業火のSoldier~兵藤一誠の兄~   作:半熟たまご

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今週のキン肉マンで牛さんと眼マンさんが激突。
個人的には牛さんに勝ってほしいですけど、どうなんすかね…。
……あと、アタル兄さんの登場、はよっ!


……あ、今回はどちらかというと一誠君が主役です。兄さんは出番少なめですがどうかご了承ください。

では、どうぞ!


イッセー、目醒めの時! の巻

 

一誠達がソルジャーと邂逅した、その翌朝―――

 

「…なあ、アタル兄の知り合いに覆面レスラーっていない?」

 

久しぶりに両親のいない二人だけの朝食の席で一誠が突然アタルに尋ねてきた。

 

「どうしたいきなり」

「ほら、アタル兄って昔から趣味でよくプロレスの試合見に行ってただろ。そんときに選手の誰かと仲良くしてるんじゃないかな~と」

「……確かに選手に知り合いがいないこともないが…何故そんなことを訊く?」

 

一誠は昨夜のことを言うべきか迷った。結局あの後、リアスにソルジャーについて話を聞いてみたが、彼女にも彼の正体はおそらく人間(?)であること以外、ほとんど分からないのだという。本当に謎の多い人物だ。

何故彼がアタルしか知らないはずのあの技を使っていたのか気になにならないわけがない。だが、果たしてこのことを目の前の兄に訊いたところでどうだというのだろう。

実はあまり知られていないだけで、あの『キン肉バスター』も列記としたプロレス技なのかもしれないし、ソルジャーもアタルとは何の関わりのない赤の他人かもしれないではないか。

 

(俺……何変なこと考えてるんだろ。つまんないことでアタル兄に面倒かけてどうすんだ)

 

ただでさえ、日頃からアタルには世話になっている。オカ研との付き合いにおいても陰でいろいろと骨を折ってくれた。その上これ以上自分のことでこの心優しい兄に心労をかけていいわけがない。

一誠は自分の内なる疑問を押し殺し、アタルには表面上笑顔を向けて答えた。

 

「ごめん。やっぱ今のなし。忘れてくれよ」

「……そうか」

 

アタルの方もそれ以上蒸し返すことはしなかった。もっとも、彼には弟が何を考えているかなど既にお見通しであったが。

 

(ここで余計なことを口にしては俺の正体を悟らせる可能性もある…今はまだそのときではない…)

 

つまりは、そういうことである。

 

「……『知り合い』と言うので思い出したが、イッセー。昨日おまえの知り合いだというシスターの子と会ったんだが」

「アーシアに!?一体どこで!?」

 

話題を変えるためにアタルが切り出した話に一誠は驚く。まさか兄の口からアーシアのことが出てくるとは思わなかった彼は、己でも気づかぬうちに立ち上がっていた。

一方のアタルは、それから小一時間ほどアーシアのことで弟から根掘り葉掘り聞かれることになった。どうやら、一誠も彼女のその後の様子が気がかりだったようだ。

 

「そっか…アーシア、俺のこと友達だと思ってくれてるのか。なんか嬉しいな」

「……そんなに気になるなら会いに行けばいい。場所はわかってるのだろう?」

「俺もできることならそうしたい。…けど、部長からは『教会は悪魔にとって敵地だから近づくな』って言われてるしなぁ。関係者との接触もだめだってさ」

 

悪魔がみだりに教会に踏み込めば、神側と衝突する問題になりかねない。だから、悪魔である一誠が教会の関係者であるアーシアとこれ以上関わるべきではない。―――なるほど、確かにその考えは一理あるだろう。この街を預かる悪魔の長としての判断なら尚更だ。

しかし、個人としてはこの意見に賛同しかねた。種族や派閥が違うという理由だけで、果たしてこの二人の仲を引き裂いていいものなのだろうか。

 

(……いや、この件に俺自身が口を挟むべきではない。互いの友情が(まこと)のものとなるかどうかは、結局は本人たち次第)

 

あえてアタル個人の考えを述べさせてもらうとするなら、「思想を異にする者同士でも友情を結ぶことは不可能ではない」―――そう思っている。

それは、前世の弟キン肉マンとその仲間たちの友情を間近で見てきたからであり、そしてアタル自身もブロッケンJrやバッファローマンらと正義・悪魔の垣根を越えた揺るぎない絆を結んだ経験があるからだ。

だからこそ、アタルは信じている―――例え立場が違う者同士でも分かり合うことはできるはずだと。

 

(とにかく今は信じて待つしかあるまい。イッセーたちの間に真の友情が生まれる日を……)

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

深夜、一誠は自転車を走らせとある一軒の家を訪れていた。

これまで、依頼で訪れた家はマンションやアパートが多かったが、意外にも一軒家は初めてだ。

 

(一人暮らしでもあるまいし、家族とかに見つからないもんなのかね?)

 

若干心配になりつつも、今日の依頼をこなすべくブザーを押そうする。

だが……

 

「玄関が開いてる…深夜なのに物騒だな」

 

何か言いようのない不安が一誠を襲う。この先には見てはならないものがあるのでは?―――そういった嫌な予感だ。

だが、本人の気持ちとは裏腹に足は前に一歩踏み出していた。

玄関から中を覗きこむ。不気味なくらい人気が感じられなかった。寝ている?馬鹿な。それでもここまで静まり返った空気は異常だ。

一誠は玄関で靴を脱ぎ、それを手に持ちながら忍び足で廊下を進んでいく。やがて奥の部屋に行き着くとそろりと顔だけ開いているドアから中を覗きこんだ。

部屋の中は蝋燭の灯りで淡く照らされており、

「……ちわース。グレモリー様の使いの悪魔ですけど……。依頼者の方、いらっしゃいます?」

と声をかけてみるがやはり返事はない。

仕方ないので意を決して、中へさらに踏み込んだ。

 

見渡せば、どこにでもあるリビングの風景――。だが、一誠はそこで息を詰まらせた。

 

「なんだ……これ……」

 

死体だ。リビングの壁に死体が貼り付けられている。

見たところ男性、……この家の主人だろうか。体中を切り刻まれ、上下逆さにされているためか傷口から臓物がこぼれ落ちている。

 

「ゴホッ」

 

見なければよかった……そう思ってももう遅い。その場で腹から込み上げてきたものを吐き出してしまう。

 

(見るに堪えないぜ…この遺体)

 

死体は太い大きな釘によって打ち付けられていた。両の手のひら、足、そして胴体の中心にだ。はっきり言って尋常ではない。普通の神経ではこんな殺し方はできない。そう思わせるほど凄惨な光景だった。

 

「な、なんだ…?」

 

男が打ち付けられた壁には血で文字が書かれている。一誠には何と書いてあるのか全く読めなかったが。

 

「そいつはねー『悪いことする人にはおしおきよー』って書いてあんのよ。聖なるお方の言葉を借りたもんさー」

 

一誠の後ろから突然若い男の声がした。振り向くと、一誠と同年代くらいの白髪の男がいた。恰好からしてどうやら神父のようだ。

 

「んーんー。これはこれは、悪魔くんではあーりませんかー」

 

実に嬉しそうに宣う男に、一誠は先日リアスから言われた言葉を思い出す。

神父―――つまりは教会関係者。一誠達悪魔にとっては天敵だ。

咄嗟に身構える一誠に、男は……

 

「悪魔狩り一筋300年~♪首切り~、串刺し~、楽しいの~ん♪」

 

突然歌いだした。訳が分からなかった。

 

「俺の名前はフリード・セルゼン。とある悪魔祓い組織に所属してる末端でおまーす。…あ、別におまえさんは名乗らんでいいですよぉ?どうせこの場で死ぬんだし、俺っちも悪魔の名前なんざ覚えたくないからさー。ま、最初は痛いかもしれないけど、すぐに気持ちよくなっから。新たな扉を開けようZE!」

 

言っていることが支離滅裂だ。だが、何となくヤバい人間だというのはわかる。

一誠はこれまでに出会ったことのないタイプの人間を前にして若干逃げ腰になりそうになるが、それをグッと堪え、生唾を飲み込むながらも物申した。

 

「お…おい、おまえか?この人を殺したのは?」

「イエスイエス。俺が殺っちゃいましたー。だってー、悪魔を呼び出す常習犯みたいだったしぃ、殺すっきゃないっしょ!」

「な、何だよそれ…」

 

一誠は開いた口が塞がらなかった。このフリードという男の言うことが何一つ理解できない。

 

「おまえらが殺すのは悪魔だけじゃないのかよ?どうして人間まで殺すんだ!?そんなのおかしいだろ!」

「はぁぁぁ?何それ?悪魔の分際で俺に説教?ハハハ、笑える笑える」

 

心底おかしそうに笑うフリードに、一誠の中で不気味な印象がさらに強くなった。

 

「…いいか、よく聞けクソ悪魔。悪魔だって人間の欲を糧に生きてるじゃねえか。悪魔に頼るっていうのは人間として終わった証拠なんですよ。だから俺が殺してあげたんですよー」

「悪魔だってここまでのことはしない!」

「はぁ~?マジで言ってんの?悪魔はクソですよクソ!常識ですよ?知らないんですか?マジ胎児からやり直した方がいいって。…あ、人間から転生したっぽいおまえさんに胎児もクソもないか。むしろ俺がおまえを退治!なーんてね!最高じゃね?これ最高じゃね?」

 

どうやらこの男とはどこまでも相容れないようだ。ようやくそれを悟った一誠だったが、それに気付いたときはすでに遅かった。

テンションの上がったフリードがいつの間にか刀身のない剣の柄と拳銃を取り出し、その柄からビームサーベルのごとき光の刀身を伸ばした途端、一誠目掛けて襲い掛かってきたのだ。

 

「なんか俺的にキミむかつくから斬っていいよね?撃っていいよね?殺しちゃっていいよねぇぇぇぇぇぇ!」

「うわっ!?」

 

横薙ぎに放たれた刀身を寸でのところで躱した一誠だったが、

 

「ぐうっ!?」

 

その直後に足に激痛が走る。見れば、フリードの持つ拳銃から煙が上がっている。

 

(撃たれた? そんな…銃声も何も聞こえなかったぞ!?)

 

驚く一誠に間髪入れず、今度は足の別の場所に激痛が走った。

 

「ぐあぁぁ!」

 

一誠は呻きながらその場で膝をつく。今度は左のふくらはぎを撃たれたようだ。

 

「どうよ?光の弾丸を放つエクソシスト特製の祓魔弾の味は!銃声音なんざ発しません。光の弾ですからねぃ。達してしまいそうな快感が俺と君を襲うだろう?」

(……なるほど、道理で身に覚えのある痛みだと思った)

 

一誠は心の中で舌打ちする。

以前レイナーレに光の槍を貫かれたと同じ、いや今はそれ以上の痛みが全身を駆け巡っている。悪魔にとって光は毒。以前と違い、悪魔になってしまった一誠にとってこの攻撃は相性が最悪だった。

 

「そらそらそらぁ!どれぐらい持つかなァ悪魔くゥゥゥゥゥん?」

「ぐわあああああああッ!!?」

 

始めは足。お次は腕。その次は脇腹。それが終われば今度太腿。…といった具合に一誠の身体に次々と弾丸が撃ち込まれていく。

足を殺されているため、逃げることもままならない一誠は成す術もないままその洗礼を受け続けるしかなく、その周りにどんどん血だまりができていく。

やがて大量の失血によりついには俯せに倒れてしまうのであった。

 

「おいおい、もうお寝んねですかい?そんなんじゃちっとも面白くねーぞ!もっと俺っちを楽しませてくれよぉぉぉぉぉ!」

 

フリードもあえてすぐには殺さずに、じわじわと一誠を嬲り殺しにしていくつもりのようだ。

 

(ぐうう…クソッ!こいつの方がよっぽど思考が悪魔じゃねえか!)

 

同時にこんな神父(ゲス)相手に手も足も出ない自分に怒りが湧き上がってくる。だが、身体は痛みでいうことを聞いてくれない。このまま殺されるのを待つしかないというのか。

 

「…あ~あ、つまんないの。もうさっさと止め刺しちゃいましょうかねぃ」

 

身動きできない一誠に飽きたのか、フリードは持っていた剣を一誠の脳天に突き立てんと振り上げた。……そのときだった。

 

「やめてください!」

 

そこに一誠にも聞き覚えのある女性の声が。

 

「アーシア…」

 

ついこの間知り合った金髪のシスターがそこにいた。なぜ彼女がここに…?

 

「おんやぁ?助手のアーシアちゃんじゃあーりませんか。どうしたの?結界は張り終わったのかな?」

「ひっ!?こ、これは一体…」

「あ、もしかしてこの手の死体見るの初めて?ならならよーくご覧なさい。悪魔に魅入られたダメ人間さんにはそうやって死んでもらうんですよぉ」

「そ、そんな…」

 

壁に打ち付けられた遺体と、それを平気な顔で説明するフリードを見てアーシアは顔を青褪めさせる。

不意に彼女の視線が倒れ伏す一誠の方に向いた。すると目を見開いて驚く。

 

「……フリード神父……その人は……」

 

アーシアの視線が一誠に釘付けになっているところで、フリードが笑いながら宣った。

 

「人?違う違う。こいつはクソ悪魔くんだよ。ハハハ、何を勘違いしてんのかなかな?」

「―――っ!?イッセーさんが……悪魔……?」

 

その事実にショックを受けたのか、アーシアが言葉を詰まらせる。

 

「なになにキミら知り合い?わーお、これは驚き大革命。もしかして悪魔と聖職者の許されざる恋とかそういうのだったり?アハハ!こいつは傑作だナァ!!」

 

面白おかしそうに一誠とアーシアを交互に見るフリード。

一方、一誠は自分の正体をアーシアに知られたことに表情を暗くさせていた。

 

(……知られたくなかった。あのままで良かったんだ。ただの気のいい、町の高校生で…)

 

アーシアの視線が突き刺さる。一誠にとってさっきまでの光の弾丸よりこっちの方が余程堪えた。

 

(ごめんな……悪魔でごめんよ)

 

正体を隠して彼女に近づいた自分に天が与えた罰なのだろうか。そう思わずにはいられない。

 

「まーどっちにしても、悪魔と人間は相容れませんしぃ?さっさとコロコロしちゃいましょーかねぃ」

 

フリードが改めて光の剣を一誠に突き付ける。これで一突きでも刺されれば悪魔である一誠は確実に死ぬだろう…。

 

(だけど…これも運命なのかな)

 

―――確かに死ぬのは怖い。だがそれ以上にアーシアを騙してしまったことに対する罪の意識が強い。これが自分に与えられた罰ならば甘んじて受けよう。

いつしか、一誠の心は死を目前にしているというのに落ち着き払っていた。

 

「あんれまぁ、妙に殊勝な悪魔くんだねぇ?俺ッち的にポイント高いよ~。…じゃ、とりあえず死んでくれや」

 

剣を振りかぶるフリード。一誠は静かに目を閉じてすぐに下されるであろう神判を待った。

だが、そこに一人の少女が割って入る。

 

「……おいおい。何の真似だいアーシアたん。キミ自分が何をしてるかわかってるんですかぁ?」

 

一誠を庇うように両手を広げてフリードの前に立つアーシア。たちまちフリードの表情が険しいものに変わる。

 

「……お願いです、フリード神父。この方を許してください。見逃してください」

 

その一言に今度は一誠が声を失った。

 

(アーシア…どうして……俺は、君を騙して……)

 

なぜ自分を庇ってくれるのか。理由がわからない一誠は呆然とアーシアを見上げている。

 

「もう嫌です……。悪魔に魅入られたといって、人間を裁いたり、悪魔を殺したりなんて……そんなの間違ってます!」

「はぁぁぁぁぁあああああああああああああっ!?バカこいてんじゃねぇよ、クソアマが!悪魔はクソだって教会で習っただろうがぁ!おまえ、マジで頭にウジでも湧いてんじゃねぇのか!?」

 

フリードの表情が憤怒に包まれる。しかし、アーシアはそれに臆せず言い放った。

 

「悪魔にだっていい人はいます!」

「いねぇよ、バァァァァァァカ!」

「わ、私もこの前まではそう思ってました……。でも、イッセーさんは初めて会った私にも親切にしてくれる思いやり持った優しい人です。悪魔だって分かってもそれは変わりません!」

 

死体を見かけ、さらに一誠が悪魔だと知りショックも大きいだろうに、アーシアは健気にも後ろにいる一誠を守ろうと必死にフリードに立ち向かっていた。

 

「あぁぁぁぁぁもう!ムカつくぜぇ…。なんでそんなクソ悪魔くんの肩をもつかねぇ?」

「そ、それは……友達だから。一誠さんは、私の大事な“友達”だからです!」

「トモダチぃ?……ハッ!もしかしてキミ、こんな悪魔くんに友情でも感じちゃったわけぇ?……くっだらな。とんだ弱っちぃ“おトモダチ”もいたもんですねぇ」

「私の友達を、馬鹿にしないで!」

 

アーシアが果敢にもフリードに言い返す。何と精神の強い子だろうか。そして……なんと心優しい子だろうか。

一誠の頬にいつしか暖かい液体が流れていた。―――これは……涙?

 

(……そうか。俺は嬉しかったんだ。敵対する立場にあるはずのアーシアが、俺みたいな下っ端悪魔を“友達”だって言ってくれたことが)

 

昔、兄であるアタルにも言われた。『友は大切にせよ』と。一誠はその意味が今ようやくわかった気がした。

 

(ありがとう…ありがとうアーシア……)

 

全身を襲っていたはずの痛みが不思議と退いていく。代わりに、身体がだんだん熱くなっていくような気がした。

 

「私の…私の目の前で友達を死なせるなんて、そんなこと絶対させません!主だってこんなことはお許しにならないはずです!」

「……言わせておけば好き放題言いやがって。このクソアマがッ!」

 

<バキッ!>

 

「キャッ!」

「アーシア!?」

 

鬱憤が頂点に達したのか、フリードが拳銃を持った手でアーシアを横薙ぎにぶっ叩いた。転んだ彼女の綺麗な顔にはくっきりと痣が浮かんでいる。

 

(野郎…本気でアーシアを…!)

 

一誠はフリードを睨み上げる。

 

「……堕天使の姉さんからはキミを殺さないように念は押されてるけどねぇ。ちょっとオイタがすぎるんじゃねぇですかい?フリードさんムカつきマックスですよぉ…こいつは。殺さなきゃいいみたいだし、ちょっとくらい乱暴にしても文句はないよなぁ!」

「い、いやあっ!」

 

倒れたアーシアの前髪を乱暴に掴み、顔を上げさせるフリード。苦痛に呻くアーシアの顔を、舌なめずりしながら下卑た表情で眺める。

 

「やめろ……」

「あ?」

 

アーシアを凌辱せんとするフリードに、倒れていた一誠が声を上げる。

 

「何?何か言いましたか~クソ悪魔くんよぉ」

「……アーシアを離せ」

 

一誠は倒れ伏した上体を無理やり起こそうとしながらそう言った。

 

「アハハハ!そんな体で何ができるんですかぁ?そんなにたくさん俺っちの弾を喰らったら立ち上がるなんて不可能だよぉ~ん」

 

嘲笑うフリード。だが、一誠の身体はそんなことはお構いなしに立ち上がろうと蠢く。

 

(不思議だ……もう立ち上がる力なんて残ってないはずなのに、どうしてか身体の奥から力が湧いてくる)

 

アーシアの言葉を聞いてから一誠は自分自身の身体がおかしいと感じ始めていた。身体の芯がジンと熱くなり、それが地を流れるマグマのように全身に行きわたっていく。

全身の筋肉もまるで独自の意思を持っているかのように鼓動している。

 

(熱い……熱い……なんだこの全身に漲るエネルギーは……)

 

一誠の全身が熱を持ったかのように熱くなり、それが仄かにオーラとなって立ち込める。

やがて、彼の額と左腕が光を放ち始めた。

 

「こ、これは…同じだ!あのときの光と!」

 

―――まさか発動するというのか。俺の神器が!

自分の意志が働いたわけでもないのに、どうして発動するのか。一誠は一瞬驚きに目を見開くが…

 

「……そんなこと、今はどうだっていい!」

 

今はただ、自分を友達だと言ってくれたこの少女を助ける。それだけのために、一誠は大声で叫んだ。

 

「頼む…力を貸してくれ。俺のセイクリッド・ギアァッ!」

 

一誠の叫びとともに、左腕に赤い籠手が装着される。

 

「ああん?なんだぁ…キミ神器使いなの?」

 

フリードの表情が驚きに染まる。だが、それもすぐに元の軽薄な笑みに変わり、

 

「でも見た感じその左腕以外何も変ってないよねぇ。魔力もほとんど感じないし。それに、その状態でどうやって俺と戦うわけぇ?」

 

フリードの言う通り、まだ一誠は俯せに倒れた状態のままだ。少なくともここから立ち上がらなければ戦いにすらならない。

 

(まだだ……まだ終わっちゃいない!)

 

神器を発動した後も尚、全身を包むこの熱気は冷めやらず、一誠は徐に己の籠手を見つめた。

 

(アタル兄も言っていた。“不撓不屈(ネバー・ギブアップ)”!―――諦めなければ本当の意味で負けはない!)

 

一誠は傷ついた体を起こすべく全身に力を込めた。

 

「動け…動きやがれ俺の身体ぁぁぁぁぁっ!!!」

「アハハ!何叫んじゃってんのー?ついに(ここ)もおかしくなっちゃいましたかー?」

 

腹を抱えて笑いそうになるフリード。

だが、

 

 

『Explosion !! K・K・D(火事場のクソ力) !!』

 

 

「……は?」

 

籠手から流れた音声に一瞬その笑いを止めた。

そして、次の瞬間驚くべき光景を目にする。

 

<ベキッ……ベキキッ>

 

倒れていた一誠の全身の筋肉が活発に躍動を始め、徐々に膨らんでいく。

両腕、両足ともに一回りは太くなり、全身に漂うオーラもどんどん輝きを増していった。

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!?何、何なんでぇすかぁぁぁぁぁぁこいつはぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

目の前の不可思議な現象に目を丸くせざるを得ないフリード。

そして、さらに驚くべきことには、あれほどの重傷を負っていたイッセーが、立ち上がろうと体を起こし始めたのだ。

 

「うおおおおおおおおおおッ!!!」

 

まずは両手を地に着き上体を起こす。そして、躊躇いもなく撃たれた足で踏ん張るとまるでさっきまでの怪我など物ともしない力強さで立ち上がった。

 

「おいおいおいおい。何で立ち上がっちゃってんのキミぃぃぃぃぃぃ!?あんだけ祓魔弾喰らったのに平気なんですかぁぁぁぁぁあっ!?」

 

さっきと打って変わり、全身はちきれんばかりの筋肉に包まれた一誠に驚愕するフリード。

 

「俺にもわかんねえよ。ただ、これだけは言える……」

 

そう呟きながらフリードに向かって顔を上げた一誠の額には、赤く「肉」の文字が光っていた。

 

「庇ってくれた女の子前にして、逃げらんねえだろ。男だったらなぁ!!」

「チイッ」

 

フリードが乱暴にアーシアから手を放すと、一誠に銃口を向ける。

 

「もうその手は食わねえよ!」

 

しかし、トリガーが引かれるより前に一誠は脅威的な瞬発力でフリードとの間合いを一気に詰め、その手に強烈なハイキックを見舞った。

 

<ガッ!!>

 

「ぐぎいっ!!?」

 

一誠の蹴りでフリードの手から銃が吹き飛ばされ宙に舞う。

 

「クッ…でもでもぉ、俺っちの武器はまだあるぜぃ!」

 

今度は光の剣で横薙ぎに斬り付けるが、

 

「おりゃああああっ!」

「ぐうっ!?」

 

一誠は落ち着いて腰を落とし体を屈めながらこれを回避。そして低い体勢のままフリードの足にローキックを放った。

たった一撃でありながらその威力は絶大で、フリードは一瞬ではありながら体のバランスを崩し倒れ掛かる。

 

「今だ!」

 

一誠はその隙を逃さず、フリードの両足にタックルする形で飛びかかり、その両足を持ち上げて一気に引き倒した。

 

「ぐへぇッ!!」

「今までやられた分…ここできっちり返してやるぜ!」

 

一誠はそのままフリードの両足を抱えた状態でジャイアントスイングを敢行。

その豪快な回転によって、フリードの身体が徐々に上へ上へと持ち上がっていく。

 

「うおおおおおおおおいっ!?目が…目がまわるぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!!」

 

フリードにもこの攻撃はかなり効いているようだ。

 

(自分でも信じられないが、凄いパワーだ。今の俺にどうしてこんな力があるのかわからないけど……これなら、いけるかもしれない)

 

一誠の脳裏に昨晩のソルジャーの放ったあの技のモーションが過る。

 

「やってやるぜ……俺の必殺技!」

 

一誠は振り回していたフリードを天井に投げ飛ばす。

 

「ぐほォォォッ!?」

 

そのパワーは凄まじくフリードの体はたちまち天井を突き破って夜空へと。

 

「とりゃあっ!!」

 

続いて一誠も跳び上がり、天井にできた穴を貫けて外へと飛び出す。

刹那空中で交わる二つの影―――。

一誠は逆さに落下するフリードの下から首を差し入れ、相手の両足を抑えて動きを封じようとする。

 

(よし、技の入りは完璧……!?)

 

しかし、ここまで来てどうしたことか一誠の額にあった「肉」の文字の輝きが消え、体から急速に力が失われていく。

 

「し、しまった!」

 

一気にパワー不足に陥ったために、抱えていたフリードの体がすっぽ抜けてしまう。同時に脱力した一誠も一緒になって落下を始めた。

 

「クソッ!ここまで来て……諦めきれるかあぁぁぁぁぁッ!!!」

 

だが、一誠は尚も食らいつく。最後の力を振り絞って落ちていくフリードの腰に背後から両腕を回し、『タイガードライバー』のような体勢に捉え、そのまま落下。

 

「喰らえっ!名付けて……『ISSEI・BOM』ッ!!」

 

天井の穴から再び家の中へと舞い戻り、その床にフリードの脳天を叩きつける。

 

 

<ガガアッ!!!>

 

 

「グハァッ!!?」

 

苦し紛れに放った技であってもフリードの意識を刈り取るには十分すぎる一撃だった。

だが、それだけに一誠自身にもかなりの負荷がかかっていた。

 

「へ…へへへ…見たかよクソ神父。悪魔にだって、“友情”はあるんだ……ぜ……」

 

笑いながら仰向けに倒れていく一誠。

 

いつの間にか、左腕の籠手と額の文字は消え失せており、これまでの流血と戦いでの疲れがここに来て一気に体に襲ってきた。

 

「イッセーさん……!」

 

急速に暗くなっていく意識の中、泣きながら自分の元に駆け寄ってくる金髪の少女の顔がぼんやりと視界に映る。

 

(アーシア……よかった……俺、守れたんだな……)

 

そのまま一誠は深い眠りへと落ち込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 




本日の対戦成績
○兵藤一誠 VS フリード・セルゼン●(決まり手:ISSEI・BOM) 


イッセー君ここでまさかのシングル戦デビュー。
内容が相変わらずご都合主義の塊ですが、そこはまあ「『キン肉マン』だからしょうがない」と思って諦めてください(汗

では、次回もお楽しみに。


…ちなみに、フリード君は死んでないですよ!?ほ、ホントダヨー


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