真・恋姫†無双 王匡伝 三国志ガチ勢の軌跡   作:ニーガタの英霊

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黄巾党は大変なものを奪っていきました。大切なあの人との人生です―――!

 

「・・・・・・」

 

「なぁ黒縄、元気出せって、な!」

 

「関羽か・・・・・・切りごたえがありそうだ」

 

 現在、すべてを話し終えた李傕は絶賛お通夜状態であった。自身満々に献策した己の策が完全に裏目に出てしまったことに、彼は非常にネガティブになっている。元々人付き合いの苦手なネオニートの彼、頭は良かったがその実、非常にコミュ症であり、脆いガラスのハートの持ち主である。

 

「諸葛亮って・・・・・・、なんだよ・・・・・・。なん、で・・・・・・龐統もいるんだよ・・・・・・。おかしいだろ・・・・・・、こんなん・・・・・・、ぜったい、おかしいじゃん・・・・・・」

 

「アカン、こいつ自分のキャラすら見失ってるやん・・・・・・。おいバーバリアン。叩き起こさんかい」

 

「お前って、セブルス・スネイプとヴォルデモートを足して二で割ったような顔してんなwwwwwwしかも、落ち込んでるから雰囲気完全にゴンさんじゃんwwwwww」

 

「星、剣貸せ。こいつ殺すわ」

 

「アホか、目ぇ覚めたらとっとと話始めんで」

 

「This way―――」

 

「ここで死ぬのが、僕でよかった!」

 

「やめんか! その話、わけわからへんのや!」

 

 ヤクザとニートとバーバリアン。これが董卓陣営中枢の転生者たちの姿であった。

 兎も角、李傕が戻ってきてようやくまともな話となる。その議題の中心はやはり劉備についてだった。

 

「予想以上に大所帯だったわけだな」

 

「あぁ、こればかりは吾輩の失態である」

 

 劉備、関羽、張飛、趙雲、簡雍。このあたりはいて当然だとは李傕は思っていた。問題はそのあとであった。

 

「諸葛亮、龐統か。こりゃ厄介だな・・・・・・」

 

「史実ではろくな文官、特に軍師をもっていなかったことが劉備が入蜀まで各地を放浪することになった原因と言える。それがないとしたら、この娘は非常に厄介なことになる。文官も一癖やふた癖ある。簡雍は特に弁舌に優れているし、諸葛亮は知略もそうだが、なにより行政官としてはかなり有能だ。龐統は戦術などの参謀としての才が強調されるが、事務に関しても非常に優れている」

 

「だとすると、取り込みは危険か。排除に動くか?」

 

「まだ早い。それに、妙に感づかれては困る」

 

「殺すにしても、他勢力に殺させた方がいいんじゃない? それなら先の袁紹と同じようにごまかしも聞くでしょうしね」

 

「ふむ、考えておこう」

 

 ある程度の情報の共有を済ませ、議論は一応の終着を迎える。

 

「とにかく、奴らの手綱を握る必要がある。それに加え、配下を分散させよう。伏龍、鳳雛の名は実に中々悪くない。それから関羽、張飛もだな。何かしらの功績を与えて劉備から引き離す」

 

「工作は俺がやっておこうか」

 

「・・・・・・そうだな、一部は吾輩の兵を使う。フラストレーションの溜まった兵士が民衆を嬲るなどよくあることだ」

 

「了解、こっちは賈詡の協力が必要そうだな・・・・・・」

 

 彼らはそうやって策を使って劉備たちの結束を崩しにかかる。そんな中、空気と化した一人の少女が手を上げる。

 

「あのー、私は?」

 

「・・・・・・素振りでもすりゃええねん」

 

「君は・・・・・・。なんだ、戦争の時は頑張ってくれればいいかなって」

 

「ぶー」

 

「ぶー、じゃない。兎も角、このことは厳密にだ。ただでさえお前は加減を知らないからな」

 

「はいはい、わかりました」

 

 この胡軫、決してただのバカではないが、どことなく配慮に欠ける面がある。戦働きに関しては中々の腕ではあるが、そうでなくともやりすぎるきらいがある。いうなれば、あの樊稠と同じようなタイプの人種だ。特に、何を思ったのか一騎打ちなどを得意としており、到底現代からの転生者とは思えない行動もすることが多々ある。彼らからして彼女という人間もまた危なっかしいのだった。

 

 

 

 

 

 

「久しいわね、常林」

 

「曹兗州刺使も息災で何よりであります」

 

 兗州陳留郡にて、曹操は一人の男と相対していた。常林、字は伯槐。王匡の幕下でも特に弁舌の優れた使者であり、自慢の顎髭をさすりつつ、此方を試すかのように見つめる。

 

「王太守・・・・・・、いえ今は王河南伊ね。任官おめでとうと言っておきましょう」

 

「はい、有り難いことです。つきましては交易に関してですが、そちらのご自由にということで」

 

「そう、王河南伊はよき御仁だ。できるならこれからも仲良くしたいものね」

 

「主、王公節も曹兗州刺使とともに国を支えてゆきたいとおっしゃっております」

 

「もちろん」

 

 曹操は笑顔の仮面を貼り付けつつ、目下儀礼的に接する。思えば長い間この男とは折衝してきた。特にその弁舌の才は優れている。

 

「常林、貴方がよければ私に仕えてみないかしら? 私は貴方を太守に推そうと思うけど」

 

 興味を持った人材がいると自身の陣営に引き込む、曹操のよいところであり、悪い癖のようなものであった。

 

「ありがたいことでありますが、今の主君を見捨てることは出来ませぬ故、丁重にお断りします」

 

「・・・・・・そう、残念だわ」

 

「ほかに話がなければ切り上げましょう。私は外遊が多いため、どうしても事務仕事が滞りがちでありますから」

 

「あら、それはいけないわ。あなたにはここでゆっくりしてほしかったのに」

 

「誘いを断るようで心苦しいです、はい」

 

 嘘つけ、そんなこと思ってないくせに。などと言っても明確な証拠などないのだ。何か言おうと思えばのらりくらりとかわし続ける。二三、髭をさすると常林は拝礼し、謁見の場から遠ざかる。

 

「どう思うかしら春蘭、桂花?」

 

「男にしては頭が切れますね、えぇ。遺憾なことに」

 

「我が旗下にはああいった手合いはおりませぬ。亡き魏志才殿の後を継がせるべき存在かと」

 

 現代でいうフードを被った小柄な女性と、洗練とした出で立ちの女性は別々に回答し、常林を評価する。彼女らにとっても常林という男は中々に目に適う逸材であった。

 

「常林はあれで既婚者でありますし、愛妻家として有名であります。色仕掛けは通じないでしょうね」

 

「ちょ・・・・・・! 春蘭!」

 

「黙りなさい桂花。春蘭、続けなさい」

 

「・・・・・・常林をこちらに帰参させるにするには、王公節をどうにかさせるしかないでしょう。それか、家族を逆手に取るか。・・・・・・これ以上は軍師の領分ですので、詳しいことは荀軍師に聞くと良いでしょう」

 

「わかったわ、春蘭。下がっていいわよ」

 

「はっ!」

 

 夏侯惇は深々と拝礼を行うと、謁見の間から去る。曹操は荀彧を呼び寄せる。

 

「春蘭も成長したものね。前は猪もいいところだったのに」

 

「華琳様・・・・・・」

 

 夏侯惇は曹操の従姉妹にあたる関係であり、曹操が信頼する数少ない側近である。夏姉妹だけではない、曹仁や曹純、曹洪などの曹氏一族や荀彧といった頼れる軍師などを抱えている。しかし、彼女の心には一点だけの曇りがあった。

 

「貴方もそう思うでしょ、流・・・・・・」

 

 荀彧は固く唇を噛み締める。彼女だけではない、現在曹操の下で生きて職務に励めるのはひとえにその男のおかげであるのだ。

 黄巾の乱、太平道の教祖張角の起こした大規模な農民反乱において、曹操は西園八校尉の一角としてその反乱鎮圧に尽力した。しかし、そのために多くの犠牲を伴ったことは記憶に新しい。

 

 名将皇甫嵩、盧植は軍人としては二度と働けない姿となり、彼女らとともに黄巾に善戦した朱儁は戦死。同じく西園八校尉を受任した鮑鴻、趙融そして淳于瓊の三名もまた戦死。

 兗州では当時の兗州牧劉岱すら戦死してしまったことに朝廷は驚天動地の状態であった。

 

 そして何より、彼女が受けた被害も大きかった。

 史渙、字は公劉。真名は流。

 曹操挙兵以来の古参の将であり、彼女の幼馴染。そして何より、曹操の夫であったのだから。

 

 黄巾軍地公将軍張宝。黄巾の乱発生時には病に伏した兄に代わり、実質的に黄巾賊をまとめ上げた稀代の将帥。黄巾党の中でも精鋭たる『紅巾隊』を組織し、迫りくる官軍をあざ笑うかのように打ちのめし、官軍の血で染めたとされる巾を纏いて征く、恐怖の代名詞。その勢いは春秋期に楚を滅ぼそうとした呉の如く、漢という国を圧巻していった。

 

 慢心はなかった、曹操もかの将帥のことを一角の英雄と認めていたはずだ。それでもなお、届かない巧というのを見せつけられた。脳裏に焼き付く赤い総軍。流動するかのように巧みな指揮に戦術。こちらを殲滅するかのような圧倒的計略の極地。

 

 あの時、そう、あの時、彼らが身代りにならなければ、皆ここに居なかったであろうということがなお彼女の後悔となって締め付ける。

 あの日、笑って逝った夫、史渙と盟友、鮑信。死体は見つからなかった。ただ、あの状態では生きていないということは誰でもわかりきっていた。

 

「私は失敗した」

 

「華琳さま・・・・・・」

 

「けど、二度目がないことは重々承知よ」

 

 華琳は大きく膨らんだ自身の腹部をゆっくりと撫でる。そこには王足らしめる威圧はなく、母としての愛情があった。

 

「私は覇道を突き進める。そのためならばあらゆることを利用してでも、勝ち残って見せる。絶対に、絶対に、絶対に・・・・・・、そうでなきゃ、私の為に死んでいった彼らに顔向けなんかできないわ」

 

 曹操はふと顔を上げると、今にも泣きそうな荀彧を見つめ、その頬に手をそっと触れる。

 

「私はきっと地獄落ちだわ。あの人や、娘たちの行く天国にはいけそうにないみたい」

 

 曹操はそういって言葉を並べると、荀彧は素早くその手を取り、言葉をまくし立てる。

 

「私は、華琳様の行くところならば、地獄だろうと天国だろうといってみます。決してあなたを一人にしません。いいえ、それだけじゃありません! 地獄の閻魔なんて言い負かして、みんなで天国にいってやります! 私は、貴女の軍師だから・・・・・・!」

 

 そんないつになくまじめな荀彧がおかしくて、曹操は少しだけ笑みを浮かべる。

 彼女は心から安心した。なぜなら彼女にはこんなにも心強い仲間がいるのだから。

 





 いつから転生者が死なないと錯覚していた・・・・・・。

 曹操を覚醒させるためにはどうすればいいか、簡単だ。大切な人を殺せばいいんだよ(ニッコリ)
 大切な人が死ねば、英傑だのなんだのなめプは出来なくなるからね(ニコッ)
 というわけでこの華琳様は人妻です。口説けません。だって子供もいるもん。
 史渙さん? 転生者だったからね、そりゃ惚れる。
 張宝さん? ネタバレになるんで言いません。
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