真・恋姫†無双 王匡伝 三国志ガチ勢の軌跡   作:ニーガタの英霊

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中華製バトル坊主笮融

「中々に動きがいい。ばれていたか」

 

 虎牢関へ全軍を以って進軍する。今までの戦術と変わって一気に攻勢に転じた訳は主に二点の出来事が重なったからだ。

 一つ目はあらかじめ行っていた坑道戦術の完成。およそ半月という歳月をかけゆっくりとばれることの無いように掘り進めた難攻不落と呼ばれる城を落とすのにポピュラーな戦術であり。その為の隠蔽として夜襲と敵火砲を絶えず打たせ続け採掘音をごまかす為にあれやこれやと敵に疲労感を与え続けたのだった。

 

 そしてもう一つそれは半ば運を伴うものであった雨の到来であった。

 

 進軍を初めて一分もしないうちに小雨が降り、今では大ぶりの雨へと変化した。

 こうなれば火薬を使う火砲はしけってしまい使い物にならないことは王匡であってもわかる。呉壱もここに近づくまで火砲の使う様子もないこと、或いは火砲の撤去の様子を見てそれを確信した。

 

「しかし、よく雨が降ると分かったものだな」

 

「そりゃ、経験的観測って奴ですよ。朝目が覚めれば曇天で、気温は妙に生暖かい。そうでなくても前日にいろんな兆候もありましたから十中八九降るとは思いましたよ大将」

 

 そう気楽そうに言うのは河内に新しく召し抱えられた張範だった。

 この男は道家の教えに心酔しており、無為自然を重視することから植生や自然現象、或いはそれから身を護るための方法などを独学で学んだ変態であり、本人はいわゆる趣味の範囲とは言うがその範疇からは大きく逸脱しているほど科学や物理方面に詳しかった。

 坑道戦術に関しても歴戦の鉱夫に混じりあれやこれやと献策した結果これほど早く、しかも確実に戦術の成功に貢献した。

 

「まあ、これで俺のやるべきことはやったんで、後はそれこそ天命って奴ですね。最も、天はこちらに味方しているようですし、後は地の怒りを買わなきゃたぶん大丈夫でしょうや」

 

 以上が自分のアピールであると、張範はそう言った。新参の身に対して王匡の重臣に入り込むには何かしらの有能さを見せなければならない。そう言った考えのもと張範はそれをやっておいたのだ。

 

「・・・・・・そうか」

 

 その言葉に呉壱は静かに一言だけ告げると戦線の様子を垣間見る。

 火砲によって破壊された攻城兵器は半ばダミーや一度破壊されたモノを組み立てなおした粗悪品であり、基本的には即席の品であったが、それでも数多くの攻城兵器がアレにやられた。

 創り上げた攻城兵器が破壊されるのは筆舌に尽くし難いものがあったが人命には代えられない。

 

「なんにせよ、これで勝てればいいが・・・・・・」

 

 運命の二方面作戦の幕は切って落とされたのだった。

 

 

 

 

 

 

「ここが正念場だ。総員踏ん張りきれ・・・・・・!」

 

 泥にまみれ、なおも果敢に迫る王匡軍。関に侵入され、虎牢関の一階はまさに地獄のような戦いが繰り広げられていた。

 蟻のように穴から次々と出てくる兵士たち。加え双軍の死体によって一階は詰み上がる死体によってひどい様になっている。

 

「ずぇああああああ!!」

 

 握りしめた戦斧を振るい、迫り来る敵の歩兵を一掃する偉丈夫。返り血を浴びながら、周囲と協力し敵を確実に屠り、かつ自身の逃げ道を確保するその様は慎重とも臆病とも取れた。

 

「牛将軍、あまり先行するな! 兵数はこちらが上だ、囲んで叩こう!!」

 

 その偉丈夫に対し自重を迫るのは赤き鎧を身に纏った優男。腰に差した撃剣を振るい、舞うように迫る敵兵を刺し穿つ様は美しくそれでいて効率的な姿であった。

 

「ふざけるな赤備の子倅が!! まずは分断された味方との合流が先決だろう!!」

 

 しかし、肝心なことに指揮系統はその二人の将軍である牛輔と張繍の間で揺れ動いていた。

 赤備を統括する張繍には赤備の将兵が付き従い、牛輔にはそれ以外の右往左往する兵をその武勇と畏怖を以って押さえつけていた。

 かつ、二人の意見が同じであれば良かったが、その意見も分かれていた。牛輔は分断された味方部隊との合流を目的とし、逆に張繍は現存兵力を以って防衛戦を布き、これ以上の被害を抑えるように努めていた。

 なおかつ二人は優秀な騎馬兵団の指揮官ということであり、狭い虎牢関での戦いで苦戦を免れない様であった。

 

「敵は混乱している、一気呵成に押し込めッ!!」

 

 その隙を突き、虎牢関内部侵入の指揮官である裴潜は戦線にて指揮棒を携え、声を張り上げて戦いに注視する。父、裴茂の死。それが関係か無関係かは本人の心の内にしかわからないが、少なくとも彼のこの虎牢関攻めの意欲は非常に高く、自ら虎牢関へ侵入する指揮官の一人として名乗り挙げたほどであった。

 

「負傷兵を下げろ、陣はあと少しで完成する。もう暫しの辛抱だ!!」

 

 そしてその後方で忙しなく動くのは王匡の弟子と言われ、軍官僚としての実力を脈々と伸ばしている韓浩であった。彼女は陣地の形成と物資の運び込みなど、後方からの輸送や負傷兵の救助等忙しなく動いていた。

 

「戦線が膠着、恐らくここが限界点です。少なくともここからが敵との我慢勝負になるでしょう」

 

「戦線の将に伝達、それ以上攻め込まず、守りに転じさせろ!」

 

 そして本営に詰めるのは黒衣を身に纏った坊主と禿げあがった頭と口髭を蓄えた壮年の将軍である軍師笮融と劉繇軍でも有数の名将軍である張英であった。

 

「まずは一手、うまくいったな」

 

「ええ、張将軍。まずまずといったところでしょう。しかし、敵の指揮系統は回復しつつあります。攻勢から防御へ改めたのは英断でありましょう」

 

「フン・・・・・・貴様のような軟弱者に言われてもうれしゅうないわ」

 

 張英は渋い顔で笮融の言葉に反応し、盤上の駒に注視する。

 土竜計によって潜入した兵士はおよそ五百人ほど、これを多いか少ないかで考えればまず少ないだろう。いずれにせよ長期戦となれば敗北は避けられない。また、これ以上の軍を派遣するのも危険、撤退戦に移る場合坑道の中で圧死となれば目も当てられない。

 

「物資の輸送状況は?」

 

「おおよそ六割ほどかと」

 

「フン、最低限度は達成したか。これで落ちればいいが、最悪は分かっておろうな」

 

「委細承知です、最悪、砦の内部を焼き払って関と言う機能そのものを破壊します」

 

 其の為に発火性の油や煙で燻すための藁などの嫌がらせの道具を用意したのだ。用意周到と言えばいいのか、この作戦を考えた呉壱を筆頭とする連合軍の幕僚はひどく悪智慧が効くと張英は苦笑したものだ。

 

「まったく、儂は水軍の将軍なのだがな。こうも狭苦しいところで戦うなんぞ、やったことも無いぞ」

 

「しかし、張将軍以外に出来るものは居りません。呉壱殿は攻城戦であり、袁太守の配下は身分でいえば将軍の足元にも及びませぬ故」

 

「フン、ああいえばこういう。儂は貴様のそういうところが嫌いだ」

 

 嫌悪感を隠さず見せる張英に笮融は苦笑を浮かべる。この将はこういった剛毅な性格で感情の好悪を素直に見せる点は美点であり、陰口もせずに真正面からぶつかる質であるが、それは彼の戦術にも表れており、素直かつ正攻法であるが、悪く言えば単調ともとれる。的確な指揮能力と練度を以って今まで敗北らしい敗北もなく勝利を積み重ねてきたが、これからの状況を思えば思うほど笮融の悩みは尽きなかった。

 

 それでも状況判断は的確かつ素早く、余計な欲を出さずに仕事を完遂するという性質から総大将向きの人材であり、今出せる連合軍の札の中では最もこの作戦に適した人物と言えよう。

 

「なんだ坊主、儂に文句でもあるのか」

 

「いいえ、張将軍に不満などありませんよ」

 

 少なくとも笮融はこの張英という実直でどこまでも真面目な男が好きなのであった。

 三國志の知識は古典としてのそれしか彼には分らない。これから苦難の道が幕を明ける定めとして、それでも彼は多くの人々の心のよりどころとして人を救いたい。強欲かもしれないとしても目の前の友と思う男に対してもその想いはきっと変わらないだろうから。

 

「御仏よ、罪深き我が身をどうか許すこと無き事を祈ります・・・・・・」

 

 両手をすり合わせ、笮融は瞳を閉じてそう祈ったのだった。

 

 同刻、混乱の最中にあった虎牢関は孟達の指揮のもと、一応の平静を取り戻していた。

 

「敵軍の位置は?」

 

「兵糧庫前を陣取られました」

 

「よりによってそこを取るか・・・・・・」

 

 階下での戦いは一層の激しさを増していた。主将である孟達の到着により指揮系統を回復させ、次の手として部隊の再編を急がせている。

 

「分断した隊は見捨てる」

 

「将軍・・・・・・!!」

 

「総大将は俺だ、聞き分けろ」

 

 身を乗り出して詰め寄る牛輔を孟達たしなめる。その瞳は冷たく、思わず牛輔でさえ身震いするほどであった。

 

「時間がない、状況は刻一刻と迫っている。悪いが味方を助ける余裕はない」

 

「・・・・・・っ!」

 

 露骨に顔をしかめる牛輔を横目に孟達は張繍に目を向ける。

 

「張将軍、編成した騎馬隊の指揮を。牛将軍は俺と共に潜入部隊の対処だ。各々の成功を祈る」

 

「「はっ!」」

 

 粛々と変わりつつある状況。自らの勝利を願い、彼らは戦場を駆けるのだった。

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