真・恋姫†無双 王匡伝 三国志ガチ勢の軌跡   作:ニーガタの英霊

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 エタったと思ったか、残念。復活するんだこれが。


跛行の驍将

 彼が生まれたのは幽州玄菟郡であり、そこは漢における最果ての極東であり高句麗人や異民族などと協力、或いは互いに戦いながら生きていた。

 物心ついたときは父や母、家族に囲われ過ごしていた。しかし、十歳を超えたあくる日の昼。少年は家族と離れ離れになり、異民族に強制連行され、奴婢のような扱いを受けていた。

 烏丸などの異民族にこき使われ、再び漢に戻ることが出来た青年は、度重なる過酷な労働によってその足は二度と動くこともままならぬようになってしまった。

 

 それでも彼はここにいる。敗北者のままではいられない。どれ程の苦痛とて、どれ程の困難とて、高々半身不随程度で諦めきれるほど、行儀いいわけではない。

 

「さあ行こう! 我が精鋭たちよ! 漢の忠臣としての底力、袁紹、そして董卓に見せつけるのだ!!」

 

 輿に乗る一人の武人。鞘から剣を抜き、その切っ先は反董卓連合本隊へと向けていた。

 王允によって派遣された禁軍のその指揮官。かつては皇甫嵩の下で戦の指揮を執り、数々の戦功をあげた不屈の闘将。異民族が得意とする騎馬兵法とその対処法を考え、漢王朝を代表する騎馬兵団を統括するその男を徐栄と言った。

 

「我々は戦わねばならん! 諸君らにはワシがついている、高々足一本無くなった程度で死にかけた皇甫義真のようにワシは決して倒れはしないッ! 中郎将徐栄の、そして漢の忠臣たる我々のッ! その威信にかけて、奴らの咢を食いちぎれッ!!」

 

 その足故に騎馬に乗ったことは皆無なれど、その指揮において不敗。身体的弱点を乗り越え、数々の戦において不敗神話を築き上げた董卓軍に対するカウンターたる朝廷有数の近衛指揮官が汜水関へ向かう道すがらにおいて騎馬隊およそ二万を率いての出陣であった。

 

「敵の指揮官は徐栄。かつては皇甫嵩指揮下で戦功をあげた生粋の武闘派です。巧みな騎馬運用と恐れを知らず、粘り強いことから『驍将』と畏怖される男です」

 

「旗は徐栄ほか胡母班と楊定。総勢二万かと思われます」

 

 展開された騎馬軍。じりじりと間を詰め寄りながら禁軍は連合軍との距離を詰めていく。

 

「どうやら、こちらが本隊とわかって削りに来たようね」

 

「それが何というのですか! 私たちは華麗に前進するだけですわ! 華琳さん!」

 

 袁紹が一人で盛り上がる中、曹操は一人考えていた。

 連合は大多数の兵力を持っており、それは敵軍の六倍以上であり、ただ向かって来るなど正気の沙汰ではない。しかし、相手は連合に恐れることなく徐々に距離を詰めてくる。

 

「・・・・・・徐栄は馬鹿な男じゃない。何か策があるのかしら」

 

 そう思うも場所は開けた平野、伏兵を隠す余地はなく寡兵を以て大軍を打ち崩す余地など無い様に思える。

 諸将らは既に配置につき、各々戦の準備に取り掛かっており、呼び戻すことも出来ない。

 

「兎も角、陣形をこのまま維持するように。相手の前進に合わせてこちらも前進し、敵が突撃体制に入るまで勝手な行動を慎むようにしなさい」

 

「はっ! 伝令、この報をすぐさま前線の諸侯へ!」

 

 忙しなく動く戦況に合わせて天幕の中で次々と報を下す曹操と、どっしりとかまえ、戦況を見渡す袁紹。

 それは将兵にとっては安心できる総大将と参謀の在り方であり、この首脳部はこの戦においての最善の判断を行っていた。

 

「待って、あれは何?」

 

 曹操の目に見えたもの、それは陣形を無視しひとりでに敵に向かい進軍していく味方の兵であった。

 

「すぐに、あの兵たちを引き留めなさい!! 総大将である私の命令が聞けませんの!!」

 

 この状況に際し袁紹は素早く命令を下すが、先鋒の諸侯は一人、また一人と飴に群がる蟻のように禁軍へと攻勢をかけるために前進を開始する。

 

「功を焦ったのね。麗羽、こうなっては仕方ないわ。現状の将兵だけでも保全するように後退。私は決死隊を編成して彼らを助けるわ」

 

「分かりましたわ、華琳さんも無茶はしないようにしてください」

 

 足並みのそろわない諸侯による暴走。それも中小勢力といった力の弱い群雄だからこそ数で囲もうとしたのだろうが、相手は一級の軍。民兵をかき集めたようなものとは違い、軍人として育てられその練度はかなりのものである。

 

「連合の馬鹿どもが釣れたぞ! 突撃開始ッ!!」

 

 足並みの揃わない諸侯。だからこそ徐々にプレッシャーを与え、諸侯の暴発を誘った。

 徐栄が少数精鋭を以てこの野戦に挑んだのはそう言った考えと、諸侯らが一致団結する前を狙い、厭戦の空気を漂わせるためである。

 

 疾駆する騎馬の軍勢。その手には弓を構え、流動しながら騎射を放つ。機動力を以て撹乱し、その最中、騎射隊の中衛に位置する騎馬隊の総突撃を以て敵軍に穴をあける。

 

 諸侯らは必死に応戦するが、機動力の高い騎馬の軍勢は組織的行動を行い。反して練度の低い諸侯の軍はそれぞれが別々の行動を行い混乱状態に陥る。

 

「左翼に増援を送れ。敵を食い破り、一気に包囲し殲滅する!」

 

 これぞ驍将。勇猛果敢に敵を殲滅する猛き漢民族の名将の冴えである。

 熟れた果実が弾けるが如く、前に出過ぎた諸侯の軍は見るも無残に半壊する。

 

「太守様が死んだー!」

 

「もう駄目だ、逃げるぞー!」

 

 諸侯の間ではそのような言葉が飛び交い、誰ともわからぬ首が掲げられる。自分の親玉である諸侯の首。ただの民兵にはその顔は判断しかねるものであり、事実偽首であった。しかし、無理やり徴兵され、兵としての自覚のない兵たちはこの言葉を好機として蜘蛛の子を散らすように四方八方に逃げ去った。

 

「よし! 我々はこのまま右翼の胡母将軍と合流する!」

 

「隊長、太守の首は?」

 

「潁川太守李旻は既に捕らえた! ここに用はないッ! 行くぞぉ!!」

 

 時間との勝負、まさしく今は敵が決死隊を作ろうと部隊を再編制している筈。後顧の憂いがない以上、ここに留まっている理由はない。徐栄の軍の方針は如何に殺すかではなく、動けるかを競う。騎馬隊の機動力と作戦遂行能力だけならば朝廷の軍だけでなく董卓軍全体を通してでも随一であろう。

 

「本隊を前進、敵将を優先して始末しろ、兵には目をくれるな」

 

 縦横無尽に迫る騎馬隊。兵士の壁を突破し、軍勢は敵諸侯の首を狙って駆け抜ける。敵の奥深くへと進む騎馬隊、それを補佐し、支える騎射隊。圧倒的破壊力と機動力を兼ね備える徐栄の騎馬隊。古代において最強とまで言われる兵科、騎兵。その恐ろしさをまざまざと見せられた瞬間であった。

 

「早いな、敵の軍旗をよく見ておけ。我々最大の敵になるやもしれん」

 

 曹操、そして徐栄と同じく騎馬を指揮する公孫瓚を中心とした決死隊。機動力のある公孫瓚の軍勢が撹乱、曹操率いる兵が救出に向かうのだろう。

 

「決死隊との交戦に入る。ワシが指揮を執る故、目的を達成後撤退しろ。殿はワシが務める・・・・・・!」

 

 その瞳に映るは純然たる自信。ここまで来た、兵として戦えぬ立場にありながらも幾ばくかの努力の末、この地位へと上り詰めた。兵たちから送られる侮蔑な不信の目を圧倒的戦果と徹底的な指揮を以て変えてきた。

 

「征くぞ白馬長史、征くぞ公孫瓚」

 

 互いに射かけ合う騎射の応酬。敵も味方も射かけられ、傷を負い落馬していく戦友。それでも尚も拮抗した戦いが出来ることに徐栄は笑みを浮かべる。

 

「騎射隊は距離を開けるな! 射って射って、射かけ続けろ。先に根をあげた方が負けるぞッ!」

 

 その命令と同時に騎射隊は白馬の軍を追いかけ、距離を放さずつかず離れずの距離の中矢の応酬を続ける。矢が無くなれば自分の肉体や馬に刺さった矢を抜き、射かけ、それでも無くなれば剣を持って敵騎馬隊へと突っ込む。

 まさしく死すら恐れぬ皇帝の軍。その威容は恐ろしく、されど美しかった。

 

「決死隊歩兵は弩の準備だ! 姿勢を屈めろッ!」

 

 曹操隊から穿たれる矢の雨。しかし彼らは恐れない。如何な矢の雨とて、彼らを遮る要因にはならない。なぜなら彼らにはついている。必ずや勝利をもたらしてくれる我らが将軍がいるからだ。

 

「漢王朝万歳! 皇帝陛下万歳! 徐将軍万歳! 騎兵隊万歳!」

 

「驍将! 驍将! 驍将!」

 

「我らには将軍がついている! 味方の為に死んで来い! 勝利の為に命を捧げよ!!」

 

 死を恐れぬ軍。味方の勝利を信じて死ぬことを厭わない軍を、徐栄は創り上げた。戦うときは極力前衛へと行き、しかし後退するときはいつでも最後尾を引き受け続けたからこそ得ることが出来た信頼。その生き方が、その在り方が、彼らを不敗の軍勢へと引き上げた。

 

「ともに征こうぞ! ワシとお前らは何時だって一緒だ! 進めェッ!!」

 

 落馬しようと、半身のように付き添った馬が無くなっても、騎馬隊の誇りと意志は決して潰えない。

 馬が無ければ走ればいい。我々にはまだ、歩くための足があるのだから。

 

 それすらなくとも、前に進もうとする人がいるのだから。

 

「―――あっ」

 

 そして、騎馬の蹄が、弩兵の顔をゆっくりと捉えた。

 

「弩兵を潰せぇ! 乱戦へと持ち込むぞぉ!!」

 

「密集隊形を維持、騎馬の足を何としてでも止めなさい!!」

 

 両指揮官の怒号が響く戦場。状況は拮抗。連合が誇る名将と呼べる二人をしてなお、拮抗と言う状況にしか持ち込めない。

 一見して逃げることもままならない輿の上にいる徐栄。しかし、彼を殺す前に、その前にいる彼を守る兵が文字通り壁となって立ちはだかる。そうでなくとも手に持った剣を抜刀。矢は哀れにも真っ二つとなる。徐栄は一級の指揮官であるとともに、武人、座りながらもその武勇は流れ矢程度では死ぬことはない。

 

 そして彼ら、董卓軍が残した策はこれだけではない。

 

「で、伝令。我が軍、背後の張楊隊より攻撃を受けていますッ!!」

 

「なんですって・・・・・・!?」

 

 味方の裏切り、太原太守張楊は決死隊である曹操軍の背後をついて攻勢を強める。先の軍議において前線を志願してきたのはひとえにこのためであったのだろう。おそらく、諸侯の軍をそそのかしたのも彼の男の仕業。

 

「ッ桂花!」

 

「お任せ下さい、後方の指揮は私が執り行います」

 

 こちらの意をくみ取るかのように荀彧は馬を率いて後方へ向かう。

 両側から挟まれ、痛烈な一撃を食らわされ曹操そんな混乱の最中をつぶさに見ていた徐栄はここで新たな命令を下す。

 

「良し! 撤退開始!」

 

 その後は、鮮やかな撤退戦が繰り広げられた。混乱する合間をうっての逃亡。張楊隊もうまく回収し、彼らは再度汜水関へと歩みを進めた。

 

「華琳様! 追撃を」

 

「・・・・・・追撃は許可出来ないわ。敵軍がここで野戦をやる以上、汜水関が近いこと他ならない。そうすれば、敵の持つ火砲の餌食になることは避けられないわ」

 

 火砲の威力、その恐ろしさは蔡瑁から既に諸侯らに伝えられていた。厳密な射程がわからない以上、深追いは危険。

 

「私たちも戻るわ。公孫瓚もそのつもりだし、ただ、斥候は派遣してちょうだい」

 

「かしこまりました」

 

 汜水関以前の戦い。まさしく連合にとって苦い戦いであり、自軍の弱点が露呈することとなったのだった。




 恋姫二次創作では名将枠となる徐栄の登場です。
 何というか、うん。身体的障害を乗り越えて戦う将とか好きなんです。
 徐栄は騎馬に乗ったことのない騎馬兵指揮官という存在。一人称はワシですが、年齢は王匡と同じぐらいの年齢を意識しています。
 史実の上司は董卓でしたが、生まれが幽州であることから董卓が都で権勢を振るったときに仲間になったと思われるので、此方の世界線では董卓軍旗下に入らなかった場合と言えます。
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