真・恋姫†無双 王匡伝 三国志ガチ勢の軌跡   作:ニーガタの英霊

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安心してください、(表面上は)ポンコツですよ!


愛が故に、愛の為に

「これは、まさしく由々しき事態なのであります!!」

 

 かすれた声を張り上げ、熱弁する壮年の男。

 眼光は鋭く血走り、されど理知的な言葉使いは気品を感じさせる。

 彼の名は金旋。今大陸にその名を轟かせる弁士であり、彼は今、青洲の袁紹の下で弁を奮っていた。

 

「都は董卓らによって鳥籠にされ、陛下の名跡が無かったことにされる。このようなことはあってはならんのです!!」

 

「金議郎、それはあまりに言葉が過ぎるのでは?」

 

「否! そのようなことはありません! 今も董卓らは軍を編成し、諸侯を討ち、自らの権力基盤を整えていることでしょう! 袁本初殿、貴方が立たなければ漢の命運は途絶えてしまうのです!」

 

「はあ、そうなのですの?」

 

 激しく言葉を紡ぐ金旋とは違い、いまいち理解が及ばない袁紹。そんな主君を片目に見つつ、袁家首席軍師である田豊は金旋に厳しく追及をしていた。

 

「そもそも陛下の死とは大きく出ましたね。そんなことが信じられるとでも?」

 

「陛下がご存命であれば先の董卓軍の先制攻撃など起こる術もありますまい。陛下は董卓を警戒しておりました。軍権を握っているのと実際に軍が動くかは別問題でありましょう。そも軍を起こすのであれば陛下の勅が必要であり、問題があればそれ以前に召喚するのが慣例。故に都では董卓の専横があると申したまでであります」

 

「ふむ・・・・・・」

 

 金旋は都で政務に携わり、それなりに高級役職についていた男、田豊のように若くして官吏を止め、袁紹の下で役人をしている者とではまずやっている仕事の量が違う。そして都の情勢や政治の党派等事細かに知っている。

 そして何よりもその言葉には説得力があった。

 

「袁本初殿、お願いいたします。此度の都の失策は、我ら中央官吏に責任があります。我らの失政が、このような事態を招き、陛下のお命を奪わせることになり申した。そして、私の同志たちはみな都の混乱の際に命を落としました、私に生き恥を晒してでも漢の為に陛下に報いるためにと・・・・・・。私は無力であります、私には力がありませぬだからこそ、

―――お願いいたします!」

 

 金旋は、四肢を地につけ、そして勢いよく地に頭をぶつけた。

 

「お願いいたします。私に力をお貸しください。お願いいたします。陛下の無念を晴らしていただきたい。お願いいたします。同志が命を懸けたものを無駄にしたくありません。お願いいたします、お願いいたします、お願いいたします―――」

 

 何度も何度も、金旋は頭を下げる。その度に鈍い音が響き、しまいには額から血が飛び散るほどであった。

 

「金議郎、おやめください!」

 

「いいえ止めませぬ、袁本初殿が頷かない限り、私は何度でも懇願致します。楚の申包胥が七日七晩泣き続けたように、何度でも頭を下げましょう、この命が尽きるまで・・・・・・」

 

 そう言って金旋はまた頭を下げた、満身創痍の肉体をさらに酷使し、命を削って何度も袁紹に頭を下げ続ける。

 

「分かりましたわ」

 

「麗羽様・・・・・・」

 

 そして順当に折れたのは袁紹であった。

 

「董卓さんは気に入りませんし、陛下のお命が奪われたのならなおさらですわ。安心しなさい金旋さん! この袁本初が華麗に倒して見せましょう!! おーっほっほっほっほ!!」

 

「・・・・・・ありがたきお言葉!」

 

 金旋はふらふらと袁紹に近づくと、懐から一枚の書面を取り出した。

 

「これはなにかしら?」

 

「今回、反董卓連合に参加を表明した諸侯の名であります。王河南伊を筆頭に韓冀州牧、曹兗州刺使、孔青州刺使殿も志を同じくしました」

 

「へぇ、華琳さんも参加するのね」

 

「これほどの面々が既に董卓に対し対抗しようというのですか」

 

 袁紹は曹操の名前を見つけて微笑み、田豊は反董卓を表明した面々に対し驚きの表情を見せた。

 

「麗羽様、こちらには私が書いておきましょう。それから金議郎は治療の手筈を、とりあえず私が案内しましょう」

 

 田豊は金旋を下がらせると袁紹に一度だけ振り返り、そして共に部屋から出ていった。

 袁紹は彼らが出ていくのを笑みを浮かべながら見送ると、その表情から一転し顔からは一切の感情を取り払ったように無表情となった。

 

「・・・・・・許しませんわ、董卓」

 

 その眼には怒りの焔が巻き上がり、手は爪が食い込み、血を流すほどであった。

 

「叔父上も、従姉上も、命はないでしょう。それはまだいいわ。でも・・・・・・」

 

 強く握った拳に雫が垂れる。誰もいない部屋の中、袁紹は我慢の限界だった。

 

「陛下を、あの人を殺したのを! その死を守れなかった奴も、利用した奴も許せない・・・・・・!」

 

 その表情はまさに修羅、般若と呼べるもの。怒りと哀しみが入り交じり、どうしようもなく辛く悲壮感に打ちひしがれる。

 もしも自分が都落ちしなければこの結果は回避できたのではないか、そうすれば陛下は死なずとも済んだのではないか。そう思えば思うほど、自分の無能さに腹が立つ。

 金旋という無能を殺すのを我慢できたのはひとえに自分の無能さを無力さを理解していたためだ。

 

「私は馬鹿な女ですわ。私に力があれば、こんなことにはならなかったのにと、そう、思わずにはおれません。嗚呼、なんて馬鹿な女」

 

 無能のふりをして怪物住み着く都を泳いでいた袁紹、何進の暗殺を知ったとき、まさしく転機だと思った、陛下の忠臣として、共に漢を導いていくという願いは董卓の漁夫の利によって見るも無残に破壊された。

 理想の日々が目の前にあった。夢が叶うと信じていた。しかし、それは目の前に無くなり、そして信じた陛下はどこぞの人間によって殺され、妹皇女へとその地位を譲られた。うがった見方をすればまさしく放伐と変わりないでないか。

 

 そして、感情の出はそれだけではなかった。初めて会った幼少の頃、弱弱しい陛下に会って最初に思ったのはこの人を支えたいと思った気持ちだ。病に侵されようと、その高潔な想いに、袁紹はひとえに揺さぶられ、そして誓ったのだ。この人と共に、漢を再興させたいと。

 そう、袁紹はただ。

 

「さようなら、私の初恋」

 

 劉弁を誰よりも愛していた。だからこそ、董卓を許せないのだった。

 

「もう、いらない。陛下のいない国はもういらないわ。私は・・・・・・」

 

 もう十分だ、こんな思いはもうたくさんだ。その時、袁紹本初は吹っ切れてしまった。

 

「貴方の為の、天河の為の国を創ろう」

 

 歪む視界の中、袁紹は己の野心のために、初めて立ち上がることになる。




劉弁、真名は天河
何処かの話で袁紹は反劉協と言う話を聞いたので、王匡伝では劉協絶対殺すウーマンと化した麗羽様。表面はうつけで裏ではいろいろと考えているのがこの人、少し病んでる。
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