この連休中に少しでも執筆を進められたら、と思います。
SIDE リアス
まさか、依頼人のところに【はぐれ
今依頼に向かってるイッセーがもし鉢合わせでもしたら大変なことになる。
あの子はまだ悪魔に成り立ての雛も同然……今の状態でエクソシストと戦ったら万に一つも勝目はない。
―――お願い……私たちが来るまで無事でいてちょうだい!
私は、残りの部員全員を集め、逸る気持ちを抑えつつ急ぎ現場へと転移した。
私たちが到着したとき、まず目にしたのは部屋一面が血に染まった凄惨な光景。
―――やはり…間に合わなかったというの!?
イッセーの姿を求めて私の目が動き出していた。もう既に戦闘は起こっている。私の心は、一瞬「大事な眷属を失ってしまったかもしれない」という不安に駆られる。
―――イッセーはすぐに見つかった。全身血まみれの傷だらけだったけど、傍らで金髪の修道女が必死に治療を行っているのがわかった。
「イッセー…!」
私は思わず声を上げて駆け寄った。
「あ、あなたは……」
修道女が私たちを驚いた顔で見上げている。
「私はリアス・グレモリー。この子の主よ。……あなたがアーシアね。イッセーから話は聞いてるわ」
「イッセーさんから?それじゃ……あ、悪魔の……」
そこまで言いかけて彼女は慌てたように口を押えた。
「す、すみません!私ったら……イッセーさんの仲間の方を悪く言うつもりはないんです。ただ……」
「わかってる。あなただって聖職者の端くれ、私たちを恐れて当然よ。だから怒ってなんかいないわ。むしろ感謝しているの」
「えっ?」
私は目を見開いた彼女と目線の高さが同じになるように屈んだ。
「私たちがここに来るまで、この子の傷を治してくれていたのでしょ?その神器の力で」
そう言いながら安らかに寝息を立てているイッセーの体を見る。
今は治療によってほとんど目立たなくなっているが、体の至る所から微かに光の力の残滓を感じる。それから推測すると、恐らく【はぐれ悪魔祓い】に力を与えたのは堕天使ね。厄介だわ。
これだけたくさんの傷を負わせられるということは、大方『祓魔弾』辺りでも使ったのでしょう。
普通ここまで祓魔弾を受ければ上級悪魔といえどもただではすまない。まして下級悪魔であるイッセーなら放っておけば死んでいてもおかしくなかった。
それを癒しの力でここまで治せる彼女の神器は、この世界にとって相当希少な能力であるのは間違いない。
―――もし、教会側でなく一般人として会っていたのなら迷わず眷属にしていたところよ。本当……皮肉な運命だわ。
初対面ではあるけれど、イッセーの言うようにきっと心優しい娘なんでしょう。彼女の澄んだ瞳を見ればわかる。
「…ありがとう。あなたは私の下僕の命の恩人よ。改めて礼を言わせてちょうだい」
「そ、そんな!わ、私はイッセーさんをお助しけたかっただけですから。お礼なんて……」
なんて謙虚な子なのかしら。顔を赤くしながら照れている姿も愛らしい。ますます眷属に欲しくなってきたわ。
―――でも、今はそう言いたいをグッと堪える。立場も何もかも違う彼女に無理やり迫るのは私の誇りが許さない。
そのとき、祐斗が私に向かって声を掛けた。
「部長、あそこに悪魔祓いの男が!おそらくこの惨状は奴の仕業かと」
「何ですって!?」
祐斗が指さした先には白髪の神父が大の字でのびている。
「これは…完全に意識を失っている。どうやったかわかりませんが、この床に脳天を直撃させたようですね。この分だとしばらくは再起不能でしょう」
傷ついた一誠を見たと思えば、同じ場所で
一体どういうこと?まさか……
「ふ、フリード神父……」
アーシアが神父の方を見て震えている。それと彼女の頬に浮かんでいる大きな痣を見て、何となく察しがついた。
―――…そうなのね、イッセー。あなたこの子を守ろうとして……
きっと、とても怖かったでしょうに。初めての実戦でこんな危険な輩と戦う羽目になって、それでも目の前の少女を守るために逃げずに立ち向かっていった。
今回は運よく勝ちを拾えたようだけど、眷属としては己の力量も弁えず無謀な戦いをする未熟者の行動ととられることだろう。
でも、私は今、主として、そして一人の女としてこの子の行動を素直に褒めてあげたい。
「よくやったわ。あなたは私の自慢よ…イッセー…」
そう言って頭を撫でてあげると、イッセーの寝顔が微かに微笑んだ気がした。
「…っ! 部長、この家に堕天使らしき者たちが複数近づいていますわ。このままでは、こちらが不利になります」
朱乃からの報告を聞いて私はすぐに頭を切り替える。大事な下僕を傷つけたこの下賤な神父に私からも制裁を加えるつもりだったけど、そうも言ってられなくなったわね。
「……朱乃、イッセーを回収次第、本拠地へ帰還するわ。ジャンプの準備を」
「わかりました」
「小猫、あなたはイッセーを」
「……はい」
朱乃が呪文を唱えている間に、小猫にはイッセーを背負ってもらい、私は再びアーシアの方へと視線を向けた。
「ごめんなさいね。きっとイッセーならあなたも連れていくって言うんでしょうけど」
残念ながら私たちの魔法陣では眷属じゃない彼女を連れていくことはできない。それに、今の私の立場的に敵側にいる彼女とこれ以上関わるのは良くない。
しかし、アーシアはそれを気にすることもなく健気にも笑ってみせた。
「……いいんです。私に構わず行ってください」
「本当にいいの?あなた、イッセーとは…」
そう言うと、彼女の瞳は少し悲しそうな色を浮かべた。
「イッセーさんは勿論大切なお友達です。それは変わりません。……でも、向こうにも私にとって大事な人がいるんです。私には“あの方”を見捨てることはできません」
「……そう」
決心が固いアーシアに対して、私がそれ以上言葉を発するとはできない。
朱乃の詠唱が終わり、床の魔法陣が光りだす。その光に包まれる私に彼女はにっこり笑って言った。
「イッセーさんが目覚めたら伝えてください。―――『また、会いましょう』って」
その言葉を最後に私たちは彼女の前から姿を消した。
◆◆◆
SIDE イッセー
気が付いたとき、俺は部室のソファーで寝かされていた。
部屋には部長たちがついててくれたみたいで、目覚めた俺に部長からまずは今回の件について謝られた。
そんな…あれは別に部長の所為じゃないのに。単に運が悪かっただけなんだ。
それに、俺だって悪魔になる以上、多少危険な目に会うのは覚悟していた。これで文句なんか言ったらアタル兄にだってどやされちまう。
そんなわけで、俺が「気にしないでください」って言ったら部長も安心してくれたみたいで、
「ありがとう。あなたが下僕で本当によかったわ」
なんて言ってくれたんだ!
―――いやあ…部長みたいな美人にそんなこといわれたら、俺ますます張り切っちゃ……ゴホン。今はそんなことはどうでもいいんだ。
重大なのはその後の話。
あの後、俺が気を失っていた間にあった出来事を部長の口から直接聞いた。
「アーシア…」
話を聞いた後で俺の気持ちが大分沈んじまったのは言うまでもない。
まさか、アーシアが堕天使の眷属で、あの神父と同じ【はぐれ悪魔祓い】たちの仲間だったんなんて……今でも信じられない。
だが、あのときのアーシアの叫びは彼女の本心そのものだったと俺は信じて疑わない。彼女は確かに連中のやり方に反感を持っていた。
それでも連中と手を切らないのはその“大事な誰か”が人質に取られているからなのだろう。―――なんて卑怯な奴らだ!
俺の心の中ではぐれ悪魔祓い、そして堕天使たちに対する怒りの炎が沸々と湧いてきた。
「部長、俺は……あのアーシアって子を!」
「無理よ。どうやって救うの?あなたは悪魔。彼女は堕天使の下僕。相容れない存在同士よ。彼女を救うってことは、堕天使をも敵に回すってことになるの。そうなったら、私たちも戦わねばならないわ」
「……」
確かに、俺のわがままに部長たちを巻き込んでしまう。それは決していいことじゃない。それは分かってる。
でも俺にはアーシアのことをそのままにしておくことなんてできない。彼女は、俺を“友達”だと言ってくれたんだ。できることなら、助けてやりたいんだ。
例え、そのことで部長たちに迷惑がかかると分かっていても、俺は……
「イッセー…まさか、自分一人でも…なんて、考えていないわよね?」
「……っ!」
「自惚れないで。確かにあなたははぐれ悪魔祓いの一人を倒したのかもしれない。だけど、それで次も勝てると本気で思っているの?」
部長の言葉の矢が俺のハートにグサグサと突き刺さっていく。
「今回の勝利も全身傷だらけにしてようやく手にしたものなんでしょ。あの怪我だってアーシアがいなければ死んでいてもおかしくない状況だったわ。……それに、相手は悪魔祓いだけじゃない。背後には堕天使だっているの。彼らの力は私たちと相性が悪い。あなた一人で相手できるほど甘くないわ!」
部長の指摘に俺は何も言い返せない。
確かにそうだ。今回だってどうして勝てたのか、俺にも全く分からなかった。ただ一つ言えるのは、あのとき俺の全身に“不思議なパワー”が漲っていたこと……それだけなのだから。あのパワーがなかったら死んでいたのは確実に俺の方だったろう。
そんな根拠のない自信で次も勝とうだなんて、虫がいい話を通り越してただのバカだ。
結局、俺はその場で答えを出すことができなかった。そのとき、自分がなんて惨めで矮小な存在なんだろうと嫌でも痛感してしまった。
―――俺は……弱い。弱すぎる。
―――女の子一人救うことができない。
―――強く……なりたい。
俺は悔しさに唇を噛み、そしていつしか両の拳を強く握りしめていた。
◆◆◆
その日、兵藤一誠が自分の家に帰ってきたのは朝日が昇ってきた頃だった。
アタルはいつもより大分遅くに帰ってきた弟の様子に只ならぬものを感じ取った。
「何か……あったか……?」
「……」
玄関先で出迎えたアタルが問いかけるが、一誠は顔を伏せたまま佇んでいた。
しばらくお互いにその状態が続いた後、
「……とにかく上がれ。今朝食の準備をしているところだ。話は飯を食った後にでも……」
「……アタル兄!」
突然一誠が玄関で土下座をかました。アタルの目の前で。
「……何の真似だ。それは」
「アタル兄……一生のお願いだ。俺に…もう一度レスリングを教えてくれ!」
「……!」
これまでこの兄弟の間で、一誠が土下座をしたことは数えきれないほどある。……だが、これほど鬼気迫った様子の弟は初めてだった。
「訳を話せ……まずはそれからだ」
それから、リビングで無理やり向かいの席に着かせた一誠の口から、ぽつりぽつりと語られる言葉をアタルは黙って聞いていた。
昨晩の戦いで、アーシアの背後に堕天使の影があったこと。そこでアーシアは望まぬ仕事をさせられているらしいこと。
どうにかして助けたいが、自分にはその力がない。かといって、リアスたちの力は借りれない。だから己を鍛えてほしいのだと。少なくとも、あのときフリードという神父を倒した時の力があれば…。
―――要約すると、そういう話だった。
一誠から事情を聞き、以前アーシアに会ったときに感じた妙な違和感にこれでようやく合点がいったアタル。
そして、一誠が昨夜の戦闘で発現させた力についても、一つ心当たりがあった。
(恐らく、イッセーにも備わっているな………『火事場のクソ力』が)
『火事場のクソ力』―――それは、『窮地に陥ったときに通常を遥かに上回るパワーを発揮する』という、アタルたちキン肉族が持つとされる潜在能力だ。
人間界にも「火事場の馬鹿力」という似た意味の言葉があるが、実際はそんな甘っちょろい能力ではない。
何といってもその特徴は、「無限の成長性」にある。
アタルのいた超人界では超人一人一人のパワーを示す超人強度は「通常一度備われば一生変化しない」というのが常識だった。
だが、この『火事場のクソ力』に関してはその原則が適応されず、成長する限りパワーに限界というものがない。
例を挙げるなら、アタルの前世の弟だったキン肉マン。彼のもともとの超人強度は当時の正義超人たちの平均的な値である95万パワーに過ぎなかった。しかし、この『火事場のクソ力』によって彼は1000万パワーのバッファローマンや2800万パワーのネプチューンマンなど、自分より遥かに超人強度の勝る相手と互角以上に戦うことができた。
さらに、彼の『火事場のクソ力』は戦いを経るたびに成長を続け、ついには超人の神々の超人強度1億パワーにも届く勢いにまでなった。
この話を聞いた諸君になら、その異常性を理解していただけるだろう。
(やはり、あのとき見た額の「肉」の字は……偶然などではなかったか)
しかし、アタルにはどうにも解せないことがある。なぜ、超人…それもアタルたちキン肉族にしか備わっていないはずのその力を一誠が身に着けているのか。
もしや、血縁関係にあるアタルの存在が何かしらの影響を与えているのか―――さすがのアタルにも、詳しいことは推測できなかった。
だが、少なくともこれだけは言える。今の一誠は自在に『火事場のクソ力』を引き出せてはいない。恐らく本当の窮地に陥らないと発現しないのだろう。
(それではダメだ。今のままではイッセーの肉体はいずれボロボロになってしまう)
『火事場のクソ力』のもたらすパワーは強大だ。それゆえに使用者は使うたびに多大なスタミナを消耗する。ましてや、イッセーのような未熟な使用者の場合は、本当の窮地にならないと発動しないわけだから、使う状況になるときは既に相当なダメージを負っているはずである。そんな状況の上にスタミナを消耗する『火事場のクソ力』を使用する。それが何度も続けば一体どうなるか。
―――誰でも予想は付くであろう。つまり、今のイッセーにとって“諸刃の剣”なのだ。あの力は。
(悪魔に成ったとはいえ、一誠の肉体はまだあの力に耐えきるようにはできてはいまい。少なくとも肉体強化は不可欠だろう)
そして、一誠が求めている切り札とはおそらく先日見せたあの『キン肉バスター』のことだろう。
あれも本来、超人の中でも強靭な筋力を持つ者でなければ成功しない高等技なのだ。今の一誠では『火事場のクソ力』がなければ決して成しえないだろう。
(俺が手を貸すのはもっと先の話だと思っていたが、そうも言ってられんか……)
見たところ、今の一誠はどこか結果を出そうと焦っている感じが見受けられる。おそらく、一刻も早くアーシアを救いたいと、気持ちが競っているのだろう。
(ここで焦っては元も子もない。…と言いたいが、そう悠長に構えているわけにもいかないようだ。……仕方あるまい)
アタルは決意を固め、真っ直ぐに一誠に視線を向ける。
「……事情は分かった。正直どこまで力になれるかわからんが、俺も出来る限り協力しよう」
「…っ!ありがとうアタル兄!恩に着るぜ!」
「アーシアは俺にとっても友人だ。その友を救うためなのだ。力を貸すのは当然だろう?」
そっと両手で自分の手を握ってきた弟に言い聞かせるように、アタルは答えた。
「……だが、俺は弟だからと言って優しくしてやるつもりはない。俺の扱きは厳しいぞ。それでもいいか?」
「の……望むところだ!」
途端に目つきが厳しくなった兄の気迫に一瞬怯むも、すぐに負けじと睨み返す一誠。
「よし……わかった。早速明日から特訓を始めるぞ」
「あ、明日から?……え、え~と。い、いいのか?アタル兄にも学校が……」
「グレモリーに言ってそこはどうにかしてもらうさ。お前も彼女から休みをもらったんだろう?」
「う、うん……(本当はしばらく安静にしてろって言われてんだけどなぁ…)」
もしかして俺早まった?……と今更後悔し始める一誠。
「言っておくが、やると決めた以上、根を上げたり逃げ出したりすることは許さん。おまえも覚悟を決めろ」
「……」
どうやら彼に逃げ道はなさそうだった。
イッセー君、アタル兄さん主導によるコーチングが決定、の巻。
ちなみに、
一誠「あ、アタル兄……これ本気でやるの?」
アタル「俺は兄ではない。師匠(レーラー)と呼べっ!!」
一誠「」
多分修業風景はこんな感じ?(どこぞの独国超人ではない)
筆が乗れれば今週中にもう1話くらい更新いけそう…か?
とりあえず、気長にお待ちいただければと思います。