現世発異世界方面行   作:露草

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原作キャラの使用するカードは基本的にアニメのままにしております。


第7話 試験

 試験。

 

 果たしてこのワードを聞いて鬱屈とした心情にならない学生がいるのだろうか。少なくとも僕の場合は、その知らせが来た時点で憂鬱とした気持ちになること請け合いである。そしてテスト一週間前には溜息を吐くことが多くなり、前日にはお腹が痛くなってくるのがお決まりのパターンだ。

 

 ここデュエル・アカデミアでは生徒の学力向上と、実技の経験を積ませるという名目の下、定期的に試験が執り行われる。試験の出来の良し悪しによって所属する寮が変動することもあるため、アカデミアの生徒はその都度必死になって試験勉強に臨む。誰だってオシリス・レッドのような劣悪な環境に移りたくないし、レッド寮の生徒はそこから抜け出すために死に物狂いになるのだ。

 

 本日はその定期試験日。朝からピリピリとした空気が教室内に蔓延っており、普段仲良く騒いでいる者達の口数も異様に少ない。それもそうだろう。例え同じ寮同士の者だとしても、試験においては誰も彼もがライバルなのだ。他者を蹴落とす覚悟がないと、この実力主義が校風のアカデミアでやっていくことなどできやしない。

 

 試験概要について少し話すと、筆記試験は午前に、実技試験は午後に執り行われる予定となっている。あ、ごめん。丁度今筆記試験開始のチャイムが鳴ったから、説明は後に回してテストに取り組ませてくれ。

 

 元の世界では試験前の勉強なんてあまりしない事が多かったけど、此方の世界に来てからというもの、僕の自室はどこかの誰かさんの所為で有り得ないほどの肩身の狭さになっており、それから逃れようと授業終了後も時間潰しのために勉強をしていたせいか、自分でも驚くほどすらすら問題を解く事ができている。結果オーライといえばそれまでだけど、やはりどこか釈然としない。

 

 その後も筆が閊えることなく進み、試験開始から大凡四十分で早くも解答を終え、見直しする段階に至った。とはいってもまだまだ残り時間には余裕があるので、殆ど手持無沙汰な状態だ。解答の手応え的に考えると、先に答案を提出して退室しても大丈夫なくらいである。むしろそうしたい。

 

 それから僕の思考が、目の前の問題から今晩の夕飯のメニューに移り行った頃、背後に位置する扉がガラリと開き、十代がバタバタと試験教室に入ってきた。

 姿が見えないからどうしたのだろうかと心配していたのだが、どうやら単に遅刻していただけのようである。あれ、この心配は以前にもしたような……ってまぁいいか。

 因みに筆記試験の残り時間は十分程度だ。それにも関わらず、十代は焦り一つ見せずに前の席までゆっくりと進み、同室である翔に対して何故朝起こしてくれなかったのかと苦情を申し立てている。

 文句を言っている間にも貴重な時間は過ぎ去っていくのだが、彼の試験は大丈夫なのか? というかそれ以前の問題として試験中なのに普通に会話しているけどいいのだろうか。

 

「煩いぞオシリス・レッドの落ちこぼれが! 試験を受ける気がないならさっさと出ていけ!」

 

 とそこで近くの席にいた万丈目が一喝。

 

「なんだとぉ!? 折角来たんだ、誰が出ていくもんかっ!!」

 

 十代には申し訳ないが、これは万丈目に同意せざるを得ない。普通の試験なら試験開始から二、三十分を過ぎた段階で、入室を拒否されても不思議ではないしね。教室内の生徒大半が、十代に冷たい視線を飛ばしている現状から見ても、これ以上迷惑になる前に席へ着く事をお勧めしたい。

 

「遊城十代く~ん! 早くテスト用紙を取りに来てくださいにゃ~!」

 

 此度の筆記試験監督は、オシリス・レッドの寮長である大徳寺先生だ。普段からファラオという名の猫を抱いてにゃ~にゃ~言っている不思議先生で、錬金術の授業を担当している。一見するとこんなのが先生で大丈夫なのかと不安になるかもしれないが、押さえるところはしっかり押さえてくれる人なので、こういう問題が起きそうな場面では意外と頼りになるとの評判がある。

 

 

 それから数分後。僕のお腹がグーグーと鳴り始めると同時に、教室内に試験の終了を告げるチャイムが鳴り響く。監督員である大徳寺先生自ら席を回って解答用紙を回収した後、午後に行う実技試験に関しての注意事項を軽く述べ、解散の流れとなった。実技試験はお昼休みを挟み、午後の二時からスタートするとのことである。

 

「よし、早く購買部へ行くぞ!」

「あ、待てよ! 俺が先だっ!」

 

 試験が終わるや否や教室の生徒ほぼ全員が一斉に席を立ち、我先にと購買部に向かって走り始めた。その勢いはどこか鬼気迫るモノを感じるほどで、一体何が彼らをそこまで駆り立てるのか不思議でならない。

 

 もしかして購買部で人気のドローパンが狙いなのかな……。あ、ドローパンというのは、買うまで中に入っている具が分からない購買部の名物パンのことね。聞くところによると、ドローパンにはコロッケ、焼きそば、カレーといった一般的な具から、とうがらし、ゴーヤ、ドリアン、くさやといったゲテモノまで混入されているらしい。そしてデュエル・アカデミアに在籍している生徒は、数あるドローパンの中から目当ての具を引き当てることで、その日の引き運を測るのが慣例となっているのだ。

 一番人気かつレアの「黄金のタマゴパン」は、デュエル・アカデミアで飼っている黄金の鶏が一日一つしか産まない黄金のタマゴを具に使ったパンであり、それを引き当てた者は皆の羨望の的となる。

 僕も興味を惹かれて一度だけ購入したことがあるのだけれど、その時は「具なしパン」という何とも反応に困るモノを引き当ててしまい、隣で「黄金のタマゴパン」を見事にドローした十代を傍目に妙な敗北感を味わったものだ。言うなれば御神籤で白紙を引いてしまったような心境に近い。

 因みに噂ではあの明日香さんも「黄金のタマゴパン」のファンであり、購買部では度々近寄りがたい程真剣な表情でドローパンの選別をしている彼女の姿が確認されるそうである。

 

 下らない事を考えている間にガラガラになってしまった教室。そこには現在四人の生徒しか残っていない。つまりは僕、三沢、十代、翔だ。とりあえず三沢と共に試験が終了したことに気付かず、未だ夢の世界に浸っている二人を起こすことにする。

 

「お~い、起きろ~。もう筆記試験は終わったよ」

「全く何故あれだけの実力を備えていながら、こうも不真面目なんだ……」

「んん~? ふぁ~あ……、なんだもう昼飯か?」

「むにゃむにゃ……、もう勉強はしたくないよぉ~」

 

 翔は兎も角、十代は終了間近の時間に入室したというのに寝る余裕などあったのだろうか。いや、恐らく殆ど記入できないまま諦めたのだろうな。そのメンタルの強さは称賛に値するが、もう少し頑張った方がいいと思うよ。

 

「あれ? 他の皆はどこに行ったんだ?」

「え、あ……本当だ!」

 

 漸く意識が覚醒したらしい十代が、この教室の現状を見て僕らに質問をしてくる。残念ながら僕にも事情がよく分からないため、情報通である三沢に回答を任せよう。

 

「購買部さ。何せ昼休みに新しいカードパックが大量入荷することになっているからな」

 

 えぇ~、マジかよ。そんな話聞いてないよ。

 

「えぇ~っ!? そんな話聞いてないよぉ!」

 

 僕の思考とリンクしたのはやはりというべきか翔であった。三沢の話によるとアカデミアのお知らせ掲示板に一週間ほど前から張り出されていたらしい。

 

 なるほど。購買部に走った彼らは実技試験の前に新しいカードを手に入れ、デッキを補強しようと考えているということか。正直に言うと僕も買いに行きたいのだが、あの勢いを見るに今から行ったところで完売してそうだな。

 自分から積極的に情報をチェックしない者の末路がこれだよ。今頃皆パック買って一喜一憂していると思うと羨ましくて仕方がない。でも一つ言わせてもらうと、試験前にいきなりデッキ構築を変えるというのは如何なものかと思うんだ(負け惜しみ)。

 

「新しいカード!? 俺も見たいっ! こうしちゃいられないぜ、早く購買部に行こう!」

「あ、アニキ待ってよぉ!」

 

 返答を待たずして勢い良く購買部へと駆けだした十代。そしてその背を慌てて追う弟分の翔。僕には長い行列に並ばされた挙句、順番が来る前に売り切れなんていう未来しか見えないので、今回はパスしておこう。

 

「三沢は一緒に行かなくていいの?」

「ああ。俺は今のデッキを信頼している。それに下手にデッキ構築を変え、試運転もできないまま試験に臨むのは遠慮したいからな」

 

 ほら、学年主席であらせられる三沢大先生もこう言っている。試験前だからといってデッキを強化しようと焦った行動を取ると、逆に弱体化させる結果に成りかねないということさ。だから僕がパックを買わなかったのは賢明な判断であって、決して情弱の無様を晒したわけではないんだ……。そこんとこ宜しく頼むよ。

 

 

 そのまま教室に留まっていても仕方がないので、三沢と共に食堂へ向かう。ほとんどの生徒がカードを買いに購買部へ行っているのか、この時間帯にしては珍しいくらいに空いている。とりあえず日当たりのよい窓際のテーブルを確保しておこっと。

 

 アカデミアの食堂のメニューは和洋中いずれも充実しており、優柔不断な僕は毎度何を食べようか迷うため、そういう時は本日のお勧めを頼む事に決めている。今日もその取り決めに従った結果、ミートソース・スパゲッティに決定だ。三沢は日替わりランチを頼んだようである。

 

「そういえば実技試験の対戦相手ってどうやって決めるんだろうね」

 

 フォークでスパゲッティをくるくる巻きながら、ふと疑問に思ったことを三沢に尋ねる。流石に籤ではないだろうけど、一人一人組み合わせを考えるのも大変そうだ。

 

「確か互いの実力が拮抗し合うように、同じ寮同士の者が当たるという話だったはずだ。試験で他寮の生徒と対戦が組まれるのは、寮の昇格デュエルの時くらいじゃないかな」

「へぇ、そうなんだ……」

 

 それも知らなかった。ていうか三沢に聞けば大抵の事は分かるから、自分から何か調べようという気にならないんだよね。部屋も隣だから気軽に会いに行けるし、調べ物を頼むと一時間後には大まかな概要を纏めてくれている。

 そのおかげで最近僕の中での三沢は、ド○えもん並みの便利存在としての地位を確立しつつあるよ。君たちも三沢を見掛けたらそれとなく仲良くなっておくといい。一家に一台三沢えもん。ただ幼い女の子がいる家庭は、少々注意する必要があるかもしれないことだけは覚えておいてくれ。

 

「話は変わるが、最近神楽坂が今の部屋を変えて欲しいと寮長に頼み込んでいるらしいな」

「そ、そうなんだ……。まだ入寮して間もないのにどうしたんだろうね……」

 

 なんか彼が部屋を変えようとしている理由が微妙に透けて見える気がするけど、きっとそれは気のせいだ。僕の推測によると日当たりが悪いとか、風水的に良くない方位に位置しているとかそんなところだろう。拘る人は拘るもんね、そういう事。

 

「神楽坂曰くあの部屋にはナニカがいるんだとさ。部屋にはアイツ一人しかいないはずなのに、時折何者かの視線を感じたり、室内の物が勝手に移動したりするらしい」

 

 へ、へぇ~、怖い話もあったものだね。性質の悪いお化けでもいるのだろうか……(棒)。

 

「はは、まぁ似たようなモノさ。神楽坂はあの部屋にデュエルモンスターズの精霊が取り憑いていると考えているようだ。何でも夢の中にデュエルモンスターズが度々出てくるらしい。それも何故か悪魔族のモンスターばかりな」

 

 うん、そうだろうね。もういいよ認めるよ。恐らく事情を最も知っている僕からも、その予想は正しいと太鼓判を押させてもらおうじゃないか!

 

 くそぅ、これから暫く神楽坂君と会う度に罪悪感に囚われることになりそうだ。すまん神楽坂君。でも僕にはどうしようもないんだよ。

 

 というか三沢は見るからに理系人間で、デュエルモンスターズの精霊なんていう非科学的な存在は信じないタイプと思っていたんだけど、神楽坂君の言葉を普通に受け入れているんだね。

 

「三沢からそんな話が出るとは思わなかったな。もしかして精霊とか幽霊とかの存在も信じてたりするの?」

「ん? あぁ、今のところはどちらでもないさ。俺は基本的に自分で見たモノしか信じないタイプだが、かと言って精霊が存在すると主張する者を頭ごなしに否定するわけでもない。存在する証拠がないから存在しないという論理は、存在しない証拠がないから存在するという論理と同種の詭弁だからな」

 

 いわゆる悪魔の証明ってやつだよと言って肩を竦める三沢。悪魔の証明とは、ある事実・現象が存在しないという証明は、その事実・現象が存在するという証明よりも難しいという考え方に、比喩を交えて表した概念である。よって此処で言う悪魔というのは証明困難な物の喩えであって、決して三沢の背後で僕らの議論を嘲笑うかの如く悪魔を呼び出しまくっているガイドさんのことではない。つーかいつから居たんだよお前。

 

 それに今思ったんだけど、僕がこの世界にいるという事実がある意味悪魔がこの世に存在するという証明になっているのではなかろうか。まさかこの身を呈することによって、人類には永久に解けないと思われていた究極の謎の内の一つを明らかにしようとは……。いや、全く嬉しくないんだけどね。

 

「もしそういったモノに出会えたら是非とも調べてみたいな。俺だけじゃ無理でも、人類の叡智を結集すれば科学的に証明できるかもしれない。そうすれば精霊という存在が、唯の一現象として認知される未来も有り得るんだ。そういう風に考えると何だかワクワクしないか?」

 

 あぁ、うん……そんなに会いたいなら後ろを振り向けばいいよ。キミの求めているモノが浮遊しているからさ。あと僕の真横でフルーツサラダの果物だけ盗み食いしている小娘もそれと同種の存在だから、興味があるなら彼女に聞くのが恐らく最も手軽な方法だ。ただ忠告させてもらうと、その悪魔娘を相手に何らかの物事をなそうとするならば、想定以上の苦労を背負い込まなければならなくなるから気を付け給えよ。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

「おい、どういうことなんだよ!?」

「ふざけるな! こんなことがあっていいわけがないだろ!」

 

 筆記試験が終了してから数分後の事。デュエル・アカデミアの購買部では多数の生徒が怒号を上げていた。何も事情を知らぬ者がその場を見たら、店員に乱暴な物言いをする生徒達に対して眉を顰めることであろう。しかし、生徒達が怒鳴るのも無理はない。

 

「何でもうカードが売り切れているんだ!?」

「入荷した途端に全部売約済みだなんて有り得ないよ!」

 

 というのも本日発売であるはずのデュエルモンスターズの新カードが、販売する前の段階で一人の男に買い占められてしまっていたのである。此処に集まったのは新規カードでデッキを強化し、午後に行われる実技試験で少しでも良い点を取ろうとしていた者達ばかり。その当てを理不尽な方法で不意にされたのだ。怒りを覚えないはずがない。

 

 生徒達の恨みの視線を一身に受けるのは、汚い手段を用いてカードを独占購入した謎の男。黒いマントと目深の帽子で身を固めているため、一見するだけではその正体を知ることはできないだろう。

 

「それでは私はこれで帰りマスーノ。アッディーオ!」

 

 しかし、去り際に呟いたその特徴的な口調を聞いていれば、それがオベリスク・ブルーの寮長であり、実技の最高担当者であるクロノス・デ・メディチであることに気付く者がいたかもしれない。

 

 

 クロノスは購買部を離れた後、ブルー寮へと続く通路で買い占めたカードを取引材料に、とある生徒に密命を下していた。

 

「クロノス教諭、今何と……?」

 

 そのとある生徒――万丈目準は取り巻き達と寮へ戻る帰路、寮長であるクロノスに突然呼び止められ、そこで告げられた言葉に戸惑いを隠せずにいた。

 

「だから遊城十代のようなドロップアウトボーイには、早いうちにエリートである貴方が叩き潰さなければいけまセーンノ! これはオベリスク・ブルーの寮長としての指令デスーノ。十代と戦いなサーイ!」

「何で俺が十代みたいな雑魚と……。それに実技試験は同じ寮同士の者で行われるんじゃないのか」

 

 正直なところ万丈目は既に遊城十代に対する興味が薄れていた。確かに普段の言動は目障りではあるが、実力が遥かに劣る小物相手にムキになるのも馬鹿馬鹿しいとも思っているのだ。

 

「ノンノンノン! 細かい事は気にしちゃ駄目デスーノ。それにこの話を引き受けたら、先程私が購入したこのレアカードでシニョール万丈目のデッキは更に強力なものになるノーネ!」

 

 クロノスは先程購入したカードの中からとりわけ強力なレアカードを抜き出し、万丈目達によく見えるように翳す。

 

「これは……!」

「すっげぇ! 万丈目さん、いいじゃないですか。これを機にあの生意気なオシリス・レッドの落ちこぼれを叩きのめしてくださいよ!」

「そうですよ。その上カードまで貰えるなんてラッキーじゃないですか!」

 

 財閥の御曹司である万丈目にとっても、新たなレアカードというのは非常に魅力的なものである事には変わりない。それによくよく考えると、運が良かったとはいえクロノス教諭を破った遊城十代を打倒せば、相対的に万丈目の評価も上がるはずだ。労力の割にはおいしい話といえる。

 

 ――前回は勝負の途中で邪魔が入り、決着がつかなかった事もある。ま、アイツを潰すいい機会だと思ってクロノス教諭の思惑に乗るのもありか……。

 

「分かりました。これ以上アイツを調子に乗らせるのも癪ですし完膚なきまで叩きのめしてやりますよ」

「オーウ! それでこそ我がオベリスク・ブルー寮の生徒ナノーネ! それでは実技試験が開始されるまでに、このカードを使ってデッキを強化しておくといいノーネ!」

 

 二人が忍び笑いをしながらカードを受け渡しする様は、時代劇にありがちな、悪徳商人が悪代官に袖の下を渡す遣り取りの際に浮かべる笑みに酷似していた。

 

 

 

「ウシシシシ、これであのドロップアウトボーイも終わりナノーネ。案の定筆記試験も遅刻して駄目駄目だったようデスーシ、これで実技試験も赤点なら奴も終わりデスーノ! 先日の偽ラブレター作戦は失敗に終わりましターガ、今回は既に成功したも同然ナノーネ!」

 

 クロノスはその場から去っていく万丈目の背を見ながら、喜色を抑えきれずに高笑いをする。漸く自身に歯向う生意気な生徒に、目に物を見せる機会が巡って来たのだ。衆人環視の中でエリートとの格差を見せつける事によって、出来の悪いレッド寮の落第生に、自分の立場を明確に分からせてやろうという魂胆なのである。

 

「私の名を騙ってラブレターを出したのはクロノス先生、やっぱり貴方だったんですね」

 

 上機嫌のクロノスに突如背後から掛る声。

 

「へっ?」

 

 驚いたクロノスが振り返ると、そこにはオベリスク・ブルーの青い制服を着た女生徒――天上院明日香が腕を組み、階段の上から彼を見下ろしていた。

 

「シ、シニョーラ明日香! ななな何のことデスーノ?」

「誤魔化さなくても結構です。先程先生が万丈目君達と話しをしているところから聞いていましたので。それにあのラブレターに書かれた字、先生が普段授業で板書なされる字と酷似していましたよ」

 

 一見明日香は淡々と語っているように見えるが、その目は氷のように冷えきっており、本来教師という立場的に上であるはずのクロノスでさえ、その迫力に圧倒される程であった。

 

「い、いや……これには海よりも深~いワケがあるノーネ」

「態々私の名を騙ってラブレターを出すことにどのようなワケがあるんですか?」

「そ、それは……あれナノーネ。かつて私のご先祖様がパッツィ家の陰謀に対処した時の如き機転で……えっと、あの……つまりはその……」

 

 じとりと睨まれたクロノスは背中に嫌な汗を掻きながらも、頭の中で必死に言い訳を考えるが、他人の名を騙ってラブレターを出す行為の意図など早々誤魔化せるはずもない。

 

「はぁ……。もう過ぎたことですし、今後ああいった事をしなければ私もこれ以上は踏み込みません」

 

 時間稼ぎにもならない釈明に気を殺がれた明日香が先に折れ、それによって調子を取り戻したクロノスはここぞとばかりに捲し立てる。

 

「オーソレミーヨ! 当然デスーノ。恐らくそれは私の犯行に見せ掛けた卑劣な悪戯でショウが、これ以上の悪事はこのオベリスク・ブルーの寮長であるこの私が許しまセンーノ!」

 

 ――しかし。

 

「でもそれと今回のカード買い占めの件とは話が別ですよね」

「ぎくぅ……!」

 

 いくらクロノスがアカデミアの実技担当の最高責任者という地位を誇っていても、此度の権力に任せた暴挙に近い行為がバレたら、周りから非難されるであろうことは想像に難くない。特に今回は前の偽ラブレターの件とは違い、普段は味方であるブルー寮の生徒を含めた、アカデミアの全生徒を敵に回してしまっているのだ。多大な責任追及は避けられないだろう。

 遊城十代を何としてでも貶めようと、勢いだけで行動してしまったクロノスはここで漸くその事実に気付き、額から冷や汗がダラダラと流れる。

 

「ところでクロノス先生に折り入ってお願いがあるんですが、聞いて頂けますでしょうか?」

 

 明らかに不自然な話題転換。クロノスが発言者の方に顔を向けると、そこにはにこやかに笑う明日香の姿。その表情は実に朗らかであるが、その話を断ったらどうなるか分かっているだろうなという無言の圧力が発せられている。

 

「も、勿論デスーノ」

 

 そしてクロノスには頷く以外の選択は残されていなかった。

 

 

 

 

 

 

 アカデミア・デュエルフィールド

 

 

 実技試験会場であるデュエルフィールドの一画。そこではまだデュエルが始まっていないのにも関わらず騒然としていた。

 

「えぇ~っ!? なんで万丈目と俺がデュエルをするんだ!?」

「ふんっ……。俺も好きで此処にいるわけじゃない」

 

 それはオシリス・レッドの生徒である遊城十代の対戦相手が、オベリスク・ブルーの万丈目準であったからである。通常は同じ寮同士の者たちで行う実技試験が、他寮の者――それも最優秀組であるオベリスク・ブルーと最底辺であるオシリス・レッドの生徒で組まれたのだから、周囲の注目を集めるのは当然だ。

 

 そして十代と同じ心境になった生徒がもう一人。

 

「え……?」

「こんにちは。いいデュエルにしましょうね」

 

 彰が指定されたデュエルフィールドに向かうと、そこには何故かオベリスク・ブルーの女王――天上院明日香が待っていた。

 

「あの、ちょっと……何でブルー寮の明日香さんが僕の対戦相手になっているんですか?」

「ふふっ、クロノス先生にちょっと無理を聞いて貰ってね。貴方とは一度戦ってみたかったのだけど中々機会が来ないから、こうして対戦する場を設けてもらったのよ」

 

 予想外の事態にパニックになっている彰とは対照的に、明日香は得意気に状況を説明する。

 

「はぁ……そうなんですか」

 

 先生を通して決まったことならば、納得できずとも頷くしかない。しかし、いきなりオベリスク・ブルーの女王が対戦相手になった方は、そうそう落ち着いてはいられない。そんな具合に及び腰になっているのが態度に出ていたのか、明日香からは厳しい言葉が飛ぶ。

 

「ほら、男の子ならしゃんとしなさい。試験時間が押しているんだからキビキビ動く!」

「イエス、マム!」

 

 思わず最敬礼を取り、慌てて位置に着く彰。途中段差に蹴躓いて足を痛めようがお構いなしだ。ここでの彼の中の優先事項は、自分の身体の安全より明日香の命令の方が上位に当たるようである。

 

「そこまで脅えられると流石の私も傷つくのだけど……」

 

 そんな女王の呟きは、直立不動で気をつけをしている兵士の耳には届かない。そのまま次の指示を忠犬のように待っているのを見て明日香は溜息を一つ落とすと、どこか諦めた様子で自身もデュエルフィールドの定位置につきデュエルディスクを展開する。

 

「それじゃ始めるわよ」

「は! 宜しくお願いします!」

 

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

 

彰   LP4000

明日香 LP4000

 

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 デュエルディスクによって決められた先攻は彰だ。

 

「僕はモンスターを裏側守備表示でセットし、これでターン終了します」

 

 フィールドに裏模様のカードが横倒しになって現れる。裏側状態でセットされたモンスターは、反転させるまでその正体が分からない。

 

 

「私のターン、ドロー!」

 

 ――相手の場は裏守備のモンスター1体のみ。遠慮なく攻めさせてもらうわ!

 

「私は《荒野の女戦士》を攻撃表示で召喚!」

 

 召喚のエフェクトと共に、カウボーイハットを被ったブロンド髪の美麗な戦士がフィールドに出現し、携えた剣を煌めかせ対戦相手を睨みつける。

 

《荒野の女戦士》星4 ATK/1100 DEF/1200

 

「バトルよ! 私は《荒野の女戦士》で相手フィールドにセットされたモンスターを攻撃!」

 

 明日香の攻撃宣言によって、場の女戦士が美しい金色の髪を煌めかせ、相手モンスターに斬りかかる。優美な剣閃により切り裂かれたカードは、三眼毛むくじゃらの化け物――《クリッター》だ。

 

《クリッター》星3 ATK/1000 DEF/600

 

《クリッター》の守備力では《荒野の女戦士》の攻撃は防ぎきれない。一閃の下に両断され、悲痛な叫びを上げて粉々に砕け散った。

 

「あら……」

 

 自身のモンスターを破壊されたのにも関わらず、彰は顔色を変えることもなく冷静にフィールドを見据える。それも当然、《クリッター》の役割はフィールドから墓地に送られることにあるからだ。

 

「破壊された《クリッター》の効果発動! このカードがフィールド上から墓地に送られた時、デッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。僕が加えるのは《レスキューラビット》のモンスターカード」

 

「ならば私は魔法・罠ゾーンにリバースカードを1枚セットして、ターンを終了するわ」

 

 次のターンで相手の場に動きがあることを予見した明日香は、場にリバースカードを伏せ、その事態に備える。

 

 

「僕のターン、ドローカード……。メインフェイズに入り、僕は《クリッター》の効果で手札に加えた《レスキューラビット》を通常召喚する!」

 

 ぴょこぴょこという擬音をたてながら、フィールドに飛び出したのは小さな兎だ。黄色いヘルメットにゴーグル、首からは小さな通信機をぶら提げている小動物の姿に、会場の女生徒からは黄色い声が上がる。

 

《レスキューラビット》星4 ATK/300 DEF/100

 

「そして《レスキューラビット》のモンスター効果。自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードをゲームから除外して発動。自分のデッキからレベル4以下の同名通常モンスター2体を特殊召喚する。僕はデッキより《メルキド四面獣》2体を特殊召喚!」

 

 小さな兎が光子となり、霧散することによって新たな魔物を呼び寄せる。喜怒哀楽――四つの感情を表現した仮面が重なり合い、一体のモンスターとなった。

 

《メルキド四面獣》星4 ATK/1500 DEF/1200 ×2

 

「《レスキューラビット》の効果で特殊召喚されたモンスターはエンドフェイズ時に破壊されてしまう。しかし、そのターンの間に生贄にしてしまえばそのデメリットは関係ない」

 

 デュエルモンスターズのルールとして、モンスターの召喚権は1ターンに1度のみ。だが、特殊召喚ならばターン辺当たりの回数制限はないのだ。

 

「僕はフィールドの《メルキド四面獣》2体を生贄に捧げ、手札より《仮面魔獣デス・ガーディウス》を特殊召喚する!!」

 

 大地を軋ませ、地獄の底より這い出でしは人を食らう狂気の魔獣。巨大で禍々しい身体には、食われた者の顔が仮面となって纏わり付くとされる。

 

《仮面魔獣デス・ガーディウス》星8 ATK/3300 DEF/2500

 

「このモンスターは……!?」

 

 明日香は僅か1ターンで出現した最上級モンスターに目を見張る。

 

「《仮面魔獣デス・ガーディウス》は《仮面呪術師カースド・キュラ》、《メルキド四面獣》のどちらかを含む生贄2体を捧げる事によって、手札から特殊召喚できるモンスター。その攻撃力はかの青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)すら上回る!」

 

 仮面の化け物は己が主の声に答えるかのように、歪な咆哮を上げる。

 

「バトルフェイズだ! 《仮面魔獣デス・ガーディウス》で《荒野の女戦士》に攻撃! ダーク・デストラクション!!」

 

 《仮面魔獣デス・ガーディウス》はその巨体に似合わぬ俊敏な動きによって目の前の獲物を両の手で掴み上げ、その掌に力と魔力を集中・解放させ、粉々に打ち砕く。

 

「きゃああああっ!」

 

明日香LP4000 → LP1800

 

「くっ……、タダではやられはしないわ! この瞬間《荒野の女戦士》の効果が発動! このカードが戦闘によって破壊され墓地に送られた時、自分のデッキから攻撃力1500以下の戦士族・地属性モンスター1体を自分フィールド上に攻撃表示で特殊召喚することができる。私はデッキより《サイバー・チュチュ》を攻撃表示で特殊召喚!」

 

 クルクルと綺麗なターンをして、デュエルフィールドという名の舞台に降り立ったのは、桃色髪のバレリーナによく似たモンスターだ。

 

《サイバー・チュチュ》星3 ATK/1000 DEF/800

 

「僕はカードを1枚セットし、ターンを終了します」

 

 

「私のターン、ドロー! 」

 

 攻撃力3300の化け物を相手にしても、明日香の目の力は衰えない。力が強いだけのモンスターなど、オベリスク・ブルーの女王にとって恐れるに足りぬものだ。何しろ明日香が普段懇意にしているアカデミア最強の男は、目の前の化け物が赤子に思える程のパワーの僕を使役しているのだから……。

 

「私は手札から《融合賢者》の魔法カードを発動! そのカード効果によって自分のデッキから《融合》の魔法カードを手札に加えるわ」

 

 ――《融合》をサーチ……。となるとここで仕掛けてくるか。

 

 明日香が何かを狙っている事に気付いた彰も身を構える。

 

「そして魔法カード《融合》を発動! 手札の《エトワール・サイバー》と《ブレード・スケーター》を融合。《サイバー・ブレイダー》を融合召喚するわ!」

 

 渦巻く《融合》の波の中より、長く艶やかな黒髪を靡かせ、一体の女性型モンスターが出現する。紅と白とのコントラストが映える色調の衣装を纏い優雅に一礼する様は、まさに一流のフィギュアスケーターだ。

 

《サイバー・ブレイダー》星6 ATK/2100 DEF/800

 

「更に装備魔法《フュージョン・ウェポン》を発動! このカードはレベル6以下の融合モンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力、守備力を1500ポイントアップする!」

 

 装備カードの効果によって《サイバー・ブレイダー》の右腕に、その容姿に似合わぬ無骨な砲撃兵器が装着される。科学の力を持ってして装備モンスターの攻撃力は、《仮面魔獣デス・ガーディウス》の攻撃力の更に上を行く。

 

《サイバー・ブレイダー》星6 ATK/2100 → ATK/3600 DEF/800 → DEF/2300

 

「バトルよ。覚悟なさい! 《サイバー・ブレイダー》で《仮面魔獣デス・ガーディウス》に攻撃! グリッサード・スラッシュ!」

 

 フィールドを恐怖で支配していた仮面の魔獣は《フュージョン・ウェポン》から放たれた破壊の光線に貫かれ、耳障りな断末魔を上げながら爆散する。

 

「うわっ……!」

 

彰LP4000 → 3700

 

「流石……、でもこの瞬間《仮面魔獣デス・ガーディウス》の効果が発動される。このカードがフィールドから墓地に行った時、デッキから《遺言の仮面》1枚をフィールド上のモンスターに装備させる! 対象は《サイバー・ブレイダー》だ!」

 

 《仮面魔獣デス・ガーディウス》の亡骸より飛び出したのは、強烈な怨念と強大な憎悪が込められた血のように赤い不気味な仮面。その仮面が《サイバー・ブレイダー》に襲い掛かり、その顔に取り憑かんとする。

 

「《遺言の仮面》を装備されたモンスターのコントロールは、その時点のコントローラーの対戦相手に移る! 悪いですが《サイバー・ブレイダー》は頂きますよ!」

 

 自身の思惑通りに事が運び、思わずに得意気になる彰。しかし、そんな様子を見て、対戦相手である女王は不敵に笑っていた。

 

 ――甘いわね。私が《仮面魔獣デス・ガーディウス》の効果を知らずに攻撃を仕掛けたとでも思っていたのかしら。

 

「リバースカードオープン、速攻魔法《プリマの光》! このカードは自分フィールドに存在する《サイバー・チュチュ》1体を生贄に捧げることで、《サイバー・プリマ》1体をデッキ、または手札から特殊召喚することができる! 出番よ、《サイバー・プリマ》!!」

 

 逆巻く銀の竜巻の中より飛び出したのは《サイバー・チュチュ》の成長した姿。雪のように白い髪と滑らかな肢体が光を反射し、まるで自身が発光しているかの如き神々しさを醸し出している。

 

《サイバー・プリマ》星6 ATK/2300 DEF/1600

 

「《サイバー・プリマ》の効果発動! このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、フィールド上に表側表示で存在する魔法カードを全て破壊する!」

「ちょ……えっ!?」

 

 純白のバレリーナから放たれた光の波動により、《サイバー・ブレイダー》に取り憑こうとしていた《遺言の仮面》が苦痛の声を上げ浄化されていく。

 

「《サイバー・プリマ》の効果によって《フュージョン・ウェポン》も破壊されてしまうけど、《サイバー・ブレイダー》は返してもらうわよ」

 

 仮面の呪縛から解き放たれた踊り手は、本来の主の元へと戻る。

 

《サイバー・ブレイダー》星6 ATK/3600 → ATK/2100 DEF/2300 → DEF/800

 

「そして私のバトルフェイズはまだ終了していないわ。《サイバー・プリマ》でプレイヤーにダイレクトアタック! 終幕のレヴェランス!!」

 

「ぐぅぅうう……!」

 

彰LP3700 → 1400

 

 上級モンスターの直接攻撃を食らい、彰のライフポイントはごっそりと削られる。もはや下級モンスターの一撃すら致命的になる状況だ。苦悶に彩られた彼の顔をみて、明日香はしてやったりといった表情を浮かべる。

 

「ふふっ、私はカードを1枚セットしてターンを終了するわ」

 

 エンドフェイズ宣言をしながら、明日香は現状に対し思考する。

 

 ――やっぱり初めから計算尽くで策に嵌めようとしてくる者は、総じて予想外の事態に脆いわね。ここから立て直して来るかどうかでその者の真価が問われるけど、貴方はどうかしら。

 

 このまま崩れゆくのか、それとも遊城十代のような輝きを見せてくれるのか。明日香は先の展開に期待を膨らませる。勿論そのどちらになったところで彼女は負けるつもりなど毛頭ないのだが。

 

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 一転して窮地に追い込まれた彰は、この状況を持ち得る手札で打開するため、思考を巡らせる。

 

 ――《サイバー・ブレイダー》が厄介だな……。エクシーズモンスターでも使えたらいくらでも対処法があるけど、ここはこの手で行くしかないか……。

 

「……僕は墓地に存在する悪魔族モンスター3体をゲームから除外し、手札から《ダーク・ネクロフィア》を特殊召喚する!」

 

 墓地の亡者を贄として地獄より来訪するは、頭が割れた人形を抱いたマネキンのような悪魔。その青白い肌は不思議と冷気を感じるほどであり、感情が全く読めない無表情の顔からは呪詛のような言葉をブツブツと吐き出している。

 

《ダーク・ネクロフィア》星8 ATK/2200 DEF/2800

 

「バトルフェイズ! 僕は《ダーク・ネクロフィア》で《サイバー・プリマ》に攻撃する! 念眼殺!!」

「なっ!? 迎え撃ちなさい、終幕のレヴェランス!!」

 

 《ダーク・ネクロフィア》の攻撃力では《サイバー・プリマ》には僅かに及ばない。場のリバースカードにも警戒せずに攻撃を仕掛けられたことで不意を突かれた明日香は、思わず驚きの声を上げるが、すぐに迎撃の指示を下す。

 

 魔眼による呪いは白きバレリーナの光に掻き消され、カウンターのスピンキックによって悪魔の人形は場外まで吹き飛ばされる。

 

「ぐっ……」

 

彰LP1400 → 1300

 

「メイン2に入り、リバースカードを1枚セット」

 

 自軍のモンスターを無駄死させたのにも関わらず、淡々とデュエルを進める彰に、観戦者達の不審な視線が集まる。《ダーク・ネクロフィア》の守備力ならば、明日香の場のモンスターを全て防ぐことができたという事実も、周りの懸念に拍車を掛けたのだ。

 

 ――なるほど、そういうことね……。

 

 その中で対戦相手である明日香だけは彼の狙いを見抜き、苦い顔をしていた。

 

「そしてエンドフェイズ。《ダーク・ネクロフィア》の効果発動。このカードが相手によって破壊され墓地に送られたターンのエンドフェイズ時、このカードを装備カード扱いとして相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体に装備する」

 

 墓地より悪魔の人形に封印されていた悪霊が蘇り、おぞましい叫び声を上げながら《サイバー・ブレイダー》の体内に潜り込む。怨念の魂に取り憑かれた者は自我を失い、悪霊の意のままに身体を操られる人形と化すのだ。

 

「この効果で《ダーク・ネクロフィア》が装備カード扱いになっている場合のみ、装備モンスターのコントロールを奪うことができる」

 

 《サイバー・ブレイダー》は虚ろな表情でその場のフィールドを離れ、本来なら敵である彰を守るように明日香に拳を向ける。

 

 ――やってくれるわね……。

 

 

「私のターン、ドロー!」

 

 ライフポイントは勝っている明日香であるが、相手にエースモンスターを奪われた事で戦局的には流れが変わりつつある。《サイバー・ブレイダー》は明日香の切り札だけあってその効果は強力だ。相手のコントロールするモンスターの数によって効果が変動するという特殊な効果を有し、1体ならば戦闘により破壊されなくなり、2体ならばその攻撃力が倍に、そして3体になると魔法・罠・効果モンスターの効果を封殺する。

 

 ――中途半端にモンスターを展開したところで、《サイバー・ブレイダー》を強化してしまうのが落ち。味方だと頼もしいけど、敵に回すとここまで厄介なんて……。

 

「私は手札から魔法カード《強欲な壺》を発動! デッキから更にカードを2枚ドローするわ!」

 

 明日香は新たにドローしたカードを確認し、対抗策を練り上げる。

 

 ――だけど《サイバー・ブレイダー》の長所も短所も、一番理解しているのは所有者であるこの私なのよ!

 

「私は手札より速攻魔法《融合解除》を発動! フィールド上に表側表示で存在する融合モンスター1体を選択して融合デッキに戻す。さらに融合デッキに戻したそのモンスターの融合召喚に使用した融合素材モンスター一組を、墓地より特殊召喚するわ!」

 

 いくら戦闘破壊耐性があろうとも、《融合解除》は防げない。《サイバー・ブレイダー》を構成する因子が分離し、取り憑いていた《ダーク・ネクロフィア》の怨念が悲鳴を上げ消滅していく。

 

「ちっ……、だけど全部明日香さんの思惑通りにはさせない。僕は罠カード《転生の予言》を発動! お互いの墓地に存在のカードを合計2枚選択し、そのカードを持ち主のデッキに戻す。僕は自分の墓地より《遺言の仮面》と、相手の墓地から《エトワール・サイバー》を選択し、互いのデッキに戻す」

 

 《融合解除》の魔法カードで融合素材モンスターを特殊召喚する場合は必ず一組で特殊召喚する必要がある。故に《転生の予言》によって素材の片方を墓地よりデッキに戻された《サイバー・ブレイダー》の融合を解除したところで、後半の素材モンスター一組の特殊召喚効果は不発に終わってしまうのだ。

 

「やるわね……。でもこれで貴方を守るモンスターはいなくなったわ。このターンの攻撃を防げるのかしら」

 

 彰は辛うじて新たなモンスターを展開されることは防いだが、《融合解除》によってコントロールを奪った《サイバー・ブレイダー》を除去されてしまった事実には変わりない。

 

「バトルフェイズよ。《サイバー・プリマ》でプレイヤーにダイレクトアタック! 終幕のレヴェランス!!」

 

 デュエルフィールドという名の舞台に立つ唯一の役者が、このデュエルに幕を引くべく、華麗なダンスを踊る。しかしそれは対戦相手からすれば、自身のライフを刈り取る暴力の舞いだ。

 

「まだだ! 罠カード、《闇次元の解放》を発動! このカードの効果によってゲームから除外されている自分の闇属性モンスター1体を選択し、フィールド上に特殊召喚する! 次元の狭間より蘇れ、《仮面魔獣デス・ガーディウス》!!」

 

 罠カードの発動後、背後の空間がグニャリと歪む。暗い次元の裂け目からドス黒い瘴気の塊が噴出し、仮面の魔獣が再びフィールドに降り立った。

 

《仮面魔獣デス・ガーディウス》星8 ATK/3300 DEF/2500

 

「なるほど……。さっき《ダーク・ネクロフィア》を特殊召喚する際、このモンスターを墓地から除外していたのね」

 

 彰が《ダーク・ネクロフィア》の特殊召喚時に墓地から除外したのは《仮面魔獣デス・ガーディウス》と《メルキド四面獣》が2体。それを《闇次元の解放》によって除外ゾーンから帰還させたというわけだ。

 

 明日香は《サイバー・プリマ》の攻撃を中断し、再び目の前に立ちはだかった魔獣に対して冷徹に思考を巡らせる。

 

 ――《仮面魔獣デス・ガーディウス》。唯でさえ圧倒的な攻撃力を誇っているのに、墓地に送られることでフィールドに《遺言の仮面》を残していく厄介極まりないモンスター。でもその能力も決して無敵ではない。むしろ欠点の方が多いともいえるわ。

 

 例えば先程明日香が行ったように《遺言の仮面》を破壊さえすれば、モンスターのコントロールを取り戻すことができるし、そもそも《仮面魔獣デス・ガーディウス》の効果は墓地に送られなければ効果が発動しないので、除外やバウンスといった方法を介して除去すれば良い。

 

 ――そしてもう一つ。最も単純な回避方法が残っているわ。

 

「私は手札より魔法カード《痛み分け》を発動! 自分フィールド上に存在するモンスター1体を生贄に捧げることで、相手もモンスター1体を生贄に捧げなければならない」

「これは……!? くっ、そういうことか!」

 

 明日香の行動の意図を見て取った彰は悔しそうに顔を歪める。

 

「《仮面魔獣デス・ガーディウス》と《遺言の仮面》のコンボは私のフィールドにモンスターがいなければ発動できない……。そうよね?」

「……そうですね。全く持ってその通り」

 

 《遺言の仮面》が如何に強力な効果を有していようとも、取り憑く対象がいなければまるで意味がない。今回はモンスターの共倒れを狙うことで、その効果を回避したのだ。

 

 そしてそのままターンの終了宣言をする明日香。彼女の残りライフは1800ポイント――それは下級モンスターの一撃で消し飛びかねない頼りない数値。

 それにも関わらず彼女が自分のモンスターを躊躇いなく生贄にしたのは、何も《仮面魔獣デス・ガーディウス》と《遺言の仮面》のコンボを破る為だけに仕方がなく取った行為ではなく、きちんと次のターンまで繋ぐ自信があるからである。

 前のターンから彼女の場に伏せられているリバースカード。それは相手のモンスターの攻撃宣言時、相手フィールド上に攻撃表示で存在するモンスターを全て破壊する強力無比な罠カード――《聖なるバリア -ミラーフォース-》。例え相手が攻撃を仕掛けてきたとしてもこのカードで迎撃し、次のターンに相手の残りライフ1300ポイントを削りきることができるカードを引けば彼女の勝ちだ。

 

 勝利への道筋が見え、己が伏せたリバースカードを発動するチャンスを窺う。

 

 その瞬間――。

 

「えっ?」

 

 彼女の真横を漆黒の刃が通り抜けた。

 

 続くはナニカが粉々に砕け散る破壊音。それは返しの要であったリバースカード――《聖なるバリア -ミラーフォース-》が真っ二つに両断され、塵芥となっていくエフェクト音であった。

 

 ――いったい何が起きたというの……!?

 

 混乱する状況へ追い打ちをかけるように、相手フィールドから発せられる強烈なプレッシャー。背筋に感じる寒気に気付いていながらも、明日香はその発信源に目を向ける。

 

 ――そこに居たのは一目で闇を連想させる黒き龍。

 

 鉄をも切り裂きそうな鋭利な爪。細身ながらも隆起する程の猛々しい筋肉。両肩には鎌のような刃物が突き出しており、尾の先には凶悪なスパイクが剥き出しになっている。超然と佇む様は畏怖を感じる程であり、それ以上彼の者を言葉で飾り立てる必要はない。その紅い眼光に貫かれた者は唯それだけで、圧倒的な力の差に身体が委縮するのを避けらないのだから。

 

《ダーク・アームド・ドラゴン》星7 ATK/2800 DEF/1000

 

「《ダーク・アームド・ドラゴン》は自分の墓地の闇属性モンスターが3体の場合のみ特殊召喚できる最上級モンスター。僕の墓地には《クリッター》、《ダーク・ネクロフィア》、《仮面魔獣デス・ガーディウス》の丁度3体の闇属性モンスターが存在している」

 

 生贄もなしに特殊召喚される攻撃2800のモンスターというだけでも十分に強力だが、このモンスターの真価はその恐るべき効果にこそ集約される。

 

「このモンスターは、自分の墓地の闇属性モンスター1体をゲームから除外する事で、フィールド上のカード1枚を選択し破壊することができる効果を持つ」

 

 先程明日香の場の伏せカードを破壊したのはこの効果によるもの。いくら強力な罠カードであろうとも、発動前に破壊されれば意味をなさない。

 

「《ダーク・アームド・ドラゴン》の攻撃……!」

 

 ――ここまでね……。

 

 目の前に迫りくる漆黒のドラゴンを前に、明日香は己の敗北を悟り、目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

「あ~、きっつ……」

 

 試験デュエルを終えた彰は、デュエルフィールド端の壁に寄りかかり、完全に脱力していた。

 

 ――あぁ、やっぱ明日香さん強いわ。オベリスク・ブルーの女王の名は伊達じゃないってことか。ダムド引いてなかったら普通に押し切られていたよ……。

 

 そんな彼に歩み寄る一つの影。彰が顔を上げると、そこには対戦相手であった天上院明日香が、敗北したのにも関わらずどこか晴れやかな顔で立っていた。

 

「どうやら向こうも決着がついたようね」

 

 その視線の先には十代の操る《E・HERO フェザーマン》が、万丈目のライフポイントを0にする場面。攻撃を受けた万丈目よりも大きな絶叫を上げているクロノスを見て明日香はクスリと笑う。

 

 ――ふふっ、クロノス先生の思惑は見事に外れてしまったようね。最も初めからそう簡単に行くわけがないと思っていたけど……。

 

「あ、あの……明日香さん。対戦ありがとうございました」

「ええ、こちらこそ。とても楽しいデュエルだったわ。負けちゃったのは悔しいけどね」

 

 明日香は片目をパチリと閉じながらそう言って、そのまま彰の隣に座り込む。

 

「え、あの……?」

 

 アカデミア一番の美女を前に、一般的な男子学生に分類される者がまともにコミュニケーションを取れる筈もない。唯その状況に混乱するばかりである。

 

 明日香は暫くの間、子供のようにはしゃぎ回る十代の事を無言で眺めていたが、やがておもむろに口を開く。

 

「ねぇ」

「はい……?」

 

 彰は沈黙が破られた事に若干安堵し、続きの言葉を待つ。

 

「貴方さっきのデュエル本気じゃなかったでしょ?」

「うえぇっ!? いや、決してそんなことは……」

 

 その結果予想外の問いに慌てふためくことになったが、本人としては至極真面目にやっていたつもりなので、すぐさま否定する。

 

「ごめんなさい、言い方が悪かったわ。別に貴方が手を抜いていたなんて言うつもりはないの。ただ時々貴方のプレイングに迷いが生じているように感じたのよ。本来なら迷わず選ぶ最善の一手を取らない――この場合は取れないといった方が正しいのかしら――兎に角何か自分に制限を課し、その中で戦っている。そんな印象を受けたのよね」

「…………………」

 

 しっくりくる言葉が思い当たらないのか、顎に手を当て考え込む明日香。その横でそれとなく空を仰いでいる男は、内心鋭い所を突かれて動揺していた。

 

 ――確かに制限っていえば制限か……。

 

 使えば明らかに異質であると分かるシンクロ召喚・エクシーズ召喚という要素。この二つのファクターは、間違いなく従来のデュエルモンスターズの常識というモノに大きな変革を齎した。彼の元居た世界では今やこれらのどちらかを用いないデッキはないと言っても過言ではない。それ程シンクロやエクシーズは便利なモノであり、汎用性が抜群に高かったのだ。そしてその存在を知っている身の上としては、どうしてもそれを意識してしまうのは当然のことである。例えるならば最新型のスマートフォンを利用していたのに、それが突然数世代前の機種である携帯電話に交換させられた状況を想定すれば分かり易い。人は便利さを知ってしまうと、それがないと不便であると感じるようになってしまうのだ。

 

「私ね、実はアカデミアの受験の時から貴方と十代には目を付けていたの。単純に強いデュエリストと戦ってみたかった事も否定しないけど、本当の理由はとある人と渡り合える実力を持った人物を見つけたかったから……」

「はぁ。とある人……ですか……?」

 

 彰は突然遠くを見つめながら告白し始めた明日香に困惑しながらも、彼女の真剣な顔を見て真面目に話を聞く体勢を取る。

 

「貴方も知っているはずよ。何せアカデミアの頂点に立つ男なのだから」

「あぁ、丸藤先輩ですか」

 

 丸藤亮――「デュエル・アカデミアの皇帝」、「カイザー亮」の異名を持つオベリスク・ブルーの三年生で、その実力はプロデュエリスト顔負けとさえも言われる怪物だ。

 

「亮と同じ土俵に立てるデュエリストなんて、このアカデミアではそれこそ教師陣にも存在しないのよ。兄さ……、かつては亮にも切磋琢磨し合うライバルもいたのだけれど、その人が行方不明になってから亮は孤独にならざるを得なかった……」

 

 天才ゆえの孤独。月並みの言葉であるが、その苦悩は当事者である本人と、その人と同じく天賦の才を持った人間にしか真の意味で理解しえまい。

 

「亮もね。きっと心のどこかで求めていると思うの。自身に比肩し得る好敵手との戦いを……。自分をより高みに引き上げてくれる友を……。悔しいけど今の私じゃ亮の相手は務まらない」

 

 囁くように吐き出したその言葉尻は僅かに震えていた。

 

 ――兄さんが行方不明になってから亮には支えてもらってばかり。亮だって親友だった兄さんがいなくなって辛いはずなのに……。

 

 それは二年も前から行方不明になっている兄の事で心痛めていた自分を支え続けてくれた亮に対し、大して役に立つことができないという無力感から生じたもの。明日香ほどの実力者であろうとも、アカデミアの皇帝との間には尚も分厚い壁が存在しているのだ。

 

「十代もそして貴方も、きっと今のままじゃ亮には届かない」

 

 ――十代の実力は恐らく未だ発展途上の段階。これからの成長で更に強くなることを考えると、きっとその牙は亮にも届き得るモノになるはず……。

 それに対して一之瀬君は私と同じで、既にある程度自分のデュエルスタイルというものを確立しているために、急激な成長を望むのは難しい。だけど、彼も私にはないナニカを持っている――そんな気がするのよね。

 

「だからもし亮とデュエルする機会が巡って来た時は、今日のようにどこか心に迷いがある状態ではなく、貴方の持てる全力で戦って欲しいの。そうすればきっと亮と同じ、他とは一線を画する舞台に上がることができるわ」

「……………………」

 

 自身の思いの丈を打ち明けることに熱中していた明日香は、ここで漸く話し相手が困惑していることに気付いた。

 

「あ、その……ごめんなさい! いきなりこんなこと話されても困るわよね。やだ、私ったら何を言って……」

「いえ、そんなことはないです。何と言うか明日香さんは何でも自分でこなせる完璧超人みたいな印象があったから、こういうことを話されるのが意外で……」

「ふふっ、何よそれ。私だって人間なんだからそういう時もあるわよ」

 

 頭を掻きながらそう言う彰に、明日香は思わずクスリと笑う。

 

「あぁ~っ! 明日香さん、こんなところに居たんですか? 探したんですよ!」

「もう試験は終わりましたし、寮へ戻ってご一緒に御茶でもしませんこと?」

 

 少し離れた観客席より声を掛けてきたのは、明日香の友人である枕田ジュンコと浜口ももえの二人だ。

 

「ちょっと待って! 今からそっちへ行くわ!」

 

 明日香はどこかすっきりとした顔をして立ち上がり、スカートに付いた汚れを払うと、その場から去る前にもう一度彰の方に顔を向ける。

 

「今日は私の勝手な話を聞いてくれてありがとう。できればさっきの話を心のどこかにとどめておいてくれると嬉しいわ」

 

 それじゃあねと言って去っていく明日香。最後の言葉は特に返答を求めていないモノであろう。彰も彼女の雰囲気からそれを読み取っていたが、あえてその背に聞こえるように返事をする。

 

「分かりました。その時は丸藤先輩の胸を借りるつもりで頑張らせてもらいます」

 

 その返答に明日香は一瞬だけその場で制止したが、振り返ることなく手を翳すだけに留め、彼女を待つ友人の元へと帰って行った。

 

 

 

 

「あれ、明日香さん何かいい事でもあったんですか? なんか妙に機嫌が良さそうですけど……」

「そういえばそうですわね。いつもより心なしか楽しそうに見えますわ」

 

 実技試験も終了し女子寮へ帰る道程、ジュンコとももえは崇拝する明日香の様子がいつもと少し違うことに気付いた。

 

「え? 別にいつもと変わりないけど……。貴方達の気のせいじゃない?」

「いや、やっぱりちょっと違いますよ! なんというか「黄金のタマゴパン」をドローした日の明日香さんみたいです!」

「聞くところによるとあのパンはカロリーが物凄く高いらしいですから、明日香様も食べすぎには気を付けてくださいね」

「だから普段と同じだって言っているでしょう。というか子供じゃあるまいし、別に私は「黄金のタマゴパン」を引いたくらいでご機嫌になったりしないわよ!」

 

 そんな平和な言い合いをしながら寮への帰路へ就く明日香の足取りはいつもより少しだけ軽かった。

 

 




(もともとは魔法少女デッキで三沢と戦う話だったなんて言えない……)

OCGでは《サイバー・ブレイダー》は星7で《フュージョン・ウェポン》を装備できず、《サイバー・プリマ》の効果は生贄召喚時のみなので注意。《プリマの光》はアニメのオリカです。

恋愛要素は基本的にない予定。

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