真・恋姫†無双 王匡伝 三国志ガチ勢の軌跡 作:ニーガタの英霊
主人公は18世紀フランスに転移、フランス革命を生き延びる。
1王党ルート ヒロイン ラファイエット侯爵
「人は平等であるべきなんだ・・・・・・」
2共和ルート ヒロイン マクシミリアン・ロベスピエール
「わたしは苦しみの底にいる人々を、救いたい」
3帝政ルート ヒロイン ナポレオン・ボナパルト
「貴方が望むなら、ボクは皇帝になろう」
サンジェルマン「なお、私が左慈、于吉ポジです」
メッテルニヒ「そして私がラスボスです」
ルイ16世「朕が王のまま生き残る可能性は?」
サンジェルマン「限りなく低いです、ロベスピエールが革命を生き残るぐらい」
ルイ16世「それトゥルーエンド以外無理ってことじゃないですかー」
学術の都、襄陽。乱れるこの世において平和を謳歌し、多くの知恵者が集まり、統制された官僚機構によって更なる発展を遂げている漢の一大都市。多くの者の笑顔が灯るその場所で、彼は一人憂鬱な面持ちを隠せなかった。
裴潜、字は文行。元は司隷州河東郡の名家の出身であり、鋭い目つきにこわばった表情。どこか獅子を想わせる雰囲気に丸メガネをかけた見るからに堅物という男であるが、これでも若いころは相応にやんちゃをした部類であり家族との仲は悪く、荊州へと逃げたのは彼と、実の母だけであった。
「・・・・・・御免、王仲宣殿がご在宅だろうか」
「・・・・・・は?」
裴潜は眉を顰めつつ、少女を見る。てっきり家人か何かと思えば様子から見てその様ではない。
「失礼、俺は裴潜、字は文行という。貴様は?」
「ああ、張承。字は公先と申します。ここは王仲宣殿の屋敷と聞きましたのですが、生憎の事不在の様で」
「・・・・・・俺は王仲宣殿に呼ばれてきたのだが、そうか。不在か・・・・・・」
裴潜は顎に手を当て、首をかしげて暫し考える。
「家人には会ったか」
「いいえ、ですから貴方が訪れるまでここが王仲宣殿の屋敷かどうかも不確かなものでしたから」
「成る程、家人には会っていないか。なら大丈夫だろう、屋敷で待たせてもらおう」
「え、いやいや。それは流石に・・・・・・」
裴潜の突然の提案に、張承は考えを改めるように言うが、裴潜は苦笑すると、張承に一言申す。
「存外眠りこけているか、研究の最中なのだろう。外に出ることもあるだろうが、家人がいないなら基本的には屋敷に籠っているはずだ。奴は家を留守にすることはないからな、家人がいないのは買い出しか何かだろう。それとも何かやましいことでも?」
「お、おう・・・・・・」
極論かも知れないが、知り合いというならそうした方がいいだろうと張承は一応の納得をした。これでも理不尽は兄のことで慣れている。長い物には巻かれよ、世の中は妥協も大事なのだ。
「州泰、馬車は内庭に止めてくれ」
「かしこまりました旦那様」
御者である若い少年はそういうと、手際よく内庭に馬車を止め、留金を馬から外した。
知り合いというのは本当なのだろう、裴潜は迷うことなく屋敷を歩き、奥の一室の戸を強めに開け放す。
引き戸の甲高い音が響くと、そこには書物に埋もれたナニかがいた。
「来たぞ仲宣」
「んだ? 文行でねぇが。もうそげな時間だったけ」
ずんぐりとした小柄な体躯、肌は荒れ、唇は厚く、太い眉に、どこかこちらを睨み付けるかのような小さな瞳。とてもじゃないが整っている顔とは言えず、不衛生なその姿は女である張承からすれば不快であった。
「臭いな、何日籠っていた」
「そげなこと知らん、飯さ食って本読んで書いてただけだよ」
「はぁ・・・・・・湯浴みしてこい、客間を借りるぞ」
「んだ、そうすっけ」
大あくびを一つ吐きながら、部屋を後にする男。その様子を張承は怪訝な目で見ていた。
「・・・・・・? あぁ、書物には触るなよ。あいつは蔵書に触れられるのが大嫌いだからな」
「えっ、はぁ・・・・・・」
「あれは記憶力がずば抜けている、一見乱雑に見える書物の配置でも、どこにどの本があるかはすべて奴の頭に入っている」
「・・・・・・」
「どうした? 予想とは違って度肝を抜かれたか。まぁ気持ちはわからんでもない」
客間までの回廊を歩く裴潜を追うが、目当ての客間はすぐそばにあり、裴潜は引き戸を強めに開けると、窓を開けると身を乗り出し、声をあげる。
「州泰、茶の用意を」
「は、はい! ただいま」
外で馬の世話を行っていた少年を呼びつけると、裴潜は客間の床几に座りこむ。
「さて、俺は裴潜、生まれは司隷河東郡聞喜の生まれだ。親父は裴茂、今は中央で官吏をやっている」
「・・・・・・張承、字は公先、司隷河内郡修武の出身。祖父張歆は司徒、父張延は太尉、兄は無職だったがようやく就職した」
「そいつは良かったな、それで貴様は裸一貫でこっちに来たと」
「恥だとは思わないさ、私は蛮勇じゃないからな」
「違いない」
けらけらと裴潜は苦笑する。
「だが、むなしいものだ。何もできないというのは・・・・・・」
「・・・・・・」
そしてどこか寂しそうに、裴潜は遠い目をした。
「失礼します、粗茶が入りました」
「ご苦労、さて張承、ここの茶は中々イケる。俺のおすすめだ」
「はぁ・・・・・・」
ただ酒ならぬただ茶。この時代茶というのは嗜好品であり、それなりの蓄えが無ければこのように茶を飲むことはまずない。
着の身着のままで来た裴潜や張承とは違い、ここの家主はそれなりの蓄えを以てこの地に根付いていた。
「流石は、天下に名高い名書家。王粲仲宣といったところか」
王粲、字は仲宣。かの蔡邕門下生であり、河南伊王匡の弟弟子にあたる人物だ。類いまれなる記憶力に名筆、文才を備えた、後漢屈指の歴史学者であった。
「待たせちまっただ、すまねぇ・・・・・・」
「嗚呼、待った。それで用件を言ってはくれんか」
茶を啜りながら、裴潜は王粲の言葉を促す、王粲は一度頷くと、こともなげに語りだした。
「裴文行、おめさ王河南伊さに仕えねぇか」
「・・・・・・詳しく聞こう」
裴潜は茶を静かに置くと、両手を絡め、膝の上へと置き、静かに目を瞑った。
「河南伊は手広く人材を求めてるだ、それこそ政戦両略ともいえる部下さ。あめぇさの農耕知識と財政感覚は必ず河南伊で役にさ立つ」
「・・・・・・俺は故郷からおめおめと逃げ帰った男だぞ?」
「裴文行は時代の流れを読み切り、司隷州での乱を読み切った。事実、河内の乱があっただ、それによりおめぇは王河南伊の器を見極め自ら臣下の習いを取った。少なくとも筋ば通るだよ。おめぇは能力がある、ここでも腐らず学んできただよ、胸を張るだ」
「・・・・・・ふん、抜かしおる。だとすると貴様は王匡の差し金か」
「司隷は交通の要所、そして恐らくはこれからの騒動の中心。王河南伊はそれを知ってただ、河内の名士は自分で引き込む、それ以外は荊州に逃れるだろう。・・・・・・まったくの慧眼だっただよ」
王粲は懐から一枚の手紙を取り出すと、それを近くにいた州泰へと渡した。
「おれの推薦状だ、それさ渡せば登用さしてくれるだよ。もっとも渡すか渡さねぇかはおめぇさんしだいだよ」
沈黙を続ける裴潜、州泰は二三裴潜を見つめおろおろとしていたが、やがて手紙を己の懐へと入れた。
「・・・・・・劉表は間違いなく有能だ、群雄としては頭一つ抜けているだろう、独自の私兵も官吏も揃っている。だが、そこまでだ。これ以上飛躍することも、没落することもない。生きている限り・・・・・・」
「んだ、あとおれのこと不細工さいうただ、心せめぇだよ」
荊州牧劉表は間違いなく有能だ。彼自身優れた政治家であり、時流を読みきる目をもっている。裴潜も登用されればそれなりの地位に就くであろう。だが、それだけだ。
別にそれが悪いことではない。州の一つを抑えられない者がどうして大陸を抑えられるというのか。
しかし、劉表にはその大望はない、自身の限界を熟知しているからだ。中央は劉備ではなく劉表を中央に招くべきだったのだ、さすれば彼は宰相に成れただろう、そしてそれが彼の限界だ。
「・・・・・・決めたよ、どうせこのままウジウジしてるのは性に合わん」
「そうか」
「おう、一度会ってみよう。そしてその器量を見極めん。良ければ仕えよう、悪ければ劉景升殿に頭を下げるとするか」
温くなって冷めた茶を一気に飲み干し、裴潜は州泰に目配せをする。
「馬の用意を・・・・・・」
「おう、てな訳だ。俺は一先ず先に帰らせてもらう。精々お前の顔を汚さん様にはうまく立ち回って見せるさ」
「英断、感謝するだよ。漸く一仕事終わっただ・・・・・・」
肩の荷が降りたと、王粲は深く息を吐く。しかし、まだ仕事は残っている。
「んだ、張公先さにはやってもらいたいことがあるだよ」
「私に・・・・・・ですか」
張承は訝しげに王粲を見る。河内で王匡から逃げたと思いきや、また王匡がらみの案件。私は呪われてるんじゃなかろうかといい加減思ってきたところだ。
「これを、揚州のとある人物に届けてほしいだ」
「とある人物とは?」
引き留められると思っていた張承は拍子抜けしたが、すぐに気を引き締める。あまりの無茶ぶりでなければ手紙の配達程度は問題ないが、と張承は王粲の手紙を見つめる。
「笮融、巷では黒衣の軍師と呼ばれている人物だよ」
王匡のコネの有効活用、荊州の人材寝取り工作員王粲(弟弟子)と超高性能坊主笮融(転生済)ふえぇ、この河南伊恐いよぉ・・・・・・。