真・恋姫†無双 王匡伝 三国志ガチ勢の軌跡   作:ニーガタの英霊

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ここにいる人物を半分でも分かった奴はかなりの三国志オタだと思う。



ここは笑顔の絶えない職場です

 河内太守館の朝は早い。仕事は早いもので朝八時から取り掛かる者がいるほどであり、特に太守はまさしく勤勉の代名詞かというようによく働く。

 そんな上の様子を見れば自分等が働かない道理もなく、自然と社畜さながらの働きだった。

 

 しかし、今日ばかりはどうにも趣が違った一日となった。

 

「諸君、まずはこうして諸君らが一堂に会し、誰一人として欠けなかったことを嬉しく思う」

 

 太守館の中でも客人を招いたり、又は式典などで使われる議場に河内郡の軍人、官僚が一堂に会していた。

 

 司馬芝も王匡を筆頭に、知った顔を何人か見つけ出す。

 

「私がここ、河内に赴任しはや半月となるが、ここで大きく人事を告げたいと思う。趙伯然!」

 

「はっ! 河内太守王匡様に代わりまして、太守府掾であります私、趙儼が任命の儀を行います」

 

(なっ・・・・・・!)

 

 司馬芝はその存在に気づく。

 趙儼、誉れ高き潁川組の一人であり、名士の間でも杜襲、陳羣、辛毗と共に高い評価を受けた将来の有望株である。

 しかも、司馬芝より若い。

 

 よく見れば、髭を剃り、髪と服装を整えただけで昨日王匡の執務室にいた彼であることがわかる。鋭い目付きに彫りが深く、年齢以上の威厳を感じさせる面持ちであった。

 

「主簿、司馬芝子華ッ! 司馬、呉壱子遠!」

 

「はっ! 慎んで拝命つかまつります!」

 

「呉子遠、慎んで拝命つかまつりましょう!」

 

 視界の端にチラリと見えた大柄の男。整った顔立ちに、髪型を分け目に沿って七三に整えている。

 この男が司馬であると司馬芝はある意味納得した。

 

「従事、韓浩元嗣ッ! 温県県令、楊俊季才!」

 

 続き、楊俊の名が上がる。彼女もまた王匡に仕えていたのだ。薄々だが、そんな気はしていた。

 

(しかし、彼女を温県に向かわせるか・・・・・・、司馬本家を囲うのか・・・・・・)

 

「河陽県県長、杜襲子緒! 林慮県県長、王象羲伯! 朝歌県県長、常林伯槐!」

 

(そして杜子緒を河陽県に据えるか・・・・・・。確か、あの辺りは孟津港が有ったな、加え都に近い。林慮県は有数の鉱山地帯、朝歌県は兗州との境目だ。県でも要所要所に腹心を送り込むか。ひょっとすると悪くない人事かもしれん)

 

 そんな風に司馬芝は一人推察を重ねる。ちなみに如何に太守といえども県令、県長の指名は難しい。司馬芝を登用する以前にも中央に働きかけを募っていたのだろう。特に杜襲は評判、常林は寒門出の貧しい出身ながらあの太学を次席で卒業した実績がある。

 

(思えば、早くして官を辞した隠者、賢者の集まりではないか・・・・・・)

 

 それらを司馬芝と同じように口説き落としたとしたら大した腕・・・・・・もとい口である。

 

「さて、諸君。依然として河内に纏わる問題は多い・・・・・・!」

 

 そんな思考は兎も角、朝議は粛々と進んでいく。王匡は身振り手振りを交えながら、演説を始める。

 

「しかし、私は諸君とならばこの困難を乗り越えられると信じている! 諸君、諸君の中にはこの河内の出身者が多いであろう。私は泰山の出身ではあるが、当然、生まれた土地に少なからず愛着を持っているだろうと思う」

 

 不意に王匡は立ち上がる。六尺ほどの大柄な体躯ではあったが、今の彼はそれ以上に大きく司馬芝は感じた。

 

「―――悔しくは無いか」

 

 王匡の双眼は臣下を等しく視界に修める、同時に臣下たちは様々な表情を浮かべながらもその白眼を見つめる。

 あるものは笑みを浮かべ、あるものは当然のように受け止め、あるものは尊敬し恍惚とした表情を浮かべる。

 

 ただ一人、司馬芝だけは無表情に、しかし、視線を逸らすことなく毅然と見つめていた。

 

「北には異民族、更には黄巾の折りに残党と化した黒山の賊。東には中央の意を解さない諸侯、中央では涼州上がりの軍閥が専横を振るう。そして、そんな彼等は一体何を狙うか。聡明な諸君等はよく理解しているだろう・・・・・・」

 

 屈託した状況、それを粉砕するのは圧倒的成果である。王匡はそう思っているし、臣下の何人かもその危険性は重々承知の上であった。攻める位置として、河内ほど利益の出る場所はない。だからこそ司馬芝は逃げるという選択を取ったのだ。

 

「ふざけるなと、民草が蹂躙されるのを指を咥えて待ってるほど私はお人よしでも、自己中心的でもない」

 

 義憤、この想いは正当なものであると憚らない王匡。王匡は腕を前方に振り上げ声を荒げる。

 

「断言しよう。このままでは我々に訪れるのは破滅だ! それで良いのか、いや良いはずなど無いッ! この都市は未熟だ、成長の余地、効率の上昇、不正官吏の摘発! 仕事は多いぞ、楽しいぞ! 銭を回せ、農業を推進させよ、貧民を救え! ここを経済の中心と為すぞ!」

 

 経済の中心と王匡は言った。それどころではない。金を回す、それは漢では考えられないことだった。

 

「私には理想がある! 夢がある! 希望があるッ! 人が、人として生き、そして死ぬ世だ。飢えを知らず、貧困を知らず、無知を恥とする世だ! どうだ、素晴らしかろう!」

 

 意気揚々と王匡は高らかに告げる。

 これは毒だ、司馬芝はそう思うが、どうしても話に耳を傾けてしまう。

 

「私一人では無理だろう。だが、ここにいるのは諸君と我々だ! 『大一大万大吉』あぁ、きっと諸君等の力があれば、私の夢想は夢想では終わらないッ! きっと、いや、必ず完遂する。故にッ、私はここに宣言しよう!」

 

 王匡はそこで一拍おき、議場は静まりかえる。

 まただ、司馬芝の心臓が、奇妙な高揚感と共に高鳴りを訴える。馬鹿みたいな夢想論、もっと現実を直視しているものかと思いきやとんだ理想主義者だ。

 

「頼む―――」

 

(まったく・・・・・・)

 

 とんだ男に捕まった。ここに来てから驚きの連続ばかりだ。重く、ため息を吐き出す。

 

「―――私と一緒に、理想の世を創らないか」

 

(―――そういうのは、嫌いじゃないですね・・・・・・)

 

 ちらりと王匡と目線が合う。不安など無い、そこには純然たる自信があるのだから。




王匡 現実主義と思いきや悲観主義と理想主義の同時再発 まだまだ、私の理想はこの程度じゃない
司馬芝 なんだかんだ理想主義。
劉備(理想主義者)に王匡(理想主義者)をぶつける、恋姫二次創作において初の試みじゃないかと思うこの頃。
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