仮面ライダー555 Angel Awakening 作:ファイ Φ
第二話
数週間前の夜、灰澤市の一画にある住宅街にはいくつものマンションが建ち並び、その内の一つの建物の屋上に一人の女性が立っている。その女性ー小林明菜がここに来た理由は一つ、自殺するためだ。
進学と同時に学校のある灰澤市に引っ越し、一人暮らしを始めた明菜の人生はある時まで順風満帆だった。美人で優しい性格の彼女は入学後、すぐにクラスの人気者になった。多くの友達にかこまれながら部活に勉強と、学生生活を謳歌していた。そんな中、ある日、明菜がマネージャーを務めているバスケットボール部の先輩が明菜に告白してきたのだ。その先輩は部のキャプテンであり、学校中の女子の憧れの的だった。明菜はその先輩の告白を受け付き合うことになる。
付き合い初めの頃、その先輩は明菜に優しく、デートも何回か行った。しかししばらく経つと彼は明菜に対して急に冷たくなる。明菜がメールや電話をしても無視され、デートも全く行かなくなった。そして最期にはメールで一言、「飽きた、別れて」という言葉だけが送られてきた。明菜は彼の真意を聞こうとするがまるで取り合ってもらえない。それだけでなく、周りに「自分は浮気された」などと根も歯もないことを言いふらした。それを信じた周りの生徒は明菜に執拗な虐めを行う。教科書や上履きは捨てられ、明菜の周りにいた友達も次々と離れていく。そんな明菜に対して付き合っていた先輩は周りに同情され、数日後には別の女の子と付き合い始めていた。
毎日、学校に行く度に陰湿な方法で虐められ、絶望した明菜は遂に自殺という言葉が心に浮かび上がる。そしてその日の夜、明菜はそれを実行すべくマンションの屋上まで来ていた。屋上には転落防止用の柵があるが明菜はそれを手で掴み、よじ登る。反対側にまわると彼女はこれまでの苦痛に満ちた生活を終われることに安堵し、屋上から飛び降りた。
数分後、地面の上で倒れていた明菜は突然目をさます。自分の置かれた状況が分からず、しばし呆然としていたが徐々に冷静になり数分前のことを思い出す。
(私、何で生きているんだろ···)
明菜は顔を上げ、先程まで自分がいた場所を見る。自分の遥か上にあるその場所から飛び降りれば確実に命を落とすのは誰の目にも分かる。しかし、そんな場所から飛び降りたはずの自分はこうして生きている。訳が分からず混乱するがこの場にいても仕方ないと思い立ち上がるとふらふらとした足取りで歩き始める。
明菜はあまり人気のない道をしばらく歩いていると反対側から二人組が来る。その顔を見た瞬間に明菜は道を引き返そうとするが相手の方も明菜に気づく。
「ねぇ、あれって小林じゃない?」
「ホントだ。こんなトコでなにやってんだよ」
その二人は学校でいつも明菜に嫌がらせをしている女子生徒だ。二人は明菜に詰め寄り、逃げられないようにすると悪口を言い始める。どうにもできない明菜はその場で黙りこむしかないが二人はそれが気に入らないのか今度は明菜を突き飛ばす。道路に叩きつけられた明菜はその瞬間、頭の中で何かが弾けた。
しばらく倒れたままの明菜を不審に思った二人だが明菜は唐突に立ち上がると体に不思議な紋様が浮かび、その場で怪人の姿に変身した。
「きゃあああ!!」
「ば、化け物!?」
悲鳴をあげる二人を見据える怪人は本能に突き動かされるままに二人を襲う。体から触手を出し、二人の内の一人の口から侵入させ、心臓を突き刺すと何かを心臓に注入する。この時、怪人ー明菜は快楽の様なものを感じていた。女子生徒は心臓は焼失し、絶命する。もう一人はその場を逃げ出すが怪人は驚異的な脚力でジャンプすると相手の前に立ちふさがる。そしてもう片方の女子生徒も触手で刺され心臓が消滅する。
倒れた二人は一旦立ち上がるがすぐに体が灰になり崩れさる。残ったのは二つの灰の山と彼女達の衣服だけである。