今回文章がちょい短め且つ戦闘が地味めになってしまいましたが、どうかご容赦ください。
―――やっぱり、プロレスの技は描写が難しいですね…(苦笑)
それでもよろしければ、どうぞ。
SIDE アタル
俺はイッセーの危機を察知し、訓練場を飛び出してから全速力で駆け出して行った。長い森を抜けると、街に出る。
空を飛ぶことも考えたが、それでは街の人々に目立つ可能性がある。できれば一般の人々にこの姿を晒したくなかった俺は家々の屋根を跳び移り人目を避けながら移動することにした。
―――どこだ…一体どこにいるイッセー!?
焦りばかりが募る中、あるエリアに到達したとき俺の神経が不思議な感覚を捉えた。
これは以前にも感じたことがある。―――俺のような人間を無意識に拒絶するような不気味な感覚。いわゆる「結界」と呼ばれる代物であることを。
「間違いない。イッセーはこの中にいる!」
俺は確信した。
そのまま結界に包まれたエリアを進んでいく。すると、目には見えない壁の様なものにぶち当たる。
―――ここが結界の本体か! ここを抜ければイッセーが!
俺は拳を力強く握りしめる。
「ウオラァッ!!!」
たかが結界が俺の行く手を阻むな!そう言わんばかりに俺は邪魔な壁に向かって全力のストレートを放つ。壁は一瞬で破片をばら撒きながら砕け散った。
―――頼む…間に合ってくれ……!
そう心の中で祈りつつ、俺は結界の中心部を目指した。
しばらくして公園と思わしき広場へと到達し、そこで俺はあってほしくなかった最悪の光景を目の当たりにする。
俺の眼前には血だまりの中に倒れ伏す最愛の弟と、その傍らで嘲笑を浮かべ悦に入っている黒い翼を生やした女の姿。
それを見た瞬間に俺の体を燃え滾る怒りが支配した。
「イッセェェェェェェェェェッ!!!」
気付けば俺は、イッセーを手にかけたであろう女の顔面に拳を叩きつけていた。
凄まじい勢いで吹っ飛んでいく女。だが、俺はそれに目もくれず、血まみれで倒れているイッセーを抱え起こした。
「目を開けろイッセー!死ぬな、死ぬんじゃない!」
既に脈も弱々しくなっていたイッセーに俺は必死に呼びかけるが、まったく反応を示さない。ついにはその鼓動も感じ取れなくなった。
俺の腕の中でイッセーの身体は段々冷たくなっていく。
―――このままでは確実にイッセーは死ぬ!
俺が顔を青褪めさせたとき、先程殴った女が起き上がって俺に怒りの形相をぶつけてくる。
「よくもやったわね!おまえは一体何者!?」
何か喚きたてているようだが、今の俺の耳にはただの煩わしい声でしかない。
…だが、これが逆に俺に少しばかり冷静さを取り戻させたのは事実だ。
「……下等な人間の分際で、私を無視するんじゃない!」
突然女が手に光の槍を出現させ、それを俺に投げつけてくる。その黒い翼といい、どうやらこの女、人間ではないらしいな…。
投げつけてきた槍もそれなりに威力のある武器のようだが…スピードが乗ってない上に、軌道が直線的で至極読みやすい。超人である今の俺なら難なく受け止められるレベルだ。
こんなもので俺は殺せない……。
「馬鹿な!? 受け止めたですって!?」
驚愕する女に向かって俺は受け止めた槍を投げ返す。咄嗟のことで女も反応できなかったのか、槍は女の片翼を貫き、女はそのまま公園に植えられた木の一本に縫い留められる。
「グガアッ!?き、貴様ァ…」
まさか、己の武器で傷つくとは思わなかったのだろう。女がこちらを睨む目つきがさらに鋭くなる。だが、翼に刺さった槍でしばらくは身動きが取れないはずだ。
今はこんな女に構っている場合ではない―――――。
「イッセー、今助ける……」
俺は自身のマスクを捲り、【フェイス・フラッシュ】をイッセーに向けて放った。
イッセーの傷がその光を受けて徐々に塞がっていく。
「な…何なのこの光は!? まさか、おまえも神器使い!?」
女も驚いているようだ。
やがて、イッセーの腹に開いた穴が塞がり、止まっていた心臓もその活動を再開した。
よかった……これで一先ずは安心だ。
「し、信じられない…。死んだ人間を何の代償もなしに生き返らせるなんて―――それこそ“神の奇跡”でもなければできないはずよ!」
―――さっきからうっとおしい女だ。誰のせいで俺の弟がこんな目にあったと思っている!?
俺は胸に沸き立つ感情を抑えつけながら、イッセーをその場に横たえ、女に背を向けた姿勢でゆっくりと立ち上がる。
女の方も今さっき翼に刺さっていた槍を抜いたようで、既に戦闘態勢を整えていた。
「フフッ…でも、これは逆に好都合かしら? イッセー君の神器はごくありふれたつまらないものだっただけど、あなたのはとても素晴らしい力を秘めているようね。殺そうかと思ったけど気が変わったわ。あなたを生け捕りにして“あの方”の前に差し出す。きっとお気に召すと思うわ」
勝手にベラベラと喋り尽くした女は、先程の槍を構えて冷たい笑みを浮かべて見せる。
「さあ、私と一緒に来てもらうわよ。名も知らない覆面さん?」
それに対し、俺は静かに振り返ってこう言い放つ。
「……今日の俺は気が立っている。ましてや、貴様のような下種は例え女であろうと容赦はしない。……死にたくなければ、とっとと失せろ!」
「……人間風情が随分とデカい口を叩くじゃない。あまり調子に乗ると本気で殺すわよ」
「……やれるものならやってみろ」
俺が最後に放った一言を開戦の合図に、女が槍を構えた状態で突っ込んできた。
◆◆◆
(さっきは不覚をとったけど、もうあのような“まぐれ”は起こらないと知りなさい、人間)
再び槍を手にした天野夕麻こと、堕天使レイナーレは内心でほくそ笑みながら、無防備に立ったままのアタルめがけ突っ込んでいく。
先程片翼を槍で突き刺され多少ダメージを受けたものの、この程度なら飛行するのに問題はない。
所詮相手は人間。さっきは槍を受け止められはしたが、それでも当たりさえすれば勝つのはこちらだ―――――
レイナーレは数回の羽ばたきで自身の速度をトップスピードまで持っていくと、その勢いでアタルに急接近する。
彼女たち堕天使の強みはこの機動力にある。翼を持たない人間がこの速さに着いてこれるはずがない。
―――だが、次の瞬間彼女の自信は脆くも崩れ去った。
「…なっ!?」
いざ槍を突き出した瞬間、忽然とアタルの姿が消えたのだ。
(一体どこに!?)
「俺はここだ」
「!!」
答えは、レイナーレの上空から返ってきた。
(いつの間にあれほどの高さを!?)
レイナーレは驚愕する。たかが人間と思っていた相手があの一瞬で自分の遥か上まで跳び上がっていたのだ。その身体能力は並の人間の比じゃないことは明らかだ。
「……戦いにおいて、攻撃をする瞬間が一番隙ができやすい」
そう呟くと同時に、アタルは急降下しながらレイナーレに『ムーンサルト・プレス』を放つ。
(愚かな。あんな見え見えの攻撃が通用すると思ってるの?そんなもの着地点が分かってれば簡単に躱せるわ)
レイナーレははわずかに体を後退させて相手の自爆を誘った。―――だが、
「…かかったな。こいつは囮だ」
「なっ!?」
アタルは自身の技がレイナーレに躱される寸前、体を宙で反転させて彼女の片足を掴み、そこに自身の両足を絡めた。
「本当の狙いは……この膝十字固めだ―――っ!」
レイナーレの膝を完全に極めた状態で地面に落下するアタル。次の瞬間ガキィッという鈍い音が鳴り響いた。―――レイナーレの膝関節が破壊された音だ。
そしてその後から、レイナーレをこれまで感じたことのない激しい痛みが襲った。
「ガアァッ!!?」
堕天使は人間より遥かに強靭な肉体、生命力を持っている。しかし、そんな彼らでも剣で傷つけられれば痛みを感じるし、それが我慢出来なければ悲鳴も出る。
ましてやこのような体を内部から破壊される類の痛みに彼らは全く耐性がなかった。
彼女は皮肉にも、下等と思っていた人間相手に無様に悲鳴を上げてしまったのだ!
「…どうだ、我々超人が放つ
(超人…?)
一瞬レイナーレの耳に聞きなれない単語が聞こえてきたが、今は痛みでそれを考えるどころではない。
そして、地に蹲る彼女に対しアタルは背後からその黒き翼を彼女の両腕ごと抱え込んだ。
…一体何をする気なのか?
「貴様のこの翼は厄介そうだからな……早めに潰させてもらう」
「ま、まさか……だ、ダメ!それだけはやめて!」
「逆羽根折り固め―――っ!!」
翼・両腕を自分の両脇に抱えた状態でアタルが前転し、レイナーレもそれに釣られて後頭部を地面につける体勢になる。そして最後にアタルがブリッジの体勢で両足を着くと、彼女の両腕・両翼の関節は逆方向に引っ張られ……
< バキバキバキッ!!! >
「ギャアアアアア―――ッ!!?」
両腕は破壊され、その美しい翼も無残に引き千切られた。
「ア"…ア"ア"ア"ア"ッ!!!」
「……痛いか?そうだろうな。だが、俺の弟が受けた痛みはこんなものではないぞ!」
千切った翼を投げ捨て、痛みにのたうち回るレイナーレを見下ろしながら言い放ったアタルの瞳が冷たく光る。
(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いこわいこわいこわいこわいこわいこわいコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ………!!!)
片足と両腕が使い物にならない上、翼を失ったレイナーレに目の前の“化け物”から逃れる術はない。
今、彼女の頭の中を支配しているのは「恐怖」の二文字であった。
「もはや、戦う気も失せたか…。なら、せめてもの情けだ。心安らかにあの世に送ってやろう」
自身の
だが、その行く手を闇色の魔力を纏った閃光が阻んだ。
「「っ!?」」
「そこまでよあなたたち。私の領内でこれ以上の好き勝手は許さないわ」
突然の乱入者に驚くアタルが目にしたのは美しい紅色の髪をたなびかせた、自分のクラスメートである少女の姿。
「リアス…グレモリー……」
ここでまさか知人に出会うとは思っていなかったアタルの口から無意識にその名がこぼれてしまう。
「…? あなた、私を知ってるの?どこかで会ったかしら?」
一方のリアスは目の前の覆面の男にまるで見覚えがない。……いや、あまりにも姿が変わりすぎているからそれも仕方がないのだが。
(逃げるなら今しかない…!)
一方のレイナーレは、この好機を逃すまいとすぐさま緊急避難用の転移魔法陣を展開させる。
「…! しまった!」
「あっ、待ちなさい!」
気付いたアタルがそれを阻止しようとするも、リアスに制止されたために、まんまとレイナーレの逃走を許してしまう。
「…! なぜ止めた!?」
「なぜって…訊きたいのはこっちよ!」
リアスがこの場所に転移してきたのはついさっきだ。事情が全く分からない以上、そう言いたくもなるものだ。
「あなたは一体何者なの?さっきの堕天使とはどういう関係?」
それと…、とリアスが倒れている一誠の方へ視線を移す。
「あそこに倒れているの……うちの学園の生徒よね。名前は確か…兵藤一誠君、だったかしら。まさか、彼に関係する話?」
「……」
リアスからこうも立て続けに質問されても尚、黙して語らないアタル。
だが、彼の頭の中ではこれ以上自身の正体を隠し通すのは難しいと判断していた。
先程の自分の発言で少なくともリアスと知り合いであることは容易に想像がつくだろうし、傍らで倒れている一誠との関係を洗われたら正体がばれるのも時間の問題だろう。
アタルは観念したかのように自身の顔を包んでいたソルジャーマスクを脱ぎ出した。
マスクの下から素顔が露わになるとともに、その肉体は超人から人間のものへと戻っていく。
「あ、あなた……!?」
覆面男の正体に流石のリアスも驚きを隠せなかった。
「兵藤君……あなただったの」
「そうだ……この覆面男の正体は、俺だよ。グレモリーさん」
人気のない公園に今、元【超人】だった少年と、【悪魔】の少女が向かい合って佇んでいた。
「アタル兄さんはスグルと違って敵に手心を加える真似はしないだろうなぁ…」
と思ったので、結局残虐ファイトになりました。
レイナーレさん、ごめんなさい m(__)m
次回、イッセー君は果たして悪魔になるのか?兄さんはどういうスタンスで行くのか?
それが明らかになると思います。
では、またお会いしましょう。(更新遅くなると思いますので気長にお待ちください)