いよいよ今回アタル兄さんの神器が登場いたします。
想像できちゃうよって方は、とりあえず御口チャックでお願いします。
では、どうぞ!
……あ、もちろん感想は大歓迎ですよ!
あれから数年が経っていた。
本当にいろいろなことがあった。
イリナが家庭の事情で海外に引っ越さなければならなくなり、泣きつく彼女をイッセーと二人で宥めすかしたことや、あるときは近くの森で拾った黒猫と白猫をしばらく家で飼ってたこともあった。あの猫は二匹ともよく懐いてくれていたのだが、いつの間にやらいなくなっていた。おそらく、元の飼い主のところに帰ったのだろう。
また、アタル自身にも変化がある。
昔は1人称として“私”というのを使っていたが、やはり子供っぽくないという理由で“俺”に変えていた。もう“キン肉アタル”としての自分はいない―――これからは“兵藤中”として生きるのだと、そういう意味も込めて。
そんなアタルも今や小学生となり本格的な運動ができるようになった。
現在も家の近くの山に通いながら特訓の毎日である。
(流石に前世のようにはいかんだろうが、それでも鍛えておくに越したことはない。…まあ超人時代の癖が抜けてないのもあるが)
超人は戦うことが使命。人間になった今でも心の奥底は強敵との戦いを求め燃えたぎっている。だからこの状況に甘んじてはいけない。もっと強く、逞しくならなければ!
常に強さの先を求め切磋琢磨していく―――これぞ戦士としての本分なり。
「それにしてもここはやけに人が少ない。確かこの山頂に神社があるという話だが……」
ランニングを終え、軽く息を整えながら長い石階段の続く参道を見上げる。
「―――少しお参りでもしていくか」
階段を上がり始めて数十分後、ようやく鳥居が見えてきたところでアタルは違和感を覚えた。まるで自分を拒絶し遠ざけるような空気…それを神社から感じた。
自然に感じるものではない。これには人為的な何かが絡んでいる。
そうアタルが直感したとき、神社から複数の殺気を感じた。
「これほどの殺気……只事ではない!」
この神社で一体何が起こっているのか―――それを知るべく、アタルは気配を消しながら神社にそっと忍び込んだ。
◆◆◆
その頃、この神社の巫女である姫島朱璃とその娘朱乃は襲撃者たちに取り囲まれ絶体絶命の危機にあった。
「さあ、その子をこちらに渡して貰おう。その子は忌々しき邪悪な堕天使の子だ」
「お断りします!この子は私と、そしてあの人との大切な娘なんです!あなたたちのような輩には死んでも渡しません!!!」
「強情な女だ……やはり、心まで堕天使に汚されおったか。この恥さらしめ!こうなればもう容赦はせん!」
男たちが一斉に刀を振り上げる。
「朱乃!」
「母様あああああっ!!!」
朱璃がとっさに朱乃を庇い、今まさに斬り付けられようとしたそのとき―――
「やめろおおおおっ!!!」
「グワァァァ―――っ!?」
小さな影が男の足元に飛びかかり床に引き倒した。
「くっ…こ、子供!?なぜこんなところに?」
「人払いの結界をしてあったはずだぞ」
「結界?……そうか、あの妙な違和感の正体はそれか」
襲撃を妨害した少年―――アタルは、男たちの言葉を聞いてようやく合点がいったと頷く。
「小僧、邪魔をするなら容赦はせんぞ!」
「っ!? そうはさせるか!」
引き倒した男の動きを察知し、一瞬で刀を持った方の腕を取り関節を外す。キン肉王家の長兄としてあらゆる格闘技を修めた杵柄がここに来て役に立った。
腕を外された男は痛みに耐えかね手から刀を離した。
「こやつただの子供ではない! 気を付けろ!」
「囲い込め! 数で押せば問題ない」
「……!」
アタルに敵が群がり、そのうちの一人から斬り掛かられる。
紙一重で回避するも、待ち構えていたもう一人に取り押さえられる。
「し、しまった!」
「何者かは知らんがここで死んでもらおう」
「は、離せっ!!!」
暴れるアタルだが所詮は子供の力、振りほどくには至らない。
「おやめなさい!その子は私たちとは関係ない!」
「煩い!これは見せしめだ。我々に逆らえばどうなるかのな…!」
朱璃が引き止めるも男は耳を貸さず、そのままアタルを袈裟斬りにした。
「ギャア―――ッ!!」
「な、なんてことを……」
あたりに血が飛び散る。斬られたアタルはそのまま俯せに倒れ、動かない。
朱璃は無関係な子供を巻き込んでしまったことに顔を青褪めさせた。
「さあ、今度は貴様らの番だぞ…」
「逃げなさい朱乃!」
「イヤッ!私母様と一緒にいる!」
「フン……ならば二人仲良くあの世に行けっ!!」
男が朱乃に突きを放つ。朱璃がとっさに間に割って入り、その胸に刃が突き立てられる。
「母様っ!!?」
「馬鹿な女だ……こんな忌子を庇わなければ死なずに済んだものを」
刀が引き抜かれ、どさりと倒れこむ朱璃。
身を挺して自分を庇った母に朱乃が縋り付いて呼びかけるが返事は帰ってこなかった。
「母様…母様…ねえ目を覚まして……死んじゃやだよぉ……」
ただ泣きじゃくる朱乃に、無情にも次なる刃が襲い掛かろうとしている。
その様子を、痛みと出血で意識を奪われつつあったアタルはただ見ているしかなかった。
(なんてザマだ……罪もない命が目の前で奪われようとしているというのに何もできないとは!!!)
アタルは悔しさで唇を噛みしめる。人間の子供に過ぎない今の自分にとって状況的に無謀だというのはわかっていた。それでも元正義超人として見過ごすことはできなかったのだ。
だが、挑んでみればどうだ。自分は無様にも地に這い蹲り、この子の母親も救うことがなかった―――その事実がアタルの胸を苛む。
超人であった頃の自分なら、そんなことには絶対させなかったはずだ。
―――――今はただ、己の無力さが憎い…! 力が…自分に力があったなら……!
そのとき、アタルの意識に光が差し込んだ。
◆◆◆
―――何だ……この光は……それにここは一体……?
気が付けば、アタルは見知らぬ空間に立っていた。
辺りは真っ白な何もない平野。そこにただ一人佇む彼に、懐かしい声が聞こえてきた。
『ソルジャー
「……! その声は」
振り返るとそこには髑髏の紋章を象った軍帽を被る一人の青年が立っていた。
「ブロッケンJr!」
『よう、久しぶりだな。 しばらく見ない間に随分ちっこくなったなァ…』
「本当におまえなのか!? 確かおまえはあのタッグマッチで…」
かつて共に戦ったチームメイトがなぜここにいるのか。そう問い質そうとしたとき―――
『おっと!俺たちがいることも忘れてもらっちゃ困る』
『カーカッカッカ! その通りだ』
『…で、ござるな』
「…っ!? お、おまえたち!!」
さらに別の方から声が聞こえ、そちらに目を向ければアタルもよく知る3人の顔ぶれがあった。
「バッファローマン、アシュラマン、ザ・ニンジャ!!」
『どうだい?これでかつての超人血盟軍のメンバーが勢ぞろいってわけだ』
「一体これはどうしたことだ…。おまえたちはアシュラマンを除き、全員フェニックスチームとの戦いで討ち死にしたはずでは…?」
『カーカッカッカ。この3人はともかく、私はキン肉マンたちを大阪城のリングに連れていくために釣り天井の下敷きになって死んだのよ』
『いや、誰も聞いてねーよそんなこと』
『何ィッ!!?』
『これ、二人とも止めぬか。話が進まん』
いがみ合うアシュラマンとブロッケンを見て、こいつらは本当に変わっていないな…と当時を懐かしく思うアタル。
「それでここは一体どこだ?なぜ死んだはずのお前たちがここにいる?」
『ここはソルジャー、貴殿の精神世界の中でござる。そして拙者たちはあの戦いで死んだ後、どういう
「
『なんでも神が人間に与える規格外の力のことらしい。我らのように力を持った種族の魂が封じられている場合もあるそうだ』
「規格外の力……そんなものが本当に俺にあるのだろうか。超人だった時と違い、今はただの人間の子供なんだぞ」
『何を弱気な。あんたは俺たちの尊敬すべきキャプテンだ。ただの人間で終わるような器じゃないことくらい、ここにいる誰もが知ってるぜ』
バッファローマンの言葉に他のメンバーも頷く。
『あんたはいつも言ってたじゃないか。“己に誇りを持て”ってさ。だったら、あんたも信じるべきじゃないか―――自分の“誇り”ってやつを』
「……!」
思わす顔を上げて4人を見渡す。彼ら一人一人の眼差しは自分を励ましているかように暖かく、そしてそれに自分も元気づけられるのを感じた。
「みんな…すまない。俺はこの姿に転生してから一番大事なことを忘れていた。力があるかどうかなど問題ではない……ただ己の信条に“誇り”を持ち、それを貫く“意志”が必要だったのだ」
仲間たちの声で立ち直ったアタルは再び戦う決意をする。
「俺はもう立ち止まらない。あの母娘を必ず助けて見せる」
『それでこそ我らの
『じゃあ、そんなあんたに俺たちからプレゼントだ。受け取ってくれ!』
ブロッケンJr、バッファローマン、ザ・ニンジャ、アシュラマンの4人が一斉に手を翳すとその中心に暖かい光が集まっていく。
やがてその光は小さな塊となりアタルの元へふわふわと飛んでくる。
光を手にした途端、現れた物にアタルは驚愕した。
「こ、これは……私が以前使っていたソルジャー・マスク!」
迷彩色に彩られた、キン肉族特有のキン肉カッターが付いたマスク…。
間違いなく、キン肉星王位争奪サバイバルマッチ準決勝で自分が使用していた当時の品だ。
なぜ今になってこれを……
『それを被れば貴殿は前世で超人であった頃の肉体を取り戻すことができるでござる。おそらく【業火のクソ力】も使えるようになるはずだ』
「…!それは本当か!」
『ああ、俺たち全員が保障するぜ。ちなみにそいつの名前は【
「
アタルはその名を噛み締めるように反芻する。
『あんたには今までたくさんのものを貰った。今度は俺たちがお返しする番だ』
『さあ、行って来い! 俺たちの
仲間たちの声援を背に受けながら、アタルはマスクを被り、その紐を一つ一つ結んでいった。
やがてすべての紐を結び終えると振り返らずに、かつての仲間たちに別れを告げた。
「……行ってくるぞ。我が同胞よ」
◆◆◆
今まさに朱乃に男たちからの凶刃が襲い掛かろうとした瞬間―――その行く手をまばゆい光が阻んだ。
何事かと光の出所に目を向ければ、さきほど斬り捨てた少年の体が宙に浮いてるではないか。
そのあまりの神々しさに一同は思わず一斉に動きを止めて見入ってしまう。
すると、光に包まれた少年の体に変化が現れた。
その両腕・両足・体幹の筋肉がだんだん膨張していき、やがて服を突き破る。
加えて背丈も子供から大人ぐらいまで成長し、体つきも太く逞しくなっていった。
そして全裸になった体にマスクと服が装着されると、先ほどまでと明らかに見違えるような偉丈夫が立っていた。
「な…なんだおまえは!!」
「まさか、神器の所有者!?」
驚きを口にする男たちに、少年……いや覆面の男は、
「貴様らに名乗る名などない……」
そう言って迷彩色のマスクから覗く黒の瞳で、一行を睨みつけた。
今ここに、キン肉アタル―――完 全 復 活 !!
神器によって現役時代の肉体を取り戻したアタル兄さん。
やったね兄さん!
あ…でも次回はアタル兄さんの代名詞とも言えるあの必殺技が…(ガクブル
とりあえず、次回もお楽しみに!