渦中の人消滅す の巻
キン肉マンと運命の5王子とのキン肉星王位をかけたチーム対抗サバイバルマッチ。
その準決勝第2試合はキン肉マンの兄アタルことキン肉マンソルジャー率いる超人血盟軍と、キン肉マンスーパーフェニックス率いるフェニックスチームの激突。
その決着はそれぞれの大将を含めた3対3の6人タッグマッチで決められることとなったが、両チーム一歩も引かぬ激闘の末、ついにお互いの大将同士の一騎打ちとなった。
ここでアタルがフェニックスをあと一歩まで追い詰めるものの、超人預言書のページを燃やされたことで形勢が逆転。
己の肉体が消滅する中、アタルはとうとうフェニックスのマッスル・リベンジャーの餌食となる。
その際アタルは最後の力を振り絞り、弟であるキン肉マンにキン肉王家3つの心得を伝えたが、ついに鉄柱に頭部を打ち付けられる。
力尽きたアタルの耳に試合終了のゴングが空しく鳴り響く。
(すまん……ブロッケンJr、バッファローマン、ザ・ニンジャ。お前たちの犠牲を俺は無駄にしてしまった…)
「これで私の勝ちだ」
勝利したフェニックスはそのまま死に体のアタルを立方体リングの外に投げ飛ばす。
「アタル兄さん!」
地面に叩きつけられたアタルの下にキン肉マンが駆け寄り、その消えゆく体を抱きかかえた。
「スグル…王家3つの心得……忘れるな」
「は、はい!確かに…!」
自分を抱きかかえる弟の返事に安心したかのようにアタルは優しげな視線を返す。
「キン肉マン、これを」
弟のチームメイトであるロビンマスクがアタルが脱ぎ捨てた衣装をもって駆け寄り、アタルにそっと掛けてやる。
「ありがとうロビンマスク…」
「兄さん、どうしてもっと早く姿を現してくれなかったんです!」
ようやく生き別れの兄と巡り会えたというのに、こういう別れ方をしなければならないとは運命の皮肉を呪わずにはいられない。
キン肉マンの叫びはもっともだった。
「キン肉王家の長男としての重圧に耐えかね家出した卑怯者の私が出る幕などなかったのさ」
「それは違うぞ、アタル!」
「ち、父上……」
テレビモニター越しに映る父、キン肉真弓が息子の言葉を否定する。
「おまえがスグルの手助けをしなかったのはスグルと仲間たちの友情の絆を信じたからだ。そして、スグルたちがその友情をもってしてでも乗り切れない危機のときこそ自分の出番だと……そうだな?アタル」
「う、ウウ……」
父は全てを察してくれていた。そのことにアタルの心に何とも言えない熱いものが込み上げてくる。
「アタル、私たちは心の中でいつも信じていましたよ」
「母…上…」
家出した後もずっと後悔していた。今更どの面下げて家族に顔を見せられるのかと。
そんな親不孝者である自分を……この両親はずっと信じてくれていた。
「あ、ありがとう……」
自然と言葉が出てきた。本当に本当に自分は幸せ者だったと…。
だが、そんな彼らをよそに運命は着々とアタルの身を蝕んでいた。
「あああっ、兄さん!?」
「両足だけでなく、胴体まで消えている…!」
「…預言書だ!預言書の火を消さなければ!」
ついには上半身まで消滅し始めたアタルを目の当たりにして、キン肉マンが慌てて松明にかけられた預言書のページの元に行こうとするがそれをアタルが腕をつかんで引き止める。
「ダメだ…もう間に合わん」
「で、でも!」
「た、頼む…私の肉体がこの世から消え去るまでこの手を握っていてほしい。おまえのこの手で…」
「に、兄さん…!」
兄の気持ちを汲んで、両手でそっとその左手を握り締める弟。
その手は消えゆく肉体を表してるかのように冷たかった。
「スグルよ…今日からお前がキン肉王家の長男だ…いいな?」
「は、はい…!」
キン肉マンの目からも涙が零れ落ちる。
そしてテリーマンを始めとする仲間たちも続々と集まってきた。
「スグル…おまえは良い仲間たちを持ったな。これなら邪悪の神々たちの企みを退け、真の王子となることだろう」
弟の手を決して離さぬかのように握り返した左手にも力が籠る。
「友情を大切に……な……」
「兄さ―――んっ!!!」
最期の言葉を言い残し、アタルの肉体はキン肉マンの腕の中で眠るように消えていった。
今ここにキン肉アタルという超人の存在は―――この世から完全に消滅した。
次回からハイスクールD×Dの世界です。