真・恋姫†無双 王匡伝 三国志ガチ勢の軌跡   作:ニーガタの英霊

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葡萄農家は今日もチートをする

 

「いやー、参っちゃうね。愛紗ちゃん」

 

 徐州平原の相、劉備は洛陽からの書状に目を通していた。

 

「汝を中郎将へ任ず、至急都へ登城せよ。うーん、今都に行ってもあんまり旨みがないんだよねー」

 

「ですが桃香様、これは協皇女の勅旨です。断るのは難しいかと」

 

「じゃあ使者さん切っちゃお! そうしよう!」

 

「えっ!?」

 

 

 

 

 

 

「というわけで使者さん切っちゃった、ゴメンね朱里ちゃん。てへぺろ」

 

「はっわっわ、ぶん殴りましゅよ桃香様」

 

 一人の人間を犠牲にする判断の下に劉備は諸葛亮と政策の協議を行っていた。

 

「時間稼ぎとしては上々でしたが、もう二度としないでくださいね」

 

「うんうん、考えておくよ」

 

 先の判断において、劉備がやったのはいわゆる時間稼ぎだった。使者など来なかった、そちらの不手際だと、これからも使者が訪れようとしらを切るつもりだろう、そのために丁重に証拠の隠滅も図った。

 

「話を変えましょう、此度の登城を如何にするかを」

 

「えー、朱里ちゃん頭いいんだから、朱里ちゃんが考えてよー」

 

「いいえ、私は一軍師ですから。選択するのは桃香様ですよ」

 

 白扇で口元に隠しながら、ジト目で劉備を見る諸葛亮。劉備はため息を一つつくと、諸葛亮との協議に入る。

 

「私としてはね、正直登城は反対かな、正直うまみがないよね。政争なんて私程度の頭じゃ足元掬われて、いいように利用されるばっかだよ。無理無理無理のカタツムリだよ」

 

 弱気に劉備はいうが、事実その通りであろう。

 相手は海千山千の宮中の怪物達、こと政争は濁流一強の体制は崩れたといえど、彼らはその濁流派に一歩も劣らずに戦い続けた文字どおりの怪物達だ。

 

「立ち位置としては蹇碩さんの後釜かな? まぁそれ以外考えられないけどね」

 

「何故そうお思いに」

 

「私は腐っても皇族だからね! 陛下の謁見ぐらい余裕だよ、まぁ、公的な理由として中郎将が与えられる訳なんだけと。・・・・・・それらを踏まえて、確かにこっちの利益もあるけど、圧倒的に不利益を被ることがおおいね。なにより最悪死ぬ状況に好き好んでいくわけないよ」

 

 劉備は高笑いしながら、的確に述べる。分の悪い賭けなど、それこそ絶体絶命のピンチでもない限りやろうとするのは馬鹿のすることだと言わんばかりに。

 

「桃香様の言い分はわかりましたが、やはりここは登城すべきと申し上げます」

 

「―――へぇ、いいよ。聞かせて、朱里ちゃん」

 

 劉備はその笑みを崩さず、きわめて丁重に聞き返す。そして諸葛亮もそんな威圧を意にも返さず堂々と発言する。

 

「現状、我々が勅旨以上に効果を持ち、それを反故にする理由がありませぬ。このまま使者を切り続けて、いつか朝廷が倒れるまで待つ。悪くはありませぬが、それこそあまりにも分が悪すぎますよ」

 

 そういって諸葛亮は劉備をたしなめる。劉備は反論したい気持ちに囚われるが、どう足掻こうにも相手は我らが軍師、勝てる道理など無い。

 

「それに、政争というなら私にお任せを。生来、政治は得意分野でありますので・・・・・・、はわわ」

 

 数日の後、朝廷より新たな使者が参った、平原の相劉備はその任を喜んで承ったという。

 

「さて、色々捗りましゅねぇ、はわわわわ。また噛んだ・・・・・・」

 

 自分の噛み癖に辟易しながら、諸葛亮は頭のなかで戦略を産み出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ! 儲かりまっか?」

 

「ぼちぼちでんな、そっちはどうだね」

 

 河内の城下で精を出す商人達、その中でも馬車いっぱいに鉄鉱を積み上げた恰幅のいい男と此方も馬車いっぱいに大樽を積み上げた男が談笑していた。

 

「そりゃもうたんまりよ、王太守様々だね。私は交易商人でね、近頃はコイツの需要は高い。そういうあんたはどうかね」

 

 河内における軍需産業として、鉄鉱は最も必要としている。近頃は賊の噂もなく、安全に交易が出来る河内の地を拠点とする商人は多い。

 

「へへへっ、うちは新参でね。涼州からやっとこさ出てきたもんさ。因みに品はコイツだ、呑んで見るかい」

 

 新参の男はそういって恰幅のいい商人に瓢箪を投げ渡す。商人は訝しげに栓を抜いて、匂いを嗅ぐ。

 

「ほう・・・・・・、酒か」

 

「交易だって涼州も負けちゃいないさ、はるか西方の大秦国より伝わった種子から造り上げた秘蔵の酒さ」

 

 酒商人の説明もそこそこに酒に口をつける交易商人。瞬間、彼に衝撃が走る。

 

 うまい。いや、ただうまいだけじゃない。芳醇な果物の酸味と渋み、なによりも高い酒精。この時代では量れないすべてがそこにあったといえるだろう。

 

「―――これは?」

 

「うちで造り上げた葡萄酒さ。この味は涼州、いや、大陸一と自負している。・・・・・・そこで、どうだい? あんたがよけりゃこの葡萄酒を売ってやろうじゃないか。うちではこれをこんくらいの価格で売ろうと思ってね。そうだな、ここから一割引いてやろう。どうだ、これなら―――」

 

「わかった、全部買おう」

 

「・・・・・・は?」

 

 決めるや否や、早々に金子を揃える交易商人。酒商人はただ茫然と見続けるしかなかった。

 

「ははははは、こりゃ失敗したかな」

 

「良いことを教えてやろう。河内の商人にとって、この程度は序の口だ」

 

「・・・・・・まぁ、今回は勉強させてもらいましたということで、手打ちと行きましょうや」

 

「宜しい」

 

 交易商人は満足そうに頷くと、また別の話を切り出す。

 

「折角だ、此方も少し位は鉄鉱を融通しても構わない」

 

「いやいや鉄鉱だなんて何時使うんだよ」

 

 酒商人は言外に拒否するが、交易商人は尚も畳み掛ける。

 

「・・・・・・時に君は剣でも振るっているのかね。商人にしては随分と筋肉質だ」

 

「おあいにくさま、涼州は河内とは違って異民族や賊が多い。自衛手段は多いに越したことはないのさ」

 

 そういうが、酒商人の体はやはり見事な体躯であった。商人というより軍人の様にも思えるほどに。

 

「ならばなおさら買うと良い。酒は街の手工人からは好かれる。鍛冶屋の伝手も無いわけではないだろう? 馬車一台。占めて十石程だ。値段としては大体この程度か」

 

 交易商人が提示してきた金額は予想の範囲内ではあるが、良心的な価格であった。

 

「・・・・・・悪くないが、良いのかい。鉄鉱の需要が高いなら、吊り上げることだって出来た筈だ」

 

「なに、これも投資だよ。それに、商人として相手の信用を損なうことは三流のする事だ。出来るなら、今後ともご贔屓にしてくれると嬉しいがね」

 

「・・・・・・分かった、買ったよ。持ち合わせは少ないんでな、酒を買った金から引いてくれや」

 

「毎度あり、それからひとつ忠告だ。河内で商売をするなら商品の売り渋りはやめといた方がいい。それまでの蓄えを取られて、裸一貫に逆戻りだからね」

 

 河内では商人に関所の自由通行などの特権を与える代わり、様々な制限を課せられる。そのひとつが商品の売り渋りによる経済の停滞だ。

 これによってある程度のインフレを防ぐとともに、民衆の不満を取り除くのが王匡の狙いであった。

 

「そいつはどうも。・・・・・・っと、街が見えてきたな」

 

「ああ、どうやらここでお別れのようだ。そう言えば名を聞いていなかったな、私は毋丘興という。河内で仕事があれば、是非私を通してくれ。これでもそれなりに融通は聞く」

 

「・・・・・・俺は田中。ああ、機会があればまた会おう!」

 

 二人の商人は大手を振って別れていく、やがて田中らの一団が林の近くへ歩みを進めると、黒衣の男が一人飛び出してきた。

 

「将軍、法参謀より書状が・・・・・・」

 

「分かった、どうせ帰参の書状だろう。直ぐに戻ると伝えておけ」

 

「はっ!」

 

 田中はそう吐き捨てると西にある都、洛陽へ馬を進めながら書状に目を通す。

 都から離れ、幾数日。商人に紛れ込んで河内への工作を推し進めているものの、一向に成果は出ない。それでも幾つかのパイプの構築は済み、草を紛れ込ませた。

 

 今回の諜報結果で彼が驚いたのは、なにより商人の質の良さである。涼州では比較的目先の欲に囚われやすいが、こちらは大局を見据えてビジネスをしている。

 

(やれやれ、これじゃあ余り中抜きは出来そうにないな)

 

 書状からは直ぐに帰参することや、黒備副将のひとりとしての責任など事細かに綴られていた。

 

(あいつも心配症だな。ま、この俺が大局を間違うことなんてもう無いとはおもうがな)

 

 そう考えながら、男は書状を懐にしまう。

 かつて、男は敗北者だった。敗北し、裏切り者と卑怯者のなじりをうけ、失敗した。しかし、そんな惨めな結末を男が肯定するはずがない。

 

 かつてとは違うこの平行世界で男は何処までやれるか、そして栄光をつかみとれるか、この男―――孟達子敬は二度と選択を誤ることなどあり得ないのだから。





孟達は史実→現代日本→恋姫世界と渡ってきた超転生者です。転生者の中でもトップクラスに戦争を知っている人物です。
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