今回は少し書き方を変えて、イッセー君による視点を入れてみました。
アタル兄さんが駒王学園でどういう生活を送っているかその一部をご覧ください。
……では、どうぞ!
物語は始まった! の巻
SIDE イッセー
俺は兵藤
いきなりでなんだが、俺には自慢の兄貴がいる。
―――兵藤
頭脳明晰、スポーツ万能、おまけに弟の俺が言うのもなんだがかなりの男前(“イケメン”じゃないからな?そこんところ間違えないように)、……と、まさに美点という美点をこれでもかと詰め込んだような完璧超人だ。
そんな人物だから、当然俺の通う
それに比べて弟の俺はと言えば、運動はそれなりに得意だけれども本当にそれだけで、他は大体平均並み。特に女性関係に関してはこれまで一度もモテたことがない!
今通ってるこの駒王学園だって、数年前まで女子校だったこともあって女子の割合が圧倒的に多いのに今の今まで彼女の一人もできた試しがない。モテるのは一部のイケメンだけで、俺なんて女子からすれば眼中にない…いや、廊下に落ちているゴミクズ程度の認識しか持ってもらえていないんじゃないか?
そうした理不尽さに俺は、「やっぱり男は顔なのかよー!」と、思ったこともある。だけど、そんなときにアタル兄から言われたある言葉が、俺の考えを改めさせた。
『イッセー、覚えておけ。男は“
妙に実感のこもった、説得力ある言葉だった。アタル兄…あんた、カッコよすぎるぜ。そんなこと言われたら、今までイケメンどもに嫉妬していた自分が凄いちっぽけに思えてくる。
やっぱり、アタル兄はスゲーや…。俺なんかじゃとても敵わない…。でもそれが何故か逆に誇らしい。
―――だからだろうか。俺にとってアタル兄は密かな“憧れ”であり、そしていつの日か超えたい“目標”なのだ。
…それはさておき、そんな俺にもいよいよ幸運という奴が舞い込んできたらしい。なんと美少女からの告白!お兄様、あなたの仰った通りでした。男は“面”だけじゃなかったんですね!ここにちゃんと俺の“中身”を見てくれる女の子が…。
俺の人生初の彼女―――名前は天野夕麻ちゃん。黒髪の綺麗な、スレンダーの女の子。もうめちゃくちゃかわいくて、出会った瞬間に一目ぼれしました。
勿論、告白されたその場で即OKを出し、ついでに今度デートに行く約束もしてきたぜ。
これで俺も彼女持ち、リア充の仲間入りだ。松田や元浜の二人にも自慢したいけど、まずはアタル兄に報告しなくちゃな。アタル兄には、俺に彼女ができるまでいろんな意味で迷惑掛けてきたからなぁ…せめて夕麻ちゃんのことは一番最初に紹介したい。……でも、学年違うし、学校じゃ直接会わせるの難しいんだよな。どうしよう?
―――まっ、とりあえず今は彼女ができたことの報告だけでもしとこう。
SIDE OUT
◆◆◆
「……何?彼女?」
「ああ!夕麻ちゃんっていうんだ。かわいいんだぜ。明日デートにも行くんだ」
アタルは、朝食中に弟から「彼女ができました」と宣言され、一瞬箸を止めてしまった。
「そ、そうか……それは良かったな。おめでとう」
「ありがとう!アタル兄ならそう言ってくれると思ったぜ」
照れながら話す一誠は本当に嬉しそうであった。
(そうか…ついにイッセーにも恋人が…。思えば、こいつにはどことなくスグルと同じ“恋愛に縁がなさそうな雰囲気”がしていたから、正直心配だったんだが…これで俺も少し肩の荷が下りたか?)。
とにかく、今は弟を祝福しよう…そう思うことにしたアタル。
だが、彼の心の中では弟の話にどこかしっくりとこない、しこりの様なものを感じていた。それが何なのかは当の本人にもわからなかった。
「…なら、デートの日は赤飯を炊かんといかんかな?」
「あ、アハハハ…、そいつは流石に気が早いぜ兄さん。初めてのデートでそこまでは…」
「……おまえ、嘘をつくとき鼻のところが赤くなるんだが、知ってたか?」
「え、マジでっ!?……あ」
「…フッ。もちろん“嘘”だ」
「き、きったねぇー!」
「こんな単純な手に引っかかるおまえが悪い」
ハア…と、弟のわかりやすすぎるリアクションに流石のアタルも溜息をこぼす。
高校に入ってからは特に、この「下半身に直結した思考」が顕著になってきたような気がする。
やはり、あの悪友二人の影響もあるのだろうか。この間も女子剣道部の更衣室を覗いた咎で、兄として一緒に謝りに行ったのを思い出す。
(顔はさして悪くないのだから、こういうところを直せば少しはマシになるだろうに…)
物事とはそうままならないものなのである。
「もうこんな時間か……そろそろ登校せんと間に合わんぞ」
「あっ、ホントだ!急がねえと…ごちそうさま!」
「弁当を忘れるなよ。今日はおまえの好物だ」
「いつも悪いな、アタル兄。俺料理できないからなあ」
「何、気にするな」
今、アタルたちの両親は夫婦水入らずで3泊4日の温泉旅行に出かけている。
こういうときは、大概アタルが家事を担当していた。一誠も多少手伝いはするものの、家事全般の能力はアタルの方がはるかに勝っていた。
「…さて、そろそろ俺も出かけるとしよう」
テーブルの食器を片付けると、アタルも高校生としての1日をスタートさせるのであった。
◆◆◆
「オッス兵藤」
「おはよう兵藤君」
「ああ、おはよう」
教室に着いたアタルはいつものようにクラスメイト達と挨拶を交わす。
今でこそ高校生の肉体ではあるが、その中身はすでに齢四十に近いアタルにとって彼らは子供も同然だ。その上彼自身も自分が不器用な性格をしている自覚があったので、入学当初はクラスに馴染めるか心配したものだった。
実際始めの頃は口数が少なく、どことなく気難しそうな雰囲気を出していたアタルに話しかける者は少なかった。だがある時、学園の外でチンピラがクラスメートの女子に絡んでいるところに遭遇し、それを苦も無く叩きのめしたことから徐々に彼に声を掛ける者が増えていった。
今ではむしろ、無駄に大人びた性格のアタルを“クラスの頼れる兄貴分”として慕っているくらいで、よく相談や頼みごとをしてくる者も多い。
例えば、
「兵藤、数学でこの問題が分からないんだけど教えてくんない?」
「兵藤君、昨日花壇の水やりやってくれたんでしょ?ありがとう!」
「この前のおまえの言葉でようやく決心がついたんで、思い切ってあの子に告白したんだ…。そしたら、OKだって!ありがとう!おまえは俺の恋のキューピットだよ」
「兵藤君が喧嘩の手ほどきをしてくれたおかげで、いじめられなくなったよ」
…などといった感じである。
アタルの方も、余程のことでなければ嫌な顔一つせず引き受けるため、その名声はますます高まり、いつしか周囲から「学園のお兄様」とか「大兄貴」などと呼ばれるようになっていた。
もっとも、アタル自身はそう大したことをしたつもりはないが…。
そんなアタルに今、一人の少女が近づき、声を掛けた。
「御機嫌よう兵藤中君。今日もすごい人気ね」
「ああ、グレモリーさんか。…何、君たちに比べれば大したものでもないさ」
先ほど登校してきたばかりの、この紅髪の少女はリアス・グレモリー。この駒王学園の「二大お姉さま」と称されるほどの美少女だ。
彼女とは今年になってから初めて同じクラスになり、今日まで話した経験はほとんどない。
「こうしてお互い直接話すのは初めてかしら」
「そうかもな。意外なことに」
この珍しい組合せににクラス中の人間が騒めき立つ。
「あのグレモリーさんと兵藤君のツーショットですって!?」
「ああ…絵になるわ~」
「兄貴ー!俺だー!結婚してくれー」
勝手に盛り上がっている周囲を他所に、二人は淡々と会話を続けていた。
「一度あなたとは話をしてみたかったのよ」
「俺と?フッ…冗談はよせ。俺はそこまで面白い人間じゃない」
「あら、そうかしら?少なくとも私の親友はあなたに興味がおありのようよ?」
ちらりと視線を動かすリアスの見つめた先には、向こうの席でこちらから慌てて顔を逸らした黒髪の少女の姿があった。
「彼女は確か…姫島さん、だったか?彼女がどうかしたか?」
「最近気が付くとあなたの方ばかり見てるのよ、あの子。何か心当たりある?」
「そう言われてもな…」
突然尋ねられて、顎に手を持っていき考え込むアタル。しかし彼の記憶の中にそれらしきものは思い当たらなかった。
そもそも彼女とはリアス同様今年になって同じクラスになった初対面も同然の相手なのである。しかも今日まで接点らしい接点もなかったのだ。
「…すまないが、俺には思い当たる節がない。それとも、俺が気付かぬうちに何か彼女に失礼なことでもしたのだろうか?」
「あ、いや…恐らくそれはないと思うわ。ごめんなさい…私の気のせいだったかも。今のは忘れてちょうだい」
そう言って、リアスは頭を下げて自分の席に戻っていく。
アタルとしてはどこか釈然としなかったが、これ以上追及したところでさして意味はない。そう思いとどまった。
「…そういえば、グレモリーさん。君だけ卒後の志望調査アンケートが未記入なんだが、早めに出してもらえないか。俺も学級委員としての職務があるんでね」
「わ、わかってるわ!だけど、ちょっと家庭の事情があって……もう少し待ってもらえない?」
◆◆◆
昼休みになり、アタルは2人分の弁当を片手に屋上へと向かう。
そこでは既に先客が腹の虫を鳴らして待ち構えていた。
「待たせたな塔城。少々遅くなってしまった」
「いえ、先輩。私も今来たばかりなので…気にしないでください」
アタルに向かってペコリと頭を下げる小柄の少女は1年生の塔城小猫。
彼女とは1か月前昼休みに偶然この屋上で出会い、そのときに彼女がお菓子の類ばかりを食べているのを見かねたアタルが、栄養バランスの良い手作り弁当を持ってくることを申し出て以来の仲だ。
当初は小猫も弁当を作ってもらうことに遠慮気味であったが、そこは「弁当を2人分作るも3人分作るも大して変わらない」と半ば強引に説得した。
おかげで、今では小猫もアタルの弁当を甚く気に入り、こうして毎日屋上で一緒に昼食をとっている。
「今日は和風テイストにしてみたが…どうだ?」
「もきゅもきゅ……ふぁい。おいひいでふ」
一心不乱に弁当を頬張る彼女を見ていると、ふと昔飼っていた猫たちを思い出す。どうしてかはわからないが。
アタルは何気なくその白い髪に手を伸ばし、優しく撫で始める。小猫の方もそれも止めることなく身を委ね、終いにはうっとりとした表情を浮かべた。
しばらくお互いがその感触を堪能していると、急に小猫が話を切り出した。
「先輩。不躾で申し訳ありませんが、今日も放課後に稽古をつけていただけませんか?」
「…それは構わんが、いいのか?君もどこかの部活に入っていると聞いたが」
「そこは大丈夫です。呼び出しとかがなければ基本いつ顔を出してもいいので」
「そうか。ならばいいだろう。また、いつもの場所でいいか?」
「はい…」
この小猫という少女は可愛らしい外見に似合わず格闘技を嗜んでおり、学校でのアタルの噂も耳にしていたことから、初対面したその日に手合わせをお願いしていた。
アタルとしても特に断る理由がなかったので引き受けたが、実際に戦ってその高い実力に目を見張ることになった。
(ここまでの逸材はイリナ以来だ……)
小猫の体術はアタルの目から見てもなかなかのもので、打撃から投げ、関節技などあらゆるジャンルに精通していた。一方のアタルはそれに対し、長年の超人レスラー生活で培った技術を駆使して対応する。
一進一退の攻防の末、お互いに決着がつかず、結局その場は痛み分けとなった。しかし、小猫の方はアタルが先程の戦いでも本気を出しておらず、実際は自分より数段実力が上だということに気付いていたようで、それからはこうして何度もアタルに稽古をお願いするようになった。
その際、アタルから小猫にいくつか技を伝授することがあったが、彼女の変幻自在の戦闘スタイルが某中国の超人を連想させたため、教える技も彼のものをモチーフにしたのは言うまでもない。
「では、また放課後…よろしくお願いします」
「ああ、了解した」
昼休みも終わりに近づいたため、弁当箱を片付け、屋上で小猫と別れる。
今アタルの頭の中で、「今日は小猫にどの技を教えるか」についての考えが巡っていた。彼も何だかんだ、この年になって「人にものを教える」という行為に喜びを見出し始めていたりする。
◆◆◆
その翌日、一誠は意気揚々と人生初めてのデートへと繰り出していった。
弟が出かけてしまい、家事もある程度済ませてしまったアタルは、家で一人することもなくしばらくボーッとしていたが、
「……ここで時間を浪費するのはもったいない。トレーニングでもするとしよう」
と、僅かな着替えと食料だけをもって、彼が昔から使用している秘密の訓練場に向かった。
そこは、鬱蒼と木々が茂った森の中に佇む洞で、中にはサンドバッグやベンチプレスなどのトレーニング機材と簡単なプロレス用のリングが置かれていた。
中に入り荷物を置いたアタルは早速神器を発動させる。
「
アタルの顔にソルジャーマスクが装着され、肉体も人間の“兵藤中”から超人である“キン肉アタル”のものへと変わっていく。
変身を終えると、軽く柔軟運動を済ませ、いよいよいつもの行っている訓練メニューを開始する。
「さて……まずはベンチプレス500キロを100回だ」
アタルは器具の下に横になり、超重量のベンチプレスを難なく持ち上げた。
やがて目標の回数に達すると、30秒のインターバルを置いてこれを合計10セット続ける。
それが終わったら次は打撃技のトレーニングだ。もう何度も叩いてボロボロになったサンドバックの前に立ち両手を構える。
アタルが放った拳からは風を切り裂くような音が鳴り、叩きつけられたサンドバックが衝撃で大きく天井に向かって揺れた。
さらに天井にぶち当たったサンドバッグが今度はその反動でアタルにものすごい速さで迫ってくる。
だが、アタルはそれをマスクから覗く瞳で冷静に見つめながら、今度は利き足から強烈な蹴りを叩き込む。
アタルの方へ直進していたサンドバッグが横からの蹴りで大きく「く」の字に曲がる。すると間髪置かずにアタルの両腕からものすごいラッシュが繰り出された。
<ドドドドドッ!!!>
まるでマシンガンを撃ち込んだかのような音を響かせて、アタルは拳の嵐を浴びせる。
やがてアタルの打撃に耐えきれなくなったサンドバッグの布地から大量の石や砂が零れ落ち、この訓練の終わりを告げた。
「また新しいのに変えねばならんな」
そう呟いて、アタルはこの草臥れたサンドバッグを天井から垂らされた鎖から引きずり下ろす。
そうして基礎的なトレーニングを終えたアタルは、最後に木人形を使っての技の特訓に入る。
読者の諸君に言っておきたいが、木人形と生身の超人の身体とは当然技を掛けたときの感覚などに雲泥の差が生じる。しかし今のアタルに、技をかけるスパーリングパートナーといえる相手がいない以上、こうなってしまうのはやむを得ないのである。
それでも、「技の確認をする」という点においては人形相手でも事足りるため、それなりに意味のある訓練ではある。
神器に覚醒してからのアタルは、超人時代の勘を取り戻すために密かにこれらのメニューをほぼ毎日、時間を見つけては続けていた。
「……それにしても、この肉体には驚かされる。王位争奪戦に参戦していたときの俺は、ベテラン超人とは言え既に肉体のピークを過ぎていた。しかし、今はまるで全盛期の若さを取り戻したかのように体が軽い」
これも神器の効能なのだろうか、とアタルは内心で思った。
現に、神器に覚醒したばかりの頃に比べて今の自分は筋力だけでなくパワーやスピードも大幅に上がっている。
これは裏を返せば、鍛えれば鍛えるほどまだまだ成長する余地があるということだ。
「……もし、あのときの俺にこの力があれば、運命は変えられたのだろうか」
もう終わってしまったことに対して、もしもの話をしたところで何の意味もない。
だが、アタルの心の中では未だに前世での戦いが未練として残っていた。
(できることなら試してみたい……俺の力がどこまで通用するのか)
しかし、今は平和な世の中。自分の力が必要になるということはその平和が脅かされるということ。キン肉王家の男として、そのような事態は決して望むべきではない。
戦士としての自分と、王家の者としての自分―――そのジレンマに彼は今も悩まされている。
だが、その思考も突如彼を襲った妙な感覚によって中断される。
(何だ!?この胸騒ぎは……まるで大事な何かを失いそうになるときの……)
そのとき、アタルの脳裏に今朝胸を弾ませて出かけていった弟の顔が過る。
「…まさか!イッセーの身に何か!?」
こういうときの自分の直感が外れたことはない―――それを知っていたアタルの決断は早かった。
神器を解除する間もなく、すぐさま洞を飛び出し、森の中を駆け抜けていく。
「イッセー…、俺が行くまで早まるんじゃないぞ!」
◆◆◆
当の一誠はそのころ、人生初の彼女の変わり果てた姿にいろいろと言葉を失っていた。
「え…?夕麻ちゃん、何…? その…黒い羽、何かの演出?」
「フフフ、一応楽しかったわ。あなたと過ごしたわずかな日々。まるで初々しい子供のままごとみたいだった」
件の彼女―――天野夕麻の目つきが冷たく怖いものに変わった。声音も大人っぽい妖艶なものになり、口元には冷笑が浮かんでいる。
「ねぇ…私のために死んでくれる? イッセー君」
そう告げた彼女の手に光の槍が握られる。そして次の瞬間には一誠の身をその槍が貫いていた。
あまりに一瞬過ぎて痛みとかそういうものは感じなかった。ただ、今の一誠の心を占めているのは疑問―――――。
(どうして……こうなったんだ……俺が……何かしたかよ……)
本日のデートの締めくくりということで人気のない公園に連れ出され、いろいろと心の準備をしていた矢先にこの出来事。
正直一誠にはわけがわからなかったのだ。
ぽっかりと空いた腹の穴から大量の血を流し倒れこんだ一誠に、ツカツカと足音が近づいてくる。
「ゴメンね。あなたが私たちにとって危険因子だったから、早めに始末させてもらったわ。恨むならあなたのその身に神器を宿させた神を恨んでちょうだい」
耳元に届いたその声で、一誠は「これから自分は死ぬんだ」とようやく気付いた。
意識がどんどん遠ざかっていく。このまま眠れたらさぞ気持ちいいんだろうが、そうすれば間違いなく自分は死ぬ。
もっといろいろやりたいことがあった。結婚もしたかったし、夢のハーレムだって作ってみたかった。
しかし、今更どうしようもないではないか。こんな状態でどうして助かる?
『イッセー、諦めなければ絶対に運命は変えられる。“
尊敬する兄の言葉が今になって心に沁みる。
―――でも、これは流石に無理だぜアタル兄。俺、やっぱあんたのようにはなれねーよ…。
自然と涙が流れていた。それが死ぬことへの恐怖から来るのか、それとも兄の期待に応えられなかった自分の情けなさから来るのか、一誠にはわからなかった。
「イッセェェェェェェェェェッ!!!」
< ドゴォッ!! >
誰かが何かを殴った音と、自分に呼びかける声が聞こえてくる。
もはや目も開けられない自分にはその声の主が誰かわからない。だが、その声にどこか聞き覚えがあるような、そんな気がした。
「目を開けろイッセー!死ぬな、死ぬんじゃない!」
自分を呼ぶ声がいよいよ聞こえなくなってきたところで、一誠の意識は完全に途絶えた。
ここのアタル兄さんは、人間時は「弟に優しい良いお兄ちゃん」であることを心がけてます。
でも一度マスクを被ったら……ヒエッ!?
次回、アタル兄さんの怒り爆発!?