この間まで絶賛スランプ中+リアルが忙しくなったこともあり執筆が進んでいませんでした。
読者様の中にはきっと待ちくたびれてハンモックに揺られて熟睡していた方もおられたことでしょう。(某英国超人の如く…)
以前のように書けているか自信がありませんが、とりあえずアタル兄さんvsフェニックス眷属(特に仮面の人)の戦いをお送りします。
では、どうぞ!
ライザー眷属の一人、『
危うく部室の扉に激突しようとしていた彼の窮地を救ったのは――――
「随分手酷くやられたようだな。イッセー」
本来ならばここにいること自体がおかしい人物………一誠の兄、アタル。
「あ、アタル兄……どうしてここに!?」
兄の登場に驚きを隠せない一誠だが、アタルはそんな弟の問いに答える代わりに視線をライザーたちの方へと向ける。
ライザーもまた、突然助けに入ったアタルの存在が完全に予想外だったせいか、しばし口が開いた状態で放心している。
(なるほど、どうやら俺の予想は当たっていたようだ。推測するに恐らくあの金髪の男がグレモリーの婚約者……)
来たばかりではあるが、アタルの洞察力をもってすれば部屋の様子を少し観察しただけですぐにある程度の状況を把握してしまうことなど造作もない。
「アタルッ!?」
「兵藤君」
「先輩!」
リアス、朱乃、小猫の3人が声を漏らす中、ほぼ初対面に等しい木場は逆に冷静な視線を向けていた。
(この人がイッセー君のお兄さん。噂には聞いていたけど……)
気配は確かに純粋な人間のそれ、なのだが……内にどこか只者ではない不思議な迫力を秘めている。
木場のアタルに対する第一印象は概ねそんな感じであった。
「あの男は?」
一誠を床に下ろしつつも、視線はライザーから離さずにアタルが尋ねる。
「あ、あいつは…部長の婚約……痛ぅっ!?」
答えようとして急にぶり返してきた腹部の激痛でその場に蹲ってしまう一誠。
どうやら思った以上にダメージを受けたようだ。
「すまん、無理にしゃべらせるべきではなかったな。アーシア、すまないがこいつを診てやってくれ」
「は、はい!」
アタルの呼びかけに反応してアーシアが駆け寄ってくる。
彼女が腹部に当てた手から癒しの光が放たれ、一誠を包み込んだ。
「…おい。誰だお前?人間が何故ここにいる?」
ライザーがアタルを見て表情を険しくさせる。この場にいる者たちにとって、アタルは完全な部外者。訝し気な視線を送るのは当然だ。
しかし、そんな視線の中にあってもアタルが落ち着いた姿勢を崩すことはない。
「人にものを尋ねる前にまずは自分が名乗ったらどうだ」
「なにぃ?」
静かに言い放ったアタルの言葉でプライドを刺激されたライザーの顔に青筋が浮かぶ。
「やはり下賤な人間には俺の様な貴人に対する礼儀が分からんらしい。……おい、この無礼者を叩き出せ!」
「はっ」
「っ!?やめなさいライザー!彼は関係ないでしょ!」
リアスの制止にも耳を貸さず、ライザーはミラに命じる。
頷いたミラはそのままアタルに向かって飛び出し、持っていた根をまっすぐ前に突き出した。
先程一誠を昏倒させた強烈な突きが、今まさにアタルにも迫ろうとしている。
「危ねぇっ、アタル兄!」
いかに偉大な兄と言えども、人間の身で喰らえばただでは済まない一撃。それは受けた自分が一番よく分かっている。
だからこそ思わず声が漏れてしまった。
そんな一誠の声に反応したのかどうかは定かではない。……が、相手の攻撃に対しようやくアタルの方にも動きが見られた。
凄まじい速さで突き出される棍の先。それが体に触れる寸前、左足を後ろに下げ、半身になることで躱す。
最初の一撃で既にヒットすると確信していたミラからすれば、直線的な攻撃を横に躱され勢い余って僅かに前のめりの体勢でアタルとすれ違う形となった。
その一瞬の隙が勝敗を分けた。
<ガキィッ!>
「ぐああっ!?」
すれ違いざま、アタルはミラの手首を掴み、もう片方の手を相手の肘の下を通す形で自分の前腕を掴みひねりあげ、見事な『アームロック』を極めていた。
「なっ!?」
まさかの展開にライザー陣営は目を見開く。
ミラは『兵士』とは言えそれなりに修練を積んだ猛者。それが、神器どころか何の武器も持たない人間に
一方でミラの方も必死にアタルの技から逃れようとするが、体をぴったりと密着されているせいでもがけばもがくほど技が解けるどころかますます掛かりが深くなるばかり。
「嘘…」
「すげえ…」
「あ、あの一瞬で、何と鮮やかな…」
あっさりと相手方の『兵士』を手玉に取ったアタルに一誠たちも感嘆の声を漏らした。
特に木場はリアスの『
(いくら『
木場がアタルの技量に恐れ
「流石は
「小猫ちゃん?」
隣でいつの間にかスナック菓子を頬張り始めた後輩の呟きに驚き、
「まさか君は、始めからこの結果が見えていたのかい?」
周囲に聞こえないように小声で話しかけた。
すると小猫は、眉一つ変えることなく、
「ええまあ。先輩とは以前から組手をしてきた仲ですし、実力くらいわかります。……実際、『
「……」
小猫からの答えに木場は言葉を失う。
彼女が言うには、確かにパワーだけでいうならただの人間であるアタルよりも悪魔である自分に分がある。しかし、アタルにはそれを補って余りある格闘技術と経験値があるのだという。
「ちなみに、先程先輩が出していたのは
「なるほど、関節技は梃子の原理を利用するものが多く、最小の力で巨大な敵にも難なくダメージを与えることができる。これなら、たとえ人間の力でも僕たち悪魔相手に十分通用するわけだね」
「ご名答。流石は裕人先輩。完璧な解答ですね」
「それにしても、君にそこまで言わせるなんて…」
これはいよいよもって只者ではないようだ。木場は戦慄する。こんな感覚はついこの間、ソルジャーに初めて遭遇したとき以来かもしれない。
◆◆◆
さて、周囲でそんな会話がなされている中、アタルはミラの腕を極めたままライザーの方を見やる。
「…先程俺を礼儀知らずと言ったが、名乗りもせずにいきなり殴りかかってくるお前たちの方こそ礼を失しているとは思わんか?それとも、これが悪魔の一般的な挨拶の仕方なのか?」
「ぐううっ…!」
アタルの言葉にライザーは反論できない。それもそのはず。今のは明らかにライザーたちの失態。この場にいるのがアタル一人であれば、ただの人間の戯言と一笑に付すこともできたが、今は婚約者であるリアスに加え、現魔王の妃であり『最強の女王』でもあるグレイフィアも見ている。下手に言い訳をすれば返ってこちらの恥の上塗りになりかねない。
しかし、かと言ってこのまま人間に頭を下げるのは己のプライドが許さない。今、ライザーの頭の中で激しい葛藤が起こっていた。
「さあ、何とか言ったらどうだ。ぐずぐすしていると、この娘の腕がへし折れるぞ!」
<グギギィーッ!>
「ぐぎゃあああっ!?」
今にも関節が外れそうな大きな音が腕から鳴り、同時にミラからこれまでにないくらいの悲鳴が上がった。
技をかけながらも淡々と返答を促すアタルから言い様のないプレッシャーが発せられ、それがますますライザーを追い詰める。
できるのはただ憎々し気に睨みつけることだけ。そんな緊張がしばらく続いた後―――
「ライザー様。ここは私が」
「イザベラ!」
ライザーの後ろに控えていた眷属の一人が前に進み出た。顔の半分を仮面で覆った格闘家風の女性であった。
「……すまない、人間よ。先程は
そう言って女性は頭を下げる。
これにはアタルだけでなく、リアスたちも驚いた。
一方でライザーの眷属たちの中から「イザベラの奴、何を勝手な!」「人間に頭を下げるなんて、ライザー様の名を汚す気!?」などと非難の声が上がっている。
しかし、気付いているだろうか。今の彼女の発言では粗相をしたのがライザーだとは明言していないことに。
つまり、ライザー自身の非を言葉上誤魔化したことになる。
(家名に傷をつけないよう下手に出ながら、それでも尚主を立てることは忘れない。……なかなかにできた従者のようだ)
アタルは目の前の女性の対応に感心する。
すると、イザベラと呼ばれたこの女性は続けてこう言った。
「…改めて名乗りを上げよう。こちらにおわす御方はフェニックス家の御三男、ライザー・フェニックス様。そして私はその『戦車』を務めるイザベラという者…」
「フェニックス…!」
そのとき、アタルがこれまでにないほどの驚きを見せていた。
かつて自分を死に追いやった男……それと同じ名を持つ者が目の前にいる。
ただの偶然にしてはできすぎているような、そんな運命の悪戯を感じた。
(……なるほど、俺はつくづく
内心でそう呟くアタルに今度はイザベラから話しかけてきた。
「さて、こちらはこの通り名乗りを上げた。今度はそちらの名を聞かせてほしい。ついでにと言っては何だが、そろそろウチの
そう言いながらアタルが捕えているミラの方に視線を向けるイザベラ。
アタルもちらりと横目に見ると、先程まで激痛にのた打ち回っていたミラもすでに悲鳴も上げる元気もないくらい消耗していた。
アタル自身、さっきから感じていたライザーの横柄な態度に内心でかなり腹を立てていたものの、今のでいくらか溜飲が下がったこともあり、
「よかろう」
とその場であっさりと技を解いた。
「あぐっ」
負傷した腕を押えながら、その場に崩れ落ちるように倒れるミラ。
そして、アタルはライザーたちの方を見ながら口を開く。
「俺は兵藤
「何?兄だと!?」
イザベラは驚いた様子で今度は一誠の方を見やる。
釣られて、ライザー含むフェニックス陣営の面々の視線も一気に一誠へと向かった。
「は、ハハハ…ど、どうも?」
意外なところで注目された一誠は思わず照れ気味に頭をかいた。そりゃあ、彼も年頃の男子だ。可愛い女の子たちから一斉に見られて悪い気はしない。
「言われてみると、似ている…?」
「いやいやいや、どう考えてもこっちの方がイイでしょ」
「あっちは何というか…ねえ?」
「欲望だだ漏れだし。本当に兄弟?」
いや、やはり散々な言われようだった。
「畜生ーッ!結局男は顔なのか!?」
「いいえ。イッセー先輩の場合、日頃の行いのせいかと」
「小猫ちゃんまで!?」
仲間からも厳しい一言を貰い、ショックを受ける一誠。
「い、イッセーさん。気を落とさないでください。私はイッセーさんが素晴らしい人だって知ってますから」
「ううう…アーシア。やっぱり君だけだよ。俺のことを分かってくれるのは」
アーシアの膝でオイオイ泣き崩れる一誠はさておき。
「なるほど…兄弟か。では、先程の分は我々にやられた弟の仇討ち、といったところか?」
「そんなつもりは毛頭ない。単に俺は自分に降りかかった火の粉を払ったにすぎん。それ以上の意味はない」
イザベラの問いに、あくまで自己防衛のためと主張するアタル。
それを聞いた彼女は何故か嬉しそうに、仮面から露出した口元を僅かに吊り上げた。
「フフフ…面白い男だ。だが、そういうことならこちらもおめおめ退き下がるわけにはいかん!」
「……」
何を思ったかその場で両の拳を構えるイザベラ。
「武器さえ持たない人間に後れを取ったとあってはフェニックス眷属の名折れ。私もライザー様の『戦車』としてその汚名は返上しなければならない!」
「……やろうというのか」
「ああ、誠に勝手な話だが、私はお前という男に興味がある。まだ全力を見せていないだろう?それを私に見せてくれ」
どうやらこのイザベラという女性、思っていた以上に好戦的な性格だったらしい。
純粋に、目の前に現れた強敵と戦ってみたい。そんな目をしている。
その熱い視線を受け止めているうちに、何時しかアタル自身の心にくすぶっていた“何か”に火が付いた。
「……よかろう。その挑戦受けて立つ」
そう言うと、アタルは制服の上着を脱ぎ捨て、シャツの両袖を肘の上まで捲り上げながらイザベラと対峙した。
「アタル。あなた戦うつもりなの!」
「口出しは止してもらおうグレモリー。これは俺と彼女の決闘。何人にも手出しはさせん」
止めに入ったリアスにも取り合おうとしないアタル。彼の頑固な性格を知っているだけに説得するのは無理だと悟った。
そしてそれを見て笑みを深めるイザベラだったが、後ろからじっと成り行きを見守っていたライザーから苛立ちの混じった声が上がった。
「イザベラ!お前俺の許可なく勝手な真似を…」
「お許しください、ライザー様。私はこの男と戦ってみたいのです。お叱りは後でいくらでも」
「チッ……勝手にしろ!」
面白くなさそうに舌打ちするライザーにイザベラは苦笑する。
「ご安心を。やるからには勝ちます!」
「大層な自信だな」
「これでも戦車だからな。ミラのときと同じように行くと思うなよ」
二人が言葉の応酬を交わし、いよいよ構えに入った。
「参る!」
先に仕掛けたのはイザベラ。構えからスタンディングポジションと見せかけておいて、実際はタックルでアタルの腰を捕えに行った。
「むっ、なかなかに素早い動き。……だが、甘い!」
しかし、アタルはこれに落ち着いて対応する。相手に掴まれる直前にジャンプし、その背に両手を付き、跳び箱を越える要領でタックルを回避したのだ。
いや、そればかりでなく、自身の体を横向きに旋回させ、相手の片腕を取り、そのまま前転しながら両足で腕を挟み込み、床に引き倒した。
<ガキィ!>
「そ、そんな!?」
「あのイザベラが……」
「あああ~ッ!う、『腕拉ぎ十字固め』だ!」
「上手い!あれは完全に極まっている。よほどのことがない限り脱出は不可能だよ」
信じられない光景に騒然とするギャラリー。
確かにアタルの技はイザベラの腕を完璧に捕えていた。普通ならここで勝敗は決している。
しかし、何故か当のイザベラは笑っていた。
「ククク…流石だな。開始数秒で私を地につけた人間はお前が初めてだ」
「
「まさか」
静かに降参を勧めるアタルに対し、イザベラは笑みを返した。
「忘れたか?私が“戦車”だということを」
「!?」
次の瞬間、腕を極めていたアタルの体がふわっと浮いた。
「う、嘘だろ!?技を掛けているアタル兄ごと…」
「持ち上げた!」
見事な『腕拉ぎ十字固め』を極めているにも関わらず、イザベラは悠々とアタルごと腕を持ち上げ、立ち上がってきた。
これに今度は一誠達が驚く。しかし、次のイザベラの台詞を聞いてその理由に納得がいった。
「戦車の特性は高い攻撃力と防御力。特にその馬鹿げた怪力をもってすれば、大の大人を持ち上げるくらい容易いことだ」
(そ、そういえば、悪魔に成り立ての頃にそんな話を聞いたかも……)
悪魔として結構大事な知識を忘れていた一誠。後で部長にどやされそうだ、と内心でちょっとビクッとした。
◆◆◆
さて、そんな中イザベラはアタルをぶら下げたままの腕を高々と掲げた。
「わかったか。私にその程度の関節技は通用しない!」
すると反撃とばかりに、掲げた腕を振り下ろし、腕に絡まったアタルの体を背中から膝の上に叩きつけた。
<ガゴォッ!>
「ぐおっ!」
アタルの口から初めて呻き声が漏れる。そして、それからイザベラの執拗な攻撃が始まった。
<ガッ!ガッ!ガッ!>
「ぐうう…」
アタルの背中がイザベラの膝に打ち付けられるたびに、その衝撃で捕えていた腕のフックが緩んでいく。
ついには痛みに耐えかねたアタルが腕を離してしまい、技が外れてしまった。
「やった!イザベラの腕が自由になったわ!」
「フッ…残念だが、お前を相手に手加減するつもりはない。全力でいかせてもらうぞ!」
今度はイザベラがアタルの体を抱えて翔び上がる。
「ゲ―――ッ!あれは『オクラホマ・スタンピード』の体勢!戦車のパワーを生身の人間がもろに受けたらいくら先輩でも一溜まりもない!」
「な、何だって!?」
木場の言葉に一誠の背筋が凍った。
「逃げろーアタル兄!」
「だめだ!もう落下が始まっている。間に合わない!」
一誠の叫びも空しく技は最終段階に入ろうとしていた。
「止めさせなさい、ライザー!」
「申し訳ないがリアス。もうこうなったら俺でも止められない。悪く思うなよ」
「そんな…」
ライザーの口調はいかにも申し訳なさそうだが、その目を見ればいい気味だと笑っているのが丸わかりだった。
(ごめんなさい…イッセー、アタル)
心の中で二人に謝ることしかできないリアス。そしていよいよアタルの体がコンクリートに固められた床に向かって迫っていた。
「アタル!」「アタル兄!」「先輩!」「お兄様!」「兵藤君!」
もうどうすることもできないのか。そんな思いを乗せたリアスたち5人の声が一つになる。
「短い間だったが、楽しませてもらった。兵藤中。その名はこのイザベラの胸にしかと刻みつけておこう」
この技が決まれば恐らくアタルの命はない。しかし、それもまた戦いの世の常。
イザベラはそういうことに関して非常にドライな考えを持っていた。
「さあ、安らかに眠れ―――ッ!!」
相手に向けての最大の敬意として、手向けの言葉を贈るイザベラ。
彼女は己の勝利を確信していた。
―――しかし、
「 …逆…在…術!! 」
―――アタルが何かを叫んだ途端、
「「「「 き、消えた!? 」」」」
―――フッと二人の姿が消え、
<ズガアアアン!>
―――次の瞬間、床を軋ます轟音が鳴り響いた。
―――そして、不思議なことに
「ば、馬鹿な…」
「悪いが、こちらも“技”を使わせてもらった」
―――
皆さんはもうお分かりかと思いますが、アタル兄さんが最後に出したあの技……人間時の兄さんがなんで使えるの?って疑問持った方もいると思いますが、その理由に関しては次回出てくる予定なのでお待ちください。
(ちなみに人間時で使う場合は超人のときより制約が厳しくなっているので、そんなにやたらと使うことができない仕様となってます)
ところで、この技って初見のイッセー君たちからしたら、やっぱり軽いポルナレフ状態になるんでしょうか…