真・恋姫†無双 王匡伝 三国志ガチ勢の軌跡 作:ニーガタの英霊
王甫「かーっ! つれーわ、マジつれーわ。かー! つら!」
李膺「は?」
陳蕃「ちょっと表出ようか?」
荀爽「辛いです・・・・・・」
様々な勢力による政争が巻き起こる魔都洛陽のその郊外で、彼らは集まっていた。
卓を挟んで三人は薄明りの中、口を開く。
「陛下の状態は?」
「持ち直したようね、さっさと死ねばいいものの、中々にしぶとい」
「穏健派の様子は?」
「劉備を主軸に再編しているわ、補佐には諸葛亮という少女に、金旋も劉備の持ち上げに必死だわ」
ああ、嫌になってくると鬱憤を晒すように毒を吐くのは女性特有のことか。
彼はふとそう思うが、所詮は蛇足。この密談は拙にすることは出来ない、何故ならこれは大逆そのもの。一人は大義ためと言っているが、もう一人は男の頭をもってしても読み取れなかった。
「穏健派に関しては潜り込む隙が無かったからね。まぁ、そういう我らも元をたどれば考えの違う利で繋がった矮小な関係だ」
「分かっている、だからこそこのような場があるのだ」
彼らが狙うのは現状の打破。現在皇帝とそれに反する皇女派の二頭政治に対し懸念を持つがゆえに彼らは話し合いを進める。
「権力の分散は我らの望むところではない。病弱な皇帝は漢に不要だ。平時ならまだしも、大陸は多くの問題に直面している」
力を持つ地方豪族に、癒着する地方官吏。外敵たる異民族に好転しない政治情勢、先の反乱の残党。最悪、国が転覆する。
「今こそ、計画を推し進めるべきだ・・・・・・、我らは座して死ぬことは許されん・・・・・・!」
この密談から数日の後、洛陽で前代未聞の大事件が発生するのはまだ誰も知らなかった・・・・・・。
カラカラと揺れる馬車の中、一人の男は沈痛な面持ちで考えに更ける。
刻まれた皺と白髪は男の苦労を物語り、憂いを帯びた瞳は何処か諦めの意思を感じる。
彼こそ名門荀家の一人、八龍の中でももっとも優れたとされる荀爽であった。
閑静な農耕地帯をひたすら馬車は駆け、荀爽は流し目で代わり映えのしない風景を見つめる。
こうなったのもすべては自分の責任である。荀爽は滅入る気持ちを整理させるために気分転換のような感覚で中牟に入る。
馬車に揺られること数刻、漸く太守館が姿を表す。
馬車から降り、出迎えの使者を迎え通された個室に向かえばそこには一人の男が鎮座していた。
「お久しゅうございます、荀慈明様」
「ああ、暫く見ないうちに大きくなったものだな、王河南伊」
王匡と荀爽、二人を結びつけたのはとある繋がりがあってのことだ。
若くして蔡邕の弟子として中央へと遊学した経験を持つ王匡は当然のことながら清流派の面々とは顔見知り程度には繋がりを持つ、荀爽とはまさしくその程度の繋がりしか持たないが、彼の場合は例外と言えよう。
荀爽のもとには王匡の唯一無二の親友、郭図の姿があったのだから。
郭図は下級官吏の子でありながら若くして利発であり、頴川の俊才と名高かった。その名声は当然の荀家の知ることとなり、同じく若いながら利発さを発揮していた荀攸と競わせるために彼は荀家との繋がりを篤くしていた。
流行り病で父母がなくなった際にして、荀爽は郭図を家に住まわせ、極力荀攸と行動を供にさせた。
そんな中、王匡は郭図と荀家―――荀爽の屋敷に駐留した時に仲良くなった間柄だ。
「さて、昔を懐かしむのもよいでしょうが、仕事の話といきましょう」
「その前に質問を」
「どうぞ・・・・・・」
王匡は白湯を口にすると飄々とした態度で、荀爽の質疑に耳を傾ける。
「王河南伊、貴方はこの漢に何を求める?」
「・・・・・・何をとは?」
「分かっておろう、この国は今にも滅びつつある一葉の枯れ木よ。故に私は問わねばならぬ、他ならぬ国のために」
そう、いつだってそうだった。荀爽は何よりも守るべきは国、ひいては民という、家と家族だったはずた。
皇帝という家長、それを支える清流の賢人。それが正しくて、だからこそ戦ってきた。そう思っていた。
「王河南伊、私はわからなくなってしまった。私が愛した漢は他ならぬ私の代で終わってしまうのではないかと。家を滅ぼしてしまうのではないかと、不安で、恐ろしくて堪らない・・・・・・!」
それは強迫観念、国を守り、滅びを否定せねばならないという凝り固まった視点だ。
故に、王匡は否定しなければならない。彼はもう留まることなど出来ないのだから。
「・・・・・・旧き衣を脱ぎ捨て、新しい衣を身に纏う時は来ます。永遠に続く国家などあり得ない。この世に万人が是とする国家は存在しない。私はそう思うのです」
「それでも、願わずにはいられないだろう。戦乱の世は、ひどく哀しい・・・・・・」
「ええ、私もそう思いますよ。親が子を売り、子は戦場へ逝き、豊穣な土地は恵みを失い、飢えた民衆は隣人を喰い殺し、施政者はその恨みを一身に買う。施政者が恨まれるのは何時の世も変わりませぬが、嗚呼、そんな世。誰であろうと望むはずありませんとも」
瞳を閉じ、最悪の未来を夢想する二人。今まさに、その滅びが近づいているということは彼らの胸にひどく突きつけられた現実でもあるのだから。
「だからこそ、我々は最悪に対処せねばならない。今の私が言えることはこれだけです」
王匡は知っている、この世界の未来を。そうでなくても滅びへ向かう情勢を眼をそらすことなく見続ける。
血で血を洗う乱世を勝ち残るために、戦い続ける決意はもうとっくに決めたことだ。
「・・・・・・君も公則も抜け目がないというかなんというか、これが親の気持ちというものかね」
「私は他人の子ですよ」
「ははは、確かに私も老いたというものか」
「私も端から見れば髭のオッサンですからな」
荀爽と会ったのはおよそ二十年前、幼き少年は今や押しも押されぬ司隷の要人。一度の挫折は彼を大きく成長させたであろうことは想像に難くない。
「私は剃ってあるが?」
「私は軍属上がりですから、威厳が必要なのですよ」
王匡は文官ではない、一時はそれを志し、難関である太学では優秀な生徒として将来を渇望され、太学首席である太学の冠を狙う立場にあったが、師の失脚、実父の死により、それはついぞ叶わなかった。
そんな王匡が武官として新たに中央に仕官できたのは郷挙里選の一つ孝廉であった。
孝廉とは父母の恭順や儒学的に優れた態度を行うことによって官吏の道を拓く方法であり、王匡の場合、三年の間父の喪に服したこと、羊家の荘園のみならず多くの者に学と自立心を与え飢餓に対処したことが評価された。
また、若くして中央に遊学したことや、太学の同輩とのコネクション、当時若手軍事将校として有望株だった呉壱や何進の側近として重用された彼の叔父呉匡。御史台の長官である現冀州牧、御史中丞韓馥の懐刀郭図などと繋がりをもち、政争に精をだす何進にとっては欲しい人材でもあった。
無論、彼女にとって王匡はもて余すものであったのだが、仕事に関しては有能であったことは間違いない。
河内という非常に難しい土地へ送られたのにもその有能さと、危険さを買われてのことでもあった。
「白い肌でなよなよしてれば、兵卒はついていきません、最低限の筋力は必要ですし、必要とあれば陣頭指揮をしなくてはならない。後方で指揮を執るのは理想ですが、それでは兵は納得しないし士気も下がる。難しい問題ですよ」
「実戦でこそ磨かれるものもあるか、私も軍の指揮は王子師殿のところで一度だけだ。徐州での転戦は君の掛け替えのない遺産だ。・・・・・・あぁ、こんな時に李元礼殿のような方がいてくれればと、そう何度も思ったことやら」
李膺、字は元礼。後漢の桓帝の代に活躍した司隷校尉であり、異民族をよく防いだが、清流派に属したが故に党錮の禁において太傅陳蕃、大将軍竇武とともに逮捕、拷問の末に亡くなった。
「私は李元礼にはなれませんよ。お判りでしょうが、私は根っからの儒者というわけではありませんから」
「・・・・・・確かに、このところの政治を見る限り王河南伊は法家と噂が持ち切りだぞ。成果を出している現状は良いが、あまり中央の一部儒者からはあまりにな」
「家柄のこともありますからね、私は奴婢の子ですから。まぁ猫かぶりは得意ですよ。事実幼いころは騙し切ってたでしょう」
「全くもって恐ろしいかな・・・・・・」
短く荀爽は嘆息する。久しぶりに、こう言った人間らしい会話は少しだけ固くなった荀爽の心をほぐした。だが、これからは互いに仕事の付き合いとなる。
「さて、会話を楽しみたいのは結構なことだが、仕事と行こう」
「さもありなん。まず慈明殿には中牟県令についてもらいます。主な仕事として私の補佐を頼みます」
「あい、わかった。早速仕事と行こうかの」
数時間後、そこには書類の海に溺れる荀爽の姿があったという。
「面を上げよ」
河内の太守館、その議場で一組の男女が平伏し、畏まる。趙儼は上座から彼らを見つめ、指示を下す。
「張範公儀、貴君を従事に任ず。同じく司馬朗伯達を野王県令へ任ずる。各々職務に励むといい!」
「はっ、慎んでお受けいたします」
「ありがたき所存! 張公儀、感服の極み!」
趙儼は任官の議を終えるとそそくさと執務室へ向かう。河内の乱以降、河内郡の人材不足は急務だった。特に太守王匡と郡の治安維持を担当していた韓浩の穴は大きく、このところ目が回るほどの忙しさであった。
そのような中、新しく推挙されたのが張範と司馬朗だった。前者は修武県令宗慈から、後者は主簿の司馬芝からの推薦だ。
張範は宗慈のもとで軍師を勤め、条例施行により悪徳業者の検挙、密売人の捕縛などでこちらの経済の正常に関与した。
一方の司馬朗は激変する中央政界において官に就いていたが、きな臭さを感じあれよこれよと言いくるめ、郷里に帰ったは良いものの、定職を失ったことからコネを使い新たに官吏として登用された。
しかし、片一方は太守館で働き、もう一方は県令として赴任させたのは理由がある。一つ目として司馬朗は温厚で公明正大。人民に慕われるタイプであり、地方官として期待できるからであり、一方の張範は一言でいうならばアイデアマンであった。
(基礎教育の施行に高い授業料を引き換えにした高等学校の成立、福祉政策としての治癒院の設立か・・・・・・、こと民需方面では面白い提言だ)
金はかかる。だが、それを補って余りある将来性を感じさせる提言だ。かくいう趙儼も王匡と似たようなことを話し合っていたが、こちらは軍事色の濃い士官学校の設立に近かった。
(あくまで民生力を高めようとする訳か、悪くはないが、少し怖いな・・・・・・)
下手に知識を持てば何をしでかすかわからないのが民衆だ。自身らが思っている以上に民衆は愚かであると王匡は常々言っている。
(だが、せめて識字率は上げておきたい。とすると基礎的な教育は必要か・・・・・・。商人の子弟は兎も角、農民は出向かぬだろう。河内の乱で退役した兵卒を教師としてあてるにして・・・・・・)
どちらにしても金がかかる、ただ単純に軍を揃えるだけなら異民族に金をちらつかせればいいだけにメリットとして直ぐに出てくるわけではないのがネックだ。
(だが、あの技術を利用すればまだましな部類だろう)
趙儼の頭にちらついたのは王匡が推し進めた活版印刷だ。これを使えば写本師の人件費は浮き、何より速いことがあげられる。これは教育分野においては革新的な筈と趙儼は疑わなかった。
(金に余裕はある、農耕問題も一先ず片付いた、ならばこそ民事へ舵を切るのは悪くないが、情勢を鑑みるに後回しにせざるを得ない)
いずれ中央は爆発する。それが趙儼と王匡の共通見解だった。だからこそ今は見に回り、力を蓄えるべきだと経済機構の維持に努めている。
(成長するのはここではなく河南伊とすれば、これを王河南伊に送るのも手であろう。さすれば・・・・・・)
趙儼は直ぐ様手紙をしたため、王匡へ送るのだった。
(鬼が出るか、邪がでるか・・・・・・。嫌な胸騒ぎがするな・・・・・・)
太守館の窓から見える街並みを見ながら、趙儼は一人不安を圧し殺すのであった・・・・・・。
その手紙を送った後日、河南伊、滎陽県に一人の男がたどり着いた。男と王匡の出会いはやがて歴史を動かすこととなる。
趙儼「俺がまともに出ている恋姫二次創作ってどこ? 魏の五将軍をまとめたり、曹仁の副将を勤めたり、関羽を嵌め殺したのに、どうして俺はマイナーなんだ?」
杜襲「それ、私の前でも言えるの」
宗慈「同じく」
張範「完全同意」
王匡「俺もいるぞ?」