真・恋姫†無双 王匡伝 三国志ガチ勢の軌跡 作:ニーガタの英霊
「恐れることはない、嘆くことはない、だが様々な思いも様々な感情もあるだろう。私は無力だ、こうして諸君らの為に命を張ることだけしかできない」
旋門関、その関の前で、王匡は一人声を張り上げる。
「諸君らが村を失ったこと、それは間違いなく私にも責がある。そのことに対し、深く謝罪しよう。済まなかったと」
王匡は目の前の聴衆に深く頭を下げた、頭を下げ、そしてゆっくりと上げると、王匡はさらに言葉を続ける。
「故に、私のすべきことをせねばならない。これから董卓らの軍勢がこの旋門へと襲い掛かるだろう。奴らの目的は私の首である。しかし、私の首を取った後も、この先の村々は蹂躙され、人々は嬲られ殺されるだろう。私は河南伊を任されている。ならばこそ、責任を取らねばならない、命を代えて、諸君らを守ると陛下に誓ったからだ」
聴衆はみな王匡の言葉に耳を傾ける。神妙に、或いは脅しともとれる言葉におびえながらも。
王匡は巧みであった。身振り手振り、或いは一部分を強調して声を張り上げるなど、演説によって確かに聴衆の心を引きつけていったのだから。
「恥を忍んで願う、諸君らの力を貸してくれ。勝利のあかつきには一年間の年貢の撤廃、そして村の再建を行うつもりだ」
高圧的、されど聴衆を対等に見るその視点は確かに聴衆の心をつかんでいた。
「頼む、どうか頼む。私に力を貸してくれ。いや、私でなくてもいい、隣人を、子を、愛する人を、守るために戦ってくれ、私は、この砦からは逃げない。だから、ともに戦ってほしい!」
一瞬の沈黙、しかしその聴衆の中から歓声が一つ二つと上がると、それは伝搬し、それは熱狂的な嵐となって集団へと変わった。
「見事です、河南伊」
「そうかな、元嗣。私としても冗談を交えながらの講談の方が得意なんだがね」
王匡は嘆息しつつ、肩を竦めた。前世では何かと周囲の前で話すことがあったから良かったため、それなりに得意分野ではあったが、本物の大衆扇動家からしたらまだまだだろう。
「戦意高揚の意味も込めていますから、戦略的にも重要なことでした。ともかく、戦闘に参加するものと非戦闘員と別に分けませぬと。問題もありましょうが、非戦闘員は周囲の村に厄介になることになります」
「ああ、ねぎらいの意味も込めて今夜は小さいながらも宴を催すつもりだ。私も出るつもりだが、精々酒の配分に関しては気を付けてくれよ」
「委細承知しています。関の中の備蓄については出来るだけ手をつけたくないので、手配などは」
「安心しろ、難民対策として多めに配備を行っている、任主簿と裴文行はそこまで無能ではないよ。特に裴文行は中々に尖ってる。直々に教育したいぐらいだ」
「うわぁ、御愁傷さまですね」
これまで王匡が教育したのはおよそ二人、最初は目の前の韓浩、そしてもう一人は他ならぬ司馬芝だった。韓浩は元々郡で自警団を成立していたところを拾い上げられ、指導力や事務処理などを無理やりスパルタで教えられた口だ。司馬芝に関しては重役を任せ、責任力と自負心をあげる等、その当人に対して適切な処置を荒くはあるが教育を行っている。
河南伊に連れて行かなかったとしても王匡は司馬芝のことが気に入っているためさらに強固な地盤を築けばおそらく中枢に引き上げられるであろうことは想像に難くない。
軍を任せるものとして呉壱、側近中の側近である趙儼、農務関係の功労者常林、河内主簿で経済感覚を身に着けた司馬芝、郡内の治安を守るものとして韓浩。その他にも様々な才覚を発揮する閣僚たち。これを備えればいずれ天下も・・・・・・。
そう思考して、やがて韓浩は首を振った。すべてはこれが終わった後、今考えても捕らぬ狸の皮算用といったところである。
王匡が旋門関に入りおよそ半月、開戦の準備は整い。王匡軍と董卓軍の戦は旋門関にて行われた。
「先だって準備はしてきた、後は耐え忍ぶのみだ。戦線は元嗣と張従事に任せよう。私はここで全軍を統括する」
「「はっ!」」
関に籠るのは総大将王匡に韓浩と張奮。将兵の数はおよそ一万人、通常攻城には三倍の兵がいるとされるため、五万の兵に対して不利であることは否めない。しかし河南伊における指揮官不足故にこの場に限っては少数精鋭で挑むのは無茶無謀ではない。逆に肥大化したせいで統率が取れなくなってはそれはそれで問題だからだ。
「時間は我々の味方だ、少なくともこの時はそうだろう。でなければ金議郎を解放した意味がないからな」
董卓軍の進軍を耳にした王匡はすぐさま金旋の抑留をなかったことにし、逆に諸侯に書状を送り、金旋には諸侯の説得を任せた。金旋はまさしく都での惨劇の生き証人、これを活用しないわけがなかった。そう、これは金旋を中心に反董卓連合を組ませるための外交政策であった。事実、これを黙認し関与している以上、王匡は連合側に立たざるを得なくなるだろうが、その場合連合の立役者という一種の特権を得ることは想像に難くなかった。
「なんにせよ、勝たねばならない。ここで確固とした地盤を創り上げる事こそ我々が生きる道である。我々は勝たねばならない。絶対に、絶対の、絶対にだ」
会戦の幕は上がる。後に反董卓連合の幕開けともその前哨戦と言われる旋門の戦いの始まりであった。
王匡、韓浩、張奮 兵一万
VS
樊稠、張遼、牛輔、胡軫 兵五万
強い(確信)