真・恋姫†無双 王匡伝 三国志ガチ勢の軌跡   作:ニーガタの英霊

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幼馴染は死にフラグ

「此度の戦果、まこと見事なことと存じます」

 

「いえ、此度の戦い、私一人では到底無理でした。私がこうして皆々様を歓待できるのは、ひとえに河内の将兵、郡民あってのこと」

 

「ははは、ご謙遜を。王太守」

 

「事実でありますよ、郭公則殿」

 

 かの河内の乱を終息させたことにより開かれた歓待の場には多くの使者が気ままに食事を楽しんでいた。

 司馬芝もその一人であるが、此度の戦いにおける戦功第一の呉壱は兎も角、自分も招かれたのは少々気が引けるし、ましてやあんなことがあった後だ。王匡とは露骨に顔を合わせようとしない。

 それでも、すべき仕事を完遂するのは上に立つものとしての矜持故か。特に今回に限って言えば、この歓待の場を整えたのは彼女自身でもある。此度の歓待の場は河内温県。彼女の生まれた地元であり、あの司馬一族が牛耳る地盤である。

 

 その中でもひときわ目立つ人物がいた。

 

 いいや、目立つというには多少語弊があるが。

 その者はいたってどこにでもいそうで、これといった特徴もなく、傍から見ても地方の下級役人にしか見えない風貌だ。だが、それは見た目の話である。

 

「委細変わりないようで何より、私もうれしく思います。それはそうと、中々に興味深い飲み物ですね」

 

「馬乳酒という、匈奴との交易で仕入れたものだ」

 

「ああ! 成る程、道理で見慣れないと。ふむ・・・・・・、実になめらかだ。しかし、こういった珍品、たいそうお高かったのでは?」

 

「それは副次的産物ですよ。本命は馬でね、あちらからしたら穀物は非常に好まれる」

 

「成る程、うちでもやってみましょうかね。幸いにして冀州は有数の穀倉地帯だ」

 

「それはよろしいでしょう、えぇ。しかし、近頃は南陽で飢餓の発生が深刻だとか・・・・・・」

 

「えぇ、まったくその通りで・・・・・・」

 

 傍から見て、何気ない会話、などどいうことはない。会話の中にいくらか政治的判断を含みつつ、激しい鍔迫り合いの最中である。加えて、あの王匡と同等に付き合える弁論の持ち主。とてもじゃないがただの使者とは言えない。

 

 そう、彼こそが『潁川の俊才』郭図公則であった。

 

(成る程、冀州は農業偏重型ということね。ある意味、ウチとは逆、重農主義とでも言ったものね)

 

 ぼんやりと、王匡と郭図の話を聞きつつ、司馬芝はそんなことを考える。

 

 冀州の政治は比較簡単だ。郭図の直属の上司は冀州牧韓馥。高々一太守である王匡とは雲泥の差がある。太守は州の中にある郡を束ねる長官、対して州牧は幾つもの郡を合わせた州の長官である。長じて太守よりも権限が大きい。

 そんな彼らが打ち出したのは農業改革であり、現在、冀州の人口は爆発的に上がっている。その農業成果を元に、冀州では豪族の囲い込みを始めているのだ。

 これは逆に豪族の力を削いでいる河内とは逆のアプローチである。

 

(交易の発生が流通を回し、政治もまた、権益を守るために頭をひねらなきゃならない。まぁ、王太守もそんなことは織り込み済みでしょうけど)

 

 冀州は有数の穀倉地帯、消費の量も馬鹿にならないが、余剰というのも馬鹿にならない。せっかくあるのだから腐らせるなど政治家にとってはまさしく言語同断である。

 河内の交易活性によって、得をしたのは河内ではない、むしろ冀州のほうが渡りに船だったのだろう。

 

 四方八方が様々な勢力に囲まれている河内、肥沃かつ、安定した気候を持つ冀州。生き残るとはいえ、その差は未だ大きい。周囲は河内の価値を認めている。だからこそ攻めない、しかし、河内がその価値を失ったときのことを思うと、司馬芝はブルリと身を震わす。

 

 ちょうどそんなとき、王匡に声をかける一人の少女が姿を現した。

 

「公節!」

 

「季皮か! 久しいな・・・・・・!」

 

 司馬芝は目を丸くした。あの王匡に対して、こんなにも親しい人間がいたのかと。

 しかもなんだ、結構かわいい。さらりとしなやかな黒髪を頭頂部にまとめ上げ、煌びやかでありつつも、どこか貞淑然とした装いをまとう少女であった。

 

「ああ、私も会えてうれしいぞ。そうか、君が太守か・・・・・・。ははは、昔はおいて行かれるばかりかと思っていたのに・・・・・・。でも、会えてうれしいよ」

 

 そう告げる少女の瞳からは不意に涙が零れ落ちる。

 

「季皮」

 

「すまない、せっかくの歓待であるのにな。うん、よかった。本当によかった・・・・・・」

 

 その姿はまるで十年来の友に会うかのようなものであり、あの王匡も彼女のことを心配そうに見つめ、背中をさする。そんな姿に司馬芝はチクリと胸に痛みを感じるのであった。

 

「ありがとう、落ち着いたよ。積もる話もあるが、今は仕事を優先しよう」

 

「ほう・・・・・・」

 

 少女は袖で涙をぬぐうと、不意にはにかみ、口上を述べる。

 

「朝廷より使者として参りました。執金吾、胡母班季皮であります。王太守におかれましては、此度の戦果に対し深く御礼を申し上げます」

 

「河内は陛下の足元といっても過言ではありません。そのために佞臣、逆臣を征討したまでのことであります。願わくば、陛下がご安心して、漢の地を統治されることを思ってのことであります」

 

「陛下もお喜びになるでしょう。付き従って、董相国より王太守を河内太守に加え、河南伊に任命すると下知が下されました」

 

 歓待の場がわずかに騒がしくなる。実際の権限は兎も角、河南伊といえば、司隷州の郡の中でも一際格式高い官職である。王匡はこれで名実ともに司隷州でも第二位の地位に位置づけられたといえよう。

 

「・・・・・・ありがたき幸せ。この王匡、漢に益々の忠誠を」

 

 この昇進、王匡にとってもある意味予想外のことであった。最悪、恩賞もなく、ただ使者だけを送ることもあり得た。

 加え、ネックは河内に加えだ。河南伊となったとしても、河内を取り上げられることすら考えられた。この交易において、中央も確かに噛んではいるため、河内の地がどれ程おいしいかは語るまでもない。

 しかし、それをしなかったばかりか、新たに領地を与えた。王匡は戦略の変更を余儀なくされたが、現状、不利なことはない。

 河南伊も現在は空席であり、中牟県令楊原が代行している状況だ。なにも不自然な点は無い。

 

「しかし、河内太守と兼任とは聞いたこともございません。私も人でありますれば出来ることに限りはあります」

 

「なれば人を推挙してほしい。かの王河南伊なれば、咎めるものはないだろう」

 

 これは驚いた、郡太守の人事すら与えるとは。しかし、ここにいたって慎重なのが王匡だ。

 

「であれば、書状を戴きたい。このようなことは滅多に無いでしょう。加え、このような立場ではあるが、私は庶民の出です」

 

「心配召されるな、任命状はこちらにあります故、拝見なされるが宜しいでしょう」

 

 胡母班は懐から書状を取り出すと、王匡に渡す。

 

「・・・・・・では御拝見を、ふむ・・・・・・、なるほど、しかと拝見いたしました。さすれば改めて、河南伊の役目、喜んで就く所存であります」

 

 そういうと、王匡はぐるりと百八十度回り、聴衆に宣言する。

 

「河内太守王匡改め、河南伊となり申した、王匡公節であります。何分若輩の身でありますが役職に恥じぬように、よりいっそうの努力をする所存であります皆々様と共に、国家のため、陛下をもり立てていきましょう! それでは皆様、私が乾杯の音頭をとらせて参りましょう」

 

 王匡は、手に杯をもち、掲げると、幾人かの聴衆も杯を持つ。

 

「大陸の繁栄と民の安寧を祈って、乾杯!」

 

『乾杯!』

 

 杯と杯を打ち鳴らす甲高い音を響かせながら、賑やかな夜は始まりを告げたのだった。





胡母班「仕官するなら執金吾、婿を娶らば王公節」←結構本気

王匡「ははは、光武帝か。面白い」

 こんな幼少時代があったんですよねぇ。
 え、フラグ? 王匡にフラグなんてそうそう立たないよ?

 史実じゃ胡母班って、王匡の妹婿だったんですよね(愉悦)
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