真・恋姫†無双 王匡伝 三国志ガチ勢の軌跡   作:ニーガタの英霊

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 展開が早い? でも皆政争じゃなくて戦争パート見たいやろ


俺の屍を超えてゆけ

 

「決まりだな」

 

「あぁ・・・・・・」

 

 皇帝弑逆から四半刻、大本営では一つの事柄が決定された。それはあまりにも残酷な事実であり、彼らにとっての最善、生き残る方法だった。

 李傕が提言したそれを董旻、賈詡ら、みな沈痛な面持ちで、それに同意する。同意せざるを得ない。

 

「劉弁派、並びに彼らに協力していた穏健派を、一斉に粛清する・・・・・・!」

 

 そしてそれは董卓軍による強権的な独裁の始りであった。

 

 

 

 

 

「陛下が、暗殺だと・・・・・・」

 

「はい、既に民衆の間でも話が・・・・・・」

 

「馬鹿な・・・・・・、そんな、ありえない・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 宮中執務室において金旋は絶望した。皇帝暗殺、考えるうち最悪の最悪だ。

 

「加え、劉備殿たちが都を落ち延びたようで」

 

「馬鹿な、諸葛孔明や簡憲和がまだ都にいる筈だろう。見捨てたということか・・・・・・?」

 

 金旋は声を震わせながら、何度も何度も問う。そしてその答えの度にどうしようもない現実が彼を覆い尽くす。

 

「・・・・・・駄目だ、詰んだ・・・・・・、我々は、もう長くない」

 

「・・・・・・議郎」

 

 髪を掻きながら、苦悶の表情を浮かべる金旋。まさかこのようなことになるなど想定もしてなかった、あの李儒が皇帝を殺す? そんなことはあり得ないと決めつけていた自分が恨めしかった。

 

「連中の、連中の目的は洛陽の政権を握ることだ、それも皇帝の暗殺を大義名分として自身らの意にそわない私たちを殺すつもりなのだろう、確かな基盤を構築するために」

 

 だからこその粛清。劉弁派、穏健派を陛下を殺した罪人として処断することで自らに都合のいいものだけを残し撫で切りにする。残酷ではあるがそれがこの時点でとれる最もスマートな方法だった。

 

「あぁそうだ。現に董卓軍にはそうできる力がある。連中にとってはそれが好都合なのさ、洛陽の門を全部閉じたことがその証拠だ、奴らは真実をもみ消すのだろう、我々を悪として」

 

「馬鹿な・・・・・・我々が皇帝を殺すなど」

 

「現に陛下の閥だったはずの李儒が陛下を暗殺している、民衆にもその名は轟いている! もうどうすることも出来ん! もうどうすることも出来んのだ!!」

 

 金旋は血走った眼で目の前の官吏の服を強く握りしめる。その眼には、うっすらと涙があった。

 

「そうだ、もうどうすることも出来んのだ・・・・・・。ここはもう網の中、どう足掻いても逃げることも出来ん」

 

「・・・・・・」

 

「すまんな、貧乏くじを引かせてしまった・・・・・・」

 

 力なく、金旋は椅子に座り込む。おそらく穏健派に逃げ場はない、肝心の盟主たる劉備が逃げ出しているのだ。彼女にも手痛い汚名を着せられることだろう。

 目を閉じれば様々な出来事が想起させられる。蹇碩との共闘、娘の誕生。そんな日々を思い出し、そして刻々と最期の時が訪れるだろう。

 

「・・・・・・なぁ、昴」

 

 それは金旋の真名、彼のことをそう呼ぶのは少なく片手で数えるほどしかいない。

 ふと、声に誘われ、横を見ると、昴と呼んだ男―――趙範は驚くべき程穏やかな表情をしていた。

 

「僕と君は、とても似てるとは思わないか?」

 

 口髭を生やし、双方とも痩せ型、趙範は金旋よりやや歳を取っているが、ごまかせないわけではない。

 趙範は懐から小瓶を取り出すと、それを頭にかけると見る見るうちに髪は金旋と同じ茶髪へと変わる。

 

「幸い、僕は君の私設秘書だ、当然連中の警戒も薄い。それにね、僕が君に拾われるまでどこにいたか忘れたのかい?」

 

「・・・・・・六徳、まさか」

 

「宮中から洛陽郊外の抜け道、しっかりと記憶しているよ。いつか何かあった時の為にね」

 

 趙範のいたのは資料整理の部署であり、官吏としては落ちこぼれで先のない役職だ。だからこそ金旋はそんなところにいた馴染みを引き上げたのだ。そしてその経験は巡り巡って彼を助けようとしていた。だが・・・・・・。

 

「・・・・・・私に、お前を置いて逃げよというのか・・・・・・」

 

「・・・・・・あぁ」

 

「馬鹿を言うな! 私は名門金家の男だぞ! 貴様らを置いて逃げるなど・・・・・・」

 

「違う!」

 

 それは強い怒気、温厚な趙範には珍しい事であり、金旋は度肝を抜かれた。

 

「名門だから? 代表だから逃げてほしいんじゃない。生きてほしいから、今は涙を飲んで落ち延びろと言ってるんだ!」

 

 それは自身の副官ではなく、友としての言葉であった。趙範は止めどなく金旋に言葉を浴びせ続ける。

 

「昴、僕は凡人だ。どうしようもない無能だ。この地位だって、君に引き上げられてここにいる

―――だが君は違うだろう、優秀で、努力も怠らず、自身より才能があろうかなかろうが懸命に自身の職務に励むことが出来る。優秀でされど優秀過ぎない、弱者の心が分かる人間だ」

 

 それは趙範の持たないもの、才能はなく、努力するにも限界がある無力な人間。この地位にいるのはひとえに前世の記憶という反則があったからだ。

 

 金旋より優秀な人間はいるだろう、金旋より努力している人間もまたしかり、それでも彼は金旋を選んだ。

 

「―――君は未来を創る人間だ!」

 

 そう、彼なら大陸の明日という未来を創れる人間と信じているからだ。だからこそ、趙範はその命をかけられる。

 

「・・・・・・無理だ、私にはそんな」

 

「例え無理でも構わない、僕は君に生きてほしい。君にはその価値がある、前を向くんだ金元機、こんなところで終わっていいのか・・・・・・! 陛下の死を、無駄にするのか? 大陸は混乱するだろう、それに対し手をこまねくのか、目を閉じて、耳を塞いで、それで君は満足できるのか!」

 

「・・・・・・」

 

 目が熱い、どうしようもなく苦しくて、どうしようもなく辛くて、彼は立ち上がった。

 

「・・・・・・そうだ、それでいい」

 

 よくねぇよ、よくねぇよ大馬鹿野郎。

 何処までも行けると思っていた。いつか歴史に名を残す様な人物になって、その隣にはお前がいて、何処までも戦っていけるって信じていた。

 胸に押し付けられるように見取り図を渡され、金旋は振り返ることなく進む。

 

「・・・・・・」

 

 そして、扉の前で立ち止まる。

 さあ、金旋。これが今生の別れだ、わかっているだろう。

 謝罪はしない、感謝もしない。お前が往くのは仲間を見捨てて掴む修羅道だ

 

「―――趙範」

 

 私はこの男の屍を踏み越え進んで行く、省みることなく、ただ真っ直ぐ突き進むことが私の使命、覚悟だ。

 

「行ってくる」

 

「あぁ、行ってらっしゃい。僕も先に逝くから」

 

 それが、彼らの最期の掛け合い。親友同士の永久の別れ。金旋は硬い地面を踏みしめ、駆けていく。

 

 趙範はそれを見つめると髪に塗料を馴染ませながら朗らかに笑う。

 

「済まない、裴巨光殿。一緒に死んでくれるかい」

 

「巨光で構いませんよ。勿論、お一人では寂しいでしょう。金旋殿のお帰りは遅くなりそうですしね、待ちながら一杯なんてのも面白そうです」

 

「ははっ、それはいい」

 

 衣服を脱ぎ捨て、すっかり金旋に成り代わった趙範は官吏―――裴茂と最期の時を過ごす。

 

「しかし、今回ばかりはよかった、妻や子はなんとか助かりそうだ。ただ、謝らねばならんだろうな」

 

「巨光殿には家族が?」

 

「私、これでも名門なんです。まだまだ伝えたいことや、教えたいこともあった、着けなければならないけじめも。・・・・・・ああ、くそ、死にたくねぇ」

 

 目をつぶり、恐怖を押さえ込む裴茂、その身体は少しだけ小刻みに震えていた。

 

「僕もです。死にたくない、死ぬのは怖い。でも、彼が死ぬのはもっと嫌だから、僕はここで死にます」

 

「ああ、そうだな、ここで生き延びて、家族に迷惑をかけるのはもっと嫌だ。だから私はここで死ぬ」

 

「ええ、そうです。金議郎が生きていれば、京兆にいる彼らが立ってくれる。意思は残る、国のために民衆の為にきっと平穏な世を築いてくれると信じているから・・・・・・」

 

 金旋の基盤である京兆には様々な人材を抱え込んでいる。いざとなれば彼らが金旋を支えてくれるだろう。趙範よりよっぽど優秀な連中だ。

 

「だから僕らは先に高みの見物といきましょう。最期に一仕事、頼みますからね」

 

「ああ、そうだな」

 

 つんざく悲鳴を合図に沸き上がる血の粛清。

 

 皇帝暗殺から一刻後、穏健派ナンバー2金旋は執務室で討ち取られたと報告された。

 




 この小説で史実以上に輝いているのは間違いなく金旋、しかも非転生者
 それと趙範はどう足掻いても天寿を全うできない、悲しかったら趙範転生モノの二次創作でも描け!
 あと趙範の死にざまモデルは斎藤実盛と松尾伝蔵です。分かる人は分かるかな?
 あと裴潜パパもなんか死にました、李儒が悪いよー李儒が
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