業火のSoldier~兵藤一誠の兄~   作:半熟たまご

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今年行われた超人総選挙で、アタル兄さんが堂々の第1位!!
おめでとうございます!
やはり時が経ってもアタル兄さんの人気は色褪せないのだと改めて感じました。
この小説を書いている身として、これほど嬉しいことはないです。

現在連載中のシリーズにもいずれ登場してくださるだろうとは思いますが、私もこの小説でアタル兄さんの勇姿を伝えていきたいと思います。
皆さまもどうぞ本作をよろしくお願い致します。

では、更新遅くなりましたが今回の話をどうぞ。


登場!不死鳥ライザー の巻

リアスたちが兵藤家に来訪した翌日。

アタルはいつものように駒王学園で授業を受けていた。

その日は朝から教室にリアスと朱乃の姿はなかった。

 

(やはり、昨晩の一件が絡んでいるのか……)

 

実家から遣わされたというあのメイドとそんなに話が揉めているのか…。

空席になった二人の机にちらりと目をやりながらアタルはそんなことを思案する。

考えてみれば、リアスともあろう者がスケベで有名なあの愚弟(イッセー)相手に簡単に肌を許すとは思えない。

連れ戻しに来たというあのメイドも相当の手練れであるところを見るに、何か已むに已まれぬ事情があったと考えるのが妥当だ。

 

(そういえば、以前彼女の実家が悪魔の中でも名門の貴族だという話を聞いたな……)

 

とすれば、考えられることは一つ。

 

(……望まぬ相手との結婚、ないし見合い話でも持ち上がった、か?もしそうだとすれば……難儀な話だ)

 

王侯貴族に生まれもすると、親同士で勝手に決められた婚約者がいてもさして珍しいことではない。

アタル自身、もともとキン肉星を束ねた王家の生まれ。幼いころからそうした貴族社会は嫌というほど見てきた。

もし、リアスにもそうした相手がいるのだとすれば、それが気に入った相手であればまだ幸せだが、そうでない場合……気の強い彼女のことだ。おそらく猛反発するだろうことは想像に難くない。

 

さて、そんな状況に陥った彼女がとる行動とは一体何であろうか?

その答えはメロドラマ好きな人ならある意味簡単に導き出せるのであろうが、つまりは……

 

(偽の恋人をでっち上げ、婚約破棄に持ち込む。その相手としてイッセーを選んだか…………何とも軽はずみな行動をしたものだ)

 

個人としてはリアスの気持ちは分からなくはない。自分の相手くらい自分で決めたい。そう思うのは至極当然のことだろう。

しかし、それで眷属とは言え部外者の一誠をいきなり巻き込むのはどうかと思う。

裏を返せば、それだけ一誠を認めているということなのであろうが、それでも一言断ってしかるべきではないのか。

 

(……いや、まだそうと決まったわけではないな。とにかく、彼女の口から真相を聞かなければ)

 

そうこうしているうちに、終礼を告げるチャイムが鳴る。

放課後になりクラスメートたちが続々と部活やら帰り支度やらを始める中、アタルはふと窓から映る旧校舎の方を見やった。

 

(昨日の口ぶりからするとオカルト研究会の方には顔を出すはずだ。そこで事情を……っ!?)

 

アタルの目に旧校舎の2階の窓からモクモクと煙が上がっているのが見えた。

教室にいる者はアタルを除き誰一人その異変に気づいていなかった。

 

(あそこには確かオカルト研究部の部室があるはず。そこから火の手が上がっているということはまさか……!?)

 

何かを察したアタルはすぐさま教室を飛び出した。

向かうは旧校舎―――――

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

時は数十分前まで遡る。

その頃一誠と木場、そしてアーシアの3人は放課後に揃って部室へと向かっていた。

 

「部長のお悩みか。たぶん、グレモリー家に関わることじゃないかな」

「朱乃さんなら何か知ってるのかな?」

 

互いにそんな話をしながら部室の前に到着したとき、木場が突然顔を強張らせた。

 

「……僕がここまで来て初めて気配に気づくなんて……」

 

何事かと思い、一誠が思い切っての扉を開けると、部屋にはリアス、朱乃、小猫、そしてグレイフィアの4人が張りつめた空気の中佇んでいた。

特にリアスの機嫌が見るからに悪そうで、その場に居た堪れないように小猫が部屋の隅で縮こまっているという、ある意味珍しい光景が見られた。

重苦しい空気の中、冷や汗を流す一誠たち一人一人を確認するとリアスが口を開いた。

 

「全員揃ったわね。では、部活をする前に話があるの」

「お嬢様、私からお話しましょうか?」

 

グレイフィアの申し出をリアスはいらないと手を振っていなす。

 

「実は―――」

 

リアスが口を開いた瞬間、床に突然魔法陣が浮かび上がり光りだした。

最初はグレモリー家に仕える悪魔が来たのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。魔法陣の紋様が途中で変化し、全く違う形に姿を変えたからだ。

 

「―――フェニックス」

 

近くにいた木場が声を漏らす。

 

「え?フェニ…何だって?」

 

まるで訳が分からない一誠を他所に、室内を眩い光が覆い、魔法陣から炎が巻き上がった。

まるでそこにいるだけで肌が焼けついてしまいそうな炎の中に佇む男性のシルエット。やがてその影が腕を横に凪ぐと炎が振り払われ、赤いスーツを着た20代前後のホストっぽいルックスの男が立っていた。

 

「よお、愛しのリアス。会いに来たぜ」

 

 

 

 

現れた男の名は、ライザー・フェニックス―――――グレイフィアの話によると、リアスのグレモリー家と並んで『七十二柱』と称される純潔の上級悪魔、フェニックス家の三男坊だという。そして驚くことに、なんと彼はリアスの婚約者だというのだ。

一誠は思わずリアスを見てしまうが、彼女は乗り気じゃないのか渋い表情。対して、強引にリアスとの婚約を推し進めようとするライザー。

傍から見ても平行線にしかならない話し合いの中、ヘラヘラするライザーの態度についにリアスの怒りが爆発した。

 

「いい加減にしてちょうだい!私はあなたなんかと結婚しないわ!私は自分が良いと思った相手と結婚する。それくらいの権利はあるはずよ」

「……俺もなリアス。遊びでこんなことを言ってるわけじゃないんだぜ?こっちだってフェニックス家の看板を背負ってるんだ。あくまで君が拒むというなら……」

 

ボワッとライザーの周囲を炎が駆け巡った。チリチリと火の粉が室内に舞う。

 

「君の下僕を燃やし尽くしてでも、君を冥界に連れて帰るぞ」

 

とてつもない殺気が一誠達を襲う。

リアスは眷属を殺すと脅したライザーにはっきりと敵意を剥き出しにし、全身から魔力を漲らせて睨みつける。一方で、荒事に慣れていないアーシアなどは、強烈な殺気に思わず一誠の後ろに隠れ、震えてしまっている。一誠の背筋にも悪寒が走るが、後ろにいるアーシアを守るべくなんとか踏ん張って耐えていた。

そして他のメンバーも震えてはいないにしろ、いつでも臨戦態勢に入れるような空気が漂っている。

 

「お二人とも落ち着いてください。これ以上やるのでしたら、私も黙って見ている訳にもいかなくなります。私はサーゼクス様の名誉のためにも遠慮などしないつもりです」

 

張りつめた空気の中、グレイフィアから放たれた一言で、ようやく矛先を納めたライザーとリアス。

やはり流石の彼らも、“最強の女王”の呼び声高い彼女を怒らせたくはないようだ。

 

「こうなることは、旦那様もサーゼクス様もフェニックス家の方々も重々承知でした。正直に申し上げますと、これが最後の話し合いの場だったのです。これで決着がつかない場合のことを皆様方は予測し、最終手段を取り入れる事にしました」

「最終手段?どういうこと?グレイフィア」

「お嬢様、ご自分の意見を押し通すのでしたら、ライザー様と『レーティングゲーム』にて決着をつけるのはいかがでしょう?」

「―――ッ!?」

 

リアスを始め、オカ研のメンバー全員が息を呑んだ。

一人一誠だけが、「レーティングゲーム?どっかで聞いたような…」という顔をしていたが、

 

「爵位持ちの悪魔たちが行う、下僕同士を戦わせて競いあうゲームのことだよ]

 

後ろから木場に補足され、「そういえば、そんなのあったなー」とようやく思い出した。

本来、公式なレーティングゲームは成熟した悪魔しか参加できない。しかし、今回のように非公式の純血悪魔同士のゲームならばリアスの様な半人前の悪魔でも参加が可能なのだそうだ。

要するに御家同士のいがみ合いをゲームで代用しようというのだ。

 

「つまり、お父さま方は最初から私が拒否することを見越して、ゲームで今回の婚約を決めるつもりだったのね?……どこまで私の生き方をいじれば気が済むのかしら……っ!」

「では、お嬢様はこのゲームを降りると?」

「まさか!……こんな好機はないわ。いいわよ、受けてあげる。ゲームで決着をつけましょう、ライザー」

 

挑戦的な物言いのリアスにライザーは口元をにやけさせる。

 

「へー、受けちゃうのか。いいぜ、俺は構わない。ただ、俺は公式のゲームを何度も経験してるし、今のところ勝ち星の方が多い。それでもやるのか、リアス?」

「やるわ。ライザー、あなたを消し飛ばしてあげる!」

「いいだろう。そちらが勝てば好きにするがいい。だが、俺が勝ったら即結婚してもらうぞ!」

 

こうして遂に、リアスとライザーによるレーティングゲームが執り行われることとなった。

 

「それにしてもリアス。まさか、ここにいる面子が君の下僕なのか?」

「だったらどうだというの?」

 

一誠達を見回して嘲笑を浮かべるライザーに、リアスの口から再び低い声が漏れた。

 

「これじゃあ、話にならないんじゃないか?君の『女王』である“雷の巫女”はともかく、他の面子では俺のかわいい下僕に対抗できそうにないな。おまけに何故か下賤な人間の女までいるようだが…」

「ヒッ…」

 

ライザーが忌々し気にアーシアの方に視線をやると、彼女は怯えるように一誠の後ろに隠れた。

 

「あの野郎…!」

「ダメだ。イッセー君」

「でもよ!」

「頼む。ここは抑えてくれ」

 

アーシアを侮辱され、今にもライザーをぶん殴りかねない一誠を木場が小声で牽制する。折角話がまとまりかけたのに、こんなところでまた蒸し返すわけにはいかないからだ。

 

「アーシアは確かに私の眷属ではないけれど、このオカルト研究部の立派な一員。私の大事な友人よ。いくらあなたでも侮辱することは許さない!」

 

ライザーの暴言に腹に据えかねたリアスが再び魔力を漲らせ自慢の紅髪を逆立てる。

 

しかし、そんな彼女を見てもライザーは全く余裕を崩さず、フンと鼻で笑いながらパチンと指を鳴らした。

部室の床に新たに魔法陣が浮かび、そこから次々と人影が出現していく。

数にして総勢十五名。ライザーの周りに眷属悪魔らしき女性たちが集まっていた。

 

「どうだ?俺のかわいい下僕たちは」

「な、何―――ッ!?」

 

年齢は幼女からやや年上の女性まで。衣装も騎士から魔導士、武道家と様々なジャンルを網羅したまさに美少女軍団。こんなに多くの女性を侍らせているとはそれだけで男冥利に尽きるだろう。自身のハーレムを自慢するかのようにライザーは両手を広げた。

 

それを見ていた一誠は知らず知らず血涙を流しながら歯軋りしていた。自分の夢であるハーレムを実現させている男が目の前にいる。それも、自分とは全く正反対の、見るからにチャラそうなこの男がだ。悔しがるのも無理はない。

 

「お、おい、リアス……。この男君の下僕だろう?何でこっちを見て号泣してるんだ?」

「その子の夢がハーレムなの。きっと、ライザーの下僕悪魔たちを見て感動したんじゃないかしら?」

 

毒気を抜かれたリアスが溜息を吐きながら説明する。その言葉に一誠本人もうんうんと頷くも、それを聞いたライザー眷属の女性陣から「きもーい」などの侮蔑の声が上がる。

 

「まあ、そう言うな。俺の様な上流階級の者を羨望の眼差しで見てくるのは下賤な輩の常さ。どれ、一つあいつらに俺とお前たちの熱々なところを見せつけてやろう」

 

ライザーはそう言って少女たちを宥めすかしたかと思えば、急に近くにいた眷属の女性と濃厚なディープキスを始めた。

 

「なっ!?」

「はぅはぅはぅぅぅ……」

「ハァ……」

 

ある者は驚き、ある者は刺激が強すぎるがゆえに顔を赤くし、ある者は呆れた表情でそれを眺める。

ライザーの振る舞いに対するオカ研メンバーの反応は様々だった。

しかし、ライザーはそんなことはお構いなく、少女たちの口に銀色の糸を引きながら、代わる代わるキスを浴びせていく。

やがてキスを終えたライザーはチラリと一誠の方を見やった。

 

「お前じゃ、こんなことはできまい?下級悪魔くん」

 

明らかにこちらを見下した態度。敬愛する主人の手前、我慢に我慢を重ねていた一誠だったが、もはや限界だった。

 

「何じゃい!ちょっと女にモテるからって偉ッそうに!―――――ブーステッドギア!」

 

嫉妬心に駆られた一誠が怒り全開で左腕に神器を顕現させる。

 

「さっきから聞いてりゃあ、俺だけでなくアーシアにまで好き勝手言いやがって。お前こそただの種蒔き鳥野郎じゃねぇか!お前みたいな女ったらし、部長に相応しくない!」

「……何?」

 

この一誠の挑発によって、ライザーの眉間に初めて皺が寄った。

 

「フン!文句があるなら言ってみやがれ。この焼き鳥野郎!」

「や、焼き鳥!?い、言わせておけばこの下級悪魔がぁぁぁぁ!上級悪魔に対する態度がなってねぇぜ!……おい、リアス!下僕の教育はどうなってんだ!?」

 

売り言葉に買い言葉。一誠と言葉の応酬をすればするほど、今まで取り繕っていたメッキが剥がれて堕ちていくかのように、ライザー本人の狂暴性が露わになっていく。

そんなライザーの言葉にリアスは素気無くそっぽを向くだけだ。

一方で一誠もリアスの対応に、「部長も自分と同じ意見だ」と察して気を良くしたのか、ますます勢いづく。

 

「ゲームなんざ必要ねぇ!俺がこの場で全員ぶっ倒してやる!」

『Boost!!』

 

籠手の宝玉から音声が流れ、たちまち力が漲る。

 

(大丈夫。俺もこの間の戦いからアタル兄との特訓でさらに強くなったんだ。こんな奴らくらい…)

 

「フン、身の程知らずが…」

 

多少イラつきはしたものの、さっきよりは幾分落ち着きを取り戻したライザーが呆れたように溜息をつき、下僕の一人に命令を下した。

 

「ミラ、やれ」

「はい、ライザーさま」

 

前に進み出たのは小猫くらいの背丈の少女。武道家が使うような長い棍を器用に回した後、構えた。

 

(棍か……リーチが長い分接近するのが難しそうだな。それにあんな小さい子相手に本気で殴り掛かるのも………ここはどうにか武器を取り上げて戦意を失くさせたほうが……っ!?)

 

そんなことを考えていた一誠だったが、突如その背筋に冷たいものが走る。

それは自分にとって危険だという体が発した信号の様な直感。

これまでアタルに鍛えらえたおかげが、一誠にも少なからずそうした危機的状況に対する反射神経のようなものが備わっていた。

その感覚に従うままに、一誠が体勢を横にずらす。

すると一誠の脇腹のすぐ横を下から掠るように少女が振るった棍が通過した。

 

(は、速っ!?あんな小さいなりでなんつー鋭い攻撃してんだ!?)

 

さっき回避行動をとらなかったら、今頃一誠の体はあの棍の一撃で宙に浮かんでいただろう。

 

「初撃を躱した?意外といい反応……」

 

一誠が攻撃を躱したことに若干驚いた顔をするミラという少女。

だが、すぐに表情を元に戻し、

 

「でも、まだまだ遅い」

 

今度は一誠に向かって連続で突きを放つ。

 

「うおおッ!?や、やべえッ!」

 

慌てて両腕でガードする一誠だったが、相手の突きのあまりの凄まじさに急ごしらえのガードは簡単に崩されてしまう。

 

「し、しまっ…!?」

 

ガードが崩れた本の一瞬の隙に、棍の先端が一誠の鳩尾を狙っていた。

 

<ガッ!>

 

「グハァッ!!?」

「「「「「イッセー(君)(さん)(先輩)!」」」」」

 

棍の一撃をもろに喰らい、血を吐き出しながら体を吹っ飛ばされる一誠。

その体は強固な部室の扉に向かっていた。

 

(やば……痛みで受け身が……)

 

激突すれば大怪我は免れない。そんな状況に追い込まれた一誠の頭の中で景色がスローモーションのように流れていく。

これも一種の走馬灯のようなものだろうか。そんな暢気なことを考えながら一誠の体はどんどん扉に近づいていく。

やがて、その距離が僅か数十センチとなった……ちょうどそのとき。

突如部室の扉が開き、一つの影が飛び出していった。

 

ガシッ!

 

「「「「「!?」」」」」

 

激突する寸前、何者かに体を抱き止められる一誠。

その瞬間一誠は何事かと頭を混乱させるが、周りにいるギャラリーたちは現れた人物に驚きを隠せなかった。

 

「やれやれ…嫌な予感がして来てみれば……全く世話の焼ける奴だ」

「そ、その声は……!」

 

恐る恐る自分の後ろを振り返る一誠。

そんな彼の目に映ったのは……

 

「あ、アタル兄!?」

「イッセー。間一髪、間に合ったようだな」

 

自分と同じ髪の色、同じ瞳の色をした、尊敬すべき兄。

 

―――――兵藤(アタル)がそこにいた。

 

 

 




次回、アタル兄さん vs フェニックスチーム(仮)の誰か。

…え?こんなカードで大丈夫かって?平気平気。
だって今の兄さん、マスク被っていない普通の人間ですから。
いけるいける(震え声)

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