華々しく参りましょう。
一話 ― 南朝
「馬鹿な選択をしたな、そなたは」
軽トラック、荷台に艤装を乗せたのを見て、ぽつり、尊治は呟く。
呟いた先には一人の艦娘。
「ごめんなさい、主様」
榛名は、俯いて応じた。
戦う必要はない。ここで、待っていればいい。尊治はそう告げた。
確かに、戦う事に不安はある。向かう場所は海軍本部。そこに、どんな戦力が待つかは分からない。加賀のような指輪持ちの艦娘がいた場合、榛名では負ける可能性が高い。
けど、それでも、
「榛名は、主様の語ってくれた夢のために、榛名も戦いたい、です」
「…………それならそれでよい。
そなたがいてくれた方が助かる、事もあるからな」
陸路から吾妻島に向かう場合。海峡を越える必要がある。
橋の存在は確認しているが、そこに誰もいないとは思えない。妨害はあるだろう。そして、それだけではない。
橋を渡る際、海から援護があるかもしれない。突破は可能だろうが、邪魔ではある。
その排除を榛名は請け負った。ただ、
「よいな、榛名。
私は大切なそなたを喪うのは悲しい。だから、必ず生き残れよ」
「…………はい」
ずるいです。と榛名は内心で呟く。その言い方は、ずるい。
この人のためなら命を捨てる覚悟がある。彼女が傷つくくらいなら、自分が楯になっていいと思っている。
けど、この人を悲しませたく、ない。
「だが、」
神妙な表情を浮かべる榛名に、尊治は笑う。
「私は許可する。生きて戻れば、あとは好きにするがよい。
存分に、戦え」
尊治は、きょとんとする榛名に御剣を向ける。
「戦うと決めたのならば、後悔する事は許さぬ。
安心せよ。それでどんな結果になろうと、例え、四肢を失おうとも、私が傍に置いてやる。
だから、戦うと決めたのであれば、後悔なく戦え」
大切にしても、それでも、戦うと決めたなら止めない。
戦うと決めたのなら、後悔する事なく戦い抜け、と。彼女は榛名に告げ、
「……はい。主様」
その言葉を胸に刻みつけ、榛名は頷いた。
…………己の意思で戦場に向かう。その覚悟を告げた。
光龍寺。そこに、二人の青年と一人の少女がいる。
目を閉じて集中する青年。珈琲を飲みのんびりとしている青年。
そして、……もう一人。
「さーてと、ぼちぼち行くかな」
楠木正成は珈琲の空き缶を傍らに止めている車の中に放り込む。助手席の足元にあったごみ箱に入った事に小さな笑み。
幸先がいい、と笑う。
もう一人の青年、護良は頷く。
「そうですね。
義興からは、海でも準備できたと連絡がありましたし」
「だな」
だから、
「んじゃ、いってくるわ」
そして、最後の一人、大和に手を振る。彼女は拳を握って俯く。
「どうしても、いく、のですね」
「ん、……ああ、まあそうだな。
気に入らねぇし」
だからいく、ただそれだけの理由で戦う、と。正成は告げる。
気に入らないから、彼女達の言う平穏が。
正成や護良から見ても吹雪たちの構築した平穏は立派だ。確かに現状を維持し続ける事は出来るだろう。
それについてはそれでいいと思っている。平穏なのはいい事だ。誰もが静かに暮らせるのなら、それに越した事はない。
…………けど、それでも、気に入らない。
ただそれだけの理由で、平穏を粉砕しに行く。
ふと、護良は頷いて、
「では、私は先行します」
「あ? ……いや、まあいいけどよ。
なんだよいきなり」
元よりその予定だったが。護良の唐突な行動に正成は首を傾げ、護良は微笑して手を振る。
「では、次は戦場で」
「おう」
頷き送り出す。それじゃあ、自分も行くかな、と思ったところで、
「正成」
「ん、……お?」
抱きしめられた。視線を落とせば彼の胸に頭を押し付ける少女。
言葉はない、ただ、強く、強く抱きしめられる。
…………ただ静かに、強く、少女は彼を抱きしめる。
その意味、その理由、それを知り、ゆえに、
「ったく」
丁寧にその頭を撫で、抱き寄せる。
「…………ん、……」
少し苦しそうな声に苦笑。だから正成は一歩離れる。
「あ、」
声、彼は膝をついて彼女と視線を合わせる。真正面から視線を向けられ、照れくさそうに逸らす、直前。
「ん、……むっ?」
抱き寄せられ、唇を合わせられる。強引なキス。彼女は眼を見開いて、
「うっしっ、んじゃ、行ってくる」
離れて彼はひらひらと手を振る。けど、
「こ、の、ばかぁぁあっ!」
手を振る彼の腹に叩き込まれる小さな拳。殴られて、うめいて、けど、
「はは、……ああ、いて」
「まったくっ、こ、これだけじゃあ済まさないですっ!
い、いきなり、き、キスなんて、そんな、……そんなの、ずるい」
顔を真っ赤にする彼女。そうだな、と頷いて、
「おう、ま、やっちまったんだから仕方ねぇな。
んじゃ、続きの説教は後でな」
「容赦しませんからねっ! 正座ですからねっ! な、何時間でも、付き合わせますからねっ!」
だから、
「戻ってきて、ください、ね。正成」
「おう、待ってろ大和」
笑みを交わして、彼は歩き始めた。
ふと、気になった事。
「んで、主君はどこ行っちまったんだ」
ま、どうでもいいか、と考え直した。どうせ榛名と適当に巧くやるだろう。
だから、まずは己のやるべき事。
愛刀、菊水を握る。かつての英雄、そして、平穏を脅かす魔縁は口元に笑みを浮かべ、歩き出した。
その後ろ姿を見送って、大和はずっとたたずむ。
道を曲がり、その背中が見えなくなっても、そこにいる。……………………「不安?」
「矢矧?」
声に振りかえる。振り返り、溜息。
「そうですね。……いえ、正成の強さは、知っています」
かつての英雄、強壮なる魔縁。いくつもの死線と戦場をくぐり抜けたその実力は、十分に高い。
だから、不安、というよりは、
「情けないですね。
結局、私は待っていてばかりです」
視線を落とす。そこにはなんの力もない少女の姿。
かつての、戦艦大和であるなら、
あるいは、艤装を繰り戦う事の出来る艦娘、なら。
それなら、彼と一緒に戦う事が出来た。彼の事を、護る事も出来た。
…………それなのに、
「どうして、私は最後まで役立たず、なのでしょうね」
ぽつり、零れた言葉に矢矧は苦笑。彼女の頭に手を乗せる。
「矢矧?」
「役立たずなら帰っていいわよ?」
その言葉、そして、その視線。……ふと、思い至る。
矢矧も正成に対して悪くない感情を持っていた。捕らえられていたところを助けてくれた英雄。女性として、悪い感情を持つとは思えない。それに、正成の性格は傍にいた自分もよく知っている。
だから、その言葉の意味。そして、その視線の意味を思い。少し、無理に笑う。
まだどこか不安そうで、それを押し隠すような、少し無理矢理の笑みで、
「だめです。
正成を一番に出迎えるのは、私です」
この場は譲らない、と。矢矧に視線を向ける。
「なんだ、解ってるじゃない」
「一番に出迎えるのはいいけど、大和さん、役に立ちたいなら、こっちの準備も手伝ってね」
「あ」
振り返る、忘れてた。
視線の先、苦笑しているのは祥鳳。エプロンを着ておたまを持っている。
戻ってきた時の食事。……そうだ。怪我をして戻ってくるかもしれない。治療に必要なものも用意しておく必要がある。
疲労で戻ってきた瞬間に倒れるかもしれない。疲れ果てて戻ってきて、あとは任せたと全部放り投げられるかもしれない。
それも正成らしいですね、と。思い、だから。
「そうですね。
やる事、たくさんありますね」
「前線に立つだけが仕事じゃないわよ。
さて、大和ホテルの本領発揮ねっ」
からかうように、意地悪な事を言う矢矧。けど、……大和は不敵に笑みを返す。
「そうですね。
疲れて戻ってきたあの人のために、最適の環境を整えておくことこそ、…………」
一瞬、言いかけた言葉を噤む。
「……彼の隣にいる女性としての、務めです」
「恋人じゃないのね」「幼妻ではないのね」
「……………………な、なんでもいいんですっ!」
大島。出撃用のドックには二人の艦娘。
振り返る。
「では、武蔵。ここは任せる」
「ああ、任せろ」
大島には莫大な資材がある。もとより、そもそも新田義興が軍に入ったのはこうなる事を想定してのものだった。
大規模な倉庫街から地下にかくされた隠し倉庫まで、様々な形で資材が保管されている。
もっとも、そのおかげで初霜の部下である第二艦隊に属する艦娘たちは島内を行ったり来たりしているが、……確か、暁が運転を買って出て雷に羽交い締めにされてバンに放り込まれ響が運転席に滑り込んだか。
「暁の水平線に勝利を刻め、か」
ふと、若葉が呟く。武蔵は苦笑。
今は、早朝。だから、
「なんだ、一日中戦争か?」
「その前に終わらせる。
暁を待つつもりはない」
「そうだな」
頷く。そして、振り返る。
「二人を頼むぞ、」
振り返る。その先には二人の艦娘。
「ビッグ7」
「ああ」「わかってるわ」
深海の都より来た二人。長門と陸奥は頷いた。
「正直いえば意外だ。
あの都にいるものは皆、来ないと思っていた」
「そうだな」
長門は頷く、実際、あの都にいる深海棲艦は皆、言仁の指示に従い参戦はしない。
そして、翔鶴と瑞鶴、金剛と比叡もそれは同様。けど、「まあ、いいたい事があるからな」
大した事ではないが、と。長門が呟く。
「いいんですか? 相手は艦娘ですよ?」
「構わない」
「まあ、仕方ないわね。
それに、今さら艦娘だとか深海棲艦だとか言ってもね」
今さら、と陸奥は苦笑。
「ならばいい。
だが、同道するつもりはない。城ヶ島からは別行動だ」
「わかっている」
長門は頷く。城ヶ島、おそらくは主戦場になるであろう浦賀水道に入る前にある島。
そこが最前線。
「城ヶ島ね。
事前に確保しておいたのね」
「当然だ。元より対海軍は想定していた。
前線基地の確保は早い段階から行っていた」
「新田中将か」
「もしかして、中将になった段階から? ……いいえ」
陸奥は、微かな警戒が混じった視線で初霜に視線を向ける。
「海軍にはいった段階から?」
「そうです。
提督は元よりそのつもりで海軍にはいりました。……元より強壮なる魔縁。南北朝の戦争を駆け抜けた実力者です。中将に駆け上がるまで大した時間はかかりませんでした」
「なるほど」
確かに、実戦経験が違う。
「二人は、その事を知っていたの?」
「知っていた。その頃にはすでに《呪詛の御社》が起動していた。
だから、提督には賛同をした。私達の意思は主君と同じだ。《呪詛の御社》、あれは、気に入らない」
だから、海軍を敵に回す、その事を是としたと若葉は告げる。
「そうか」
「城ヶ島を前線基地として、あとはそれぞれが突撃する。っていうことね?
それともまとまって行く?」
「否、そうなれば海軍も集まるだろう。
深海棲艦が相手ならいいが、大将代行である艦娘が集まれば簡単にはいかない。各個突破するのが一番だろう」
「厄介なの?」
「確か、綾波と、時雨、雪風と吹雪だったな」
《波下の都》で会った長門が応じる。若葉は頷く。
「個人的な見立てだが。
二人が組んで、……綾波か時雨のどちらかなら、…………おそらく、相手になるだろう。
雪風はさらに上、吹雪は別格だ。私と初霜が組んでも吹雪に勝てるとは思えない」
「それほどか」
若葉と初霜も指輪持ち、その実力は全艦娘を含めても上位に当たる。けど、その二人でも勝てないという。
「深海棲艦もいます。
難しい事になりますよ?」
それでもいきますか? と、初霜が問う。
「当然だ」
「ねえ、……城ヶ島が見えてきたけど」
陸奥が示す。その先、城ヶ島が見えてきた。けど、それだけではない。
城ヶ島、その周辺海域は黒く覆われている。黒、その色は、
「深海棲艦かっ!」
「流石に前線基地とばれていましたか」
初霜は苦笑。若葉は腰を落とす。
「あそこに辿り着かなければ意味がない。
補給路確保のためにも、蹴散らす。行くぞ、初霜」
「了解」
二人は単装砲を片手に、機銃をもう片手に構える。そして、駆け出した。
高速で疾走する。黒く染まった海。
「深海棲艦、と。
人の呪詛、人が持ち得る思いか」
「壊すべきなのでしょうか?」
問いに、否、と若葉が応じる。
「人が持ち得る感情は人が持つべきだ。
奪う必要はない。それが争いを呼ぶとあっても、だ」
だから、戦うと決めた。それこそが南朝に所属する艦娘の総意。若葉の言葉に初霜は頷く。
だから、
「大島基地、第二艦隊旗艦、初霜」
「大島基地、第三艦隊旗艦、若葉」
眼前には深海棲艦、狙うのは城ヶ島か、ゆえに、二人にまだ背を向けている。
駆逐艦級、なら。
「「交戦、開始っ!」」
蹴散らすだけだ。
疾走開始、海の上を高速で滑り突撃。同時に機銃を向ける。
「右、頼む」「左よろしくですっ」
言葉とともに機銃から銃弾をばら撒く。機銃掃射、一撃一撃の威力は低い、が。
銃撃され、回頭。が、遅い、さらに重なる銃撃により轟沈。
薙ぎ払う。その言葉通り二人が振り抜いた機銃の掃射範囲内にいる深海棲艦はまたたく間に海に沈む。
「これが、指輪持ちか」
機銃、その口径は砲に比べて格段に劣る。元より一撃で轟沈を狙うものではない。ある程度射線を集中させて対象を沈黙させる兵器だ。
けど、二人は違う。艦娘の装備は使用者の持つ火力に依存する。ただの機銃で駆逐艦級、……否、軽巡洋艦級の深海棲艦さえまたたく間に薙ぎ払い、撃ち砕くという事は、
「相当の火力を持っているのね」
指輪持ち、改めて、その意味を知る。
「若葉」「ん」
第一陣を、文字通り薙ぎ払う。僚艦が轟沈した事に後続が回頭。同時に駆逐艦級が魚雷を吐き出す、が。
「遅すぎる」「遅いです」
若葉は機銃を振り抜く。初霜は単装砲で砲撃。
吐き出された直後、魚雷が着水する前、眼前にある瞬間に銃弾が叩きこまれ、魚雷は誤爆。放った主を巻き込んで盛大に爆発する。
着水し、突き進む魚雷は初霜の砲撃で迎撃、爆破。
「魚雷警戒」「前面全方位薙ぎ払いします」
若葉は単装砲を、初霜は機銃を構える。突き進む。機銃で薙ぎ払い道を押し広げ、若葉は旋回と警戒を繰り返して魚雷、砲撃をする深海棲艦を先制で撃ち抜く。
二人は単装砲で重巡洋艦級でも撃ち抜ける。駆逐艦級や軽巡洋艦級なら正しく蹴散らせる。
初霜が道を切り開き、若葉は砲撃、魚雷を構えた深海棲艦を即座に粉砕。
と、
「空母級?」
軽空母級もいたらしい、面倒だな、と。若葉は機銃を上に向ける。撃墜する自信はあるが、とはいえ射線を上にも向けなければいけない、それだけで無駄な時間となる。
爆発。
「艦載機? 深海棲艦、……姫か」
姫の繰る艦載機。高速で飛翔し、機銃で片っ端から薙ぎ払う。
数にして深海棲艦の放つ艦載機の十分の一程度。だが、高速の飛翔に敵機の銃撃は届く事がなく。艦載機の銃撃は確実に敵機を撃ち抜き、撃墜。またたく間に制空権を確保する。
なら、
「突撃優先」「上陸しますっ!」
「来たか」「お疲れ様です」
出迎えたのは泊地の鬼と姫。艦載機は鬼の放った物らしい。
「みずとすいか、ここの防衛は二人が?」
「そうなるな」
長門の問いに泊地の姫、みずは頷く。溜息。
「艦娘はどいつもこいつも海に出ると言ってきかない。
お前ら、もう少し協調性を持てないのか?」
「…………深海棲艦に協調性で文句を言われるとは思いませんでした」
初霜は肩を落とす。けど、言い訳もできない。
「存在年数が長いと自由性が増すのでしょうか?
特に我が侭なのは利根と那珂と加賀でしたが。……利根イエスマン筑摩は論外です」
「……面目ない」
若葉は肩を落とす。別に指輪持ちとして一括りにされる筋合いはないが。どうもいらぬ苦労をかけたらしい。
深海棲艦に頭を下げる艦娘と言うのもどうなのかしら、と陸奥は思うが。とりあえず黙っておく。
「誰が、我が侭ですか」
と、不機嫌そうな声が聞こえた。みずは振り返らず「自覚がないのか、加賀」
いつもの変わらぬ表情の加賀。彼女は長門たちと入れ替わるように海へ。
「もう行くのか?」
長門の問いに、加賀はそちらに視線を向けず、
「そのつもりです」
「空母が、一人で?」
陸奥の問いに、加賀は彼女に視線を向けない。ただ、真っ直ぐに海を見据える。
「そのつもりです。
他はどうでもいいですが、赤城さんは、私が撃ち取ります。邪魔は、不愉快です」
告げて着水。同時に艦載機を発艦。
駆け出した加賀の周囲を艦載機が舞う。深海棲艦を確認と同時に飛翔。爆撃して撃破、突き進む。
「空母の単艦突撃」
呆れたように呟く陸奥に「可能な実力があるのだろう」と、若葉は小さくため息をついて応じる。
「まあなんでもいい。
どちらにせよここの防衛は私とすいが何とかする。適当に遊んで来い。大島からの補給補助はするが、ここから先は知らない。
那珂が物資の輸送をするらしい」
ひらひらとどうでもよさそうにみずが手を振る。長門は首を傾げて「出撃はしないのか?」
「…………別に、必要ない」
「最近みず様は自分の泊地で幼子の面倒をみる事に、癒しを感じるようになったようです。
なので、積極的な戦意は持っていないようです」
視線をそむけるみずの傍ら、すいはすらすらと応じる。
長門は思う、それはいいな、と。
陸奥は思う、長門もそうしたいでしょうね、と。
そして、みずはすいを蹴り飛ばす。
「さっさと持つ物持っていって来い。
入渠用施設やらは使えるようになっている。亀山中将がいるから、その辺は聞いておけ」
そうだな、と長門は城ヶ島へ、まずはここにいるらしい、亀山中将に挨拶のため歩き出す。
轟音。
「なっ?」
振り返る。ビッグ7の勇名を持つ長門と陸奥さえ聞いた事のない、異常な砲撃の音。
蹂躙、殲滅、機銃の薙ぎ払いとは違う。ただの一撃で数十の深海棲艦を消し去る規格外の破壊力。
「来たか」
みずが呟く。その奥。深海棲艦を蹂躙して立つ女性。
それは、相対するに敵に、不沈という絶望を与える装甲を持つ存在。
それは、相対するに敵に、轟沈という恐怖を与える砲撃を行う存在。
それは、ただ一つで勝利をつかみ取るという、正しく戦艦への信仰を形にする存在。
最強の、深海棲艦たる彼女。
「戦艦の姫」