増えてきた通勤中のサラリーマンらが怪訝な顔で見ている。
どうすればいい――? どうすればいいんだ――?
頭がごっちゃになって訳が分からなくなり走り出す。
とにかくその場に居たくなかった。
周りの全てが僕には異物に見えた。
周りの全てが僕を異物だと見ていた。
そんな気がしたんだ。
だから逃げだしたんだ。
――――何から?
――――世界から?
逃げられないことなんて
気が付いたら名も知らぬ公園のベンチに座っていた。
どうやって僕はここまで来たのだろうか。
どうして僕はここにいるのだろうか。
何故このベンチだけ若干湿っているのか。
向かいに座っているおじさんは仕事に行かないのだろうか。
今子供を連れて来たおばさんは服の趣味が悪すぎるのではないか。
ふぅ……。
いい加減現実逃避はやめよう。
取りあえず現状は最悪といっていい状況だ。まだ信じきれてはいないが、本当に僕が異世界へ迷い込んだとするならば、これは非常に忌々しき事態であることは想像に難くない。故に今僕が考えるべき事はこれからどうするかということだ。
混乱状態の際、僅かな可能性を願い公衆電話から狂ったように家族や友人らに電話をかけてみたけど全く繋がらなかったし、所持金はそれなりにはあるが長期的にみると決して多いと言えない。通帳はあるけどこの世界で使えるとも思えないし、この手持ち金が尽きるまでになんとかしなければならない。このまま野垂れ死ぬのは嫌だ。
とは言ってもこの事態を唯一把握していそうな例のバスとバスガイドさんは共に僕の前から煙のように消え去ってしまった。見も知らぬ土地でそれらを捜索するなど、砂漠で一粒の米を見つけるかの如き所業に思えてしまう。
先程は思わず飛び出してきてしまったが、もう一度バスを見失った駅前に戻ってみようか。犯人は現場に戻るというわけではないが、他の場所よりはまだ希望が持てるだろう。
なんて考えて舞い戻ってきたはいいものの、やはりそう簡単に話が上手くいくはずもなかった。確かに駅前のロータリーには多くのバスが行き来しているが、僕が乗ってきた黒塗りのバスはおろか、似た色のものすら通っていない。
初めの頃は停車するそれらを間近まで確認しに行ったり、通行人が引くくらいに大きく目を見開いて往来を練り歩いたりしていたのだが、駅前交番のお巡りさんに変な目で見られるようになってからは、ロータリーが一望できる近くのファーストフード店にこもっている。因みに今飲んでいるものでコーラは3杯目。お巡りさんに話しかけられそうになった時、この際頭が可笑しいと思われても事情を話して保護してもらおうかとも頭に過ったが、それは本当に最終手段だ。何度シミュレートしても凄まじく面倒くさい展開になるとしか思えない。いや、今の事態に巻き込まれた時点で相当にえらい状況に陥っているのだけれど……。
先に提示した情報から分かるだろうが、既に張り込みを開始してから相当の時間が経っており、残酷にも空は夕焼けに染まりつつある。このままだと日が暮れ、序でに僕の顔色もドンドン暗くなること請け合いだ。店員さんの視線も痛くなってきたし今日はもう諦めて、夜を過ごす場所の確保に動いた方がいいのかもしれない。そんな風に考えて溜息と共に重い腰を上げ、席を離れる間際……。
「早くしろよ、お前のターンだぞ。ま、別にこのままサレンダーしてもいいけどな」
「は、言ってろよ。すぐにこの状況をひっくり返してやるさ!」
ふとそんな声が耳に入った。
声の発生源に目を向けると、そこには狭いテーブルを二つくっ付けて、カードゲームに興じる中学生くらいの少年達がいた。彼らが握るカードは僕にもよく見覚えのあるもので、宣言するカード名やテーブルに並べているカードのイラストを見て、それが自分の知るものだと確信に至る。
そしてそれが余りにも自分の知る日常に酷似していたために、僕は童実野町やら海馬コーポレーションの広告やらを見て自分が遊戯王の世界に迷い込んだと思い込んでいたが、本当にそうなのだろうかと再度強く疑問に思うこととなった。普通に考えれば異世界転移したより、街規模で企画された遊戯王フェアの会場に迷い込んだと思った方がまだ可能性が高いのではなかろうか(錯乱)。
それがただの願望であることは内心理解しつつも、事実確認をするというのは自身の気持ちに区切りを付ける機会だ。ファーストフード店を転がるように飛び出し、近場のビルディングに先月開設されたと幟で大きく宣伝されているインターネットカフェに駆け込む。
そしてネット検索エンジンで世界情勢から経済を筆頭にこの世界の情報を大まかに調べてみる。ここまで必死に調べ物をするのは初めてかもしれない。夏休みのレポート課題をやっていないことに気付いた8月31日の夜でもこれほど精力的に取り組まなかった。とことんまで追い詰められると、人は思いもよらぬ集中力を出せるのだ。
流石に知りたい事が多すぎて結構な時間が掛かってしまったが、おかげで粗方目ぼしい情報は得る事ができた。疲れた体に鞭打った甲斐があったというものだ。
結論から言うと、残念ながらやはりこの世界は漫画やアニメで有名な『遊戯王』に準じた世界であるらしきことを、再度確認する結果となった。泣いた。
ペガサス・J・クロフォードが設立したインダストリアル・イリュージョン社や皆大好き海馬社長率いる海馬コーポレーションが存在し、そしてその本人達も実在の人物とされている。無論我らが主人公である武藤遊戯も決闘王者として世界的な認知度を誇っており、その仲間らもそこいらの芸能人より遥かに人気があるようで、人によってはファンクラブなども設立されているらしい。
突飛な世界観として挙げられるのは、
そのためかカードレートには極端に差がついており、元いた場所ではワンコインで買える程度のカードが目を見開く程の値段になっていることも少なくない。例を挙げるとHAGAの切り札インセクト
他には万丈目グループという企業が近年躍進しているという情報なんかも目に入ったが、正直その頃にはもう僕の精神がガラガラと音をたてて崩れ始めていたので何も感じやしなかった。何にせよこれで僕が遊戯王世界に迷い込んでしまったことが確定してしまったに等しいんだ。誰も頼れる人間がいない異界の地に一人ぼっち。これからの行く末を考えると安澹とした気持ちにしかならない。
重い鉛を飲み込んだような足取りで外に出る。これから夜を越すための場所を探さなければならない。ネットカフェで一晩過ごすことも視野に入れていたが、やはりこれからのことを冷静に思考できる環境が必要不可欠だ。周りに人がいると十分に休息をとれないし、できれば一人でゆっくりできる場所がいい。その点を考慮するとホテルというのは非常に適切な設備といえるだろう。費用は多少掛かってしまうが、今はただ休みたい一心なのだ。疲れた体を引き摺って大通りの対面に見えるビジネスホテルへと足を向ける。
――――とその時、見覚えのある少女が向かい道路の角に消えるのを視界の端に捉えた。
そう、昨晩例のバスで出会った赤毛の少女だ!
「っつ!? 彼女はまさかっ!?」
一瞬だけだったとはいえ、あの特徴的な外見に加えて今朝から血眼になって探し求めていた人物を今更見紛うわけがない。
走る。走る。
彼女はあのバスに乗っていたのだから訳の分からないこの状況に関して、なんらかの情報を持っている可能性が高い! 絶対にここで逃すわけにはいかない!
「待って! 待ってくれぇええええ!!」
なんか昨日も似たようなこと叫びながら走ったな――ってだからこんな馬鹿なこと考えている場合じゃないんだって!
赤毛の少女は僕の声が聞こえていないのかすいすいと道程に沿って歩いていく。そう、彼女は歩いているんだ。それに対して僕は荷物を抱えているとはいえ、全速力で走っている。明らかに此方のスピードの方が早いはず……なのだが……。
――――おかしい。これは一体どういうことなんだよ!!
その状況下で気付いた違和感。それは彼女の背に全く追いつけないという事実。
僕との距離が近くなる度に彼女は唐突に角を曲がり、僕が彼女に続き曲がると彼女の姿はすでに遥か前方に移動している。そんな現象が何度も繰り返され、依然として追いつける気配が微塵もない。かといって僕が彼女を見逃すことはないだろうと思われる、ちょうど追跡できるギリギリの距離間を保っている。勿論これはぼくにとって幸いなことには違いないけど、まるでどこかに誘導されているような――そんな感覚に陥る。
そんな奇妙な鬼ごっこ、もとい追跡劇は突然終わりを迎えた。
再び角を曲がった彼女を追いかけると、そこには誰もいなかったのだ
「嘘だろ……、見失っちゃったのか――!?」
絶望が再び僕に襲いかかり、その場に崩れ落ちる。藁にも縋る思いで辺りを見渡す。気付けばそこは彼女を追跡し始めた出発地点だった。
やばい、泣きそうだよ。というかもう半泣きだよ……。
折角現状を打破できる可能性を見つけたというのに、一瞬でそれすらも失ってしまったのだ。この状況下で希望を見せられ、そこから再び絶望に落とされるのは精神的に相当くるものがある。
折れそうになっている心を何とか叱咤し、彼女の姿を求めて辺りの捜索を行う。往生際が悪いことは百も承知だったけど、そうせずには居られなかった。溺れる者は藁をも掴むという諺をこれほど痛感したことはない。
しかし現実は非情だ。僕が放り込まれた現状を鑑みてもそれは明らかだろう。彼女の影は愚か情報源に成り得る通行人すら碌にいなかったとなると、神様が僕を貶めようとしているとしか思えない。
辺りが真っ暗になるまで彼女の影を追い求めていたのだが、結局何の手掛かりも得られず、捨てられた子犬のようにトボトボと来た道を戻る。先程目星を付けていたホテルまで行く道程だ。失意のままチェックインを済ませ、若干投げやりになりながら部屋へと足を運ぶ。
もう嫌だ、本当に疲れた。疲労困憊なんてレベルじゃない。主に精神面が。今日はもう何も考えず眠りたい。今はとにかく休みたい……。ただの現実逃避だと分かってはいるけど、そうしなければ精神が持たないことが自分でも分かるんだ……。
しかしそんな僕のささやかな願いすら叶うことはなかった。
何故なら部屋の中には既に先客がいたからだ。
「きっ、キミはっ!!」
扉を開けてすぐに僕の目に飛び込んできたのは、ぴっちりきまったレディーススーツに髑髏の装飾が付いた帽子とバッグ――先ほどまで必死に追跡していた赤毛の少女が薄い笑みを浮かべながらそこに居たのだ。
思いがけない、しかし切望していた彼女との再会に動揺して、力なく抱えていた荷物を床に落とし てしまい、中に詰め込まれていたモノがパラパラと辺りに散乱する。
そんな僕の慌てた様子を見て殊更笑みを深めた彼女は唐突に指をさす。混乱の極みにいる僕は訳も分からず彼女の指した先を目で追う。そこにはたった今ぶちまけてしまったキャリーケースの中身である遊戯王カード。
そしてその中で彼女が指しているものを見つけた。
何を指しているのか分かった。
彼女の指さす先にあったのは1枚のカード。
《Tour Guide From the Underworld》
彼女の姿が描かれたカードだった。
え?魔界発現世行きデス…デスなんとかじゃないかって?
すみません、自分は米版のガイドしか持ってないので和名とかちょっとよくわかんないですね(白目)