真・恋姫†無双 王匡伝 三国志ガチ勢の軌跡   作:ニーガタの英霊

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 元機は激怒した、必ずかの邪知暴虐の董卓を除かなければならぬと決意した。
 元機には政治がわかる。元機は京兆伊の名門である。書をしたため、組織間調整をしながら暮らしてきた。
 けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明元機は洛陽を出発し、野を超え山を越え、結構はなれた此の孟津砦にやって来た。



走れ元機!

「宮中の鎮圧完了いたしました」

 

 大本営にて報告を受ける李傕と、実際に宮中において劉弁派、穏健派の粛清の指揮をとった男、孟達は任務完了の報告を済ませていた。

 

「ご苦労、首魁の首は?」

 

「そのことでありますが、少々問題が」

 

「ほう・・・・・・」

 

 しんと、部屋の温度が急に下がったかのような重圧を受けながらも孟達は毅然とした態度を崩さずに言葉を述べた。

 

「劉弁派首魁、袁隗の首は取りました、しかし、金旋の首が見当たりません」

 

「・・・・・・どこぞで巻き込んだか、遺体の区別がつかんか?」

 

「いいえ、首をすり替えられました、どうやら影武者にやられたようですな」

 

 李傕は苦虫を噛んだかの表情を浮かべ、怒りに震える。孟達に落ち度はない、それどころかよくやってくれたとでも言うだろう。

 文字通り、宮中における官人やその他諸々を殺し、多くの家族遺族を捕らえている。逃げ場のないこの洛陽ではどうすることも出来まい。

 

「いやはや、塗料で髪の色を誤魔化されては末端の兵は気づきませなんだ。随分と狡い手を使われました」

 

 金旋と劉備以外は着実に捕らえているのだ、仕事としては完璧である。だからこそ、失態が目につく。

 

「まあ、いいだろう。李儒の取り調べもある。それから高官の粛清もな、今は何よりも速さが求められる」

 

「派閥内でも反対の声がありますが?」

 

「捨て置け、最早後戻りは出来ん」

 

「かしこまりました」

 

 燃える洛陽、李傕はその瞳に何を見るのか。

 

 

 

 

 

「杜県長、ご報告があります! 岸向かいに不穏な人影を発見し、捕らえました」

 

「・・・・・・ほう、してどうしたと」

 

 執務室で業務を取り仕切る一人の少女、河陽県長杜襲はおもむろに筆を置き、部下の声に耳を傾ける。

 彼女が河陽県を治めるにあたって拠点としたのは対洛陽に於ける前線基地となり得る孟津砦であった。故に彼女は部下に対し、何事であっても報告を密にするように厳命していたが、今回ばかりはこれが大陸を震撼させる出来事の第一歩になることを彼女はまだ知り得なかった。

 

「はっ、捕らえた人物が自身を京兆の金元機と申しており、県長との面会を望んでいると」

 

「京兆の金元機? まさかあの金旋か?」

 

 杜襲は首を傾げる。何せ金旋と言えば名門も名門である漢の名臣の一人、そんな人物がたった一人で孟津まで?

 背中に宿る悪寒ともつかない違和感を感じながら、杜襲は金旋に会うことを決めた。

 

 執務室を出て、直ぐ様金旋が待つという屯所まで足を運ぶと、そこには驚愕の光景が広がっていた。

 

 身は痩せこけ、衣服はぼろぼろに破け靴は摩りきれ目には隈とボサボサに乱れた髪で震えながら食事をとる男がいた。

 これがあの金旋? 確か金旋という男は異民族の血を引いており茶色の髪をしていると聞いたが、確かに男は茶髪だった。

 しかし、この男があの貴人金旋と言われると首を傾げたくなるのは杜襲にとって違和感はなかった。

 

 金旋は杜襲の視線に気づくや、拝礼を行い、跪く。

 

「私は、議郎金元機と申す。この砦の長にお願い致したい儀があって、此方にまかり越しました」

 

 やや掠れた声ながらも見事な口上を述べながら金旋は杜襲にそう言いはなった。

 

「金議郎、頭をお上げください。いったい何があったと言うのですか」

 

 表情のない、青白い顔のまま、金旋はゆっくりと俯くと、その問いに対する答えを口にした。

 

「・・・・・・陛下は、逆臣により弑逆された」

 

「!」

 

 皇帝暗殺、その一報が伝えられた瞬間であった。あまりのことに杜襲はなにも言えなかった。

 まさか、嘘ではないかと思ったが、この金旋の様子だ。ただ事ではないことは確かだ。

 

「・・・・・・まことでありますか」

 

「恐らくだ、部下からの又聞きだが、あの都の様子ではそう信じるしかあるまい。今頃、都では陛下暗殺の噂が広がっておろう」

 

 ひどく曖昧な言葉、されど何の確信もなくそんなことは言えないだろう。金旋の様子を見るにどうにも嘘を吐いているとは思えない、故に彼女の選択は一つだけだった。

 

「・・・・・・私一人では判断しかねます、このことは太守に報告致しましょう。議郎はここでゆっくりと休息を」

 

「いや、そんな暇はない。太守ならば趙太守であろう、であるならば私は王河南伊の下へ」

 

「いけません、御身を大事にしなければ!」

 

「そんな悠長なことはしてられない。水と馬をもらえばすぐにでも出発するつもりだ」

 

 一体何が彼を駆り立てるのか、杜襲にはいまいち理解が出来なかった。

 それもそのはずだ、金旋は文字通り地獄を超えてきた、様々なものを犠牲にして、大きな罪悪感と無念を抱えてここまでたどり着いた。だからこそ、立ち止まってはいられない。ここで立ち止まっては、死んだ者に示しがつかないという強迫観念を抱えてここにいる。

 まさしく死力を尽くしているのだ。安直に言えば死に急いでいると言えるだろう。

 

「知らせねば、なるまい。陛下がお亡くなりになられたことを、都ではどのようなことが起こったかを、私は伝えなばならないのだ、金旋元機としてッ・・・・・・!」

 

「・・・・・・金議郎」

 

 金旋は頭をこすりつけて懇願する。こんなところで立ち止まってはいけないと、あの名門金一族の直系たる男が、だ。

 

「・・・・・・頭をお上げください、議郎。一介の県長ごときには過分であります。分かりました、そこまで言うなら私は何も言いません」

 

 勢いよく頭をあげる金旋、神妙な面持ちで杜襲は見つめられ、少し複雑な気分ではあった。

 

「ここに至って弘農一帯は危険でしょう。それはここ孟津でも変わりません。おそらくこのままこの場に止まることも危険になると思われます。故にあなたには河南伊に赴き、それから東の方まで下ってもらいます」

 

 もはや孟津は戦線基地、まさしく王河南伊の懸念は的中したわけだ。匈奴との融和路線を選択したのも宮中での事変を警戒したものであったのだろう。そう思うとその慧眼に恐れ入る。

 

「あいわかった」

 

「それと護衛として配下をつけさせてもらいます。出来るならば今日は泊まってもらった方がよろしいでしょう」

 

「しかし・・・・・・」

 

 金旋は渋るが、杜襲は頷くことはなかった。

 

「議郎、ここに来るまで少しでもお休みになられましたか?」

 

「いや、一睡もしていないが」

 

「いけません、それはいけません」

 

 洛陽から孟津までの距離は決して短いものではない。馬を乗り捨てて最終的には走ってここまでたどり着いたのだ。普通ならば死んでいることだってあり得た。

 度重なる極限状態と興奮によって麻痺しているのだろう、ここは無理に言っても休ませるべきだ。

 

「薬湯を持ってきてくれ、それから議郎は出来るだけ気持ちを落ち着けて下さい。ここまでお疲れだったでしょう、すぐに客間の準備を致します」

 

「杜県長、私は・・・・・・」

 

「出立の際には出来るだけ便宜を図ります、故に私のお願いを聞いては貰えませんでしょうか」

 

「・・・・・・わかっ、た」

 

 やや、苦悶の表情を浮かべながら金旋は頷いた。やはり疲れているのだろう、ここが宮中であれば腹芸の一つや二つは見せるものだが、金旋にはそれをするだけの余裕はなかった。

 納得させるのは強引だったが、それでも何とか言質を取った。流石に金旋にも冷静な部分があったのだろう。

 

「斥候隊に連絡を、孟津周囲の斥候を呼び戻して再編成させてください。それから客間の清掃を、後は―――」

 

 慌ただしくなる孟津砦にて杜襲は戦乱の始まりを予測するのだった。




最近の恋姫二次は司馬懿転生モノ、司馬懿が活躍するものが多いな、此方は司馬芝のほうが活躍してるのでいまいち空気というソレ。
河内を治める関係上、名門司馬一族は無視できないから、本家司馬家当主の司馬朗も雇用したが、張範にお株をとられるというソレ。
王匡伝の司馬家は泣いてもいいと思う。
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