真・恋姫†無双 王匡伝 三国志ガチ勢の軌跡   作:ニーガタの英霊

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高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処する

「お初にお目にかかる、私は河東の裴文行と申します」

 

「此方こそ、私は王河南伊司馬兼警邏隊統監を勤めております韓元嗣と申します、遠いところからわざわざお疲れでしょう、暫しごゆるりとお待ちください」

 

 馬を引き、河南伊滎陽県に赴いた裴潜は王粲から譲られた書を手形に守衛に見せれば、あれよあれよと言う間に官庁の応接間へと通された。

 ここまで裴潜を通したのは、官庁や河南伊の要所の治安を守る立場にある目の前の韓浩という少女だ。

 

「王河南伊との面会はいつ叶うので?」

 

「申し訳ありませぬが、何分立て込んでいる状況で有りまして、暫し待たせて戴ければと・・・・・・」

 

「ふむ・・・・・・」

 

 裴潜は眼鏡をかけ直すと、目の前の少女に睨みを効かせる。しかし、目の前の少女は何のそのと一向に効く気配が無い。若いながら中々の胆力を持ち合わせていると一人ごちるのだ。

 しかし、そうこうしているとやや慌てるかのような足音を響かせ、応接間へと入ってくる男の姿があった。口髭を蓄えて、冠を被る堂々とした体躯の男。

 中でも目を惹くのはその白眼である。これぞ彼の蔡伯喈をして、類希なる奇眼と言われた王匡公節であった。

 

「暫し待たせてしまったことを詫びよう。私が河南伊王公節だ。先ずは書状を拝見させては貰えないだろうか」

 

 少しだけ息を荒くし、裴潜は一度韓浩に書状を渡し、韓浩から書状を改めて受け取った王匡は目を通し、裴潜に向かって一言告げた。

 

「ふむ、よくわかった。是非とも貴君を登用したい。私に力を貸しては貰えないだろうか」

 

「はっ、しかし宜しいので」

 

 あまりに即決の判断に裴潜は戸惑いを見せるも王匡は迷う素振りを見せずに淡々と言葉を続ける。

 これ迄の道程を思えば、王匡は荊州の劉表に勝るとも劣らない政治家であり、土地を治めるにあたって、農耕と経済を重点的に力をいれていることがわかる。

 厳しい治安維持や過酷な労働もあるが、それでも多大な税収を背景とした財力という力は軍事や補償といったものへと還元され、めきめきと力を付けてきている。

 乱世を予感している裴潜としては相応に仕えがいのある人物であるが、こうもあっさりと決められては拍子抜けと言うものだ。

 

「構わん、仲宣の紹介ならば信頼に値する。特に算術に優れているとなれば断る理由も在るまい。生まれも上等、教養も確かだ。・・・・・・一つだけ質問をするが軍を率いれるだろうか?」

 

「・・・・・・実戦はまだですが、父から叩き込まれました。孫子や呉子、六韜も少々」

 

「素晴らしい、ならば概略は理解していると判断しよう。取り敢えず会義を始めたい。元嗣、皆を例の場所へ呼んでくれ」

 

「はっ!」

 

 王匡の迅速な命により、韓浩は足早にその場を去る。残ったのは王匡と裴潜だけであったが、王匡が裴潜に着いてくるように言うが、王匡は足早に進む。

 裴潜も相応について行くが、妙に足早な王匡に対し、並々ならぬものがあろうと判断した。

 王匡はある部屋へとたどり着き、無造作に戸を開くと一人の男が床几の上で腰を卸していた。

 

「議郎、これから大切な話があるので是非にでも来てもらいたい。宜しいでしょうか」

 

「ああ、問題ない。直ぐにでも始めてくれ」

 

「では・・・・・・」

 

 王匡と話をしている人物、それは痩せこけ骨と皮になった茶髪の男だった。男は王匡に付き添われゆっくりと歩んでゆく。まるで老いた父を介護するかのように丁重に扱っていた。

 

 議場はひどく閑散としていて、王匡は上座へ上がるとすぐそばにその男を侍らせた。年かさは王匡より一世代ほど上だが、恐らく兄ではない。

 しかし、今回の議題についての中心人物であろうと裴潜はあたりをつけた。

 

「此度のこと、とてもお辛かったでしょう」

 

「いえ、気遣い痛み入ります・・・・・・」

 

 男と王匡は話をしているが、新参の裴潜は下座にて、座っているため詳しく話を聞くことは出来なかった。しかし、次々に人が集まると議場は中々に騒がしくなった。

 

「皆揃った様だな、では会義を始めたいと思う。哨戒しよう、彼の者は都にて議郎を勤めている金元機殿だ」

 

「金旋元機と申します。此度は節にお願いしたい儀があり、こうして参りました」

 

 金元機、その名を聞いて議場は少しだけ慌ただしくざわめく。黄門郎、漢陽太守を歴任し都の官吏として出世ルートを突き進む名門の貴人が何故このような姿でこの場所へと訪れたのか。

 議場の者は皆表情をかたくし王匡の説明を待つ。

 

「先程、金議郎と書状が来た。それによると都にて陛下が御隠れになられたとのことだ」

 

 まさに青天の霹靂。議場にて震撼が走る。流石の裴潜ですらそれを聞けば平静ではいられない。

 

「都では箝口令が敷かれ閉鎖状態であるそうだ、斥候も危険性を考慮し、中々に侵入も難しい。都の官吏も董卓らに協力、或いは軟禁されていると予想付けられるだろう」

 

 だとすれば、父は一体どうなったのか、弟妹たちの様子は? 不安は膨らみ、裴潜は気が気でなかった。

 

「下手人は李儒。党派としては陛下の閥の人間だ。彼女の動機は兎も角として、董卓らは陛下暗殺の責任は皇帝派、並びに皇女派であるが、穏健的党派である議郎らに責任があるとして武力鎮圧したそうだ」

 

「陛下が崩ずる前の都の情勢は如何に」

 

「董卓一強であった。無論、その事がわかった上で敢えて中立を守っていただろう。しかし、陛下の死でそれが変わった、皇女派だとしても私達を粛清したのは批判を抑えるとともに圧倒的な力を見せ付ける為であろう。予想以上に手が早かった故、私だけがこうしておめおめと逃げたのだ」

 

「・・・・・・」

 

 金旋は俯きながら最後には聞き取りにくい程の小さい声になってなんとか言い切った。

 

「王河南伊、如何にすべきかと」

 

「現状、洛陽が封鎖されてはどうしようもあるまい。本当に陛下が暗殺されたのか都の情勢があやふやな現状、動きたくとも動くことも出来んのだからな」

 

「河南伊、それは・・・・・・」

 

「落ち着いてくだされ金議郎。貴方を疑っているわけでは有りません。私はあくまて漢の臣下、陛下より河南伊を預かった者として漢に忠誠を尽くすのは当たり前のこと。故に私はこの地を優先させていただく。しかし、金議郎の言い分も最もだ。故に今より戦時厳戒態勢に移行する」

 

「「「!!?」」」

 

 顔色を変え、神妙になる幕僚たち。現状を理解できていないのは裴潜と金旋の二人だけ。

 

「加え、この事は周囲に噂として流す」

 

「噂でありますか」

 

 疑問に思った裴潜はふと声を漏らしたが、それをたしなめる者は居らず、王匡は更に発言を続ける。

 

「敢えて河州商人に噂を流し、それを拡散させる。河州商人から冀州、荊州等が望ましいな。だが、異民族には流すな。奴等の介入を許せば面倒なことになるのは自明の利だ」

 

 何時如何なる時であろうと最悪を想定し行動する。それこそが河内、河南伊を治める王匡という男だ。常に冷静に、打てる手を最善に打ち続ける。それこそが王匡公節の王道であり覇道であった。

 

「金議郎、申し訳ありませぬが貴方を拘束させていただきます」

 

「・・・・・・私を奴等の餌にすると?」

 

 金旋はこの場では毒にも薬にもなる男、王匡としても何かしらの言い訳が立つようにしなければならない。

 

「いえ、もし陛下がご無事なら、大陸を混乱させた罪を償ってもらう為です」

 

「・・・・・・致し方在るまい、ここが線引きか」

 

 噂自体は流れる、そうなれば確実に洛陽は何らかのアクションを起こす。その為の戦時厳戒態勢だ。

 連合を組んで戦うとしても何らかの大義名分は必要であり、董卓が皇帝を担ぎ上げている現状逆臣扱いは避けたい。

 

 しかし、その目論みも長くは続かなかった。金旋が投獄され、三日程の経った時、とある兵士が滎陽へと来た。

 

「御免!」

 

 息を切らし、知らされた言葉を必死で答える。

 

「洛陽より軍勢が出撃! その数、凡そ五万!」

 

 後に反董卓連合の前哨戦と呼ばれる戦い『旋門の戦い』の始まりであった。




 なんだかんだ思っても、奴婢出身の王匡や王象、平民から取り立てられた韓浩以外、皆寒門とか地主層の豪族とか士大夫とかいう令嬢とか御曹司なんだよな。飛ばしたけど王匡の太学時代とか、今でいう金持ち学園に平民が入ったみたいなもんだし学園ラブコメと言っても過言ではない。
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