兵藤一誠おっぱいを語る 作:空孫悟
パラレルの木場。イッセーとは恋仲
パラレル世界
イッセーギャスパー以外の人物たちが性転換されている。
おっぱい
輪廻転生。君たちはこの言葉を信じるか?
俺は信じる。というか信じるしかない。なぜなら輪廻転生してしまったからだ。
修学旅行で行った京都。そこで俺達は禍の団の英雄派に襲われた。一度目は退けたが二度目、二条城本丸御殿での戦い。その戦いの最中、俺は仲間をそして祐美を傷つけられた怒りに飲まれ
しかし、目を覚ますと俺はどこか面影のある女性に抱えられていた、赤ん坊の体で。隣には昔見た俺の写真そっくりの赤ん坊が抱えられている。
「あなたの名前は誠一、兵藤誠一よ」
理解、するのにしばらくかかった。だが納得することはできなかった。
「一誠お兄ちゃんと仲良くしてね」
その瞬間、俺は絶望した。
なんと俺は輪廻転生したのだ。自分の双子の弟として。
それから七年後、俺はまだ絶望の底から抜け出せなかった。
一誠は何度も俺を遊ぼうと誘ってくれる。だが俺は第二の衝撃より更なる絶望に落とされていた。
イリナが女だったのだ。確かにイリナは中性的な容姿をしていたが間違いなく男だった、一緒に風呂も入ったしモノも付いていた。……だがこの世界のイリナは女だったのだ、母さんにも確認したから確定だイリナは女だった。
そして絶望は続いた、前々からおかしいと思っていたのだ。父と母の雰囲気が逆だと。名前も違った、だが面影が残っていた、父は元母の、母は元父の面影を残していた。
まさかと思い調べてみた。有名芸能人、幼稚園時代の友人、親戚。――全員性別が逆だった。
つまり、俺の最愛の人は……祐美は……男なのだ、この世界では。
兵藤一誠ではない記憶にない別の『誰か』に生まれ変わったこと、自分以外の全員が性別が変わっていること、そして何より俺のことを誰も知らない事実。それからは目に見えることすべてが絶望だった。
父も母も俺によくしてくれる、人の和に溶け込まない俺のことを心配してくれる。俺、いやイッセーも心配しよく話しかけてくれる。
だがどうしろと言うんだ。両親に言う?俺はイッセーだったんだって?
それともイッセーに言うのか。俺はお前だったんだ、居場所を返せと。
言えるわけないだろう。
「こっちだよ来て!」
いつものように俺が公園のベンチで絶望していると聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「おっちゃん、こいつに聞かせてほしいんだおっぱい昔話を!」
その声は聞き覚えのある、とても懐かしい。そして絶対に忘れることのない声だった。
「そうか、坊や。教えてくれてありがとうな。それじゃあ今日は乳太郎の話だ――」
その日、俺は希望を見つけ、情熱を取り戻した。ほかならぬ前世からの恩師の手によって。
おっちゃんに出会ってから、俺はドンドン元気を取り戻した。正確には元気になっただが。
おっちゃんのおっぱい紙芝居は俺の生気を取り戻し、情熱を取り戻し、生きる意味を再確認させてくれた。
前世で俺はおっちゃんに託された通り、おっぱいをもんだ。吸うことはできなかったがあと一歩の所まで行くことができた。
そして最近、寝る前に前世の行いを振り返ることが多くなった。前世の俺はいわば飢えた獣だった。女性のおっぱいのために生き、そして愛した女のおっぱいが傷つけられることに激怒し、暴走して死んだ。
ならばどうすればいいか、簡単である。おっぱいは正義だ、愛だ、人生だ、象徴だ、そしてなにより平等だ。
前世の俺は大きければいいと思っていた、いやハリや艶なども注目していたが一番は大きさだった。
そうおっぱいは平等だったのだ、小さかろうが大きかろうがすべてのおっぱいには母性の象徴が愛がある。つまり平等に愛でるものなんだ、おっぱいとは。
「おっちゃん俺、悟ったよ」
「どうした坊や」
「おっぱいはみんな平等なんだね」
俺の言葉におっちゃんは歓喜のあまり大粒の涙を流していた。
「坊や、俺は嬉しいよ。まさかこんなにも早く真理にたどり着ける逸材を見つけられたなんて」
「おっちゃん、俺おっちゃんのおかげだよ!おっちゃんのおかげで絶望を乗り越えられたんだ!」
「いいや、それは俺の力じゃない君の力だ。俺はもうだめかもしれない。だがその時は君たちが思いを引き継いでくれ。君たちならできるさ、なにせ君たちは一人じゃない。二人じゃないか」
おっちゃんは紙芝居をたたみはじめる。そして紙芝居の後ろから箱を取り出した。
「小さいおっぱいを持つ子の恥じらいも。大きいおっぱいを持つ子の困った顔もすべて平等でそこには愛と母性の象徴がある。それを忘れないでくれ」
おっちゃんは涙がにじむ目を拭いながら俺達に箱を二つ手渡した。表紙には『おっぱいプリンA~Zまで』と書いてある。
言わなくても分かる、おっちゃんの気持ちは……おっぱいを通じて理解している。
次の日、おっちゃんは警察に連行された。おっちゃんを助けようとして警察に止められる俺達を見て、おっちゃんは何も言わなかった。ただ、託す目をしていた。
俺達は息を飲んだ。あれがおっちゃんの俺達の恩師の眼だというのか。
イッセーは嘆いた哀愁漂った諦めた目だと、俺は怒ったたとえおっぱいをもってしても超えられないものがあるのかと。
戦慄する俺達におっちゃんは一言投げかけてくれた。
『おっぱいの素晴らしさを広めるんだ』
おっちゃんは諦めているのではない、託しているのだ。後継者たるものである俺達に、おっぱいの素晴らしさを広めることを、たった七歳の俺達に託したのだ。俺達は叫んだ、おっちゃんが居なくては無理だと、おっちゃんの紙芝居ほど素晴らしいものはできないと。
しかし、おっちゃんはそのままパトカーで連れていかれてしまった、そして悲痛のまま俺達は家に帰った。たとえ二回目だとしても、知っていたとしても許容できるものではない。
おっちゃんを助け出したい、今すぐ無実だと訴えたい。だがしかしおっちゃんはまだ残していた、言葉を。
それに気づいたのはその日の夜だった。いつものようにおっぱいを吸う練習をするため昨日もらった箱を開いたときそこにあったのは一枚の手紙だった。
そこにはおっぱいへの愛と俺達への激励の言葉、そして紙芝居の隠し場所。最後には『諦めるな』の四文字が。
気が付いた時には号泣していた。二段ベッドの下でイッセーと一緒に大泣きをした、母にばれないようにと声を押し殺しながら泣いた。
おっちゃんは俺達のすべてだった。だが今、この瞬間に変わった羨望の心は目標への眼差しに変わり、いつの間にか涙も止まっていた。
日が変わらないうちに俺達は家を抜け出し、紙芝居を回収した。額縁に納めたい衝動を堪え、おっぱいプリンの箱とともに机の裏に隠した。
そして毎日おっちゃんのように読めるよう練習した。風邪を引いた日も旅行に出かけた日も練習した。二人とも弱音は吐かなかった。なぜなら諦めないことこそが俺達兄弟のおっちゃんへの恩返しなのだ。
――俺達兄弟には野望があるそれはおっぱいの素晴らしさを広めることだ。